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積分の体系化(Ⅰ)

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第1章 積分の基本操作

第0章では、積分を既知形へ帰着させるという考え方について述べた。本章では、そのための基本操作と、よく知られた置換・変換を扱う。
重要なのは、操作の方法だけでなく、元の積分をどのような形に変えたいのか、そのためになぜその操作を選ぶのかを理解することである。

1.1 置換積分の原理

置換積分は、合成関数の微分法則を逆向きに利用したものである。
$$ \frac{d}{dx}F(g(x))=F'(g(x))g'(x) $$
ここで、
$$ F'(x)=f(x) $$
とすれば、
$$ \int f(g(x))g'(x)\,dx=F(g(x))+C $$
を得る。
実際、
$$ t=g(x) $$
と置けば、
$$ dt=g'(x)\,dx $$
なので、
$$ \int f(g(x))g'(x)\,dx=\int f(t)\,dt $$
となる。
例えば、
$$ I=\int\frac{2x}{1+x^2}\,dx $$
を考える。
分母を一つの変数として扱えば、簡単な有理関数になりそうである。そこで分母を微分すると、
$$ (1+x^2)'=2x $$
となり、分子と一致する。
したがって、
$$ t=1+x^2 $$
と置けば、
$$ I=\int\frac{1}{t}\,dt $$
$$ =\ln(1+x^2)+C $$
となる。
ここでの着想は、単に分母を置き換えることではない。分母を新しい変数にしたとき、分子がその微分因子として処理でき、既知の積分形になると予測しているのである。
より一般には、次のような形を積分したいなら、
$$ \int f(g(x))h(x)\,dx $$
まず関数の内部を新しい変数として扱うことを考え、残りの因子がその微分とどう関係するかを確認すればよい。
ただし、置換積分の目的は合成関数の内部を取り出すことに限らない。根号を取り除いたり、三角関数を有理化したりする場合にも、同じ置換積分の原理を利用できる。

1.2 部分積分の原理と瞬間部分積分

部分積分は、積の微分法則を逆向きに利用したものである。
$$ \frac{d}{dx}\{f(x)g(x)\}=f'(x)g(x)+f(x)g'(x) $$
これを積分して整理すると、
$$ \int f(x)g'(x)\,dx =f(x)g(x)-\int f'(x)g(x)\,dx $$
を得る。
置換積分では合成関数の構造を利用したが、部分積分では積の構造を利用する。
ここで重要なのは、一方を微分し、もう一方を積分した結果、新しく現れる積分が簡単になるかどうかである。
例えば、
$$ I=\int x\ln x\,dx $$
を考える。ただし、変数は正の範囲とする。
対数関数を微分すると分母に変数が現れる。一方、一次式を積分すれば二次式になるため、両者を掛けたときに約分が期待できる。
そこで、対数関数を微分し、一次式を積分する。
$$ I=\frac{x^2}{2}\ln x -\int\frac{x^2}{2}\cdot\frac{1}{x}\,dx $$
$$ =\frac{x^2}{2}\ln x-\frac{x^2}{4}+C $$
部分積分では「どちらを微分するか」だけでなく、微分と積分を行った後、どのような積が残るかまで考えたい。

瞬間部分積分

次の積分を考える。
$$ I=\int x^2e^x\,dx $$
指数関数は微分しても形を保ち、多項式は微分すると次数が下がる。このことから、原始関数も指数関数と多項式の積になっていると予測できる。
まず、
$$ F_0(x)=x^2e^x $$
を微分すると、
$$ F_0'(x)=(x^2+2x)e^x $$
となる。
求めたい被積分関数より余計な項が現れたので、その分を打ち消すように修正する。
$$ F_1(x)=(x^2-2x)e^x $$
$$ F_1'(x)=(x^2-2)e^x $$
今度は定数項が不足している。そこで、さらに修正する。
$$ F_2(x)=(x^2-2x+2)e^x $$
$$ F_2'(x)=x^2e^x $$
したがって、
$$ I=(x^2-2x+2)e^x+C $$
を得る。
このように、積の微分によって現れる余計な項を順に打ち消し、原始関数を直接構成する方法を、ここでは瞬間部分積分と呼ぶ。
通常の部分積分と異なる原理ではなく、部分積分の繰り返しを原始関数の予測として処理しているのである。
この計算は、次の表で整理することもできる。
$$ \begin{array}{c|c|c} \text{符号}&\text{微分する関数}&\text{積分する関数}\\ \hline +&x^2&e^x\\ -&2x&e^x\\ +&2&e^x\\ &0& \end{array} $$
対応する項を符号に従って加えると、
$$ x^2e^x-2xe^x+2e^x $$
となる。
これは反復部分積分を表形式に整理する tabular integration と呼ばれる方法である。表を使えば手順が分かりやすいが、慣れれば頭の中で同じ処理ができる。
一般に、多項式を、
$$ P(x)=a_nx^n+\cdots+a_1x+a_0 $$
とすれば、
$$ \int P(x)e^x\,dx =e^x\sum_{k=0}^n(-1)^kP^{(k)}(x)+C $$
となる。
もっとも、この公式を新たに覚える必要はない。微分で生じる余計な項を打ち消していけば、同じ結果を得られるからである。
なお、定積分でも考え方は同じである。瞬間部分積分によって原始関数を求めた後、積分区間の両端の値を代入すればよい。
瞬間部分積分は、多項式と指数関数の積だけに限らない。原始関数の構造を予測し、微分によって係数や項を調整するという考え方は、第2章でさらに一般化する。

1.3 部分積分の反復と漸化式

巡回型の部分積分

部分積分を繰り返すと、元の積分が再び現れる場合がある。これは cyclic integration by parts(巡回型の部分積分)と呼ばれることがある。
例えば、
$$ I=\int e^x\sin x\,dx $$
を考える。
指数関数は微分・積分しても形を保ち、三角関数は微分によって正弦と余弦を行き来する。そのため、部分積分を繰り返せば元の積分に戻ることが予想できる。
実際、
$$ I=e^x\sin x-\int e^x\cos x\,dx $$
さらに、
$$ \int e^x\cos x\,dx=e^x\cos x+I $$
であるから、
$$ 2I=e^x(\sin x-\cos x) $$
となり、
$$ I=\frac{e^x}{2}(\sin x-\cos x)+C $$
を得る。
ここでは、部分積分によって積分を消すのではなく、元の積分に戻ることを利用し、その積分についての方程式を作っている。
元の積分が再び現れても、そこに至るまでに別の項が得られていれば、それらを整理することで積分値を求められる。

Wallis(ウォリス)積分

部分積分を繰り返すもう一つの方法として、同じ種類の積分同士の関係を利用することがある。
例えば、
$$ I_n=\int_0^{\frac{\pi}{2}}\sin^n x\,dx $$
を考える。ただし、指数は非負整数とする。
この積分はWallis(ウォリス)積分として知られている。
ここで目指したいのは、正弦関数の冪を含む積分を、次数の小さい同種の積分へ帰着させることである。
そこで正弦関数を一つ分離する。
$$ I_n=\int_0^{\frac{\pi}{2}}\sin^{n-1}x\sin x\,dx $$
後ろの正弦関数を積分すると余弦関数が現れ、前の正弦関数の冪を微分しても余弦関数が現れる。
したがって、部分積分後には余弦関数の二乗が現れる。この二乗は、
$$ \cos^2x=1-\sin^2x $$
によって正弦関数だけに戻せる。
つまり、部分積分の選び方は、最初から同じ種類の積分へ戻すことを見込んだものである。
実際、2以上の整数について部分積分すると、
$$ I_n=(n-1)\int_0^{\frac{\pi}{2}}\sin^{n-2}x\cos^2x\,dx $$
となる。
恒等式を利用すれば、
$$ I_n=(n-1)(I_{n-2}-I_n) $$
なので、
$$ I_n=\frac{n-1}{n}I_{n-2} $$
を得る。
初期値は、
$$ I_0=\frac{\pi}{2},\qquad I_1=1 $$
であり、これらから任意の非負整数に対する積分値を順次求められる。
この漸化式からはWallisの積公式などにもつながるが、ここでは同種の積分へ帰着させるという部分積分の使い方を理解しておけば十分である。
巡回型の部分積分では元の積分そのものに戻り、Wallis積分では指数の異なる同種の積分へ戻る。両者は異なる処理だが、部分積分によって積分同士の関係を作るという点で共通している。

1.4 基本的な置換と有理関数の積分

冪・根号

例えば、次の二つの分数冪が同時に現れたとする。
$$ x^{\frac{1}{2}},\qquad x^{\frac{1}{3}} $$
それぞれに根号が含まれるため、そのままでは多項式として扱いにくい。
そこで、両方を整数冪にできないかと考える。
指数の分母は2と3なので、その最小公倍数を利用し、
$$ x=t^6 $$
と置けば、変数が正の範囲で、
$$ x^{\frac{1}{2}}=t^3,\qquad x^{\frac{1}{3}}=t^2 $$
となる。
複数の有理数指数が現れたときには、その分母の最小公倍数を用いて一括して整数冪に変えられる。
ただし、根号を消すだけで積分が簡単になるとは限らない。置換後の微分因子も考慮する必要がある。
例えば、
$$ I=\int\frac{1}{\sqrt{x}+x}\,dx $$
なら、
$$ t=\sqrt{x} $$
と置くことで、
$$ x=t^2,\qquad dx=2t\,dt $$
となり、
$$ I=\int\frac{2t}{t+t^2}\,dt $$
$$ =2\int\frac{1}{1+t}\,dt $$
$$ =2\ln(1+\sqrt{x})+C $$
を得る。ただし、変数は正の範囲とする。
ここでは平方根が消えるだけでなく、微分によって現れた因子が分母と約分されている。

指数・対数

次の積分を考える。
$$ I=\int\frac{1}{1+e^x}\,dx $$
分母に指数関数が現れているが、指数関数全体を一つの文字として見れば、単なる一次式になる。
そこで、
$$ t=e^x $$
と置くと、
$$ dx=\frac{1}{t}\,dt $$
であるから、
$$ I=\int\frac{1}{t(1+t)}\,dt $$
となる。
部分分数分解によって、
$$ I=\int\left(\frac{1}{t}-\frac{1}{1+t}\right)dt $$
$$ =x-\ln(1+e^x)+C $$
を得る。
指数関数を一つの変数として扱うことで、指数関数の有理式を通常の有理関数へ帰着させている。
同様に、対数関数を含む積分では、
$$ t=\ln x $$
という置換も考えられる。
この場合、
$$ x=e^t,\qquad dx=e^t\,dt $$
となるため、対数関数の冪を多項式として扱える。
例えば、
$$ I=\int(\ln x)^2\,dx $$
なら、
$$ I=\int t^2e^t\,dt $$
となる。
これは瞬間部分積分によって処理できる既知形なので、
$$ I=x\{(\ln x)^2-2\ln x+2\}+C $$
を得る。
このように、一つの置換によって、別の既知の積分技法を適用できる形へ変えることもできる。

三角関数

例えば、
$$ I=\int\sin^3x\cos x\,dx $$
を考える。
正弦関数の三乗に余弦関数が掛けられているので、正弦関数を一つの変数として扱えば、三乗の部分を多項式にできそうである。
さらに、正弦関数を微分すると余弦関数が現れる。
そこで、
$$ t=\sin x $$
と置けば、
$$ dt=\cos x\,dx $$
より、
$$ I=\int t^3\,dt $$
$$ =\frac{\sin^4x}{4}+C $$
となる。
一方、
$$ I=\int\frac{1}{1+\cos x}\,dx $$
では、分母の微分因子が分子に存在しない。
そこで、直接置換する前に、分母を既知の微分形へ変えられないかを考える。
半角公式から、
$$ 1+\cos x=2\cos^2\frac{x}{2} $$
であるから、
$$ I=\frac{1}{2}\int\frac{1}{\cos^2\frac{x}{2}}\,dx $$
となる。
ここで正接関数の微分形が現れたので、
$$ I=\tan\frac{x}{2}+C $$
を得る。
三角関数が現れたからといって、必ず三角置換を行う必要はない。恒等式による変形だけで既知形に帰着できる場合もある。

有理関数の積分

有理関数の積分は、多くの置換積分の最終的な帰着先となる。
一般に、
$$ R(x)=\frac{P(x)}{Q(x)} $$
という有理関数を考える。
まず、多項式の除算によって分子の次数を分母より低くできる。残った真分数については、部分分数分解が基本となる。
例えば、
$$ I=\int\frac{1}{x^2-1}\,dx $$
では、分母を因数分解すると、
$$ x^2-1=(x-1)(x+1) $$
となる。
一次式の逆数は対数関数の微分形なので、それらの和へ分解することを考える。
実際、
$$ \frac{1}{x^2-1} =\frac{1}{2}\left(\frac{1}{x-1}-\frac{1}{x+1}\right) $$
より、
$$ I=\frac{1}{2}\ln\left|\frac{x-1}{x+1}\right|+C $$
となる。
また、分子が分母の微分と関係している場合には、部分分数分解の前に対数関数の微分形を取り出せる。
例えば、
$$ \int\frac{2x+1}{x^2+x+3}\,dx =\ln(x^2+x+3)+C $$
である。
分母に実数範囲で因数分解できない二次式が現れる場合には、平方完成によって逆三角関数の微分形へ帰着できる。

Ostrogradsky–Hermite(オストログラツキー=エルミート)の簡約法

分母に重複した因子が現れる場合、原始関数の有理関数部分を先に取り出す方法がある。
例えば、
$$ I=\int\frac{1}{(1+x^2)^2}\,dx $$
を考える。
分母が二乗になっているので、分母が一乗の有理関数を微分すれば、この形に近づけそうである。
そこで、
$$ F(x)=\frac{x}{1+x^2} $$
と置くと、
$$ F'(x)=\frac{1-x^2}{(1+x^2)^2} $$
となる。
分母は一致したので、残った分子の差を調整する。
$$ \frac{1}{(1+x^2)^2} =\frac{1}{2}\left(\frac{x}{1+x^2}\right)' +\frac{1}{2(1+x^2)} $$
したがって、
$$ I=\frac{x}{2(1+x^2)}+\frac{1}{2}\arctan x+C $$
を得る。
この例では、有理関数の一部を別の有理関数の微分として取り出し、残りの積分を簡単にしている。
Ostrogradsky–Hermiteの簡約法は、この操作を一般の有理関数へ体系化したものである。重複因子を持つ分母を簡約し、残りをより扱いやすい有理関数の積分へ帰着させる。
ここでは一般的な計算アルゴリズムまで踏み込まず、原始関数に含まれそうな有理関数を予測し、それを微分して残りの積分を簡単にするという発想を押さえておけばよい。

1.5 有名な置換・変換

ここからは、よく知られた置換や変換について、その式をどのように導くのか、どのような場合に利用するのかを考える。

三角置換

例えば、
$$ \sqrt{a^2-x^2} $$
という平方根を考える。ただし、定数は正とする。
平方根の内部には二つの平方の差がある。これを完全平方に変えられれば、平方根を簡単にできそうである。
ここで、
$$ 1-\sin^2\theta=\cos^2\theta $$
という恒等式が使える。
この恒等式は、直角三角形の三平方の定理に対応している。
平方根を直角三角形の辺として見れば、角度によって二辺を表せる。
斜辺の長さを一定と考えれば、角度を用いて、
$$ x=a\sin\theta $$
と表せる。
したがって、
$$ \sqrt{a^2-x^2}=a\cos\theta $$
となる。ただし、余弦が非負となる範囲で考える。
例えば、
$$ I=\int\frac{1}{\sqrt{a^2-x^2}}\,dx $$
なら、
$$ dx=a\cos\theta\,d\theta $$
であるから、
$$ I=\int1\,d\theta $$
$$ =\arcsin\frac{x}{a}+C $$
を得る。
この置換では、平方根が完全平方になり、さらに微分因子と約分できている。
同様に、
$$ \sqrt{a^2+x^2} $$
には、
$$ 1+\tan^2\theta=\sec^2\theta $$
を利用して、
$$ x=a\tan\theta $$
という置換が考えられる。
また、
$$ \sqrt{x^2-a^2} $$
には、
$$ \sec^2\theta-1=\tan^2\theta $$
を利用して、
$$ x=a\sec\theta $$
と置く方法もある。
いずれも、平方根の内部にある二次式を三角関数の恒等式で完全平方にすることが目的である。

双曲線関数による置換

三角置換と同じ目的は、双曲線関数でも達成できる。
双曲線関数は、
$$ \sinh t=\frac{e^t-e^{-t}}{2} $$
$$ \cosh t=\frac{e^t+e^{-t}}{2} $$
と定義され、
$$ \cosh^2t-\sinh^2t=1 $$
を満たす。
例えば、
$$ \sqrt{a^2+x^2} $$
という平方根なら、
$$ 1+\sinh^2t=\cosh^2t $$
を利用できる。
そこで、
$$ x=a\sinh t $$
と置けば、
$$ \sqrt{a^2+x^2}=a\cosh t $$
$$ dx=a\cosh t\,dt $$
となる。
例えば、
$$ I=\int\frac{1}{\sqrt{a^2+x^2}}\,dx $$
なら、
$$ I=\int1\,dt $$
である。
ここで、
$$ e^t=\sinh t+\cosh t $$
より、
$$ I=\ln(x+\sqrt{a^2+x^2})+C $$
を得る。定数に依存する差は積分定数に吸収した。
三角置換と双曲線関数による置換は、平方根を完全平方にするという目的が共通している。どちらを使うかは、平方根の内部の符号や微分因子の形によって判断すればよい。

Weierstrass(ワイエルシュトラス)置換

次のような積分を考える。
$$ I=\int\frac{1}{2+\sin x+\cos x}\,dx $$
正弦と余弦が同時に現れるので、一方をそのまま新しい変数にしても、もう一方の処理が問題になる。
そこで、正弦と余弦を同時に有理式で表せないかと考える。
この発想を理解するには、単位円を見るとよい。

単位円上の点と固定点を結ぶ直線の傾きを、新しい変数として使う。図は単位円を等倍率で拡大したもので、直線と円の交点は正確に対応している。
単位円上の点を、
$$ P=(\cos x,\sin x) $$
とする。
この点と、
$$ A=(-1,0) $$
を結ぶ直線の傾きを、新しい変数とする。
$$ t=\frac{\sin x}{1+\cos x} $$
半角公式によって、
$$ t=\tan\frac{x}{2} $$
である。
ここで、直線の方程式を、
$$ Y=t(X+1) $$
と書く。
単位円の方程式、
$$ X^2+Y^2=1 $$
に代入すると、
$$ X^2+t^2(X+1)^2=1 $$
となる。
既知の交点に対応する因子を取り除けば、
$$ X=\frac{1-t^2}{1+t^2} $$
を得る。
さらに、
$$ Y=\frac{2t}{1+t^2} $$
である。
したがって、
$$ \cos x=\frac{1-t^2}{1+t^2} $$
$$ \sin x=\frac{2t}{1+t^2} $$
となる。
また、
$$ dx=\frac{2}{1+t^2}\,dt $$
である。
正弦・余弦・微分のすべてが、新しい変数の有理式として表された。
これがWeierstrass置換である。

なぜ汎用的なのか

この置換の重要な点は、正弦と余弦を個別に処理する必要がないことである。
正弦と余弦の有理式を表す関数を用いて、
$$ \int R(\sin x,\cos x)\,dx $$
という一般的な積分を考える。
Weierstrass置換によって、
$$ \int R\left( \frac{2t}{1+t^2}, \frac{1-t^2}{1+t^2} \right)\frac{2}{1+t^2}\,dt $$
となる。
右辺は有理関数の積分である。
したがって、正弦と余弦から四則演算によって構成された被積分関数なら、局所的にはすべて有理関数の積分へ帰着させられる。
これは単なる例題に対する置換ではなく、ある種類の積分全体を処理できる方法である。
例えば、最初の積分に適用すれば、
$$ I=\int\frac{2}{t^2+2t+3}\,dt $$
となる。
平方完成して、
$$ I=2\int\frac{1}{(t+1)^2+2}\,dt $$
より、
$$ I=\sqrt2\arctan\left(\frac{1+\tan\frac{x}{2}}{\sqrt2}\right)+C $$
を得る。
ただし、半角の正接が定義される連続な区間ごとに考える。
Weierstrass置換は非常に汎用的だが、必ずしも計算が最も簡単になるとは限らない。置換後に高次の有理関数が現れる場合もあるため、通常の三角恒等式で処理できるなら、そちらを優先してもよい。

双曲線関数の半角置換

双曲線関数についても、正弦・余弦と似た有理化を考えられる。
双曲線関数は指数関数で定義されるので、
$$ u=e^x $$
と置けば、
$$ \sinh x=\frac{u^2-1}{2u} $$
$$ \cosh x=\frac{u^2+1}{2u} $$
$$ dx=\frac{1}{u}\,du $$
となる。
これによって、双曲線関数の有理式を通常の有理関数へ帰着させられる。
また、半角の双曲線正接を利用して、
$$ t=\tanh\frac{x}{2} $$
と置けば、
$$ \sinh x=\frac{2t}{1-t^2} $$
$$ \cosh x=\frac{1+t^2}{1-t^2} $$
$$ dx=\frac{2}{1-t^2}\,dt $$
となる。
どちらも双曲線関数の有理式を有理化する方法である。積分によっては指数置換の方が簡単になり、別の積分では半角置換の方が式を整理しやすい場合がある。

Euler(オイラー)置換

次に、二次式の平方根を含む積分を考える。
$$ I=\int R(x,\sqrt{ax^2+bx+c})\,dx $$
ここで、二変数の有理関数を表す記号を用いた。
このような積分では、平方根と元の変数の両方を新しい変数の有理式で表せれば、有理関数の積分へ帰着できる。
そこで、平方根を含む方程式を作り、両辺を2乗したときに特定の項が消えるようにする。
これがEuler置換の基本的な発想である。代表的な3種類を考えよう。

(Ⅰ)二次の項を消す場合

二次の係数が正の場合を考える。
$$ a>0 $$
平方根の内部にある二次の項を消したいので、
$$ \sqrt{ax^2+bx+c}=\sqrt a\,x+t $$
という関係を作る。
両辺を2乗すると、
$$ ax^2+bx+c=ax^2+2\sqrt a\,xt+t^2 $$
となり、二次の項が相殺される。
したがって、
$$ x=\frac{t^2-c}{b-2\sqrt a\,t} $$
を得る。
これにより、元の変数を新しい変数の有理式として表せる。
また、最初の関係式から平方根も有理式として表せるため、積分全体を有理関数に変換できる。
例えば、
$$ \sqrt{x^2+1} $$
という平方根に対しては、
$$ t=\sqrt{x^2+1}-x $$
と置ける。
この置換には別の導き方もある。
平方根を含む式と、その共役な式を掛けると、
$$ (\sqrt{x^2+1}-x)(\sqrt{x^2+1}+x)=1 $$
となる。
そこで、一方を新しい変数とすれば、もう一方はその逆数で表せる。
$$ \sqrt{x^2+1}-x=t $$
$$ \sqrt{x^2+1}+x=\frac{1}{t} $$
二つの式を引くと、
$$ 2x=\frac{1}{t}-t $$
なので、
$$ x=\frac{1-t^2}{2t} $$
を得る。
つまり、二次の項を相殺するという考え方と、共役な式を利用して有理化するという考え方は、同じ置換につながっている。

(Ⅱ)二次式の零点を利用する場合

二次式が実数解を持つ場合には、その零点を利用できる。
$$ a\alpha^2+b\alpha+c=0 $$
となる実数を選ぶ。
このとき、
$$ ax^2+bx+c=(x-\alpha)\{a(x+\alpha)+b\} $$
と因数分解できる。
二次式に一次式の因子があるので、平方根をその因子と新しい変数の積として表せば、2乗した後に共通因子を消せそうである。
そこで、
$$ \sqrt{ax^2+bx+c}=t(x-\alpha) $$
と置く。
両辺を2乗すると、
$$ (x-\alpha)\{a(x+\alpha)+b\}=t^2(x-\alpha)^2 $$
となる。
適切な区間で共通因子を除けば、
$$ a(x+\alpha)+b=t^2(x-\alpha) $$
であるから、
$$ x=\frac{a\alpha+b+\alpha t^2}{t^2-a} $$
を得る。
ここでは、二次式の零点を利用することで、2乗後の方程式を一次式にしている。
例えば、
$$ \sqrt{x^2-1} $$
では、
$$ \alpha=1 $$
を選べる。
そこで、
$$ \sqrt{x^2-1}=t(x-1) $$
と置けば、
$$ x+1=t^2(x-1) $$
となるので、
$$ x=\frac{t^2+1}{t^2-1} $$
を得る。
この場合も、平方根と元の変数を有理式で表せる。

(Ⅲ)定数項を消す場合

定数項が正の場合には、
$$ c>0 $$
平方根の内部にある定数項を相殺することを考える。
そこで、
$$ \sqrt{ax^2+bx+c}=\sqrt c+tx $$
と置く。
両辺を2乗すると、
$$ ax^2+bx+c=c+2\sqrt c\,tx+t^2x^2 $$
となり、定数項が消える。
したがって、
$$ x=\frac{2\sqrt c\,t-b}{a-t^2} $$
を得る。
これも新しい変数の有理式である。
3種類のEuler置換は、いずれも平方根を含む方程式を作り、2乗したときに方程式の次数が下がるように設計している。

幾何学的な見方

Euler置換は、図形としても理解できる。
平方根を新しい座標として、
$$ y=\sqrt{ax^2+bx+c} $$
と置けば、
$$ y^2=ax^2+bx+c $$
という二次曲線を考えられる。

例として二次曲線と、その上の点を通る直線を示した。曲線上の既知点を通る直線の傾きを新しい変数とする。交点は曲線の方程式を満たしている。
二次曲線上の既知の点を通る直線を考えると、その直線と曲線の交点の座標を、直線の傾きによって表せる。
例えば、定数項が正なら、
$$ (0,\sqrt c) $$
は曲線上の点である。
この点を通る直線は、
$$ y=\sqrt c+tx $$
と表せる。
これはEuler置換(Ⅲ)そのものである。
また、二次式が実数解を持つ場合には、
$$ (\alpha,0) $$
が曲線上の点となり、そこを通る直線を利用すると(Ⅱ)が得られる。図はこの(Ⅱ)の例であり、曲線と直線は
$$ y^2=x^2-1,\qquad y=t(x-1) $$
を満たす。
(Ⅰ)では、直線の傾きに二次の係数の平方根を含め、2乗したときに二次の項を消している。幾何学的には、曲線の漸近線に平行な直線を考えている。
したがって、Euler置換は平方根の有理化という代数的な方法であると同時に、二次曲線を直線によって有理的に表す方法でもある。

Möbius(メビウス)変換

Möbius変換は、一次分数変換とも呼ばれ、
$$ x=\frac{at+b}{ct+d} $$
という形で表される。ただし、
$$ ad-bc\neq0 $$
とする。
このとき、
$$ dx=\frac{ad-bc}{(ct+d)^2}\,dt $$
となる。
この変換を積分で利用する際には、式の中で重要な役割を持つ点を、扱いやすい位置へ移すという発想が役立つ。
例えば、
$$ I=\int\frac{1}{x^2-1}\,dx $$
を考える。
分母には二つの零点が存在する。
$$ x=1,\qquad x=-1 $$
そこで、一方を新しい変数の原点へ移し、もう一方を分母に吸収することを考える。
$$ t=\frac{x-1}{x+1} $$
と置くと、
$$ x=\frac{1+t}{1-t} $$
となる。
また、
$$ dx=\frac{2}{(1-t)^2}\,dt $$
$$ x^2-1=\frac{4t}{(1-t)^2} $$
であるから、
$$ I=\frac{1}{2}\int\frac{1}{t}\,dt $$
$$ =\frac{1}{2}\ln\left|\frac{x-1}{x+1}\right|+C $$
を得る。
この積分であれば部分分数分解の方が簡単だが、ここでは零点の位置を移すことで分母を簡単にしている。
一般に、Möbius変換は拡張された実数直線上の異なる3点を、別の3点へ移すように構成できる。
特に、
$$ 0,\qquad1,\qquad\infty $$
という標準的な位置へ移すことは、積分区間の端点や分母の零点を整理する際に役立つ。
つまり、複雑な式の中に現れる重要な点の配置を変えることも、置換の目的の一つなのである。

逆数置換とJoukowski(ジュコフスキー)変換

Möbius変換の特別な場合として、
$$ t=\frac{1}{x} $$
という逆数置換がある。
この置換では、
$$ dx=-\frac{1}{t^2}\,dt $$
となる。
逆数置換によって、正の冪と負の冪を入れ替えたり、無限区間を有限区間へ移したりできる。
さらに、次の式を考えよう。
$$ x+\frac{1}{x} $$
この式は、変数をその逆数へ置き換えても変わらない。
したがって、逆数に関する対称性を持つ式を一つの変数にまとめたいなら、
$$ t=x+\frac{1}{x} $$
という置換が自然に考えられる。
これはJoukowski変換の実変数版に対応している。文献によってはZhukovskyという綴りも用いられる。
例えば、
$$ x^2+\frac{1}{x^2} =\left(x+\frac{1}{x}\right)^2-2 $$
なので、逆数対称性を持つ式を新しい変数の多項式として整理できる。
また、
$$ t=x+\frac{1}{x} $$
から、
$$ x^2-tx+1=0 $$
を得るため、
$$ x=\frac{t\pm\sqrt{t^2-4}}{2} $$
となる。
このように式をまとめられる一方、逆変換で平方根が現れる場合もある。
したがって、置換後の微分まで含めて、積分全体が簡単になるかを考える必要がある。
また、正の範囲全体では一対一でないため、定積分では必要に応じて区間を分けて扱う。

一次分数式の根号の有理化

次のような平方根が現れたとする。
$$ \sqrt{\frac{ax+b}{cx+d}} $$
根号を取り除くために、この式全体を新しい変数として扱う。
$$ t=\sqrt{\frac{ax+b}{cx+d}} $$
両辺を2乗すると、
$$ t^2(cx+d)=ax+b $$
となるので、
$$ x=\frac{b-dt^2}{ct^2-a} $$
を得る。
元の変数も平方根も、新しい変数の有理式として表された。
この置換は、根号の置換とMöbius変換を組み合わせたものとして理解できる。
特別な公式を覚えるよりも、根号を一つの変数にして2乗し、元の変数について解くという操作から導ければ十分である。

Chebyshev(チェビシェフ)の二項微分の積分定理

ここまでは、与えられた積分を有理関数へ帰着させる方法を考えてきた。
では、どのような場合に初等関数へ帰着できるのかを、積分の形から判定できないだろうか。
次の積分を考える。
$$ I=\int x^m(a+bx^n)^p\,dx $$
ここでは、指数を有理数とし、係数は非退化な場合を考える。
Chebyshevの二項微分の積分定理によれば、次の3つのうち少なくとも1つが整数であることが、原始関数を初等関数で表せるための必要十分条件となる。
$$ p,\qquad\frac{m+1}{n},\qquad p+\frac{m+1}{n} $$
この条件がなぜ置換の指針になるのかを考えよう。
まず、
$$ t=x^n $$
と置く。
すると、
$$ I=\frac{1}{n}\int t^{\frac{m+1}{n}-1}(a+bt)^p\,dt $$
となる。
ここで、
$$ q=\frac{m+1}{n} $$
と定義すれば、
$$ I=\frac{1}{n}\int t^{q-1}(a+bt)^p\,dt $$
と書ける。
つまり、分数冪を含む部分が二つに整理された。
$$ t^{q-1},\qquad(a+bt)^p $$
これらを同時に整数冪として扱えるようにすることを考える。

(Ⅰ)二項式の指数が整数の場合

$$ p\in\mathbb Z $$
なら、二項式の部分は既に有理関数である。
したがって、残った分数冪を取り除く置換を考えればよい。
例えば、指数の分母を正整数で表して、
$$ q=\frac{r}{s} $$
とすれば、
$$ t=u^s $$
によって単項式の分数冪を整数冪に変えられる。

(Ⅱ)単項式の指数が整数の場合

$$ q\in\mathbb Z $$
なら、単項式の部分は既に整数冪となる。
今度は二項式の分数冪を取り除けばよい。
指数を、
$$ p=\frac{r}{s} $$
と表して、
$$ u=(a+bt)^{\frac{1}{s}} $$
と置けば、
$$ t=\frac{u^s-a}{b} $$
となり、積分全体を有理関数へ帰着させられる。
例えば、
$$ I=\int\frac{x^2}{\sqrt{1+x^3}}\,dx $$
なら、
$$ u=\sqrt{1+x^3} $$
と置くことで、
$$ du=\frac{3x^2}{2\sqrt{1+x^3}}\,dx $$
より、
$$ I=\frac{2}{3}\sqrt{1+x^3}+C $$
を得る。

(Ⅲ)二つの指数の和が整数の場合

$$ p+q\in\mathbb Z $$
なら、二つの冪をまとめることを考える。
実際、
$$ t^{q-1}(a+bt)^p =t^{p+q-1}\left(\frac{a}{t}+b\right)^p $$
と変形できる。
ここで、
$$ u=\frac{a}{t}+b $$
と置けば、
$$ t=\frac{a}{u-b} $$
となる。
整数冪の部分は有理関数になり、残る分数冪も適切な冪根の置換によって有理化できる。
Chebyshevの定理は、初等関数で積分できるかを判定するだけでなく、指数の関係からどの部分を新しい変数にすればよいかを教えてくれる。
なお、ここまでの議論は3条件が成立するときの有理化方法を説明するものだ。3条件がいずれも成立しない場合に初等関数で積分できないことの証明には、さらに高度な理論が必要になるため、本記事では扱わない。

Cauchy–Schlömilch(コーシー=シュレーミルヒ)変換

次の式を考える。
$$ x-\frac{1}{x} $$
逆数置換を行うと、この式は符号が反転する。
$$ x\longmapsto\frac{1}{x} $$
$$ x-\frac{1}{x}\longmapsto-\left(x-\frac{1}{x}\right) $$
したがって、この式の二乗は逆数置換によって変わらない。
この対称性を利用すれば、もとの積分と逆数置換後の積分を組み合わせられるのではないかと考えられる。
これがCauchy–Schlömilch変換の基本的な発想である。
正の定数と適切な連続関数について、積分が収束するとき、
$$ \int_0^\infty f\left(\left(ax-\frac{b}{x}\right)^2\right)dx =\frac{1}{a}\int_0^\infty f(t^2)\,dt $$
が成り立つ。
この公式を導いてみよう。
左辺を、
$$ I=\int_0^\infty f\left(\left(ax-\frac{b}{x}\right)^2\right)dx $$
とする。
ここで、
$$ t=\frac{b}{ax} $$
と置く。
すると、平方の内部は符号が反転するだけなので、
$$ I=\frac{b}{a}\int_0^\infty f\left(\left(at-\frac{b}{t}\right)^2\right)\frac{1}{t^2}\,dt $$
を得る。
元の積分と同じ関数が現れたので、二つの表現を足し合わせる。
$$ 2I=\int_0^\infty f\left(\left(ax-\frac{b}{x}\right)^2\right) \left(1+\frac{b}{ax^2}\right)dx $$
ここで、
$$ u=ax-\frac{b}{x} $$
と置きたい。
実際、
$$ du=\left(a+\frac{b}{x^2}\right)dx $$
となり、先ほど現れた因子と対応している。
したがって、
$$ 2I=\frac{1}{a}\int_{-\infty}^{\infty}f(u^2)\,du $$
となる。
被積分関数は偶関数なので、
$$ I=\frac{1}{a}\int_0^\infty f(u^2)\,du $$
を得る。
つまり、この変換は、逆数置換によって得た二つの積分を足し、別の置換に必要な微分因子を作り出している。
例えば、
$$ I=\int_0^\infty\frac{x^2}{(1+x^2)^2}\,dx $$
を考える。
分子で分母を割る形に変形すると、
$$ \frac{x^2}{(1+x^2)^2} =\frac{1}{x^2+2+\frac{1}{x^2}} $$
となる。
ここで、
$$ x^2+2+\frac{1}{x^2} =\left(x-\frac{1}{x}\right)^2+4 $$
なので、
$$ I=\int_0^\infty \frac{1}{\left(x-\frac{1}{x}\right)^2+4}\,dx $$
と書ける。
この形ならCauchy–Schlömilch変換を適用できる。
$$ I=\int_0^\infty\frac{1}{t^2+4}\,dt $$
$$ =\frac{\pi}{4} $$
となる。
この例では、逆数対称性を持つ式が最初から現れていたわけではない。分子と分母の関係を調べ、既知の変換を適用できる形へ変形している。
ここでも、変換を知っていることと、その変換を利用できる形を見抜くことの両方が重要である。

Glasser(グラッサー)のマスター定理

Cauchy–Schlömilch変換では、逆数対称性を利用して二つの積分を組み合わせた。
これに関連して、一対一でない変換を区間ごとに処理し、複数の微分因子を足すことで積分を簡単にする方法がある。
まず、正の定数について、
$$ t=x-\frac{a}{x} $$
という変換を考える。
もとの変数について整理すると、
$$ x^2-tx-a=0 $$
となる。
この方程式は二つの実数解を持つ。
$$ x_+(t)=\frac{t+\sqrt{t^2+4a}}{2} $$
$$ x_-(t)=\frac{t-\sqrt{t^2+4a}}{2} $$
一方は正の範囲、もう一方は負の範囲に対応している。
ここで二つの解の和を考えると、
$$ x_+(t)+x_-(t)=t $$
となる。
したがって、
$$ x_+'(t)+x_-'(t)=1 $$
である。
積分区間を正と負に分けてそれぞれ置換すると、二つの微分因子の和が1になる。
そのため、適切な可積分関数について、
$$ \int_{-\infty}^{\infty} f\left(x-\frac{a}{x}\right)dx =\int_{-\infty}^{\infty}f(t)\,dt $$
が成立する。ただし、原点の左右の積分がそれぞれ収束することを前提とする。
例えば、
$$ I=\int_{-\infty}^{\infty} \frac{1}{1+\left(x-\frac{1}{x}\right)^2}\,dx $$
なら、
$$ I=\int_{-\infty}^{\infty}\frac{1}{1+t^2}\,dt $$
$$ =\pi $$
を得る。
この考え方を一般化したものがGlasserのマスター定理である。一般形では、複数の有理関数的な項を含む変換を扱い、Cauchyの主値積分が関係する場合もある。
ここでは、一対一でない変換でも、複数の枝を適切に扱えば積分が簡単になる場合があることを理解しておきたい。

置換・変換の整理

ここまでに扱った主な置換と、その微分をまとめる。公式の暗記のためではなく、各置換の目的を理解したうえで確認するための表である。
基本的な冪・指数・対数の置換については、
$$ \begin{array}{c|c|c} \text{目的}&\text{置換}&\text{微分}\\ \hline \text{冪根の有理化}&x=t^n&dx=nt^{n-1}\,dt\\ \text{指数関数の有理化}&t=e^x&dx=\frac{1}{t}\,dt\\ \text{対数関数の整理}&t=\ln x&dx=e^t\,dt \end{array} $$
三角関数と双曲線関数については、
$$ \begin{array}{c|c|c} \text{目的}&\text{置換}&\text{微分}\\ \hline \text{平方根の簡単化}&x=a\sin t&dx=a\cos t\,dt\\ \text{平方根の簡単化}&x=a\sinh t&dx=a\cosh t\,dt\\ \text{三角関数の有理化}&t=\tan\frac{x}{2}&dx=\frac{2}{1+t^2}\,dt\\ \text{双曲線関数の有理化}&t=\tanh\frac{x}{2}&dx=\frac{2}{1-t^2}\,dt \end{array} $$
一次分数変換と逆数に関する置換については、
$$ \begin{array}{c|c|c} \text{目的}&\text{置換}&\text{微分}\\ \hline \text{一次分数変換}&x=\frac{at+b}{ct+d}&dx=\frac{ad-bc}{(ct+d)^2}\,dt\\ \text{逆数変換}&t=\frac{1}{x}&dx=-\frac{1}{t^2}\,dt\\ \text{逆数対称性}&t=x+\frac{1}{x}&dt=\left(1-\frac{1}{x^2}\right)dx \end{array} $$
Euler置換については、次の3種類が代表的である。
$$ \begin{aligned} \text{(Ⅰ)}\quad &t=\sqrt{ax^2+bx+c}-\sqrt a\,x\\ \text{(Ⅱ)}\quad &t=\frac{\sqrt{ax^2+bx+c}}{x-\alpha}\\ \text{(Ⅲ)}\quad &t=\frac{\sqrt{ax^2+bx+c}-\sqrt c}{x} \end{aligned} $$
それぞれ適用条件と定義域に注意する必要がある。逆変換と微分は先ほど導出した関係から求められるため、表には重複して掲載しない。
また、Chebyshevの定理、Cauchy–Schlömilch変換、Glasserのマスター定理は、単独の置換だけでなく、指数関係や定積分の構造を利用するものである。そのため、この表とは分けて理解しておくとよい。

1.6 定積分の性質と変換

ここまでは主に、不定積分を既知の関数の微分形へ帰着させる方法を考えてきた。
しかし、定積分では原始関数を求めることだけが目的ではない。積分区間と被積分関数の関係を利用すれば、原始関数を求めずに積分値を決定できる場合もある。

定積分における置換・部分積分

定積分では、置換と同時に積分区間も変更する必要がある。
例えば、
$$ I=\int_0^1\frac{2x}{1+x^2}\,dx $$
に対して、
$$ t=1+x^2 $$
と置けば、
$$ x=0\longmapsto t=1 $$
$$ x=1\longmapsto t=2 $$
であるから、
$$ I=\int_1^2\frac{1}{t}\,dt $$
$$ =\ln2 $$
を得る。
また、部分積分では、
$$ \int_a^bf(x)g'(x)\,dx =[f(x)g(x)]_a^b-\int_a^bf'(x)g(x)\,dx $$
となる。
ただし、原始関数を直接求められる場合には、通常どおり両端の値を代入すればよい。

区間反転(King's Property)

定積分では、積分区間の両端を入れ替える置換が役立つ。
$$ t=a+b-x $$
と置けば、
$$ dt=-dx $$
となり、
$$ \int_a^bf(x)\,dx =\int_a^bf(a+b-x)\,dx $$
を得る。
この関係はKing's Propertyと呼ばれることがある。
例えば、
$$ I=\int_0^{\frac{\pi}{2}} \frac{\sin x}{\sin x+\cos x}\,dx $$
を考える。
ここで区間を反転させると、正弦と余弦が入れ替わる。
したがって、
$$ I=\int_0^{\frac{\pi}{2}} \frac{\cos x}{\sin x+\cos x}\,dx $$
である。
二つの式を足せば、
$$ 2I=\int_0^{\frac{\pi}{2}}1\,dx $$
となるので、
$$ I=\frac{\pi}{4} $$
を得る。
この例では、積分区間を反転させること自体が目的ではない。
反転によって正弦と余弦が入れ替わり、二つの分数を足せば分母が消えると予測できることが重要なのである。
つまり、原始関数を求める代わりに、同じ積分値を持つ別の表現を作り、積分同士を比較している。

区間の折り返し(Queen's Property)

区間反転を利用すれば、積分区間を半分に折り返すこともできる。
積分区間の中点を、
$$ m=\frac{a+b}{2} $$
とする。
積分を中点で分割すると、
$$ \int_a^bf(x)\,dx =\int_a^mf(x)\,dx+\int_m^bf(x)\,dx $$
である。
後半の積分に区間反転を適用すれば、
$$ \int_m^bf(x)\,dx =\int_a^mf(a+b-x)\,dx $$
なので、
$$ \int_a^bf(x)\,dx =\int_a^m\{f(x)+f(a+b-x)\}\,dx $$
を得る。

後半の区間を反転させて前半に重ねると、積分区間を半分にできる。
このような区間の折り返しはQueen's Propertyと呼ばれることがある。King's Propertyと同様に通称であり、独立した新しい定理ではない。
特に被積分関数が中点に関して対称なら、
$$ f(a+b-x)=f(x) $$
なので、
$$ \int_a^bf(x)\,dx=2\int_a^mf(x)\,dx $$
となる。
この性質は、被積分関数の対称性を利用するだけでなく、元の積分と変換後の積分を組み合わせる際にも役立つ。
例えば、
$$ I=\int_0^{\frac{\pi}{2}}\ln(\sin x)\,dx $$
を考える。
この広義積分は収束するが、原始関数を初等関数で表すことはできない。
そこで、区間反転を利用する。
$$ I=\int_0^{\frac{\pi}{2}}\ln(\cos x)\,dx $$
二つの式を加えると、
$$ 2I=\int_0^{\frac{\pi}{2}}\ln(\sin x\cos x)\,dx $$
となる。
倍角公式から、
$$ \sin x\cos x=\frac{\sin2x}{2} $$
なので、
$$ 2I=\int_0^{\frac{\pi}{2}}\ln(\sin2x)\,dx -\frac{\pi}{2}\ln2 $$
を得る。
ここで、
$$ t=2x $$
と置けば、
$$ \int_0^{\frac{\pi}{2}}\ln(\sin2x)\,dx =\frac{1}{2}\int_0^\pi\ln(\sin t)\,dt $$
となる。
正弦関数はこの区間の中点に関して対称なので、
$$ \int_0^\pi\ln(\sin t)\,dt =2\int_0^{\frac{\pi}{2}}\ln(\sin t)\,dt $$
である。
したがって、
$$ 2I=I-\frac{\pi}{2}\ln2 $$
となり、
$$ I=-\frac{\pi}{2}\ln2 $$
を得る。
この例では、区間反転、倍角公式、区間折り返しを組み合わせ、元の積分についての方程式を作っている。

偶奇性と周期性

偶関数について、
$$ f(-x)=f(x) $$
なら、
$$ \int_{-a}^af(x)\,dx=2\int_0^af(x)\,dx $$
となる。
また、奇関数について、
$$ f(-x)=-f(x) $$
なら、
$$ \int_{-a}^af(x)\,dx=0 $$
となる。ただし、通常の意味で積分が存在する場合に限る。
周期関数についても、周期を利用して積分区間を移動・分割できる。
例えば、
$$ f(x+T)=f(x) $$
なら、
$$ \int_a^{a+T}f(x)\,dx =\int_0^Tf(x)\,dx $$
である。
また、正整数について、
$$ \int_0^{nT}f(x)\,dx =n\int_0^Tf(x)\,dx $$
となる。
これらの性質は、いずれも区間を変換したときに被積分関数がどう変化するかを利用している。

広義積分

積分区間が無限である場合や、被積分関数が発散する点を含む場合には、極限を用いて積分を定義する。
例えば、
$$ I=\int_1^\infty\frac{1}{1+x^2}\,dx $$
に対して、
$$ t=\frac{1}{x} $$
と置けば、無限区間を有限区間へ変換できる。
実際、
$$ dx=-\frac{1}{t^2}\,dt $$
より、
$$ I=\int_0^1\frac{1}{1+t^2}\,dt $$
$$ =\frac{\pi}{4} $$
となる。
ただし、無限端点の変換は極限として扱っている。
また、対称性を利用する場合にも、収束の確認は必要である。
例えば、
$$ \int_{-1}^1\frac{1}{x}\,dx $$
は被積分関数が奇関数であっても、通常の広義積分としては収束しない。
正負の部分が相殺されるように見えても、それだけで積分値が0になるとは限らないのである。

Frullani(フルラニ)の積分公式

次のような広義積分を考える。
$$ I=\int_0^\infty\frac{f(ax)-f(bx)}{x}\,dx $$
分子には同じ関数が現れ、引数だけが異なっている。
それぞれの項を別々に積分しようとすると発散してしまう場合もあるが、同じ関数であることを利用すれば、二つの積分を比較できそうである。
正の定数と適切な条件を満たす関数について、Frullaniの積分公式は、
$$ \int_0^\infty\frac{f(ax)-f(bx)}{x}\,dx =\{f(0)-f(\infty)\}\ln\frac{b}{a} $$
という形で表される。
なぜこのような関係が成り立つのだろうか。
まず、積分区間を有限に制限し、
$$ I_{\varepsilon,R} =\int_\varepsilon^R\frac{f(ax)-f(bx)}{x}\,dx $$
とする。
説明のため、
$$ 0< a< b $$
とする。
それぞれの項で、
$$ u=ax,\qquad u=bx $$
と置くと、
$$ I_{\varepsilon,R} =\int_{a\varepsilon}^{aR}\frac{f(u)}{u}\,du -\int_{b\varepsilon}^{bR}\frac{f(u)}{u}\,du $$
となる。
積分区間が重なる部分を打ち消せば、
$$ I_{\varepsilon,R} =\int_{a\varepsilon}^{b\varepsilon}\frac{f(u)}{u}\,du -\int_{aR}^{bR}\frac{f(u)}{u}\,du $$
を得る。ただし、十分に小さい正の下端と十分に大きい上端を取っている。
元の長い積分区間ではなく、原点近くと無限遠近くの区間だけが残った。
端点の極限を考えると、
$$ \lim_{\varepsilon\to0+} \int_{a\varepsilon}^{b\varepsilon}\frac{f(u)}{u}\,du =f(0)\ln\frac{b}{a} $$
$$ \lim_{R\to\infty} \int_{aR}^{bR}\frac{f(u)}{u}\,du =f(\infty)\ln\frac{b}{a} $$
となる。
これによってFrullaniの公式が得られる。
例えば、
$$ I=\int_0^\infty\frac{e^{-ax}-e^{-bx}}{x}\,dx $$
なら、
$$ I=\ln\frac{b}{a} $$
を得る。
ここでは、それぞれの項を別々に積分するのではなく、置換によって共通部分を打ち消している。

+α Feynman's trick

積分を簡単にする別の方法として、パラメータを導入して積分を考える手法がある。
例えば、
$$ I(a)=\int_\alpha^\beta f(x,a)\,dx $$
と定義する。
適切な条件の下では、Leibniz(ライプニッツ)の積分微分法則によって、
$$ I'(a)=\int_\alpha^\beta \frac{\partial f}{\partial a}(x,a)\,dx $$
が成り立つ。
この関係を利用し、パラメータについて微分した後の積分を求める方法が Feynman's trick と呼ばれる。
元の積分よりも、パラメータについて微分した積分の方が簡単になる場合に有効である。
ただし、積分と微分の交換には条件が必要であり、INTEGRALISではIAC寄りの内容となるため、ここでは紹介にとどめる。

1.7 絶対値・最大値・最小値

積分に絶対値が現れた場合には、まず絶対値の内部がどこで符号を変えるかを調べる。
例えば、
$$ I=\int_0^2|x-1|\,dx $$
を考える。
絶対値の内部は、
$$ x=1 $$
で符号が変わる。

符号の変わる点で区間を分ければ、絶対値を外して積分できる。
したがって、
$$ |x-1|=\begin{cases} 1-x&(x<1)\\ x-1&(x\geq1) \end{cases} $$
なので、
$$ I=\int_0^1(1-x)\,dx+\int_1^2(x-1)\,dx $$
$$ =1 $$
となる。
この例では、絶対値を外して計算するだけでなく、グラフと座標軸で囲まれた二つの三角形の面積として求めることもできる。
また、区間が対称な場合には、絶対値を外す前に対称性を利用した方が簡単なこともある。
例えば、絶対値を取った関数が偶関数なら、正の定数について、
$$ \int_{-a}^a|f(x)|\,dx =2\int_0^a|f(x)|\,dx $$
となる。
したがって、絶対値を含む積分では、符号の変化だけでなく、グラフの形や対称性も確認したい。

最大値・最小値

二つの値の最大値と最小値は、絶対値によって表せる。
$$ \max\{u,v\}=\frac{u+v+|u-v|}{2} $$
$$ \min\{u,v\}=\frac{u+v-|u-v|}{2} $$
これは、二つの値の平均から、その差の半分だけ上下に離れたところに最大値と最小値があることを意味している。
この関係を関数に適用すれば、
$$ \max\{f(x),g(x)\} =\frac{f(x)+g(x)+|f(x)-g(x)|}{2} $$
となる。
例えば、
$$ I=\int_0^1\max\{x,1-x\}\,dx $$
では、二つの関数の大小関係が、
$$ x=\frac{1}{2} $$
で入れ替わる。
そのため、
$$ I=\int_0^{\frac{1}{2}}(1-x)\,dx +\int_{\frac{1}{2}}^1x\,dx $$
$$ =\frac{3}{4} $$
となる。
最大値・最小値を含む積分では、絶対値に変換する方法と、関数の交点で区間を分割する方法の両方を考えられる。
どちらを選ぶべきかは、積分の形によって判断すればよい。

1.8 床関数・小数部分

床関数

床関数は、実数以下の最大の整数を与える関数であり、
$$ \lfloor x\rfloor =\max\{n\in\mathbb Z\mid n\leq x\} $$
と定義される。
日本ではGauss(ガウス)記号と呼ばれることもある。
例えば、
$$ \lfloor2.7\rfloor=2,\qquad \lfloor-1.2\rfloor=-2 $$
である。
床関数を含む積分では、整数を境に関数の値が変わることを利用する。
床関数は整数区間ごとに一定値を取るため、区間分割によって積分を総和へ帰着させられる。
例えば、
$$ I=\int_0^3\lfloor x\rfloor\,dx $$
なら、
$$ I=\int_0^1 0\,dx+\int_1^2 1\,dx+\int_2^3 2\,dx $$
$$ =3 $$
となる。
一般に、正整数について、
$$ \int_0^n\lfloor x\rfloor\,dx =\sum_{k=0}^{n-1}k $$
$$ =\frac{n(n-1)}{2} $$
である。
ここでは、積分を総和へ帰着させている。
ただし、床関数の内部が複雑な関数である場合には、単純に整数点で区間を分けるのではなく、その内部が整数となる点を調べる必要がある。

小数部分

実数の小数部分は、
$$ \{x\}=x-\lfloor x\rfloor $$
と定義される。
整数について、
$$ k\leq x< k+1 $$
なら、
$$ \{x\}=x-k $$
である。

小数部分は、各整数区間で同じ形を繰り返す。
この関数には、
$$ \{x+1\}=\{x\} $$
という周期性がある。
そのため、正整数について、
$$ \int_0^n\{x\}\,dx =n\int_0^1x\,dx $$
$$ =\frac{n}{2} $$
となる。
また、
$$ x=\lfloor x\rfloor+\{x\} $$
という関係もあるため、床関数を含む積分と小数部分を含む積分を相互に変換できる場合がある。

1.9 総和・無限級数・区分求積法

有限和と積分

有限個の関数の和であれば、積分の線形性から、
$$ \int_a^b\sum_{k=0}^n f_k(x)\,dx =\sum_{k=0}^n\int_a^bf_k(x)\,dx $$
が成り立つ。ただし、各関数は積分可能とする。
例えば、
$$ I=\int_0^1\sum_{k=0}^n x^k\,dx $$
なら、
$$ I=\sum_{k=0}^n\int_0^1x^k\,dx $$
$$ =\sum_{k=0}^n\frac{1}{k+1} $$
となる。
一方、総和を先に計算した方が簡単になる場合もある。
例えば、等比数列の和は、
$$ \sum_{k=0}^n x^k =\frac{1-x^{n+1}}{1-x} $$
と表せる。ただし、右辺の分母が0とならない範囲で考える。
したがって、有限和を含む積分では、総和を先に処理するか、各項を積分するかを比較して判断すればよい。

無限級数

無限級数については、有限和と異なり、積分と総和を無条件で交換することはできない。
しかし、既知の級数の和を利用することはできる。
例えば、
$$ |x|<1 $$
では、
$$ \sum_{n=0}^{\infty}x^n=\frac{1}{1-x} $$
である。
したがって、
$$ I=\int_0^{\frac{1}{2}}\sum_{n=0}^{\infty}x^n\,dx $$
なら、先に級数の和を計算して、
$$ I=\int_0^{\frac{1}{2}}\frac{1}{1-x}\,dx $$
$$ =\ln2 $$
となる。
この計算では、積分と無限和を交換していない。まず級数を既知の関数として表し、その後に積分している。
一方、項別積分を行う場合には、一様収束など、交換を正当化できる条件が必要となる。

区分求積法

総和の極限を定積分へ帰着させる方法として、区分求積法がある。
例えば、
$$ \lim_{n\to\infty}\frac{1}{n} \sum_{k=1}^n\left(\frac{k}{n}\right)^2 $$
を考える。
この式では、区間を等分した各点での関数値に、区間の幅を掛けて足し合わせている。
したがって、二次関数のRiemann(リーマン)和として捉えられる。
$$ \lim_{n\to\infty}\frac{1}{n} \sum_{k=1}^n\left(\frac{k}{n}\right)^2 =\int_0^1x^2\,dx $$
$$ =\frac{1}{3} $$
となる。
ここでは、総和を展開して極限を計算する必要はない。
総和の形から、どの関数の定積分に対応するのかを認識できれば、直接積分へ帰着できる。

+α Abel(アーベル)の総和公式

総和に対する部分積分に相当する操作として、Abelの総和公式がある。
部分和を、
$$ A_k=\sum_{j=1}^k a_j $$
と定義すると、
$$ \sum_{k=1}^n a_kb_k =A_nb_n+\sum_{k=1}^{n-1}A_k(b_k-b_{k+1}) $$
が成り立つ。
部分積分では、一方の関数を微分し、もう一方を積分することで積の形を変えていた。
Abelの総和公式では、一方の数列について差分を取り、もう一方について部分和を作る。
したがって、総和の中に二つの数列の積が現れた場合にも、どちらの数列について部分和を取り、どちらについて差分を取れば扱いやすくなるかを考えられる。
積分と総和は異なる操作だが、積の構造を利用して式を簡単にするという点では共通している。


本章で扱った手法は、いずれも積分を既知形へ帰着させるためのものである。重要なのは操作そのものではなく、どのような形を目指し、そのために何を変えるのかを考えることだ。

投稿日:15時間前
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