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本稿は、整数問題の代表的な考え方をコンパクトに整理するとともに、
整数を学びたいけれど、何を学べばよいのか分からない
という方へ、今後調べていくためのキーワードをまとめた記事です。
一つ一つの内容を完全に解説する百科事典ではありませんが、整数問題を学ぶうえでの確かな土台と地図になることを目指します。
本稿をご覧くださった皆さま、ごきげんよう。
フラワと申します。
本稿は「整数問題解法シリーズ」のコンパクト版です。
詳しい理論を一からすべて証明する記事というより、整数問題の全体像を眺め、
本稿は、もともと私の友人Aがその友人Bに整数を教えるにあたり、学習の指標となるものが欲しいという話から作成したものです。
そのため、因数分解や基本的な方程式などは一度学んだことがある方を主な対象としています。
一方で、整数問題にまだ自信のない方も、
本稿に出てくる言葉や考え方を少しずつ理解できるようになる
ことを一つの目標にしてもらえれば十分です。
なぜ、整数問題はほかの分野と区別され、特別な考え方が必要になるのでしょうか。
その大きな理由は、整数のもつ離散性にあります。
実数の世界では、$1$と$2$の間にも無数の数が存在します。しかし整数の世界では、$1$と$2$の間に整数は存在しません。
整数は数直線上に飛び飛びに並んでおり、異なる二つの整数の差の絶対値は必ず$1$以上です。
この「隙間」が整数問題における最大の武器になります。
例えば、実数$x$について
$$1\leq x\leq6$$
と分かっても、$x$は一つには定まりません。それどころか候補は無数にあります。
しかし$x$が整数なら、候補は
$$1,2,3,4,5,6$$
の六つしかありません。
このように、無限に見える候補を有限個へ落とすことを、本稿では絞り込みと呼びます。
整数問題では、与えられた条件から整数の候補を絞り込み、最後に残った候補が実際に条件を満たすかを確認する。
整数問題に現れるさまざまな技法も、その働きに注目すれば、結局はこの「絞り込み」を行っています。
いきなり技巧的な変形を探す前に、まず現在の条件を整理しましょう。
条件が$x,y,z$について対称なら、一般性を失うことなく
$$x\geq y\geq z$$
などとおける場合があります。
ただし、順序を付けて調べた後は、順列を戻す必要があるか、同じ値があるため重複が生じないかを確認しましょう。
複数の整数が現れたら、最大公約数を取り出すことで本質的な部分が見える場合があります。
例えば
$$x=da,\qquad y=db,\qquad \gcd(a,b)=1$$
とおけば、共通部分$d$と互いに素な部分$a,b$を分離できます。
実験は証明ではありませんが、
整数問題には、無限降下法、鳩の巣原理、素因数の指数に注目する方法など、さまざまな名前の付いた手法があります。
しかし、それらが整数をどのように絞り込んでいるかに注目すれば、すべての手法は次の三大解法のいずれか、または複数の組合せに含まれます。
積の形を作り、約数や素因数の構造から絞り込む。
整数の範囲を狭め、候補を有限個へ絞り込む。
整除関係や合同式を用い、取り得る形や剰余を絞り込む。
実際の入試問題では、三つがきれいに一つずつ出てくるわけではありません。
因数分解した後に不等式で因数の大小を比べ、さらに合同式で候補を消す、といったようにごちゃまぜになります。
まずは一つずつ見ていきましょう。
整数問題における因数分解の目的は、単に式をきれいにすることではありません。
$$\text{(未知数を含む整数)}\times\text{(未知数を含む整数)}=N$$
という形を作り、右辺$N$の約数から左辺の候補を絞る。
$N$が$0$でない一定の整数なら、その約数は有限個です。したがって、左辺の二つの因数としてあり得る組も有限個になります。
この背景にあるのが、素因数分解の一意性です。
正の整数$N\geq2$は、異なる素数$p_1,p_2,\ldots,p_r$と正の整数$e_1,e_2,\ldots,e_r$を用いて
$$N=p_1^{e_1}p_2^{e_2}\cdots p_r^{e_r}$$
と表せ、この表し方は素数の並べる順序を除いて一意です。
したがって$N$の正の約数は、各$p_i$の指数を$0$以上$e_i$以下から選ぶことで尽くされます。
特に、$N$の正の約数の個数は
$$(e_1+1)(e_2+1)\cdots(e_r+1)$$
です。
$N$が素数$p$なら、整数の範囲では因数は
$$\pm1,\ \pm p$$
に限られます。
$N=p^m$なら、正の約数は
$$1,p,p^2,\ldots,p^m$$
に限られます。
なお、右辺が$0$なら約数を列挙するのではなく、積が$0$であることから、少なくとも一方の因数が$0$であると場合分けします。
整数定数$a,b,c$に対し、
$$xy+ax+by=c$$
の両辺に$ab$を加えると、
$$xy+ax+by+ab=c+ab$$
より
$$(x+b)(y+a)=c+ab$$
となる。
これは、二変数一次の不定方程式で非常によく現れる変形です。
$$2x+2y-xy=0$$
を考えます。
$xy$の係数が正になるように全体を整理すると、
$$xy-2x-2y=0$$
です。ここで$4$を補えば、
$$xy-2x-2y+4=4$$
したがって
$$(x-2)(y-2)=4$$
となります。
私なりの見方は、
変数は因数の先頭に置き、変数同士の積に負号が付かないように調整する。あとは欲しい積になるように定数を補う。
というものです。
因数分解では「こうなってくれたらうれしいなあ」を大事にしてください。
同じ式でも、必ず因数分解だけを使う必要はありません。
先ほどの式は
$$x(y-2)=2y$$
とも書けます。
$y=2$は元の式を満たさないため、$y-2$で割って
$$x=\frac{2y}{y-2}=2+\frac{4}{y-2}$$
とできます。
$x$が整数であるためには、$y-2$が$4$の約数でなければなりません。
一方の文字について解いたときは、現れた分数が整数になる条件を必ず確認しましょう。
また、分母に文字を含む式で割る前には、分母が$0$になる場合を先に調べます。
$$ax^2+hxy+by^2+cx+dy=e$$
のような二次式を含む方程式では、主に次の三方向を考えます。
二次の部分
$$ax^2+hxy+by^2$$
が整数係数の範囲で因数分解できる場合、全体も
$$\text{(}x,y\text{の一次式)}\times\text{(}x,y\text{の一次式)}=\text{定数}$$
となる可能性があります。
ただし、二次の部分が常に因数分解できるわけではありません。
一方または両方の文字について平方完成し、
$$A^2+B^2=N$$
や
$$A^2-B^2=N$$
の形を作ります。
和の場合は各平方が$0$以上であることから範囲を絞れます。差の場合は
$$A^2-B^2=(A-B)(A+B)$$
とさらに因数分解できることがあります。
例えば$x$について
$$A(y)x^2+B(y)x+C(y)=0$$
と見ます。
$A(y)=0$となる場合は別に調べます。$A(y)\neq0$で整数解$x$をもつなら、判別式は
$$D=B(y)^2-4A(y)C(y)=(2A(y)x+B(y))^2$$
となるため、$D$は$0$以上の平方数でなければなりません。
ただし、$D$が平方数であることは普通は必要条件にすぎません。解の公式の分母で割り切れるか、得られた値が元の条件を満たすかまで確認しましょう。
$$2x^2+9xy-5y^2+4x+9y=15$$
を考えます。
まず二次の部分は
$$2x^2+9xy-5y^2=(x+5y)(2x-y)$$
と因数分解できます。
そこで
$$(x+5y+A)(2x-y+B)$$
という形を予想します。一次の項の係数を比較すると$A=1,B=2$となり、
$$2x^2+9xy-5y^2+4x+9y=(x+5y+1)(2x-y+2)-2$$
です。
したがって元の方程式は
$$(x+5y+1)(2x-y+2)=17$$
となり、$17$の約数から候補を絞れます。
連続する$k$個の整数の積は、$k!$の倍数である。
連続する整数がすべて正で、最初の整数を$m$とすると、
$$\frac{m(m+1)\cdots(m+k-1)}{k!}={}_{m+k-1}C_k$$
は整数です。
途中に$0$を含む場合は積が$0$なので明らかです。すべて負の場合も、符号を除けば連続する正の整数の積に直せます。
任意の自然数$n$に対して、$n^3+2n+3$が$3$の倍数であることを示します。
$$n^3+2n+3=(n-1)n(n+1)+3(n+1)$$
と変形できます。
$(n-1)n(n+1)$は連続する三整数の積なので$3$の倍数であり、$3(n+1)$も$3$の倍数です。
したがって、その和である$n^3+2n+3$も$3$の倍数です。
ここでは$n(n+1)(n+2)$よりも$(n-1)n(n+1)$の方が、
$$(n-1)(n+1)=n^2-1$$
と計算しやすく、元の$n^3$へ合わせやすくなっています。
まさに、連続する整数の積を無理やり作って帳尻合わせです。
例えば
$$n^3+1=p^m$$
なら、左辺を
$$n^3+1=(n+1)(n^2-n+1)$$
と因数分解する方向があります。
一方で
$$p^m-1=n^3$$
と移項し、指数$m$の性質に応じて$p^m-1$を因数分解する方向もあります。
どちらが効くかは問題によります。一つの形に固執せず、複数の方向を試しましょう。
整数問題における不等式の主な目的は、次の三つです。
問題文に不等式がなくても、定義や正負から自分で作れます。
例えば、床関数について
$$\lfloor x\rfloor\leq x<\lfloor x\rfloor+1$$
ですから、
$$x-1<\lfloor x\rfloor\leq x$$
が得られます。
また、$a,b,c$について条件が対称なら、一般性を失わないように
$$a\geq b\geq c$$
とおき、最大のもの・最小のものに注目できます。
各項が$0$以上なら、和の一部を捨てることで下から評価できます。
また、正の整数$a,b$がともに$2$以上なら
$$ab-a-b=(a-1)(b-1)-1\geq0$$
より
$$ab\geq a+b$$
です。等号は$a=b=2$のときに限ります。
「和より積の方が大きくなりやすい」という感覚は、条件を確認したうえで使いましょう。
自然数$m$に対して
$$m^2< m^2+1<(m+1)^2$$
です。
したがって$m^2+1$は、隣り合う二つの平方数の間にあるため平方数ではありません。
自然数$m$に対して
$$2^m<2^m+1<2^{m+1}$$
です。
したがって$2^m+1$は$2$の累乗数ではありません。
より一般に、ある整数が隣り合う二つの$k$乗数の間にあることを示せれば、その整数は$k$乗数ではありません。
整数問題では、片方が多項式、もう片方が指数関数や階乗となることがあります。
底$a,r$を$a>1,r>1$の固定された実数、次数$d$を固定された正の整数とすると、十分大きな自然数$n$に対して
$$\log_a n< n^d< r^n< n!< n^n$$
となります。
大切なのは、この並びを条件なしで使うことではなく、
どちらが最終的に速く大きくなるかを予想し、必要な範囲で不等式として証明する
ことです。
証明には、差を取る、比を取って$1$と比較する、数学的帰納法を使う、実数の関数として微分する、といった方法があります。
非負の実数$a,b$についての相加相乗平均の関係
$$\frac{a+b}{2}\geq\sqrt{ab}$$
や、実数$a,b,x,y$についてのコーシー・シュワルツの不等式
$$(a^2+b^2)(x^2+y^2)\geq(ax+by)^2$$
も、整数の範囲を絞るために使われます。
また、絶対値について
$$|a+b|\leq|a|+|b|$$
であることも基本です。
有名不等式は、それを使うこと自体が目的ではありません。等号がいつ成立するかまで確認し、整数条件と組み合わせましょう。
正の整数$a,b$について、$a$が$b$の約数なら$a\leq b$です。
したがって、式から「非常に大きな数が非常に小さな正の数の約数である」と分かれば、それだけで矛盾になることがあります。
因数分解や最大公約数の議論の後に、不等式が最後の一押しとなることも多いです。
ここには、
整数$a,b$を$m$で割った余りが等しいことを
$$a\equiv b\pmod m$$
と書きます。これは$a-b$が$m$の倍数であることと同じです。
合同式では、両辺を足す、引く、掛ける、同じ正の整数乗をする、といった操作ができます。
一方、通常の等式と同じ感覚で割り算をすることはできません。
例えば
$$ac\equiv bc\pmod m$$
から$c$を消して
$$a\equiv b\pmod m$$
とするには、少なくとも$c$と$m$が互いに素であることなどの確認が必要です。
例えば、任意の整数$n$は
$$n\equiv0,\pm1\pmod3$$
のいずれかです。
これを二乗すると符号が消え、
$$n^2\equiv0,1\pmod3$$
となります。
$0,1,2$と書くより$0,\pm1$と書くことで、二乗したときに同じ剰余になる構造が見えやすくなっています。
もちろん、常に$\pm$で書かなければならないわけではありません。符号の対称性を見せたいときに使いましょう。
法$m\geq3$で平方数を考えると、$1$と$-1$の平方が同じになるため、平方数の剰余が$m$種類すべて現れることはありません。
特に次の表は頻出です。
| 法 | 平方数の剰余 |
|---|---|
| $3$ | $0,1$ |
| $4$ | $0,1$ |
| $5$ | $0,\pm1$ |
| $8$ | $0,1,4$ |
法$3$と法$4$では平方数の剰余が$0,1$しかないため、まず覚えてしまってもよいでしょう。
立方数については、例えば
$$n^3\equiv0,\pm1\pmod7$$
が成り立ちます。
合同式では、法を何にするかが重要です。
以下は候補を探すための指針です。どれか一つを機械的に使うのではなく、問題の構造に合わせて選びます。
偶数の素数が$2$しかないため、素数問題では特に強力です。
平方数や指数を含む式でも、偶奇だけで候補が半分に減ることがあります。
例えば右辺が$7^n$なら、法$7$や法$7^2$などを考える候補があります。
ただし「$7$が見えたから法$7$」で終わらず、法$7$で左右がどのように簡単になるかまで確認します。
平方数なら法$3,4,5,8$など、立方数なら法$7$などが候補になります。
指数を含む式では、累乗の剰余が短い周期をもつ法を探します。
式が$n$個あるとき、法$n$は一つの候補です。
ただし、式が$n$個あるだけで法$n$が使えるわけではありません。
法$n$で見たときに、それらの式がすべての剰余類を覆う、または必ず一つが$0$になることを確認する必要があります。
例えば
$$t-10,\quad t,\quad t+10$$
は法$3$で
$$t-1,\quad t,\quad t+1$$
と合同です。これは連続する三整数と同じ剰余をもち、三つのうちちょうど一つが$3$の倍数になります。
偶数乗なら符号が消え、奇数乗なら符号が残ります。
したがって$0,\pm1$に整理できる法は、平方・立方・指数を含む問題で見通しをよくしてくれます。
法$2,3,4,5,7,8,9,11$など、小さな法で剰余を書き出してみるのも有効です。
ただし、最終的には「なぜその法が効いたのか」を言葉にできるようにしましょう。
法$3$だけ、法$4$だけでは候補が残っても、両方を満たす条件を合わせると大きく絞れることがあります。
$5$以上の素数$p$は
$$p\equiv\pm1\pmod6$$
を満たします。
ただし逆は成り立ちません。$6k\pm1$の形であることは素数であるための必要条件にすぎません。
また、ある素数候補$N$が法$p$で$0$となったとき、すぐに合成数と結論してはいけません。
$N$が素数なら
$$N=p$$
という例外が残ります。
$p$を素数、$a$を整数とすると、
$$a^p\equiv a\pmod p$$
が成り立つ。
特に$a$が$p$の倍数でないなら、
$$a^{p-1}\equiv1\pmod p$$
である。
指数が非常に大きいときでも、法$p$では指数を小さく整理できることがあります。
実戦では、一つの手法だけにこだわりません。
整数性、正負、$0$、偶奇、大小、対称性、分母などを確認する。
一方の文字について解く、最大公約数を取り出す、因数分解する、平方完成する。
不等式、約数、合同式、素因数の指数などを使う。
別の法、互いに素、判別式、増加の速さなどを組み合わせる。
残った候補を元の条件へ戻し、実際に成立するものだけを答える。
例えば、
因数分解で約数候補を出す
↓
不等式で因数の大小を制限する
↓
合同式で候補を消す
↓
元の式へ代入する
という流れもあります。
逆に、合同式で偶奇を決めてから因数分解が可能になることもあります。
解法名を当てるゲームではなく、今ある候補を次にどう減らすかを考えましょう。
ここからは、整数問題でよく現れる対象ごとに、主なキーワードをまとめます。
すべてを今すぐ使いこなす必要はありません。知らない言葉に出会ったら、今後調べるための入口にしてください。
素数$p$が正の整数$N$の素因数分解にちょうど$m$回現れることを考えます。ただし、$m$は$0$以上の整数です。
$$v_p(N)=m$$
と表します。
これは
$$N=p^m k$$
と書け、$k$が$p$の倍数でないことを意味します。
正の整数$A,B$と自然数$n$について、
$$v_p(AB)=v_p(A)+v_p(B),$$
$$v_p(A^n)=n\,v_p(A)$$
が成り立つ。
等式の両辺が等しいなら、両辺に含まれる$p$の個数も一致します。
また
$$p^m\leq N< p^{m+1}$$
なら、$N$に含まれる$p$は高々$m$個です。
階乗に含まれる素数の個数には、後述するルジャンドルの公式が使えます。
整数$q$に対して、
$$\gcd(a,b)=\gcd(b,a-qb)$$
である。
共通の約数は$a,b$だけでなく、$a,b$の整数係数の一次結合も割り切ります。
よく使う事実として、次があります。
整数$A,B$について$B\neq0$とします。
$$\frac{A}{B}$$
が整数なら、$B$は$A$の約数です。
また、
$$0<|A|<|B|$$
なら$A/B$は整数ではありません。
分数が整数であると分かっているなら、その値は$0$であるか、絶対値が$1$以上です。
さらに、二つの既約な非整数の分数
$$\frac{a}{b},\qquad\frac{c}{d}\qquad(b,d\geq2)$$
について、$b,d$が互いに素なら、その和は整数になりません。
部分分数分解によって、整数条件を複数の分母の条件へ分けられることもあります。
整数$N\geq0$について、
$$\sqrt{N}\text{が整数}\Longleftrightarrow N\text{が平方数}$$
です。
さらに、$\sqrt{N}$が有理数なら、実は$\sqrt{N}$は整数です。
したがって、判別式や平方完成から平方根が現れたときは、中身が平方数になる条件を調べます。
漸化式を法$m$で考えると、各項の剰余は$m$通りしかありません。
一定個数の直前の剰余から次の剰余が一意に決まるなら、それらを一つの「状態」として考えられます。状態は有限個なので、同じ状態が再び現れた後は同じ変化を繰り返します。
したがって、多くの場合で剰余列はやがて周期的になります。
また、
$$\gcd(a_n,a_{n-1})$$
を漸化式によって
$$\gcd(a_{n-1},a_{n-2})$$
へ落とし、最初の項まで戻す方法も頻出です。
本稿では、$x$以下の最大の整数を
$$\lfloor x\rfloor$$
と書きます。
定義から
$$\lfloor x\rfloor\leq x<\lfloor x\rfloor+1$$
であり、
$$x=\lfloor x\rfloor+r\qquad(0\leq r<1)$$
とおけます。
また$t\geq0$なら、$0< y\leq t$を満たす整数$y$の個数は$\lfloor t\rfloor$です。
したがって$\lfloor f(n)\rfloor$を、曲線$y=f(x)$の下にある格子点の個数として捉えられる場合があります。
まず具体値を入れて、階段状の変化を観察することも有効です。
$$ {}_nC_k={}_nC_{n-k}\qquad(0\leq k\leq n), $$
$$ k\,{}_nC_k=n\,{}_{n-1}C_{k-1}\qquad(1\leq k\leq n), $$
$$ {}_nC_k=\frac{n(n-1)\cdots(n-k+1)}{k!}\qquad(1\leq k\leq n). $$
$$ {}_nC_k={}_{n-1}C_{k-1}+{}_{n-1}C_k\qquad(1\leq k\leq n-1) $$
さらに、$p$が素数で$1\leq k\leq p-1$なら、
$$ {}_pC_k$$
は$p$の倍数です。
二項定理
$$(1+x)^n={}_nC_0+{}_nC_1x+{}_nC_2x^2+\cdots+{}_nC_nx^n$$
をそのまま使うほか、両辺を微分・積分したり、$x=1,-1$などを代入したりすることで、二項係数の和を求められます。
有理数は整数$a,b$を用いて
$$\frac{a}{b}\qquad(b\neq0)$$
と表せます。必要なら$a,b$を互いに素としてよいです。
ここからは、標準的な整数問題の先へ進むためのキーワードです。
名前を覚えることが目的ではありません。「どのような場面で使われるものか」を軽く知り、興味をもったものから調べてみてください。
いくつかの対象を、それより少ない個数の箱へ入れると、少なくとも一つの箱には二つ以上の対象が入るという原理です。
整数問題では、余りを箱とみなす使い方が非常に多いです。
有限個しかないと仮定し、それらすべての積に$1$を加えた数を考える古典的な背理法です。
素数問題における「既知の素数をすべて避ける数を作る」という発想の原型でもあります。
少なくとも一方が$0$でない整数$a,b$の最大公約数を$d$とすると、
$$ax+by=d$$
を満たす整数$x,y$が存在します。
一次不定方程式、逆元、互いに素の証明などにつながります。
複数の法に関する合同条件を、一つの合同条件へまとめる理論です。
特に法どうしが互いに素な場合に強力です。
素数$p$が$n!$に現れる回数は
$$v_p(n!)=\left\lfloor\frac{n}{p}\right\rfloor+\left\lfloor\frac{n}{p^2}\right\rfloor+\left\lfloor\frac{n}{p^3}\right\rfloor+\cdots$$
で与えられます。右辺は途中から$0$になるため、実際には有限和です。
解が存在すると仮定し、その解からさらに小さい正の整数解を作ります。
同じ操作を繰り返せば正の整数が際限なく小さくなることになり、矛盾します。
正の整数には最小のものが存在するという離散性を、真正面から利用する方法です。
平方数でない正の整数$d$に対する
$$x^2-dy^2=1$$
のような方程式です。
平方完成、因数分解、無理数、漸化式など多くの話題とつながります。
二変数の対称な二次方程式を一方の文字についての二次方程式と見て、解と係数の関係から別の整数解を作る方法です。
新しく得た正の整数解の方が小さいことを示し、無限降下法へつなげます。
$a^n-b^n$や$a^n+b^n$に、ある素数$p$が何回現れるかを求める補題です。
公式だけでなく、素数$p$、指数$n$、$a,b$の整除条件を確認して使う必要があります。
法$m$におけるすべての剰余を一度ずつ代表するものが完全剰余系です。
そのうち$m$と互いに素な剰余だけを集めたものが既約剰余系です。
オイラーの$\varphi$関数、オイラーの定理、逆元などへつながります。
$1$以上$n$以下の整数のうち、$n$と互いに素なものの個数を$\varphi(n)$と表します。
$a$と$n$が互いに素なら、
$$a^{\varphi(n)}\equiv1\pmod n$$
が成り立ちます。
連続する整数の積や二項係数に現れる素因数を扱う定理です。
二項係数が素数の累乗になる場合など、非常に難しい整数問題と関係します。
以下は直接の解法というより、整数の世界を広げてくれる話題です。
自分自身を除く正の約数の和が、その数自身に等しい正の整数です。
例えば$6$は
$$1+2+3=6$$
より完全数です。
自然数$n$に対する
$$2^n-1$$
の形の数をメルセンヌ数と呼びます。これが素数なら、指数$n$も素数でなければなりません。
$0$以上の整数$n$に対する
$$2^{2^n}+1$$
の形の数をフェルマー数と呼びます。
素数、因数分解、指数の剰余などと深く関わります。
$$\frac{{}_{2n}C_n}{n+1}$$
で表される整数です。
場合の数に現れる数列ですが、二項係数の整数性や約数の問題として眺めることもできます。
十進法で
$$1,11,111,1111,\ldots$$
と表される数です。
等比数列、因数分解、合同式、素数問題につながります。
二つの正の立方数の和として、順序の入れ替えを同一視して異なる$n$通りに表される正の整数のうち、最小のものを$n$番目のタクシー数と呼びます。
有名な例として、二番目のタクシー数
$$1729=1^3+12^3=9^3+10^3$$
があります。
座標平面上で$x,y$が整数となる点を格子点といいます。
整数解の個数を格子点の個数として数えたり、図形の内部・辺上の格子点と面積を結び付けたりできます。
発展事項として、ピックの定理などがあります。
$$a^2+b^2=c^2$$
を満たす正の整数の組$(a,b,c)$をピタゴラス数と呼びます。
$a,b,c$が互いに素な原始ピタゴラス数なら、必要に応じて$a,b$を入れ替えることで、互いに素で偶奇の異なる自然数$u,v$を用いて
$$a=u^2-v^2,\qquad b=2uv,\qquad c=u^2+v^2\qquad(u>v)$$
と表せます。
一般のピタゴラス数は、これらを同じ正の整数倍することで得られます。
十進法だけでなく、二進法、三進法などで整数を表すと、桁の和、倍数判定、繰り上がりなどが見えやすくなる場合があります。
さらに発展的な表し方として階乗進法などがあります。
整数係数多項式$f(x)$と異なる整数$a,b$について、$a-b$は$f(a)-f(b)$の約数です。
これは値の差が因数分解できるためであり、
$$a-b$$
と
$$f(a)-f(b)$$
の整除関係を調べられます。
有限差分、整数値多項式、チェビシェフ多項式なども関連するキーワードです。
二項定理を多項式の恒等式として微分・積分することで、二項係数を含む和を求められます。
整数問題、場合の数、数列、微積分が交わる地点です。
ここからは、ここまでに登場した考え方を実際に使う問題です。
解法名を先に当てるのではなく、
現在の条件から、次に何を使えば候補が減るか
を考えてみてください。
$x^2+x-(a^2+5)=0$を満たす自然数$a,x$の組をすべて求めよ。
$$x^2+2y^2+2z^2-2xy-2xz+2yz-5=0$$
を満たす正の整数の組$(x,y,z)$をすべて求めよ。
$$a^3-b^3=65$$
を満たす整数の組$(a,b)$をすべて求めよ。
$n^3-7n+9$が素数となるような整数$n$をすべて求めよ。
$x,y,z$は正の整数とする。
$(1)$
$$\frac1x+\frac1y+\frac1z=1$$
を満たす組$(x,y,z)$は何通りあるか。
$(2)$ $r$を正の有理数とする。このとき
$$\frac1x+\frac1y+\frac1z=r$$
を満たす正の整数の組$(x,y,z)$は有限個であることを示せ。
ただし、存在しない場合も有限個、すなわち$0$個とみなす。
$a,b$を自然数、$p$を素数とする。次の式を満たす組をすべて求めよ。
$(1)$
$$a!+b!+3=p$$
$(2)$
$$a!+b!+3=p^2$$
$2$以上の自然数$n$に対し、$n$と$n^2+2$がともに素数となる$n$をすべて求めよ。
素数$p,q$を用いて
$$p^q+q^p$$
と表される素数をすべて求めよ。
次の条件を満たすものをすべて求めよ。
$(1)$ $p,2p+1,4p+1$がいずれも素数となる素数$p$
$(2)$ $q,2q+1,4q-1,6q-1,8q+1$がいずれも素数となる素数$q$
$$a!+b!=2c!$$
を満たす自然数の組$(a,b,c)$をすべて求めよ。
正の整数$n$に対して、
$$5n^4+14n^2+9$$
は平方数にならないことを示せ。
$p$を$3$以上の素数とする。整数$a,b,c,d$が
$$
\begin{cases}
a+b+c+d=0,\\
ad-bc+p=0,\\
a\geq b\geq c\geq d
\end{cases}
$$
を満たすとき、$a,b,c,d$をそれぞれ$p$を用いて表せ。
$a-b-8$と$b-c-8$がともに素数となるような素数の組$(a,b,c)$をすべて求めよ。
$n$を正の整数とする。
$(1)$
$$n\,{}_{2n}C_n=(n+1)\,{}_{2n}C_{n-1}$$
を示し、${}_{2n}C_n$が$n+1$の倍数であることを示せ。
以下、
$$a_n=\frac{{}_{2n}C_n}{n+1}$$
とおく。
$(2)$ $n\geq4$のとき、$a_n>n+2$を示せ。
$(3)$ $a_n$が素数となる$n$をすべて求めよ。
$p,q$を異なる素数とする。
$$2^{p-1}-1=pq^2$$
を満たす組$(p,q)$をすべて求めよ。
ここからは、複数の考え方を組み合わせる問題が中心です。難易度も少し上がります。
自然数$m,n$と素数$p$について、
$$ {}_{2n}C_n=p^m $$
を満たす組$(m,n,p)$をすべて求めよ。
$2$以上の$3$の倍数でない整数$n$について、$n^2-1$は立方数にならないことを示せ。
正の整数$n$の正の約数の個数を$f(n)$とする。
$(1)$ 次の式を満たす正の整数$x,y$の組の個数を$f(n)$を用いて表せ。
$$\frac1x+\frac1y=\frac1n$$
$(2)$ 不等式
$$f(n^2)<2n$$
を示せ。
$(3)$ $m$を正の偶数とする。すべての辺の長さが整数で、一辺の長さが$m$である直角三角形の個数は
$$\frac{2m}{3}$$
未満であることを示せ。
$$2n^2+1,\qquad3n^2+1,\qquad6n^2+1$$
がいずれも平方数となる自然数$n$は存在しないことを示せ。
$$\frac{n^2+1}{2m},\qquad\sqrt{2^{n-1}+m+4}$$
がともに整数となるような正の整数の組$(m,n)$をすべて求めよ。
出典のある問題については、大学名・年度などで検索すれば、大抵は解答が見つかると思います。
自作問題などについては、今後優先的に解説を追加する予定です。
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ここまで読んでくださり、ありがとうございます。
本稿は、整数問題に現れるすべての理論を一つずつ完全に解説したものではありません。
しかし、