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反復指数関数の積分列と2周期軌道

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問題

次の関数列を考える。
$$ f_0(x)=1,\qquad f_n(x)=x^{f_{n-1}(x)}\quad(n\ge1). $$
さらに
$$ F_n=\int_0^1 f_n(x)\,dx $$
と定める。
数列 $(F_n)$ の収束性を調べ、偶数部分列 $(F_{2n})$ と奇数部分列 $(F_{2n+1})$ の極限を求めよ。

一見すると、各 $x$ における無限べき塔
$$ x^{x^{x^{\cdot^{\cdot^\cdot}}}} $$
の収束を調べればよいように見える。しかし、実際には $x< e^{-e}$ で反復が一つの固定点に収束せず、偶数項と奇数項が異なる2周期軌道へ近づく。
そのため、数列 $(F_n)$ 自体は収束しない。収束するのは偶数部分列 $(F_{2n})$ と奇数部分列 $(F_{2n+1})$ である。
本稿では、

  1. $(F_n)$ が収束しないこと
  2. 偶数部分列・奇数部分列がそれぞれ収束すること
  3. それぞれの極限を初等関数の広義積分として明示すること
    を示す。

0. $x=0$ における定義について

漸化式をそのまま $x=0$ に適用すると、途中で $0^0$ が現れる。
そこで厳密には、まず $0< x\le1$
$$ f_0(x)=1,\qquad f_n(x)=x^{f_{n-1}(x)} $$
と定義し、$x=0$ では右極限によって連続拡張する。
実際、
$$ \lim_{x\to0+}f_{2n}(x)=1,\qquad \lim_{x\to0+}f_{2n+1}(x)=0 $$
であるから、
$$ f_{2n}(0)=1,\qquad f_{2n+1}(0)=0 $$
とすればよい。
一点での値は積分値には影響しないため、以下では主に $0< x\le1$ で議論する。

1. 偶数項と奇数項の単調性

$0< x<1$ を固定し、
$$ T_x(y)=x^y $$
と置く。
$0< x<1$ なので、$T_x$$y$ に関して狭義単調減少である。
最初の2項は
$$ f_0(x)=1,\qquad f_1(x)=x $$
であり、
$$ f_0(x)\ge f_1(x) $$
が成り立つ。
単調減少性から、不等号の向きは反復するたびに反転する。したがって
$$ f_{2n}(x)\ge f_{2n+1}(x) $$
である。
また、$T_x^2=T_x\circ T_x$ は単調増加なので、
$$ f_{2n+2}(x)=T_x^2(f_{2n}(x)), \qquad f_{2n+3}(x)=T_x^2(f_{2n+1}(x)). $$
初期値を比較すると、
$$ f_2(x)=x^x\le1=f_0(x), $$
$$ f_3(x)=x^{x^x}\ge x=f_1(x). $$
よって帰納的に
$$ 1=f_0(x)\ge f_2(x)\ge f_4(x)\ge\cdots $$
および
$$ x=f_1(x)\le f_3(x)\le f_5(x)\le\cdots $$
を得る。
したがって、各 $x\in(0,1)$ に対して
$$ a(x):=\lim_{n\to\infty}f_{2n}(x), \qquad b(x):=\lim_{n\to\infty}f_{2n+1}(x) $$
が存在し、
$$ 0\le b(x)\le a(x)\le1 $$
である。
漸化式の極限を取れば、
$$ a(x)=x^{b(x)},\qquad b(x)=x^{a(x)}. $$

2. 分岐点 $x=e^{-e}$

写像
$$ T_x(y)=x^y $$
の固定点を $q$ とすると、
$$ q=x^q $$
である。
これは
$$ x=q^{1/q} $$
と同値である。
固定点での微分は
$$ T_x'(q)=x^q\log x=q\log x. $$
$q=x^q$ より
$$ \log x=\frac{\log q}{q} $$
だから、
$$ T_x'(q)=\log q. $$
したがって固定点が反復に対して安定であるための条件は
$$ |T_x'(q)|\le1, $$
すなわち
$$ -\log q\le1. $$
よって
$$ q\ge e^{-1}. $$
これを $x=q^{1/q}$ に戻すと、
$$ x\ge \left(e^{-1}\right)^e=e^{-e}. $$
したがって、分岐点は
$$ \boxed{x=e^{-e}} $$
である。

$e^{-e}\le x\le1$ の場合

この範囲では偶数項と奇数項が同じ固定点へ収束し、
$$ a(x)=b(x)=q(x) $$
となる。
ここで $q(x)$
$$ q=x^q $$
を満たす解である。

$0< x< e^{-e}$ の場合

この範囲では固定点は反発的である。
仮に $a(x)=b(x)=q$ ならば、全反復列 $f_n(x)$$q$ に収束する。しかし $q< e^{-1}$ なので
$$ |T_x'(q)|=-\log q>1. $$
したがって $q$ の十分小さい近傍では、平均値の定理により
$$ |T_x(y)-q|>|y-q| $$
となる。固定点に等しくない軌道がこの近傍内で $q$ へ収束することはできない。
よって
$$ a(x)>b(x) $$
であり、
$$ a(x)=x^{b(x)},\qquad b(x)=x^{a(x)} $$
を満たす非自明な2周期軌道が生じる。

3. 元の数列 $(F_n)$ は収束しない

非収束の証明

$0< x< e^{-e}$ では
$$ a(x)>b(x) $$
である。
また、
$$ 0\le f_n(x)\le1 $$
なので、優収束定理により
$$ \lim_{n\to\infty}F_{2n} =\int_0^1a(x)\,dx, $$
$$ \lim_{n\to\infty}F_{2n+1} =\int_0^1b(x)\,dx. $$
したがって
$$ \lim_{n\to\infty}\left(F_{2n}-F_{2n+1}\right) =\int_0^1\bigl(a(x)-b(x)\bigr)\,dx. $$
被積分関数は $(0,e^{-e})$ 上で正なので、
$$ \int_0^1\bigl(a(x)-b(x)\bigr)\,dx>0. $$
ゆえに偶数部分列と奇数部分列の極限は一致せず、
$$ \boxed{(F_n)\text{ は収束しない}} $$
ことが分かる。

4. 固定点領域 $e^{-e}\le x\le1$ の積分

この範囲では
$$ a(x)=b(x)=q(x) $$
である。
固定点方程式
$$ q=x^q $$
から
$$ x=q^{1/q}. $$
$x=e^{-e}$ のとき $q=e^{-1}$$x=1$ のとき $q=1$ なので、
$$ q\in[e^{-1},1]. $$
微分すると、
$$ \log x=\frac{\log q}{q}, $$
$$ \frac{1}{x}\frac{dx}{dq} =\frac{1-\log q}{q^2}. $$
したがって
$$ \frac{dx}{dq} =q^{1/q}\frac{1-\log q}{q^2}. $$
よって固定点領域の共通部分は
$$ \begin{aligned} I_{\mathrm{fix}} &:=\int_{e^{-e}}^1q(x)\,dx\\ &=\int_{1/e}^1 q\cdot q^{1/q}\frac{1-\log q}{q^2}\,dq\\ &=\boxed{ \int_{1/e}^1 q^{1/q}\frac{1-\log q}{q}\,dq }. \end{aligned} $$
数値的には
$$ I_{\mathrm{fix}} \approx0.625445810588788. $$

5. 2周期領域 $0< x< e^{-e}$ のパラメータ表示

この範囲では
$$ a>b>0 $$
であり、
$$ a=x^b,\qquad b=x^a. $$
両辺の対数を取ると、
$$ \log a=b\log x,\qquad \log b=a\log x. $$
したがって
$$ a\log a=b\log b. $$
ここで
$$ r:=\frac{a}{b}>1 $$
と置く。すなわち $a=rb$ である。
すると
$$ rb\log(rb)=b\log b. $$
$b>0$ なので、
$$ r\log r+r\log b=\log b. $$
よって
$$ (r-1)\log b=-r\log r, $$
$$ \boxed{ b=r^{-r/(r-1)} }. $$
さらに $a=rb$ より、
$$ \boxed{ a=r^{-1/(r-1)} }. $$
次に $a=x^b$ を用いると、
$$ \log x=\frac{\log a}{b}. $$
ここで
$$ \log a=-\frac{\log r}{r-1}, \qquad \frac1b=r^{r/(r-1)} $$
だから、
$$ \log x =-\frac{r^{r/(r-1)}\log r}{r-1}. $$
そこで
$$ \Phi(r):= \frac{r^{r/(r-1)}\log r}{r-1} $$
と置けば、
$$ \boxed{x=e^{-\Phi(r)}}. $$
$r\to1+$ のとき $x\to e^{-e}$$r\to\infty$ のとき $x\to0$ である。

6. 変数変換のヤコビアン

$$ x(r)=e^{-\Phi(r)} $$
なので、
$$ -\frac{dx}{dr} =e^{-\Phi(r)}\Phi'(r). $$
ここで直接計算すると、
$$ \boxed{ \Phi'(r) = r^{r/(r-1)} \frac{(r-1)^2-r(\log r)^2} {r(r-1)^3} }. $$
なお、$r>1$ では
$$ (r-1)^2-r(\log r)^2>0 $$
である。
実際、$t=\log r>0$ と置けば、
$$ \frac{r-1}{\sqrt r} =e^{t/2}-e^{-t/2} =2\sinh\frac t2>t=\log r. $$
したがって $\Phi'(r)>0$ であり、$x(r)$ は単調減少する。

7. 偶数部分列の極限

2周期領域では
$$ a=r^{-1/(r-1)}. $$
したがって
$$ \int_0^{e^{-e}}a(x)\,dx = \int_1^\infty r^{-1/(r-1)} e^{-\Phi(r)}\Phi'(r)\,dr. $$
$\Phi'(r)$ を代入すると、
$$ r^{-1/(r-1)}r^{r/(r-1)}=r $$
であるから、
$$ \int_0^{e^{-e}}a(x)\,dx = \int_1^\infty \exp\left( -\frac{r^{r/(r-1)}\log r}{r-1} \right) \frac{(r-1)^2-r(\log r)^2} {(r-1)^3}\,dr. $$
固定点領域の積分を加えると、
$$ \boxed{ \begin{aligned} \lim_{n\to\infty}F_{2n} ={}& \int_{1/e}^1 q^{1/q}\frac{1-\log q}{q}\,dq\\ &+ \int_1^\infty \exp\left( -\frac{r^{r/(r-1)}\log r}{r-1} \right) \frac{(r-1)^2-r(\log r)^2} {(r-1)^3}\,dr. \end{aligned} } $$
数値的には、
$$ \boxed{ \lim_{n\to\infty}F_{2n} \approx0.676714273771813 }. $$

8. 奇数部分列の極限

2周期領域では
$$ b=r^{-r/(r-1)}. $$
したがって
$$ \int_0^{e^{-e}}b(x)\,dx = \int_1^\infty r^{-r/(r-1)} e^{-\Phi(r)}\Phi'(r)\,dr. $$
今度は
$$ r^{-r/(r-1)}r^{r/(r-1)}=1 $$
なので、
$$ \int_0^{e^{-e}}b(x)\,dx = \int_1^\infty \exp\left( -\frac{r^{r/(r-1)}\log r}{r-1} \right) \frac{(r-1)^2-r(\log r)^2} {r(r-1)^3}\,dr. $$
よって、
$$ \boxed{ \begin{aligned} \lim_{n\to\infty}F_{2n+1} ={}& \int_{1/e}^1 q^{1/q}\frac{1-\log q}{q}\,dq\\ &+ \int_1^\infty \exp\left( -\frac{r^{r/(r-1)}\log r}{r-1} \right) \frac{(r-1)^2-r(\log r)^2} {r(r-1)^3}\,dr. \end{aligned} } $$
数値的には、
$$ \boxed{ \lim_{n\to\infty}F_{2n+1} \approx0.631309370801988 }. $$

9. 二つの極限の差

以上から、
$$ \begin{aligned} &\lim_{n\to\infty}F_{2n} -\lim_{n\to\infty}F_{2n+1}\\ &\qquad= \int_1^\infty \exp\left( -\frac{r^{r/(r-1)}\log r}{r-1} \right) \frac{(r-1)^2-r(\log r)^2} {r(r-1)^2}\,dr. \end{aligned} $$
数値的には、
$$ \boxed{ \lim_{n\to\infty} \left(F_{2n}-F_{2n+1}\right) \approx0.045404902969825 }. $$
この値が正であることが、元の数列 $(F_n)$ が収束しないことを定量的に示している。

10. 結論

結論

関数列
$$ f_0(x)=1,\qquad f_n(x)=x^{f_{n-1}(x)} $$
から定まる積分列
$$ F_n=\int_0^1f_n(x)\,dx $$
について、元の数列は収束しない。
その原因は、反復写像 $y\mapsto x^y$
$$ x=e^{-e} $$
を境に挙動を変えることにある。

  • $e^{-e}\le x\le1$ では、一つの固定点へ収束する。
  • $0< x< e^{-e}$ では、偶数項と奇数項が異なる2周期軌道へ収束する。
    その結果、
    $$ \boxed{ \lim_{n\to\infty}F_{2n} \approx0.676714273771813 } $$
    および
    $$ \boxed{ \lim_{n\to\infty}F_{2n+1} \approx0.631309370801988 } $$
    となる。
    この問題の面白さは、各 $f_n$ が極めて単純な反復で定義されているにもかかわらず、その積分列の極限を求めるには、固定点の安定性、周期軌道、単調収束、優収束定理、さらに非自明なパラメータ変換が必要になる点にある。
投稿日:1日前
更新日:1日前
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桜武
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