今回はとある特殊関数の公式を証明する際に見つけた、階乗がたくさん出てくる和について紹介していきたいと思います。
具体的には以下の式を示すことが目標になります。
$$ \sum_{l = 0}^{\lfloor m/2 \rfloor} \frac{(-1)^l (2n - 2l)!}{l!(n-l)!(m - 2l)!} = \frac{2^m (2n - m)!}{m! (n-m)!},(m=0,1,\dots,n). $$
この式は変形されたBessel関数の半整数次の初等関数表示の公式を証明する際に発見しました。(ただこの式は全然その証明に使えなかった。悲しい。)
個人的に、このように入り組んだ階乗の交代和が閉形式で表せるというのは驚きなのですが、もっと一般的な枠組みでは自然に導かれたりするのでしょうか…?
証明はただの帰納法です。
左辺を$I(n,m)$、右辺を$J(n,m)$とおいて両者が一致することを示していきます。
$\lfloor x \rfloor$は$x$の整数部分($ x$以下最大の整数)です。
$$I(n,0) =\frac{(-1)^0 (2n - 0)!}{0!(n-0)!(0 - 2 \cdot 0)!} =\frac{(2n)!}{n!} =\frac{2^0 (2n - 0)!}{0! (n-0)!}=J(n,0).$$
なので一致します。
$$I(n,1) =\frac{(-1)^0 (2n - 0)!}{0!(n-0)!( 1- 2 \cdot 0)!} =\frac{(2n)!}{n!} =\frac{2^1 (2n - 1)!}{1! (n-1)!}=J(n,1).$$
なので一致します。
$n$についての帰納法で証明します。
具体的には、「すべての$m=0,\dots,n$で$I(n,m)=J(n,m)$のとき,$ I(n+1,m)=J(n+1,m)$ならば$I(n+1,m+1)=J(n+1,m+1)$」を示します。
これを示すことが出来れば、$m=0$のときは一致するので、まず$I(0,0)=J(0,0),I(1,0)=J(1,0)$から$I(1,1)=J(1,1)$が分かり,$n=1$ のときの成立が示せます。
続いて$n=1$のときの成立から$I(2,0)=J(2,0)$を合わせて$I(2,1)=J(2,1)$が分かり、さらにそのことから$I(2,2)=J(2,2)$も分かるので$n=2$のときの成立も示せます
という感じですべての$n,m$にて$I,J$が一致することが分かります。
まずは$I$に関する以下の関係式を導きます。
$$ I(n+1,m) = (m+1)I(n+1,m+1) + 2 I(n,m-1) $$
この式を用いれば帰納法で示すのは簡単です。しかしながら$m=0$のときはこの式の解釈が面倒くさいので,$m=1$の場合を上で別個に示しておきました。
$$
\begin{align}
I(n+1,m) &= \sum_{l=0}^{\lfloor m/2 \rfloor} \frac{(-1)^l (2n+2 - 2l)!}{l!(n+1-l)!(m - 2l)!} \\
& = \sum_{l=0}^{\lfloor m/2 \rfloor} \frac{(-1)^l (2n+2 - 2l)! (m+1 - l)}{l!(n+1-l)!(m + 1 - 2l)!} \\
& = (m+1) \sum_{l=0}^{\lfloor m/2 \rfloor} \frac{(-1)^l (2n+2 - 2l)!}{l!(n+1-l)!(m + 1 - 2l)!}
+
2\sum_{l=1}^{\lfloor m/2 \rfloor} \frac{(-1)^{l-1} (2n+2 - 2l)! (m+1 - l)}{(l-1)!(n+1-l)!(m + 1 - 2l)!}
\\
\end{align}
$$
ここまでで大分目標の式に近づいていますが、ここから少し面倒な確認をします。
$m+1$が掛けられている項と$I(n+1,m+1)$の差を$A$,$2$が掛けられている項と$I(n,m-1)$との差を$B$として,$(m+1)A + 2 B =0$を示すというのが必要なんですね。
そうすると,
$$
I(n+1,m)
=
(m+1)I(n+1,m+1) +2 I(n,m-1) - (m+1)A - 2B = (m+1)I(n+1,m+1) +2 I(n,m-1)
$$
となって示せるというわけです。
$$
A=I(n+1,m+1)-\sum_{l=0}^{\lfloor m/2 \rfloor} \frac{(-1)^l (2n+2 - 2l)!}{l!(n+1-l)!(m + 1 - 2l)!}
=\sum_{l=\lfloor m/2 \rfloor +1}^{\lfloor (m+1)/2 \rfloor} \frac{(-1)^l (2n+2 - 2l)!}{l!(n+1-l)!(m + 1 - 2l)!}
$$
というように$A$を定めると、$m$が偶数のときはこれは$0$となることが分かります。(最右辺についてはそもそも$m$が偶数のとき、定義されません。)
$m$が奇数のときは
$$
A = \frac{(-1)^{\frac{m+1}{2}} (2n -m)!}{(\frac{m+1}{2})!(n+1-\frac{m+1}{2})!}
$$
となりますね。
$$
B=I(n,m-1)-\sum_{l=1}^{\lfloor m/2 \rfloor} \frac{(-1)^{l-1} (2n - 2l)!}{(l-1)!(n-l)!(m + 1 - 2l)!}
=\sum_{l=\lfloor m/2 \rfloor}^{\lfloor (m-1)/2 \rfloor} \frac{(-1)^l (2n- 2l-2)!}{l!(n-l-1)!(m - 1 - 2l)!}
$$
というように$A$を定めると、$m$が偶数のときはこれは$0$となることが分かります。(最右辺についてはそもそも$m$が偶数のとき、定義されません。)
$m$が奇数のときは
$$
B = \frac{(-1)^{\frac{m-1}{2}} (2n -m - 1)!}{(\frac{m-1}{2})!(n-\frac{m-1}{2})!}
$$
となります。
$m$が偶数のときは$A$も$B$も0なので,$(m+1)A+2B=0$は成り立ちます。$m$が奇数のとき、
$$
\frac{2B}{m+1} = -\frac{(-1)^{\frac{m+1}{2}}(2n-m)!}{(\frac{m+1}{2})!(n+1-\frac{m+1}{2})!}
=-A
$$
なので,これで$(m+1)A+2B=0$が分かりました。
同時に示すべき関係式も完全に証明できたことになります。
さて、帰納法で示すべきことは、「すべての$m=0,\dots,n$で$I(n,m)=J(n,m)$のとき,$I(n+1,m)=J(n+1,m)$ならば $I(n+1,m+1)=J(n+1,m+1)$」でした。
上で示したこと及び帰納法の仮定から、
$$
I(n+1,m+1) = \frac{1}{m+1} (I(n+1,m) - 2I(n,m-1))= \frac{1}{m+1} (J(n+1,m) - 2J(n,m-1))
$$
が成り立つので、あとは上式の右辺が$J(n+1,m+1)$と等しいことを示せばよいです。
$$ \begin{align} \frac{1}{m+1} (J(n+1,m) - 2J(n,m-1)) &=\frac{1}{m+1}(\frac{2^m (2n+2-m)!}{m!(n+1-m!)} -2 \frac{2^{m-1} (2n-m+1)!}{(m-1)!(n-m+1)!})\\ &=\frac{2^m (2n - m +1)!}{(m+1)!(n-m)!} \left(\frac{(2n - m +2) - m}{n+1-m} \right)\\ &=\frac{2^{m+1} (2(n+1) - (m +1))!}{(m+1)!((n+1)-(m+1))!}\\ &=J(n+1,m+1) \end{align}\\ $$
これにて冒頭の式を証明することができました。
いかがでしたか?
個人的にはこの記事の証明だと、この等式が成り立つ背景などが分からないので、もっと一般化したりだとか、エレガントな証明を見つけたりしたかったのですが…。
残念ながらしばらく考えても思いつかなかったので、とりあえずこの記事はここで終わりです。
何か見つかった場合には続編を書きたい。