本記事はpart1です。
nを2以上の整数とするとき
$$Sn=\sum_{k=1}^{n}\frac{1}{k}は整数値を取らないことを示せ。
$$
直感的には当たり前(?)かもしれないですが、示すのは一筋縄では行かないようです。色々実験してみましょう.
Snを既約分数で表す時、
$$
S4=\frac{25}{12},
S5=\frac{137}{60},
S6=\frac{147}{60},
S7=\frac{1099}{420},
S8=\frac{2303}{840}
$$
となります.実験より、分子=奇数、分母=偶数ではないかと推測できそうです。
実際にこれらを証明していきます.
まず分母=偶数を示します。既約分数で表した時の分母は2〜nの最小公倍数ですから、この時点で分母=偶数であることが言えます。
さて本題ですが、分子=奇数であることを証明していきます。
2≦k≦nにおいて
$$
Tk=\frac{k}{L}
$$
とおくとき、分子は
$$
分子=1+\sum_{k=2}^{n}Tk
$$
の形で表されます
Tkに関してもう少し深く実験を進めていくと、
n=4では Tkは順に6,4,3
n=5では Tkは順に30,20,15,12
n=6では Tkは順に30,20,15,12,10
n=7では Tkは順に210,140,105,84,70,60
n=8では Tkは順に420,280,210,168,140,120,105
どうでしょうか?1つだけ奇数で他は偶数になっていそうですよね。これが正しければ分子が奇数であることがわかるため、分母の偶奇性の違いにより題意が示されます。これを示しましょう! .
Tkはただ一つのkで奇数値を取り、その他の場合では偶数である。
上の実験で奇数になっている項は
n=4,5,6,7の時はk=4
n=8の時はk=8
kが2の冪乗の時にTkが奇数になることが予想できそうです。
2の素因数に注目すれば、最大公約数Lとkの2の素因数が等しくなる時はTkは奇数になりますよね.問題はそのようなkがただ一つしかないということです、これを示します.
nに対して、nを超えぬ最大の2の冪乗数は$$
2^{m}とおけます。$$
$$
2^{m}の定め方より、
$$$$
2^{m}≦n ≦2^{m+1}$$が成立することになるが、これは補題の成立を意味します。$$2^{m}の倍数はいずれも$$$
2^{m} 以外nより大きいためです。$
したがって補題は示され、これによって題意が成り立つことが言えます。
①因数分解
②不等式を立てて範囲を絞る
③余りや素因数に注目する
受験の整数問題は基本この3原則の組み合わせで解けることが多いはずです。今回は2の素因数に注目しました。