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相加相乗平均の不等式の間に

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はじめに読んでほしい

この記事は初心者な小心者が書いています。間違いや不備があるかも知れません。見つけたら教えて頂けると嬉しいです。
またアドバイスが有れば是非、コメントしてくれると有難いです。

本題

証明したい不等式はこれです。

相加相乗平均の間の不等式

x1,xn0k次の基本対称対称式をSkと書いたとき、以下が成り立つ。
Sk(nk)kSl(nl)l(1k<ln)
l,kについて等号条件は、x1=xnとなること。

k次の基本対称式とは1r1<rknxrkxrkのコトで、 対称式の基本定理 解と係数の関係 でよく出てきます。

k=1,l=nのときはS1=xi,Sn=x1xnなので、よくよく知られている相加相乗平均の不等式です。つまりこれは相加相乗平均の不等式の一般化になるわけです(この証明に相加相乗平均の不等式を使うのでコレから相加相乗平均の不等式を示すのは循環論法になってしまいます)。相加相乗平均の不等式の証明は こちら に。
Sk(nk)kは平均のような性質を持っています(実際k=1,nの時は相加平均と相乗平均)。調べた限りでは何か名前が付いている訳ではないようです(応用が多分できないから)。

次に必要な補題を上げます。

ガウス・ルーカスの定理

f(x)を複素数係数多項式とする。f(x)の零点集合はf(x)の零点集合の凸包に含まれる。

証明は こちら を参照のコト(そんなに難しくない)。
この定理は全ての多項式の零点がある凸集合(上半平面や実数直線)に含まれるとき、その導関数の零点もその凸集合に含まれることを言ってくれます。不等式の証明にはこの定理が重要、或いはコレを使うと簡単になります。
それともう一つ簡単な補題を上げます。

n2と実数aと実数係数多項式f(x)に対して(x+a)n=f(x)が成り立ちf(x)の零点が全て実数ならばf(x)=(x+a)n+1n+1と書ける。

補題3

f(x)=(x+a)nを積分することで定数cを用いてf(x)=(x+a)n+1n+1+cと書ける。c=0を示せばよい。
c>0であるならy=x+a(n+1)cn+1と置ける。yn+1+1=0の解を考えたときy=eiπn+1は解であるが実数でない。
c<0のときc=c>0と置いてy=x+a(n+1)cn+1と置ける。yn+11=0の解を考える。yn+11=(y1)(yn+y+1)と分解した時、yn+y+1は既約なので解は実数解でないものが取れる。

証明がまどろっこしいですね。証明で不十分な所があるかも知れないです。
ではいよいよ冒頭の定理を証明していきます。

相加相乗平均の間の不等式

1k<lnに対して不等式が成り立つことをP(n,l,k)で表すこととする。証明の方針は、
(1) P(n,n,k)を示す
(2) l<nに対してP(n1,l,k)ならP(n,l,k)を示す
(3) 等号条件を示す
(1)と(2)によって全ての1k<lnに対して不等式が証明し尽くされる(帰納法の変種)。

(1) P(n,n,k)を示す

相加相乗平均の不等式を用いて
Sk(nk)k=1r1<rknx1xk(nk)k(x1xk)(n1k1)(nk)k=(x1xk)(n1k1)n(n1k1)=x1xnn=Snn
よってP(n,n,k)

(2) l<nに対してP(n1,l,k)ならP(n,l,k)を示す

f(x)=(x+x1)(x+xn)としたとき、Sk=f(nk)(0)(nk)となる。
g(x)=f(x)nとしたとき、最高次係数が1でありガウス・ルーカスの定理より全ての零点は非正な実数である。よってy1,yn10を用いてg(x)=(x+y1)(x+yn1)と書ける。
y1,yn1n1変数のk次の基本対称式をSkと書いたとき、Sk=g(n1k)(0)(n1k)となる。よって
Sk(nk)k=f(nk)(0)(nk)(nk)k=ng(n1k)(0)(nk)(nk)k=g(n1k)(0)(n1k)(n1k)k=Sk(n1k)kが言える。同様にSl(n1l)l=Sl(nl)lも成り立つ。
仮定よりSk(n1k)kSl(n1l)lが言えるのでSk(nk)k=Sk(n1k)kSl(n1l)l=Sl(nl)l
よってP(n,k,l)

(3) 等号条件を示す

Sk(nk)k=Sl(nl)lが成り立っていると仮定する。
f(x)=(x+x1)(x+xn)としたときh(x)=nf(nl)(x)lは最高次係数が1かつ、ガウス・ルーカスの定理を繰り返し使用することで全ての零点が非正な実数であることが分かる。
よってz1,zl0を用いてh(x)=(x+z1)(x+zl)と書ける。
z1,zll変数のl次やk次の基本対称式をSlSkと書いたとき、Sl=h(ll)(0)(ll)=z1zl,Sk=h(lk)(0)(lk)となる。
Sk(nk)k=f(nk)(0)(nk)(nk)k=nh(lk)(0)l(nk)(nk)k=h(lk)(0)(lk)(lk)k=Sk(lk)kが言えて、同様にSl(nl)l=Sl(ll)l=z1zllも成り立つ。
よってSk(nk)k=Sl(nl)lSk(lk)k=Sl(ll)l=z1zllが言えて、相加相乗平均の等号条件よりz1=zlが言える。
h(x)=(x+z1)(x+zl)=(x+z1)lが言える。補題3を繰り返し使用することでf(x)=(x+z1)nが言えて、z1=x1=xnが成り立つ。

証明できました。私はガウス・ルーカスの定理を初めて使いました。
自分中では証明方法はコレしか思い付きませんでしたが、他の証明方法でモット分かりやすいものが有れば是非是非教えてほしいです(反語じゃないヨ)。
これを裏っ返すことで調和平均みたいな平均も作れて、これにも不等式を作ることができます。

本題じゃない方

上の定理からの発展について考えました。ただ私は力不足で力尽きたのでココに供養しておきます。
あはよくば誰かに解決して欲しい(他力本願)。

算術幾何平均のn項版

算術幾何平均とはa,b0に対してa0=a,b0=bからはじめてan+1=an+bn2,bn+1=anbnと定めた数列の極限として定まる平均です。2つのこの数列が同じ極限を持つことは、二変数の相加相乗平均の不等式より分かります。
相加相乗平均の間の不等式を考えようとしていたのは算術幾何平均をn項に拡張しようということを考えていたからです。算術幾何平均を二変数と同様に定めたいならば、n変数から定まるn個の平均とそこに定まる不等式が必要です。
n個の平均と不等式自体は、相加相乗平均の不等式を一定のn分割をすることで容易に作ることはできますが、そこに妥当性や自然性があるのかが疑問でした(若しかしたらあるのかも知れませんが)。
この記事で相加相乗平均の間に作った不等式はマアマア自然な拡張になっていると思います。

n変数算術幾何平均

x1,xn0に対してSk(x1,xn)k次基本対称式を表すものとする。
xk(0)からはじめてxk(m+1)=Sk(x1(m),xn(m))(nk)kと定めた数列の極限をx1,xnの算術幾何平均という。これはkに寄らずに定める。

定義のwell-defined性は今回の不等式を用いて コレ と大体同じように証明できます。
ところで2変数の算術幾何平均は積分を用いて表すことができます。

算術幾何平均の表示

M(a,b)a,bの算術幾何平均を表すものとする。
M(a,b)=π2/0π2dθa2cos2θ+b2sin2θ

分母に積分が入ってるので若干見にくい気もしますが、フワフワな極限をキッチリした積分で表すことができるのは魅力的です。
さて、上で定義したn変数の算術幾何平均にもこのようなキッチリした表示があるのでしょうか。私には分かりませんでした。

重さ付き平均への拡張

通常の相加相乗平均の不等式には単純な一般化があります。

重さ付き相加相乗平均の不等式

x1,xn,λ1,λn0λ1+λn=1が成り立つときλ1x1+λnxnx1λ1xnλnが言える。

1n=λ1=λnのとき、これは相加相乗平均の不等式に一致します。
証明はイェンセンの不等式を用いる方法もありますが、相加相乗平均の不等式の変数を増やしていって近似して不等式を証明する方法があります(せせこましいですが)。
この後者の方法で相加相乗平均の間に出てきた平均の変数を増やしていって重さ付きにすることができます。
ただこの近似の方法というには一意ではなく、変数を増やすごとにkも増やすか増やさないか、増やすにしてもどれぐらいで増やしていくのかという所で唯一には定りません。重さ付き相加相乗平均の不等式はkの増やし加減の上限と加減を簡潔に示したものになります。
重さ付きの平均に具体的な表示があるかどうかが分かれば嬉しいのですが、私は力不足でした。

終わりに

読んでくれてありがとうございます。間違いや変えた方がいいような所は教えてくれると嬉しいです。
初心者ってどこまでを言うんでしょうかネ。

投稿日:326
更新日:47
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数学が人並みに好きです。人並みです。独学でやってるので間違いが多いかもしれません。

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