Rarita-Schwinger場の定義について勉強したのでノートを書きます。物理と数学の両方の文脈で述べます。なお私のRS場に対する理解は不完全であり、間違いがあるかもしれません(おおよそは合ってるとは思いますが)。RS場は一言で言ってしまえば、捻じれDirac作用素の固有3/2スピノルのことです。
convention
次元擬リーマンスピン多様体
から定まるリーマン接続
スピン束
スピン接続
Clifford代数の既約表現の生成子()
o.n.frame
o.n.co-frame
Clifford積は
ベクトルバンドルの滑らかな切断の集合
(ただしは適当な内積)
登場する場はコンパクト台を持つかまたはベクトル場の発散の積分が消える程度の性質を持つとする
添え字の上げ下げはで行う
とする。は、を用いて、
と表されます。さらににはリーマン接続から自然に接続が定まり、これをと書くことにすると
となるので、と書くことにします。
また、に作用するねじれDirac作用素を
と定義します。通常のDirac作用素はと書きます。
mathematical RS場
スピン幾何の文脈でのRS場の定義を述べる。まずを
とする。このとき、ベクトル束としての直和分解
が成り立つ。またPenrose作用素は次のように定義される。
作用素
をPenrose作用素(またはtwistor作用素)と呼ぶ。
定義からであるからであることが分かる。よっての形式的随伴作用素が定義される。
そしてねじれDirac作用素のへの制限としてRS作用素が定義される。
捻じれDirac作用素の分解とRS作用素の定義
分解に関して、
が成り立つ。ここではPenrose作用素、はの形式的随伴作用素である。をRS作用素と呼ぶ。
証明する前に公式を準備しておきます。
捻じれDirac作用素の分解
とすると、である。ここでは
で与えられる。
(i) の証明
であるので、
となり、
であるから、
が得られる。よって
(ii)の証明
に対して、
となることから従う。ただし3式目の第一項目に補題3を使った。
(iii)の証明
(1)より
であり、
であることから従う。
これらのことからに対して、
が成り立つことが分かる。以上の準備の下でRS場を以下のように定義する。
mathematical RS場
が
を満たすとき、を(mathematical)Rarita-Schwinger場という。
physical RS場
物理の文脈ではRS場は以下のように定義されます。
physical RS場
が
を満たすとき、(physical)Rarita-Schwinger場という。
なお物理ではをMajoranaかWeylスピノルとすることが普通ですがこの記事内ではその条件は無くてもよいので課しません。またphysical RS場のLagrangianは
で与えられます。ここではスピン不変内積です。
となることが簡単に分かるので、
となります。補題3との定義より
となります。
さらにLorentz-likeなゲージとしてを取り、拘束条件として、を要請することを物理ではよくやります(この処方は次の節で論じる変分法での定式化を考えると妥当なものであることが分かります)。かつのとき、となるので結局
となります。従って次の命題が得られました。
がmath RS場であることとphys RS場であることは同値である。
ついでにの明示的な表示も分かりました。
変分法での定式化
上でに対して、作用汎関数
を考えます。この作用汎関数の停留点としてRS場が特徴づけられることを見ます。はSpin群の既約表現であると仮定します。すなわちという条件です。
として変分を行います。Dirac作用素の形式的自己随伴性を使うと
となります。よって任意のに対してが停留点を与えるためには
でなければなりません。
次に、前の節で導いた
を使い、に注意すると、
となります。ここでです。なので、
となります。このときがどのような場であっても作用汎関数の値が変わらないことが分かります。よっての停留点を与えるの集合はの不定性があることになります。そこでとなる停留点の代表を選ぶことにします。
以上のことからの停留点を与える場は
を満たすことが分かりました。これはRS場です。