$n$ を自然数とする.また, $a_p$ は $_{2n}\mathrm{C}_{n}$ の素因数 $p$ で $_{2n}\mathrm{C}_{n}$ を割り切れる回数とする.
(1) $_{2n}\mathrm{C}_k$ を最大にする $k$ を求めよ.ただし, $k$ は$0$以上 $2n$ 以下の整数である.
(2) $p^{a_p}\leqq 2n$ を示せ.
(3) $n$ が十分大きいとき, $_{2n}\mathrm{C}_{n}$ の素因数の種類は無数に存在することを示せ.ただし,必要であれば, $\displaystyle\lim_{n\to\infty}\dfrac{n}{\log{n}}=\infty$ を用いて良い.
(4) $_{2n}\mathrm{C}_{n}$ の素因数の種類が $2$ 種類以下であるような $n$ を全て求めよ.
$(1)$
${}_{2n}\mathrm{ C }_k= {}_{2n}\mathrm{ C }_{2n-k}$より,$k=0,1,2, \cdots n$の増減を考えれば十分である.
$$
\frac{{}_{2n}\mathrm{ C }_k}{ {}_{2n}\mathrm{ C }_{k-1}}= \frac{(k-1)!(2n-k+1)!}{k!(2n-k)!}= \frac{2n-k+1}{k}= \frac{2n+1}{k}-1 \gt 1 ( \because 1\leq k \leq n)
$$
$$
\therefore {}_{2n}\mathrm{ C }_k> {}_{2n}\mathrm{ C }_{k-1}
$$つまり,
${}_{2n}\mathrm{ C }_0<{}_{2n}\mathrm{ C }_1< \cdots <{}_{2n}\mathrm{ C }_n >{}_{2n}\mathrm{ C }_{n+1}>\cdots >{}_n \mathrm{ C }_{2n}$ となるので求める$k$は,
$k=n$ $\cdots$ (答)
$(2)$
$
\lbrack x \rbrack$を実数$x$を超えない最大の整数とし,$m$を$p^{m} \leq 2n$を満たす最大の整数とする.
$x$の整数部分を$\alpha$,小数部分を$\beta$とすると,
$\lbrack 2x\rbrack- 2\lbrack x \rbrack$の値は,
0$\leq$$\beta$$\leq0,5$のとき,$\lbrack 2x\rbrack- 2\lbrack x \rbrack=2 \alpha -2 \alpha=0$
$0.5\leq\beta <1$のとき,$\lbrack 2x\rbrack- 2\lbrack x \rbrack=2 \alpha+1-2 \alpha =1$
$\therefore$$\lbrack 2x\rbrack- 2\lbrack x \rbrack \leq 1$$\cdots(A)$
$m$より大きい任意の整数$l$は$\displaystyle p^{l} \gt 2n$より, $\displaystyle \lbrack \frac{2n}{p^{l}} \rbrack=0$となるので,
$a_{p}=\displaystyle \sum_{k=1}^{m}( \lbrack \frac{2n} {p^{k}} \rbrack-2 \lbrack \frac{n}{p^{k}} \rbrack )$であり,$\frac{n}{p^{k}}=x $とすると,$a_{p}=\displaystyle \sum_{k=1}^{m}\lbrack 2x\rbrack- 2\lbrack x \rbrack$となり,$(A)$から,$a_{p} \leq m$
$\therefore p^{a_{p}} \leq p^{m} \leq 2n$
題意は示された.$\cdots $(答)
$(3)$
${}_{2n} \mathrm{ C }_n$の素因数の種類が有限であると仮定すると自然数の定数$i$を用いて
${}_{2n} \mathrm{ C }_n$の素因数分解を,${}_{2n} \mathrm{ C }_n=p_{1}^{e_{1}}p_{2}^{e_{2}}, \cdots ,p_{i}^{e_{i}}$とおける.,$(2)$より,
${}_{2n} \mathrm{ C }_n \leq (2n)(2n) \cdots (2n)=(2n)^{i}$$\cdots①$
$(1+1)^{2n}=\displaystyle \sum_{k=0}^{2n} {}_{2n}\mathrm{ C }_k \leq (2n+1) {}_{2n} \mathrm{ C }_n$($\because(1)$)
$4^{n} \leq (2n+1) {}_{2n} \mathrm{ C }_n\Longleftrightarrow {}_{2n}\mathrm{ C }_n \geq \frac{4^{n}}{2n+1} $ $①$と合わせて,
$\displaystyle\frac{4^{n}}{2n+1} \leq (2n)^{i}$両辺自然対数をとって,$n\log4-\log(2n+1) \leq i\log(2n)$
$\Longleftrightarrow $ $\displaystyle\frac{2n\frac{\log4}{2}}{\log{2n}}-\frac{\log{2n+1}}{\log{2n}} \leq i \Longleftrightarrow \frac{\log4}{2}\frac{2n}{\log{2n}}-\frac{\log(2n({1+ \frac{1}{2n}) })}{\log{2n}} \leq i $
$\Longleftrightarrow \displaystyle \frac{\log4}{2}\frac{2n}{\log{2n}}-(1+\frac{\log(1+\frac{1}{2n}) }{\log{2n}} )\leq i $
$\displaystyle\lim_{n \to \infty} \frac{n}{\log n}\to\infty$ より,$n\to\infty$のとき,(左辺)$\to\infty$となり,$i\to\infty$である.これは$i$が自然数の定数であることに矛盾する.
したがって仮定は偽であり,${}_{2n} \mathrm{ C }_n$の素因数の種類は無限である.題意は示された.$\cdots$ (答)
$(4)$
$(3)$ より,$i$を$i \leq 2$として,$\displaystyle \frac{4^{n}}{2n+1} \leq (2n)^{i} \leq4n^{2}$
$\Longleftrightarrow$$4^{n} \leq (8n^{3}+4n^{2})$$\Longleftrightarrow$$\displaystyle\frac{8n^{3}+4n^{2}}{4^{n}} \geq 1$$\cdots②$
これが成り立つ$n$の範囲を考える.
$f(n)=\displaystyle\frac{8n^{3}+4n^{2}}{4^{n}}$とおく.
$\displaystyle\frac{f(n+1)}{f(n)}= \frac{8n^{3}+28n^{2}+32n+12}{4(8n^{3}+4n^{2})}= \frac{8n^{3}+4n^{2}}{4(8n^{3}+4n^{2})}+\frac{24n^{2}+32n+12}{4(8n^{3}+4n^{2})} = \frac{1}{4}+\frac{6+ \frac{8}{n}+ \frac{3}{n^{2}}}{8n+4}$
$\displaystyle\frac{6+ \frac{8}{n}+ \frac{3}{n^{2}}}{8n+4}$について$n$に対して分子は単調減少で,分母は単調増加である.
また,それから,$n\geq 6$においてその最大値は$n=6$のときで,
$\displaystyle\frac{6+ \frac{8}{n}+ \frac{3}{n^{2}}}{8n+4} \leq \frac{6+ \frac{8}{6}+ \frac{3}{6^{2}}}{52}< \frac{6+8+3}{52}= \frac{17}{52}< \frac{3}{4}$ が,成り立つ.
$\therefore \displaystyle\frac{f(n+1)}{f(n)}<\frac{1}{4}+ \frac{3}{4}=1 \ \ (n\geq 6) $$\cdots(B)$
$\displaystyle f(6)= \frac{6^{2}( 8\cdot 6+4)}{4^{6}}= \frac{36 \cdot 52}{64 \cdot 64 } \lt 1 $
$f(6)<1$と,$(B)$を合わせて,$1>f(6)>f(7)> \cdots $となり,
$ ②$を満たす自然数$n$は$5$以下である.
$n=1$のとき,${}_{2}\mathrm{ C }_1=2$で素因数$1$種類
$n=2$のとき,${}_{4}\mathrm{ C }_2=2 \cdot3 $で素因数$2$種類
$n=3$のとき,${}_{6}\mathrm{ C }_3=2^{2} \cdot 3$で素因数$2$種類
$n=4$のとき,${}_{8}\mathrm{ C }_4=2 \cdot 5 \cdot 7$で素因数$3$種類
$n=5$のとき,${}_{10}\mathrm{ C }_5=2^{2} \cdot 3^{2} \cdot 7$で素因数$3$種類
以上から求める全ての$n$は$n=1,2,3$$\cdots$(答)
取りうる値が飛び飛びになっている変数。(中間的な値が存在しない変数)
例えばさいころの出る目は$1,2,3,4,5,6$であり,$2.71,3.14,$など存在しない。
(その反対に存在する変数は連続変数といい,無限に中間値が存在する変数である。)
$$ \begin{array}{:c:}\hdashline \text{$n!$に含まれる素因数$p$の数は以下の式で計算できる} \\ \text{$ \displaystyle \sum_{i=1}^{\infty} \lbrack \frac{n}{p^{i}} \rbrack =\lbrack \frac{n}{p}\rbrack+\lbrack \frac{n}{p^{2}}\rbrack+\lbrack \frac{n}{p^{3}} \rbrack \cdots $} \\\text{ ただし,$\lbrack x \rbrack$ は$x$を超えない最大の整数を表す。 } \\\hdashline \end{array} $$
$①$ $f(n)$を連続関数と見る,つまり連続変数$x$を考え,$f(n)$を$f(x)$としてながめて$f(x)$の大体の挙動を追う。(微分などが可能)
$②$ $f(n+1)-f(n)$の正負に着目する。
のいずれかに従うのが基本であり,$f(n)$が常に正という保証があるならば,
$③$ $\frac{f(n+1)}{f(n)}$と1との大小関係に着目する(数列や確率などの最大最小問題で度々使用できる)
ある整数が素数$p$を何個持つかの議論のときは,
$① $ ルジャンドルの定理から考える。(階乗数の場合)
$② $ $m$個含むとして$ n=p^{m} k$とおく。
$ ②'$ $ p^{m} \leq n< p^{m}+1$とすることにより,最大でもm個を超えないことを利用。(ごく稀に見る方針)
$②'’ $ 素因数分解を$n=p_{1}^{e_{1}}p_{2}^{e_2} \cdots p_{m}^{e_m}$のようにおく(②をより詳細に分析した形であり, ②で足ることが多いので,②と比べ頻度は少し下がるが稀に見かける方針)。
③ 平方数$\Longleftrightarrow$含まれる素因数の個数が全て偶数個を利用。
$(1)$は変数が$n$ですから離散変数の最大値最小値の問題ですね。
二項係数は当然正の数であるので$\frac{f(n+1)}{f(n)}$と$1$の大小比較をしたらよさそうとわかります。
ついでに二項係数の性質を合わせると考える$k$を減らせて少し楽といえるでしょう。
$(2)$余談ですが友人に解いてもらったところ,ここが案外難しかったみたいです...
さて本題,何を示したいのか,何が示せたらいいのか,状況を整理してみましょう。$(3)$の解答のように
${}_{2n} \mathrm{ C }_n$の素因数分解を,${}_{2n} \mathrm{ C }_n=p_{1}^{e_{1}}p_{2}^{e_{2}}, \cdots ,p_{i}^{e_{i}}$としてみましょう。
そこでどの素数をとっても$p_{k}^{e_{k}} \leq 2n$らしいということです。まあ問題から見ても$p$で割り切る回数が明らか関係はしてますよね。とにかく式で考えてみましょう。当然ルジャンドルの定理で考えると,
一般のルジャンドルの定理は無限まで足していますが,評価が足りないことに気付くでしょう。
そこでより詳しくするため,$m$まで足すことにして考えます。
つまり$p^{m} \leq 2n$である最大の整数$m$ということですね。
示したいことと合わせると $ p^{a_{p}} \leq p^{m} \leq 2n$となってくれればよさそうつまり$a_{p} \leq m$を示せばよさそう。
ここでルジャンドルの式に戻ると,$m$までの整数和が$m$以下を示すことになるので,1個1個の項が1以下ならよさそう。
そこで$1$個の項に着目するとなにやら$\lbrack 2x \rbrack$-$2\lbrack x \rbrack$の形になっていることが分かる。
ここからはよくわかるのではないでしょうか。
$(3)$
問題を見て素数が無限に存在することの証明を見たことある人ならまず有限と仮定して矛盾させる背理法だと勘付くのではないでしょうか。そこで
$(2)$から,${}_{2n} \mathrm{ C }_n \leq (2n)(2n) \cdots (2n)=(2n)^{i}$とするのはいいでしょう。
では${}_{2n} \mathrm{ C }_n \leq(2n)^{i}$が$n \to \infty $で矛盾すればいいと分かりますね。
さて,ここで模範解答のように$(1+1)^{2n}$の二項展開をして考えられた方はどれくらいでしょう。(別にほかの考えでもできますが。)
なぜ$(1)$のような誘導が存在しているか考えなければ$(1+1)^{2n}$を出現させるのは至難といえるでしょう。
まず,$(1+1)^{2n} $と二項整数の${}_{2n} \mathrm{ C }_{k}$は非常に密接な関係にあることをまず把握しておきましょう。
$(1)$を改めて俯瞰してみる。
${}_{2n} \mathrm{ C }_{k}$の最大値を出す必要があるということは,${}_{2n} \mathrm{ C }_{k} (k=1,2,n)$の全て,ないしはいくつか利用して不等式評価か何かをするんだろうなと予想を立てておくことが非常に重要。
最大値を利用する不等式評価は
例えば,
$a+b=ab$を満たす自然数の組$(a,b)$を全て求めよ。
があり,対称性から$a$が最大として$2a \geq a+b=ab$ から$2 \geq b$とするのが定石です。
このように複数の和のとき最大のものにすべてを置き換えるような方針を取るのではないかという推測に至れば$(1+1)^{2n}$を考えうるでしょう。
あとはただの極限の問題であるので割愛します。
$(4)$
ここは$(3)$が解けた方ならサービス問題と化すでしょう。
このままだと面白味が薄いのでサービスしましょう。
別解を軽く紹介します。
${}_{2n} \mathrm{ C }_{n}=2{}_{2n-1} \mathrm{ C }_{n-1}$より,${}_{2n} \mathrm{ C }_{n}$は$2$の倍数である。
$(n-1){}_{2n} \mathrm{ C }_{n-1}=(2n-1){}_{2n-2} \mathrm{ C }_{n-2}$で,$gcd(2n-1,n-1)=1$つまり,$2n-1$と$n-1$は互いに素だから
${}_{2n} \mathrm{ C }_{n}$は$(2n-1)$の倍数。
ここで$n \geq 2$において,$1$より大きい整数$2$と$(2n-1)$は互いに素で${}_{2n} \mathrm{ C }_{n}$の素因数なので$2$種類以上である。
$n \geq 3$について考える。$2n-3$は互いに素な正の奇数$e,r$ただし$r$は素数,と自然数$a$を用いて
$2n-3=r^ae$とおける。($∵2n-3$は$3$以上の奇数である)
$2n=r^ae+3,$$\displaystyle n=\frac{r^ae+3}{2}$
$a_{r}=\displaystyle \sum_{k=1}^{\infty}( \lbrack \frac{r^ae+3} {r^{k}} \rbrack-2 \lbrack \frac{\frac{r^ae+3}{2}}{r^{k}} \rbrack )$であり,
この和の$k=a$項目$g_{a}$を考える。
$\displaystyle g_{a}=\lbrack \frac{r^ae+3} {r^{a}} \rbrack-2 \lbrack \frac{r^ae+3}{2r^{a}} \rbrack =e+ \lbrack \frac{3}{r^a} \rbrack- \lbrack \frac{e}{2} +\frac{3}{2r^a} \rbrack$
$y$を$0$以上の整数として,$e=2y+1$とおくと,
$\displaystyle g_{a}=2y+1+\lbrack \frac{3}{r^a} \rbrack- (2y+2 \lbrack\frac{1}{2}+ \frac{3}{2r^a} \rbrack)$
$(Ⅰ)a \geq 2$のとき,$r \geq 3$から$g(a)=1$となる。
(Ⅱ)$a=1$かつ$2n-3$に$3$以外の素因数が含まれるとき,
$r\geq5$より,$g(a)=1$となる
$\displaystyle\frac{n}{p^{k}}=x $とすると,これらはいずれも,$\lbrack 2x\rbrack- 2\lbrack x \rbrack$の値はが$0,1$即ち$0$以上より,
$a_{r}=\displaystyle \sum_{k=1}^{\infty}\lbrack 2x\rbrack- 2\lbrack x \rbrack \geq1 $となる
つまり,${}_{2n} \mathrm{ C }_{n}$は$(2n-3)$の素因数を少なくとも一つ持つ。
$2n-3$は$2$と互いに素であり,$gcd(2n-3,2n-1)=1$つまり$2n-1$とも互いに素であるから,このとき,${}_{2n} \mathrm{ C }_{n}$は$2,2(2n-1),$ に加え$(2n-3)$の素因数という最低$3$つの素因数を持つ。
ゆえにこの時は題意を満たす$n$は存在しない。
$(Ⅲ)$$a=1$かつ$2n-3$に$3$以外の素因数が含まれないとき,
つまり,$2n-3=3$で,$n=3$で計算すると題意を満たす。
$∴$$n \geq3 $のとき,$n=3$
$n=1,2$を計算すると題意を満たす。
以上から求める全ての$n$は,$n=1,2,3$$\cdots$(答)
いかがでしたか?
ちなみにこの問題の経緯は$(4)$が始まりで,私が初めに考えたのが別解の考えでした。
その後$(3)$を考えだして模範解答を見つけたので誘導付けて問題にした感じです。
楽しんでいただけたら幸いです!
皆さまの日常によき数学の彩を願い、それではまたいつか!