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高校数学(何かの模試)の問題を一般化したらなんか面白い結果が出てきた

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$$\newcommand{bm}[0]{\boldsymbol} \newcommand{dep}[0]{{\rm dep}} \newcommand{ds}[0]{\displaystyle} \newcommand{Li}[0]{{\rm Li}} \newcommand{mi}[2]{\begin{array}{c} #1 \\ #2 \end{array}} \newcommand{n}[0]{\varnothing} \newcommand{ol}[1]{\overline{#1}} \newcommand{R}[0]{{\cal R}} \newcommand{sh}[0]{{\rm{ш}}} $$

$n$$1$より大きい整数とし,$xy$平面上の曲線$y=x^n$$x\geq0$の部分を$C$とする.$C$上の2点${\rm P}(p,p^n)$${\rm Q}(q,q^n)\,\,(p>q\geq0)$における2本の接線を$L_P,L_Q$とし、線分${\rm PQ}$$C$で囲まれた部分の面積を$S_1$$L_P,L_Q,C$で囲まれた部分の面積を$S_2$とするとき、極限$\ds\lim_{p\to\infty}\frac{S_1}{S_2},\lim_{q\to p-0}\frac{S_1}{S_2}$の値を求めよ.

計算がかなり重たいですが,解きたい人は下の折りたたみを開く前に解いてみましょう.


解答(折りたたみ)

始めに,後々の計算をしやすくするために,1つ記法を導入しておきます.

実数$n$$1$でない実数$q$(ただし,$(n,q)\neq(0,0)$)に対して,$\ds [n]_q=\frac{1-q^n}{1-q}$($q$-数という名前がついています).

まず、$[n]_0=1,\ds\lim_{q\to1}[n]_q=n$です.
$q\to1$のとき,$1-q=h$とおくと$h\to0$で,二項定理から
\begin{align} [n]_q&=\frac{1-q^n}{1-q} \\ &=\frac1h(1-(1-h)^n) \\ &=\frac1h\left(nh-\binom{n}{2}h^2+\binom{n}{3}h^3-\cdots\right) \\ &=n-\binom{n}{2}h+\binom{n}{3}h^2+{\mathcal O}(h^3) \end{align}
です(今回は3次までの評価を使います).

それでは,冒頭の問題を解いていきます.

まず,$x$軸方向に$k$倍,$y$軸方向に$k^n$倍するような座標変換を考えることで,$p:q$が一定なら$S_1:S_2$も一定であることが分かります.なので,簡単のために以降は$p=1$として考えます.

次に,$L_P$$L_Q$の交点の座標を求めます.$L_P$(resp. $L_Q$)の方程式は$y=nx-(n-1)$(resp. $y=nq^{n-1}x-(n-1)q^n$)なので,交点の座標は$\ds\left(\frac{(n-1)[n]_q}{n[n-1]_q},\frac{(n-1)[n]_q}{[n-1]_q}-(n-1)\right)$と求まります.

今,$S_1+S_2$は,${\rm PQ},L_P,L_Q$で作られる三角形の面積に等しいので,高校でも習う面積の公式から簡単に求まります(形は少し複雑ですが).
\begin{align} 2(S_1+S_2)=&\left(\left(1-\frac{(n-1)[n]_q}{n[n-1]_q}\right)\cdot\left(q^n-\frac{(n-1)[n]_q}{[n-1]_q}+(n-1)\right)\right. \\ &\quad-\left.\left(q-\frac{(n-1)[n]_q}{n[n-1]_q}\right)\cdot\left(1-\frac{(n-1)[n]_q}{[n-1]_q}+(n-1)\right)\right) \\ =&q^n-q^n\frac{(n-1)[n]_q}{n[n-1]_q}-\frac{(n-1)[n]_q}{[n-1]_q}+(n-1) \\ &\quad-q+\frac{(n-1)[n]_q}{n[n-1]_q}+q\frac{(n-1)[n]_q}{[n-1]_q}-q(n-1) \\ =&\left(\frac{(n-1)[n]_q}{n[n-1]_q}-q\right)\cdot(1-nq^{n-1}+(n-1)q^n) \\ =&(1-q)\cdot\left(\frac{(n-1)[n]_q}{n[n-1]_q}-q\right)\cdot(n[n-1]_q-(n-1)[n]_q) \end{align}
また,直線${\rm PQ}$の方程式は$y=[n]_qx-[n]_q+1$なので,積分により$S_1$も求まります.
\begin{align} S_1&=\int_q^1[n]_qx-[n]_q+1-x^ndx \\ &=[n]_q\frac{1-q^2}{2}-(1-q)[n_q]+(1-q)-\frac{1-q^{n+1}}{n+1} \\ &=(1-q)\left([n]_q\left(\frac{[2]_q}{2}-1\right)+\left(1-\frac{[n+1]_q}{n+1}\right)\right) \end{align}

$p\to\infty$の極限は,$p=1$に固定した時の$q\to0$の極限に等しいので,$q=0$のとき$q$-数は$1$になることから
$$S_1+S_2=\frac12\cdot1\cdot\frac{n-1}{n}\cdot1=\frac{n-1}{2n}$$
$$S_1=1\cdot\left(\frac{n}{n+1}-\frac12\right)=\frac{n-1}{2(n+1)}$$
と分かり,$\ds\lim_{p\to\infty}\frac{S_1+S_2}{S_1}=\lim_{q\to0}\frac{S_1+S_2}{S_1}=1+\frac1n$となって$\ds\lim_{p\to\infty}\frac{S_1}{S_2}=n$と求まります.
$q\to p-0$の極限は$p=1$のときの$q\to 1-0$の極限に等しいため,$q$-数の評価を使うことで求めることができます.
$1-q=h$とおくと,$h\to+0$であるため,
\begin{align} S_1+S_2&=\frac{h}{2}\left(\frac{n-1}{[n-1]_q}\left(\frac{[n]_q}{n}-1\right)+\frac{n-1}{[n-1]_q}-1+h\right) \\ &\qquad\quad\cdot\left(n(n-1)-n\binom{n-1}{2}h-n(n-1)+(n-1)\binom{n}{2}h+{\mathcal O}(h^2)\right) \\ &=\frac{h}{2}\left(-\frac1n\binom{n}{2}h+\frac{1}{n-1}\binom{n-1}{2}h+h+{\mathcal O}(h^2)\right) \\ &\qquad\quad\cdot\left(\binom{n}{2}h\right) \\ &=\frac{n(n-1)}{8}h^3+{\mathcal O}(h^4) \end{align}
\begin{align} S_1&=h\left([n]_q\left(-\frac{h}{2}\right)+\left(\frac{1}{n+1}\binom{n+1}{2}h-\frac{1}{n+1}\binom{n+1}{3}h^2+{\mathcal O}(h^3)\right)\right) \\ &=h\left(\frac{1}{2}\binom{n}{2}h^2-\frac{1}{3}\binom{n}{2}h^2+{\mathcal O}(h^3)\right) \\ &=\frac{n(n-1)}{12}h^3+\mathcal{O}(h^4) \end{align}
となります.よって,$\ds\lim_{q\to p-0}\frac{S_1+S_2}{S_1}=\frac32$となるので,$\ds\lim_{q\to p-0}\frac{S_1}{S_2}=2$が求まりました.
$n$の値によらず同じになるのは面白いですね.多分$\ds\frac{S_1}{S_2}$$q$に関して単調に減少する(微分すれば真偽が分かるがTeX打ちが面倒なので計算していない)っぽいので,$n=2$のとき$\ds\frac{S_1}{S_2}$が常に$2$であることがそこから言えそうですね.

正直,極限の計算が3次の微小量まで行くとは思ってませんでした.一般化する前の問題は$n=3$のケースなのですが,元の問題では$\ds\frac{S_1}{S_2}\leq3$を示す問題もくっついていました.恐ろしい.

投稿日:622
更新日:727

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Ιδέα
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