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東大数学-2025-2 を発想無しで解く

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$$\newcommand{eps}[0]{\varepsilon} $$

1番は微分して増減を調べることで簡単に示せるので省略します.

東大-2025-2

次の極限を求めよ.

$$\lim_{n\to\infty}n\int_1^2\log\left(\dfrac{1+x^{\frac{1}{n}}}{2}\right) dx$$

解答に入る前に思考を書いていきます.

思考

$\infty\times 0$の不定形だなー

不定積分は求まらなさそう

定積分ならいける?$\to$無理そう$\to$不等式評価?

$(1)$の誘導が使える?(実はほとんど役に立ちません)

〜〜〜誘導を使って試行錯誤〜〜〜

誘導だけじゃ下からおさえられなくない?

$n\to\infty$の極限だから$n=\infty$で展開してみると…?

$$ \log\left(\dfrac{1+x^{\frac{1}{n}}}{2}\right)=\dfrac{\log x}{2}\cdot\dfrac{1}{n}+\dfrac{(\log x)^2}{8}\cdot\dfrac{1}{n^2}+O\left(\dfrac{1}{n^3}\right) $$

これならいけそう!$O$を答案で使うのは不安だからいい感じに極限で処理することにしよう.

補足

$n=\infty$での展開はふつう,$y=\frac{1}{n}$として$y=0$周りの展開を考えると,その係数を得ることができます.

別解

先に書いた解答が不十分かつ助長であったためこちらを先に読むことをおすすめします.(結局ただの誤差評価になりました…)

$n\gt 1,x\in[1,2]$に対して,$f_n(x)=n\log\left(\dfrac{1+x^{1/n}}{2}\right),\ f(x)=\dfrac{\log x}{2}$とし,$F_n(x)=f_n(x)-f(x)$とする.

$F’_n(x)=\dfrac{1}{x}\left(\dfrac{1}{2}-\dfrac{1}{1+x^{1/n}}\right)\ge 0$

より,$x\in[1,2]$において

$$F_n(1)\le F_n(x)\le F_n(2)\Longrightarrow f(x)+F_n(1)\le f_n(x)\le f(x)+F_n(2)$$

が成立する.各辺$x:1\to 2$で積分すると,

$$\int_1^2(f(x)+F_n(1))dx\le\int_1^2f_n(x)dx\le\int_1^2(f(x)+F_n(2))dx$$

ここで,$\displaystyle\int_1^2f(x)dx=\frac{1}{2}\left[x\log x-x\right]_1^2=\log 2-\frac{1}{2}$

であり,$x\in[1,2]$に対して,

$$\lim_{n\to\infty}n\log\left(\dfrac{1+x^{\frac{1}{n}}}{2}\right)=\lim_{t\to+0}\dfrac{1}{t}\cdot\log\left(\dfrac{1+x^t}{2}\right)=\lim_{t\to+0}\dfrac{\log(1+x^t)-\log 2}{t}$$

$g(t)=\log(1+x^t)$とすると,微分係数の定義より上式は,$g’(0)$と一致する.$g’(0)=\frac{\log x}{2}$なので上式は$\frac{\log x}{2}$と表せる.
よって,$\displaystyle\lim_{n\to\infty}F_n(1)=\lim_{n\to\infty}F_n(2)=0$
以上より,$n\to\infty$において$(左辺)\to\log 2-\frac{1}{2},\ (右辺)\to\log 2-\frac{1}{2}$なので,はさみうちの原理より

$$\lim_{n\to\infty}n\int_1^2\log\left(\frac{1+x^{\frac{1}{n}}}{2}\right)dx=\log 2-\frac{1}{2}$$

解答

まず以下を示す.

$x\in[1,2]$に対して,$\displaystyle\lim_{n\to\infty}n\log\left(\dfrac{1+x^{\frac{1}{n}}}{2}\right)=\dfrac{\log x}{2}$

証明

$\displaystyle\lim_{n\to\infty}n\log\left(\dfrac{1+x^{\frac{1}{n}}}{2}\right)=\lim_{t\to+0}\dfrac{1}{t}\cdot\log\left(\dfrac{1+x^t}{2}\right)=\lim_{t\to+0}\dfrac{\log(1+x^t)-\log 2}{t}$

$g(t)=\log(1+x^t)$とすると,微分係数の定義より上式は,$g’(0)$と一致する.$g’(0)=\frac{\log x}{2}$なので示せた.

極限の定義より,任意の実数$\eps>0,x\in[1,2]$に対して正の整数$N$が存在して$$n \ge N \Longrightarrow \left| n\log\left(\frac{1+x^{1/n}}{2}\right) - \frac{\log x}{2} \right| < \eps$$

このとき,左辺は$n$によらず$x=2$で最大となる.$2\in[1,2]$なので初めに示した事実からこの値は$n\to\infty$$0$に収束する.よって$x=2$において$\eps$に対して適切な$N$をとれば,区間の任意の値で差の絶対値が$\eps$より小さくなる.つまり,任意の実数$\eps’>0$に対して正の整数$N’$が存在して$$n\ge N’\Longrightarrow\displaystyle\max_{x\in[1,2]}\left| n \log\left( \frac{1 + x^{1/n}}{2} \right) - \frac{\log x}{2} \right| < \eps’$$

このとき,$n\ge N’$なる$n$について,$$\displaystyle\int_1^2 \left(\frac{\log x}{2}-\eps’\right)dx < \int_1^2 n\log\left(\frac{1+x^{1/n}}{2}\right)dx < \int_1^2 \left(\frac{\log x}{2}+\eps’\right)dx$$

ここで,$\displaystyle(左辺)=\log 2-\frac{1}{2}-\eps’$$\displaystyle(右辺)=\log 2+\frac{1}{2}+\eps’$と計算できるので,

$\displaystyle\left| \int_1^2 n \log\left( \frac{1 + x^{1/n}}{2} \right)dx - \left(\log 2-\frac{1}{2}\right) \right| < \eps’$

がいえる.極限の定義より,

$\displaystyle\lim_{n\to\infty}n\int_1^2 \log\left(\frac{1+x^{\frac{1}{n}}}{2}\right)dx=\log 2-\frac{1}{2}$

  • 積分の中身を$O$ではなく極限で評価する

  • $x\in[1,2]$における誤差の最大値をおさえることで積分にも$\eps-N$を適用できるようにする

ことがポイントでした.(2つ目が$\eps-N$でないとやりづらそう?)

おわりに

  • ここまでやるだけの解法を試験場で思いつけなかったのが悔しいです.

  • 誤り等あればコメントやTwitterのDMに指摘を頂けるとありがたいです.

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更新日:71
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ButterFlv
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