複素数$z$を
$$
z=\sqrt{t|t-2|} + t i
$$
と定める.$t$が全ての実数を動くとき,複素数平面において点$z$が描く図形を図示せよ.ただし,$i$は虚数単位である.
この問題は,僕が受験生時代に受けた代ゼミの模試(確か,京大模試だったはず)で出題された問題を改良したものです.元になった問題の答えは(当時の僕にとっては)ヘンテコな曲線になっていて,模試中に「これ本当に合ってる?」と何度も見直して,時間を浪費してしまった記憶があります(それでも計算ミスしてたので,それ以降「見直し」というものが信用できなくなりました).
この問題も「答えをヘンテコ曲線にしてやるぜ!」というモチベーションで作りました.かなり人工的な,THE大学受験数学という側面が強い問題です.
$z$の根号内の正負で場合分けする.
(i) $t \leq 0$のとき,$z = \{t + \sqrt{t(t - 2)}\} i$.ここで$f(t) = t + \sqrt{t (t - 2)} \ (t \leq 0)$とおくと$$ f'(t) = 1 + \frac{t - 1}{\sqrt{t (t - 2)}} = \frac{- 1}{\sqrt{t (t - 2)} \{\sqrt{t (t - 2)} + (1 - t)\}} < 0.$$ よって$f(t)$は単調減少で,$\displaystyle \lim_{t \to - \infty} f(t) = \lim_{t \to - \infty} \dfrac{2}{1 + \sqrt{1 - 2/t}} = 1$および$f(0) = 0$.したがって,点$z$は複素数平面上で$L_1 = \{z \in \mathbb{C} \mid z = k i, \ 0 \leq k < 1\}$を描く.
(ii) $0 < t \leq 2$のとき,$z = \sqrt{t(2 - t)} + t i$で,$\Re(z) = \sqrt{t (2 - t)}$かつ$\Im(z) = t$.$x := \Re(z)$,$y := \Im(z)$とおくと
$$
\exists t \in (0,\ 2] \ \mathrm{s.t.} \
\begin{cases}
x = \sqrt{t (2 - t)}, \\
y = t
\end{cases}
\iff
x^2 = y(2 - y) \ \text{かつ} \ x \geq 0 \ \text{かつ} \ 0 < y \leq 2
$$
よって点$z$は複素数平面上で$L_2 = \{z \in \mathbb{C} \mid x^2 + (y - 1)^2 = 1,\ x \geq 0,\ 0 < y \leq 2\}$を描く.
(iii) $t > 2$のとき,$z = \sqrt{t(t - 2)} + t i$で,$\Re(z) = \sqrt{t (t - 2)}$かつ$\Im(z) = t$.$x := \Re(z)$,$y := \Im(z)$とおくと
$$
\exists t \in (0,\ 2] \ \mathrm{s.t.} \
\begin{cases}
x = \sqrt{t (t - 2)}, \\
y = t
\end{cases}
\iff
x^2 = y(y - 2) \ \text{かつ} \ x \geq 0 \ \text{かつ} \ y > 2
$$
よって点$z$は複素数平面上で$L_3 = \{z \in \mathbb{C} \mid x^2 - (y - 1)^2 = - 1,\ x \geq 0,\ y > 2\}$を描く.
以上より,$t$がすべての実数を動くとき,点$z$が複素数平面上で描く図形$L$は$L = L_1 \cup L_2 \cup L_3$.これを図示すると以下を得る.
$L$の概形