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関数の双対性とa-Hermite多項式

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$$\newcommand{bk}[0]{\boldsymbol{k}} \newcommand{bl}[0]{\boldsymbol{l}} \newcommand{calA}[0]{\mathcal{A}} \newcommand{calS}[0]{\mathcal{S}} \newcommand{CC}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{F}[5]{{}_{#1}F_{#2}\left[\begin{matrix}#3\\#4\end{matrix};#5\right]} \newcommand{ol}[0]{\overline} \newcommand{Q}[5]{{}_{#1}\phi_{#2}\left[\begin{matrix}#3\\#4\end{matrix};#5\right]} \newcommand{QQ}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{ZZ}[0]{\mathbb{Z}} $$

まず, 数列$a_n$の双対数列$b_n$
\begin{align*} b_n:=\sum_{k=0}^n(-1)^k\binom nka_k \end{align*}
によって定義される. 名前の通り, 双対数列の双対数列はもとの数列に一致する. つまり,
\begin{align*} a_n=\sum_{k=0}^n(-1)^k\binom nkb_k \end{align*}
が成り立つ. 定義式の両辺の母関数を考えると, 等式
\begin{align*} \sum_{0\leq n}b_nx^n&=\frac 1{1-x}\sum_{0\leq n}a_n\left(\frac{x}{x-1}\right)^n \end{align*}
を得る. よって, 母関数の間の関係を一般化して
\begin{align*} g(x):=\frac 1{1-x}f\left(\frac{x}{x-1}\right) \end{align*}
と定義される$g$$f$の双対関数ということにする. これを拡張して, $f$$a$双対関数を
\begin{align*} (1-x)^{-a}f\left(\frac{x}{x-1}\right) \end{align*}
によって定義することにする. 定義より, $a$双対の$a$双対はもとの関数に戻ることが分かる. ここから数列に対して, その母関数の$a$双対の係数として, 数列の$a$双対を定めることができる.

$a$-Hermite多項式

前の記事において, $a$-Hermite多項式として,
\begin{align*} \ell_n^{(a)}(x)&=[a]_n\sum_{k=0}^n\frac{(-n)_k}{k!(a)_k}x^k \end{align*}
を導入した($[a]_n:=\frac{(a)_n}{n!}$). その母関数を考えてみると,
\begin{align*} \sum_{0\leq n}\ell_n^{(a)}(x)t^n&=\sum_{0\leq n}(a)_nt^n\sum_{k=0}^n\frac{1}{k!(n-k)!(a)_k}(-x)^k\\ &=\sum_{0\leq n,k}\frac{(a)_{n+k}}{k!n!(a)_k}(-xt)^kt^n\\ &=(1-t)^{-a}\sum_{0\leq n}\frac{1}{k!}\left(-\frac{xt}{1-t}\right)^k\\ &=(1-t)^{-a}e^{\frac{xt}{t-1}} \end{align*}
よって, $a$-Hermite多項式は多項式列$\frac{x^n}{n!}$$a$双対であると解釈できる.

第1種完全楕円積分

$a$類似において$a=\frac 12$$a=1$は特別であると考えているが, $a=\frac 12$の場合の具体例として第1種完全楕円積分を考えてみる. 以降, $\frac 12$双対を単に双対ということにする.

$\beta_n:=\frac{\left(\frac 12\right)_n}{n!}$として, 第1種完全楕円積分の変換,
\begin{align*} \sum_{0\leq n}\beta_n^2x^n&=\frac 1{\sqrt{1-x}}\sum_{0\leq n}\beta_n^2\left(\frac{x}{x-1}\right)^n \end{align*}
は双対の例で, その$a$類似は
\begin{align*} \sum_{0\leq n}[a]_n^2x^n&=(1-x)^{-a}\sum_{0\leq n}[a]_n[1-a]_n\left(\frac{x}{x-1}\right)^n \end{align*}
となり, $a$双対の具体例を与える. この例からも分かるように, $a=\frac 12$の場合は$a=1-a$であることによって自己双対になっているので特別である. Hermite多項式によって展開される関数,
\begin{align*} f(x)=\sum_{0\leq n}\beta_n\ell_n(x) \end{align*}
を考える. この級数の収束性を示すのはかなり難しいので, ここでは収束性の問題は考えず, 形式的な計算を行うことにする. 直交性によって,
\begin{align*} \frac 1{\sqrt {\pi}}\int_0^{\infty}f(x)\ell_n(x)e^{-x}\frac{dx}{\sqrt x}&=\beta_n^2 \end{align*}
が成り立つ. ここから, Hermite多項式が$\frac{x^n}{n!}$の双対だったことと, $\beta_n^2$が自己双対だったことを思い出すと,
\begin{align*} \frac 1{n!\sqrt {\pi}}\int_0^{\infty}f(x)x^ne^{-x}\frac{dx}{\sqrt x}&=\beta_n^2 \end{align*}
が成り立つことが分かるので, 適当な条件の元Mellin逆変換などを用いてこの表示から$f(x)$を具体的に調べることができる. 一般に$a$-Hermite多項式と$a$双対の関係はかなり応用が効きそうなので, $q$類似についても考えてみたいと思った.

投稿日:319
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Wataru
Wataru
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超幾何関数, 直交関数, 多重ゼータ値などに興味があります

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