タイトルのとおり、ざっくりGalois理論を勉強しようという趣旨の記事です.というのも自分の理解不足ゆえ,しっかりした理解がないためです.わかった範囲で書いてみるので少しだけお付き合いいただせると幸いです.前提知識は線形代数(ベクトル空間,基底,線形写像),体の定義くらいでしょうか.
まず体の拡大を定義して,Galois拡大を定義して,Galois対応を具体的な例でみていきたいと思います.体について何も知らない方はとりあえず普通の四則演算ができる数体系くらいに思っていてください.
体$K$と$L$に対して,$K$が$L$の部分環のとき,$L$は$K$の拡大体である(または$K$は$L$の部分体である)といい,この拡大を$L/K$と書く.
どの体の拡大に着目しているかを明示するために$L/K$と表記するくらいのイメージですかね.
$\mathbb{C}$ は$\mathbb{R}$の拡大体.
$\mathbb{Q}(\sqrt2)=\{a+b\sqrt{2} | a,b \in \mathbb{Q}\}$は$\mathbb{Q}$の拡大体.
$\mathbb{Q}(\sqrt{2}, \sqrt{3}) =\{a+b\sqrt2+c\sqrt3+d\sqrt6|a,b,c,d, \in \mathbb{Q}\}$は$ \mathbb{Q}$の拡大体で,$\mathbb{Q}(\sqrt{2})$や$\mathbb{Q}(\sqrt{3})$の拡大体でもある.
$\mathbb{Q}(\sqrt[3]{2})=\{a+b\sqrt[3]{2}+c\sqrt[3]{4}|a,b,c \in \mathbb{Q}\}$は$\mathbb{Q}$の拡大体.
この$L/K$が"良い感じ"の拡大のときに拡大$L/K$はGalois拡大であるというのですが,もう少し基本的な道具を用意します.
体の拡大$L/K$があれば,$L$は$K$上ベクトル空間になるので,次元 $\mathrm{dim}_KL$を$[L:K]$と書き,拡大$L/K$の次数という.
この拡大次数はこの記事では有限である場合しか扱わないと思います(難しいことは僕がわからないので).
$[\mathbb{C} : \mathbb{R}] = 2$
$[\mathbb{Q}(\sqrt2):\mathbb{Q}]=2$
$[\mathbb{Q}(\sqrt{2}, \sqrt{3}) : \mathbb{Q}] = 4$
$[\mathbb{Q}(\sqrt[3]{2}):\mathbb{Q}]=3$
有限次拡大なら代数拡大というやつにもなります.
あともう少しGalois拡大を定義するために必要な道具を用意します.
体$K$の拡大体$L,L'$に対し,体の準同型写像$\sigma:L\to L'$で,$\left.\sigma\right|_K=\mathrm{id}_K$となるものを$K$上の体の準同型(または埋め込み)という.
つまり$K$の元を動かさないような準同型写像ということですね.大体次の自己同型群みたいな$L=L'$の場合を考える(Galois拡大においては大切な対象になります)ので, そういう例を挙げます.準同型なので基底の行き先だけ指定すればいいですね.
体の準同型は単射になるので埋め込まれてる感じがしますね.
体$L$の$K$上の自己同型写像のなす群を$\mathrm{Aut}(L/K)$と表し,$L$の$K$上の自己同型群という.
$\mathrm{Aut}(\mathbb{Q}(\sqrt2)/\mathbb{Q})$について考えると,$\mathbb{Q}(\sqrt2)$の元であって,$\mathbb{Q}$の元を動かさない同型写像を考えればよく,$\mathrm{id}$の他には基底の$\sqrt2$を$-\sqrt2$にうつす(準)同型があります.
これでいよいよGalois拡大が定義できます.
$[L:K]=\left|\mathrm {Aut} (L/K) \right|$となるとき,拡大$L/K$はGalois拡大であるという.またこのとき,$\mathrm {Aut}(L/K)$を$\mathrm {Gal}(L/K)$と書く.
(正規拡大かつ分離拡大とかいう同値な命題(こっちの方が一般には定義として採用されやすいかも?)がありますが定義してると長いのでやりません.)
$K=\mathbb{Q}$, $L=\mathbb{Q}(\sqrt2 ,\sqrt3)$とすると$L/K$はGalois拡大で,$\mathrm{Gal}(L/K)$は$\mathbb{Q}$の元は固定されて,準同型でもあるので$\sqrt2$と$\sqrt3$の行先だけを指定すればよく,$\sigma,\tau \in \mathrm{Gal}(L/K)$であって
$\sigma(\sqrt2)=-\sqrt2$,$\sigma(\sqrt3)=\sqrt3$
$\tau(\sqrt2)=\sqrt2$,$\tau(\sqrt3)=-\sqrt3$
となるものがある.$\mathrm{Gal}(L/K)=\{\mathrm{id},\sigma,\tau,\sigma\tau\}$となり,$\sigma^2=\tau^2=\mathrm{id}$,$\sigma\tau=\tau\sigma$,$(\sigma\tau)^2=\mathrm{id}$となるので,$\mathrm{Gal}(L/K)\cong\mathbb{Z}/2\mathbb{Z}\times \mathbb{Z}/2\mathbb{Z}$
$\left |\mathrm{Aut}(\mathbb{Q}(\sqrt[3]{2})/\mathbb{Q}) \right|=1<3=[\mathbb{Q}(\sqrt[3]{2}):\mathbb{Q}]$より, $\mathbb{Q}(\sqrt[3]{2})/\mathbb{Q}$は$\mathrm{Galois}$拡大でない.
$L/K$を有限次Galois拡大とすると,$L/K$の中間体と$\mathrm {Gal}(L/K)$の部分群に1対1の対応が存在する.
不変体について書くのが面倒になってしまったのでちょっとごまかしてますが,雰囲気は例を通して伝わってくれればいいかなと思います.一応ちょっとだけ書いておくと, $\mathrm{Gal}(L/K)$の部分群$H$の作用で不変な$L$の元全体は$L/K$の中間体をなすのですが, その体と$H$が対応するということです.
例3のGalois拡大$\mathbb{Q}(\sqrt2,\sqrt3)/\mathbb{Q}$について,$\mathrm{Gal}(\mathbb{Q}(\sqrt2,\sqrt3)/\mathbb{Q})\cong \mathbb{Z}/2\mathbb{Z}\times \mathbb{Z}/2\mathbb{Z}$であった.$\mathbb{Z}/2\mathbb{Z}\times \mathbb{Z}/2\mathbb{Z}$の自明でない部分群は位数が2で,$\{\overline{0},\overline{0}\}$以外の元はすべて位数は2で,$\langle(\overline{0},\overline{1})\rangle=\langle\tau \rangle$,$\langle(\overline{1},\overline{0})\rangle=\langle\sigma \rangle $,$\langle(\overline{1},\overline{1})\rangle=\langle\sigma\tau \rangle$である.これらに対応する$\mathbb{Q}(\sqrt2,\sqrt3)/\mathbb{Q}$の中間体は
$\mathbb{Q} \leftrightarrow \{\mathrm{id},\sigma,\tau,\sigma\tau\}$ , $\mathbb{Q}(\sqrt{2}) \leftrightarrow \{\mathrm{id},\sigma\}$ ,$\mathbb{Q}(\sqrt{3}) \leftrightarrow \{\mathrm{id},\tau\}$
$\mathbb{Q}(\sqrt{6}) \leftrightarrow \{\mathrm{id},\sigma\tau\}$ , $\mathbb{Q}(\sqrt{2},\sqrt{3}) \leftrightarrow \{\mathrm{id}\}$
大体の雰囲気は掴めたでしょうか.まだ僕もわかりやすく整理できてないと思いますが最後まで読んでいただいてありがとうございました.何かアドバイスとかあればなんでも教えていただけたらと思います.
(余力があればもう少し例を加えたり,前提知識の説明とかも書きたいです...)