以下のような変数変換を考える(物理に倣い重心系と呼びたい)
$n$個の変数($x_1$,$x_2$,$x_3$,...,$x_n$)に対して,次の$n+1$文字を定める
$s=$ $(\sum_{i=1}^{n} x_i )/n$,$i=1,2,3,...,n$に対して$t_i=x_i -s$
但し,$\sum_{i=1}^{n}t_i =0$である。(n文字=$n+1$文字と$1$条件式なので自由度はnのまま)
(しかし,n=2の場合に限っては,条件式から文字消去した方が見やすいと思うので,単に$ (x+y)/2,(x-y)/2 $と書く)
$n=2$の場合で少し試してみる
ex1)$実数x,yはx+y=10を保ち自由に動く.この時xyの取り得る範囲を求めよ。$
$s=(x+y)/2,t_1=(x-y)/2$より,$xy=s^2 -t_1^2$
問題文より,$s=10/2=5$なので,$xy=25-t_1^2$
$t_1^2$は任意の0以上の数値を取れるので,$xy \leq 25$
ex2)$実数x,yはx+y=10を保ち自由に動く.この時x^2+y^2の取り得る範囲を求めよ$
先と同様に,$s=(x+y)/2,t_1=(x-y)/2$より$x^2+y^2=(s+t_1)^2 +(s-t_1)^2=2(s^2+t_1^2)$
問題文より,$s=10/2=5$なので,$x^2+y^2=2(25+t_1^2)$
$t_1^2$は任意の0以上の数値を取れるので,$x^2+y^2 \geq 50$
さて,この置換がなぜ有効なのか,どんな点で見やすくなるのか考えてみると,大体次の2つになるのではないか
1.xとyの混ざった項,即ちxyがsとtのそれぞれの式に分離される
2.結局,$t_1^2$の値で大小を判定できる
このノートで書いた一番最初のn文字に関する置換では,2つ目を重視したつもりだが,一応1つ目の点について触れるなら,座標系の45°回転(正確には縮小も含んでいるが,そんな事を気にしすぎてもしょうがない)で交差項xy=1が$s^2-t^2=1$となるからと言えるのではなかろうか
(もしこの効能をもっと感じたいなら例えば楕円の式$6x^2+2xy+6y^2=5$などに置換を適用してみると良いし,次のサイトの問題をこの置換で解くのもよいと思う.)
このサイトの前半戦(3)
さて,本題に戻り2つ目の特徴について話したいと思う.
書いている本人も全てを理解しているなどとは思っていないのだが,敢えて現状の理解を言葉で説明するなら,$t_i=x_i-s$は,各文字$x_i$に対して平均sとの誤差を表していて,ex)のような条件の下では,これが対象式の最大最小を決めるから,と考えている
(確かに,最初はn=2のものでこの置換を試し,和と差としか見えていなかった.一般化するにあたりこの方向を定めた.)
(少なくとも,上の2例やこの後挙げる例に関しては正しいと思う.)
(sが平均=重心で,$t_i$が誤差,即ち重心から見た値と解釈できるので,重心系置換なんて呼び方はどうだろうか?)
ところで,上のex)では主役の1人であるsがそのまま固定されていた
この場合の対象式の取り得る範囲というのは,皆一度は扱った事があるだろうので,次の問題で単にsが固定されている場合でないものを見てみよう
ex3)非負の実数$a,b$が $a^2+b^2=1$を満たしながら動くとき,xの方程式$ x^4-2(a+b)x^2+(a-b)^2=0$ の解が取り得る範囲を求めよ
別に逆像法で解いても何の問題もない.
が,ここは素朴に解の公式と重心系置換で解く方法を紹介してみる.
解の公式より,$x^2=(a+b)+ \sqrt{(a+b)^2-(a-b)^2}=a+b+2\sqrt{ab}$または$x^2=a+b-2\sqrt{ab}$で,これを整理すると,$x^2=(\sqrt{a}+\sqrt{b})^2$または$x^2=(\sqrt{a}-\sqrt{b})^2$となるではないか!!
これは絶好のチャンスである.
$s=(\sqrt{a}+\sqrt{b})/2,t=(\sqrt{a}-\sqrt{b})/2$と置けば,xの取り得る値は,$a^2+b^2=\sqrt{a}^4+\sqrt{b}^4=1$の下での$2s,2t$の取り得る範囲とそれを原点対称にしたものの和集合であると分かる.
$a,b$ではなく,$ \sqrt{a},\sqrt{b}$を主役と見たわけだ.
$ \sqrt{a}^4+\sqrt{b}^4=1 $をs,tで表せば,$(s+t)^4+(s-t)^4=1$となり,パスカルの三角形を思い浮かべつつ展開すれば,$2s^4+12s^2t^2+2t^4=1$
右辺が定数で,左辺のいずれの項も非負の数の積なので,非負であることに注意.
$1\geq 2s^4$より,$2s\leq2^{3/4}$で,$ \sqrt{a}=\sqrt{b}=2^{-1/4}$で等号成立
一方,$a,b\geq0$より$s^2\geq t^2$
即ち$16t^4 \leq 2s^4+12s^2t^2+2t^4=1 \leq 16s^4$
よって$0\leq2|t|\leq1\leq2s$
$a,b$が連続的に変化することを踏まえて,$2s \in [1,2^{3/4}],2|t| \in[0,1]$.
即ち,解の範囲は$2s,2|t|$の動く範囲を和集合で取り,それを原点対称にしたものも合わせて[$-2^{3/4}$,$2^{3/4}$]である事がわかる.
もっと拡張しよう,主に自分用のメモだが使うかもしれない恒等式を以下に羅列しておき,今後何かの話になるかもしれない話を置いておく
$x_i=s+t_i$,$\sum_{i=1}^nt_i =0$より
$\sum_{i=1}^{n}x_i^2 =\sum_{i=1}^{n}(s+t_i)^2=ns^2+\sum_{i=1}^{n}t_i^2$
$2\sum_{i>j} x_ix_j=(\sum_{i=1}^{n}x_i)^2-\sum_{i=1}^{n}x_i^2$に注意して$2\sum_{i>j} x_ix_j=(ns)^2-ns^2-\sum_{i=1}^{n}t_i^2=n(n-1)s^2-\sum_{i=1}^{n}t_i^2$
x,yについて対称な多項式$F(x,y)$について,$G(s,t)=F((s+t)/2,(s-t)/2)$とすると,$x \leftrightarrow y$の変換は$t\leftrightarrow-t$の変換に対応し,$F(x,y)$がx,yについて対称だから,$F(x,y)=F(y,x)$に注意して$G(s,t)=G(s,-t)$,これより対称多項式Fは必ず$s,t^2$の多項式として書ける(これが先の例でtの奇数乗が無くなった理由と考えられるし,$t^2=u$とすれば次数も落とせる)