はじめに読んでほしい
この記事は初心者な小心者が書いています。間違いや不備があるかも知れません。見つけたら教えて頂けると嬉しいです。
またアドバイスが有れば是非、コメントしてくれると有難いです。
本題
証明したい不等式はこれです。
相加相乗平均の間の不等式
の次の基本対称対称式をと書いたとき、以下が成り立つ。
各について等号条件は、となること。
次の基本対称式とはのコトで、
対称式の基本定理
や
解と係数の関係
でよく出てきます。
のときはなので、よくよく知られている相加相乗平均の不等式です。つまりこれは相加相乗平均の不等式の一般化になるわけです(この証明に相加相乗平均の不等式を使うのでコレから相加相乗平均の不等式を示すのは循環論法になってしまいます)。相加相乗平均の不等式の証明は
こちら
に。
は平均のような性質を持っています(実際の時は相加平均と相乗平均)。調べた限りでは何か名前が付いている訳ではないようです(応用が多分できないから)。
次に必要な補題を上げます。
ガウス・ルーカスの定理
を複素数係数多項式とする。の零点集合はの零点集合の凸包に含まれる。
証明は
こちら
を参照のコト(そんなに難しくない)。
この定理は全ての多項式の零点がある凸集合(上半平面や実数直線)に含まれるとき、その導関数の零点もその凸集合に含まれることを言ってくれます。不等式の証明にはこの定理が重要、或いはコレを使うと簡単になります。
それともう一つ簡単な補題を上げます。
と実数と実数係数多項式に対してが成り立ちの零点が全て実数ならばと書ける。
補題3
を積分することで定数を用いてと書ける。を示せばよい。
であるならと置ける。の解を考えたときは解であるが実数でない。
のときと置いてと置ける。の解を考える。と分解した時、は既約なので解は実数解でないものが取れる。
証明がまどろっこしいですね。証明で不十分な所があるかも知れないです。
ではいよいよ冒頭の定理を証明していきます。
相加相乗平均の間の不等式
に対して不等式が成り立つことをで表すこととする。証明の方針は、
(1) を示す
(2) に対してならを示す
(3) 等号条件を示す
(1)と(2)によって全てのに対して不等式が証明し尽くされる(帰納法の変種)。
(1) を示す
相加相乗平均の不等式を用いて
よって
(2) に対してならを示す
としたとき、となる。
としたとき、最高次係数がでありガウス・ルーカスの定理より全ての零点は非正な実数である。よってを用いてと書ける。
の変数の次の基本対称式をと書いたとき、となる。よって
が言える。同様にも成り立つ。
仮定よりが言えるので
よって
(3) 等号条件を示す
が成り立っていると仮定する。
としたときは最高次係数がかつ、ガウス・ルーカスの定理を繰り返し使用することで全ての零点が非正な実数であることが分かる。
よってを用いてと書ける。
の変数の次や次の基本対称式をやと書いたとき、となる。
が言えて、同様にも成り立つ。
よってはが言えて、相加相乗平均の等号条件よりが言える。
が言える。補題3を繰り返し使用することでが言えて、が成り立つ。
証明できました。私はガウス・ルーカスの定理を初めて使いました。
自分中では証明方法はコレしか思い付きませんでしたが、他の証明方法でモット分かりやすいものが有れば是非是非教えてほしいです(反語じゃないヨ)。
これを裏っ返すことで調和平均みたいな平均も作れて、これにも不等式を作ることができます。
本題じゃない方
上の定理からの発展について考えました。ただ私は力不足で力尽きたのでココに供養しておきます。
あはよくば誰かに解決して欲しい(他力本願)。
算術幾何平均のn項版
算術幾何平均とはに対してからはじめてと定めた数列の極限として定まる平均です。2つのこの数列が同じ極限を持つことは、二変数の相加相乗平均の不等式より分かります。
相加相乗平均の間の不等式を考えようとしていたのは算術幾何平均を項に拡張しようということを考えていたからです。算術幾何平均を二変数と同様に定めたいならば、変数から定まる個の平均とそこに定まる不等式が必要です。
個の平均と不等式自体は、相加相乗平均の不等式を一定の分割をすることで容易に作ることはできますが、そこに妥当性や自然性があるのかが疑問でした(若しかしたらあるのかも知れませんが)。
この記事で相加相乗平均の間に作った不等式はマアマア自然な拡張になっていると思います。
変数算術幾何平均
に対してを次基本対称式を表すものとする。
からはじめてと定めた数列の極限をの算術幾何平均という。これはに寄らずに定める。
定義のwell-defined性は今回の不等式を用いて
コレ
と大体同じように証明できます。
ところで変数の算術幾何平均は積分を用いて表すことができます。
分母に積分が入ってるので若干見にくい気もしますが、フワフワな極限をキッチリした積分で表すことができるのは魅力的です。
さて、上で定義した変数の算術幾何平均にもこのようなキッチリした表示があるのでしょうか。私には分かりませんでした。
重さ付き平均への拡張
通常の相加相乗平均の不等式には単純な一般化があります。
のとき、これは相加相乗平均の不等式に一致します。
証明はイェンセンの不等式を用いる方法もありますが、相加相乗平均の不等式の変数を増やしていって近似して不等式を証明する方法があります(せせこましいですが)。
この後者の方法で相加相乗平均の間に出てきた平均の変数を増やしていって重さ付きにすることができます。
ただこの近似の方法というには一意ではなく、変数を増やすごとにも増やすか増やさないか、増やすにしてもどれぐらいで増やしていくのかという所で唯一には定りません。重さ付き相加相乗平均の不等式はの増やし加減の上限と加減を簡潔に示したものになります。
重さ付きの平均に具体的な表示があるかどうかが分かれば嬉しいのですが、私は力不足でした。
終わりに
読んでくれてありがとうございます。間違いや変えた方がいいような所は教えてくれると嬉しいです。
初心者ってどこまでを言うんでしょうかネ。