この記事は仮の人さん主催の
AMC2023
の24日目の記事です.
はじめに
幾何問題を初等的に解くには,難しい発想が必要ですが,三角関数で機械的に解く方法だと,最低限の知識(構図・公式など)と計算力だけで問題を解くことができます.
この記事では,図形上の距離やを三角関数を使って求める手法を紹介します.また,三角関数の基本的性質を知っている前提で解法を書きます.
特に断りのない場合,三角形の内心,外心,垂心,角内の傍心をそれぞれとします.また,三角形の外接円の半径,内接円の半径,角内の傍接円の半径をそれぞれとします.
準備運動
ヒント
を用いる.
解答
に注意して,より,
ヒント
を用いる.
解答
に注意して,より,
ヒント
積和の公式より.はから求まる.
解答
に注意して,より,
ヒント
和積の公式より,.はから求まる.
解答
より.和積の公式より.したがって,.よって
ヒント
積和の公式より.和積の公式より.これらからを求める.
解答
積和の公式より.和積の公式より.これらからより.よって
三角関数を用いた解法の方針
以下のようなステップで解けることが多いです.
- 問題文で与えられている長さをで表す.
- 1で作られた連立方程式を解いてやなどの値を出す.
- 2を用いて答えるべき値を出す.
1のステップについて
よく使われる式としては以下のようなものがあります.証明は各自試みてください.(いい練習になります)
辺
垂心・垂線の足
から対辺に下ろした垂線の足をそれぞれとすると
頂点と五心の距離
三角形の内心,外心,垂心,角内の傍心をそれぞれとすると
内接円・傍接円の半径
三角形の外接円の半径,内接円の半径,角内の傍接円の半径をそれぞれとすると
五心間の距離
面積
練習問題
(問題は公開日(12/24)後に追加されるかもしれません)
鋭角三角形において垂心をとすると
が成り立つ.このとき,三角形の外接円の半径を求めよ.
ヒント
解答
より.したがってより.
鋭角三角形においてから対辺に下ろした垂線の足をそれぞれ,垂心をとすると
が成り立つ.このとき,の面積を求めよ.
ヒント
解答
より.より.
また,第一式より..よって
鋭角三角形において垂心を,内心をとすると
が成り立つ.このとき,を求めよ.
ヒント
よりに注意して
解答
ヒントより.より.すなわちより.よって.
鋭角三角形において内心を,外心を,垂心をとすると
が成り立つ.このとき,を求めよ.
ヒント
より
解答
ヒントより.また
より.に注意して,以上の二式から.よって.
(2023/12/31 修正済み)
鋭角三角形において外心を,垂線を,からに下した垂線の足をとすると
が成り立つ.このとき,を求めよ.
ヒント
より
解答
ヒントより.またより.すなわちこの連立方程式を解いて
いずれの場合にせよに注意して.したがって.
よって余弦定理より
三角形において内心をとすると
が成り立つ.このとき,を求めよ.
ヒント
解答
ヒントより,以下のように文字を置ける.(は正実数)
に注意して,加法定理より
よりこれを解いて.すなわちより
よって
三角形において内心を,角内の傍心を,外心をとすると
が成り立つ.このとき,の面積としてありうる値を全て求めよ.
ヒント
解答
より
より
に注意してこれを解くと.
(1) のとき
より
に注意して
より
積和の公式より
よって
(2) のとき
より
に注意して
より
積和の公式より
よって
(1),(2)より
三角形において外接円,内接円,角内の傍接円の半径をそれぞれとすると
が成り立つ.このときを求めよ.
ヒント
解答
ヒントより
すなわち
よって
あとがき
OMC上にも三角関数で無理やり解ける問題がたくさんあります(いずれ紹介します).この解法のメリットはコツさえつかめば,同様の問題も解くことができることです.逆にこの解法では計算量が多いまたは簡潔な式にならないような問題もあります.あくまでこれは解法の一つに過ぎず,最初は初等的解法を試みるべきです.
明日(25日目)はW2TZMSさんの記事が公開されます.いよいよ最後の記事ですね.