こんにちは!競技数学と競プロが好きな高校生のButterFlvです.
実は以前からmathlogに記事を投稿してみたいなーと考えていて, なかなかネタが無く始める機会を持てずにいたところ, 友人のW2TZMS君が提供してくれた問題が面白かったので記事にしてみました.
誤りがあればコメントなどで指摘していただけるとありがたいです.
扱う問題はこんな感じです(気持ち部分)
楕円軌道上を一定の速さで運動する点に加わる力の大きさの時間平均を求めよ.
状況設定の想定的には, 動かせる点電荷を操作して他の点電荷を楕円軌道上でいい感じに引っ張るみたいな感じです. (むりやり)
質量$m$の質点が速さ$v$で楕円軌道上を運動するとき, 軌道の長さを$L$とすると質点に加わる力の大きさの時間平均は$\dfrac{2\pi mv^2}{L}$と表せる.
微小量を置いて極限を考える方針です.
質量を$m$, 速さを$v$とし, 楕円軌道を定数$a,b$と媒介変数$\theta$で$(x,y)=(a\cos\theta,b\sin\theta)$とおく. $\theta$に対応する速度ベクトル, 加速度ベクトル, 力ベクトルをそれぞれ$\vect{v(\th)},\vect{\alpha(\th)},\vect{F(\th)}$とおく. $\dfrac{dx}{d\th}=-a\sin\th,\ \dfrac{dy}{d\th}=b\cos\th$より$$L=\int\sqrt{(dx)^2+(dy)^2}=\int_0^{2\pi}\sqrt{(a\sin\th)^2+(b\cos\th)^2}\ d\th$$とできる. ここで$h(x)=\sqrt{(a\sin x)^2+(b\cos x)^2}$とおき, $\displaystyle H(x)=\int_0^xh(u)\ du$を定義する.
任意に一つ$\th$をとり, $\dd t$の時間の間に$\th\to\dd\th$と変化したとする. このとき$\dd t$と$\dd\th$の間には$\displaystyle v\cdot\dd t=\int_\th^{\th+\dd\th}h(u)\ du=H(\th+\dd\th)-H(\th)$という関係が成立している.
運動方程式より$\vect{F(\th)}=m\cdot\vect{\alpha(\th)}=m\cdot\left(\vect{v(\th+\dd\th)}-\vect{v(\th)}\right)\cdot\dfrac{1}{\dd t}$であり, $\vect{v(\th)}=v\cdot\left(\dfrac{dx}{d\th}\cdot\dfrac{1}{h(\th)},\dfrac{dy}{d\th}\cdot\dfrac{1}{h(\th)}\right)$なので$\vect{F(\th)}$の$x$成分について考えると$$\begin{aligned}
\vect{F(\th)}_x
&= mv\cdot\dfrac{-\frac{a\sin(\th+\dd\th)}{h(\th+\dd\th)}+\frac{a\sin\th}{h(\th)}}{\frac{1}{v}\cdot(H(\th+\dd\th)-H(\th))}\\
&=-amv^2\cdot\dfrac{\frac{\sin(\th+\dd\th)}{h(\th+\dd\th)}-\frac{\sin\th}{h(\th)}}{\dd\th}\cdot\dfrac{\dd\th}{H(\th+\dd\th)-H(\th)}\\
&=-amv^2\cdot\dfrac{\cos\th\cdot h(\th)-\sin\th\cdot h^\prime(\th)}{h(\th)^2}\cdot\dfrac{1}{h(\th)}\quad(商の微分より)\\
&=-\dfrac{abmv^2}{h(\th)^4}\cdot b\cos\th
\end{aligned}$$
$y$成分も同様に計算することで$\vect{F(\th)}=\dfrac{abmv^2}{h(\th)^4}\cdot(-b\cos\th,-a\sin\th)$とわかる.
初めの時刻を$0$として時刻$t$のときを考える. $t$と$\th$の関係は$vt=H(\th)\Longleftrightarrow \th=H^{-1}(vt)$とできるので力の大きさの平均$\overline{F}$は$\displaystyle\overline{F}=\dfrac{v}{L}\int_0^{\frac{v}{L}}\left\lvert\vect{F(H^{-1}(vt))}\right\rvert\ dt$と表すことができる. $t=\dfrac{H(\th)}{v}$と置換すると$$\overline{F}=\dfrac{v}{L}\int_0^{2\pi}\left\lvert\vect{F(\th)}\right\rvert\cdot\dfrac{h(\th)}{v}\ d\th =\dfrac{abmv^2}{L}\int_0^{2\pi}\dfrac{d\th}{(a\sin\th)^2+(b\cos\th)^2}$$ここで一般に$$\int\dfrac{d\theta}{(a\sin\theta)^2+(b\cos\theta)^2}=\dfrac{1}{ab}\tan^{-1}\left(\dfrac{a}{b}\tan\theta\right)+C\ (Cは積分定数)$$であるので,$$\overline{F}=\dfrac{abmv^2}{L}\cdot 4\cdot\dfrac{1}{ab}\left(\lim_{\theta\to\frac{\pi}{2}-0}\tan^{-1}\left(\dfrac{a}{b}\tan\theta\right)\right)=\dfrac{2\pi mv^2}{L}$$
初投稿でした. いかがでしたでしょうか?
あまり高度な話題は扱えないと思いますが, これからも面白いと思ったものを記事にしていきたいと思います.
(2024/12/05 追記) @Sparrowckun 君に$v$ベクトルの表示について指摘をいただいたので修正しました.