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現代数学解説
文献あり

バーゼル問題の証明に出てくる無限積を3乗に変えてみた

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今回の問題

n=1(1x3n3)は閉じた形で表されるか?

皆さんバーゼル問題はご存じですか? (平方数の逆数和の値を求める問題)
その問題のオイラーの証明に上の式の2乗バージョンが出てくるのですが、
n=1(1x2n2)=sin(πx)πx
この式にはなんとsinが現れるのです。
これを3乗にかえてみるとどんな関数になるのかを少し前から調べていたので記事にしてみました。

2乗の場合の証明

3乗を考える前に先ほど話した2乗の場合について考えてみましょう。
次の公式を証明していきます。

n=1(1x2n2)=sin(πx)πx

f(x)=πxsin(πx)n=1(1x2n2)が定数関数f(x)=1であることを示す。
対数微分すると、
f(x)f(x)=1x+n=12xx2n2πcotπxとなる。ここで、πcotπxは三角関数の部分分数分解の公式を利用すると、
πcotπx=1x+n=12xx2n2であるため、
f(x)f(x)=1x+n=12xx2n2(1x+n=12xx2n2)=0
よって、f(x)=0であるため、f(x)=C (Cは定数)
ここで、limx0f(x)=limx0πxsin(πx)n=1(1x2n2)=limx0πxsin(πx)=1
よってf(x)=1

三角関数の部分分数分解については こちら

これを用いると、あの有名なバーゼル問題の証明が得られます。

マクローリン展開と先ほど得た式のx2の係数を比較する。
sin(πx)πx=n=1(1x2n2)(1)
sin(πx)πx=n=0(1)nπ2n(2n+1)!x2n(2)
(1)の式のx2の項は、n=11n2であり、
(2)の式のx2の項は、π26であるため、
ζ(2)=n=11n2=π26

とても美しいです。最初見たときはπが出てくることにとても驚きました。

3乗の場合はどうなるか

美しさのあまり本題のことを忘れていました。
3乗の場合はどうなるでしょうか?(美しい形になってほしいな)

g(x)=n=1(1x3n3)となる関数g(x)があるとする。
両辺対数微分すると、
g(x)g(x)=3x2n=11n3x3=3x2n=1(2n+x3n2(n2+nx+x2)13n2(xn))=x2n=1(2n+xn2(n2+nx+x2))π2x6ψ(1x)γ

無☆理☆

次の手

こうなることは想定内です。まだ次の手を考えてきているのでご安心ください。
次の無限積表示を使います。

ガンマ関数のワイエルシュトラスの無限積表示

1Γ(x)=xeγxn=1(1+xn)exn

ちなみにこれを用いてガンマ関数の相反公式を導くことができます。

Γ(x)Γ(1x)=πsin(πx)を証明せよ。

ワイエルシュトラスの乗積表示にxxを代入します。
1Γ(x)=xeγxn=1(1+xn)exn
1Γ(x)=xeγxn=1(1xn)exn
二つをかけ合わせます。
1Γ(x)Γ(x)=xeγxn=1(1+xn)exnxeγxn=1(1xn)exn=x2n=1(1+xn)exn(1xn)exn=x2n=1(1x2n2)=xsin(πx)π
となり、逆数を取ると
Γ(x)Γ(x)=πxsin(πx)
さらにxΓ(x)=Γ(1x)だから、両辺にxをかけて
Γ(x)Γ(1x)=πsin(πx)

このように、xxを代入したものを掛け合わせるといい感じに(1x2/n2)だけが残りました。
これを3乗の時もできないでしょうか?

そのようになるためにはある数a,b,cが次を満たしていてほしい。
(1+axn)(1+bxn)(1+cxn)=1+x3n3

何を見つければいいか分かったところで早速求めていきましょう!

(1+axn)(1+bxn)(1+cxn)=1+x3n31+(a+b+c)xn+(ab+ac+bc)x2n2+abcx3n3=1+x3n3
係数を比較すると、
{a+b+c=0ab+ac+bc=0abc=1
これを頑張って計算すると、
{a=1b=1+3i2c=13i2となります。(本当は対称式なので入れ替えたやつも解になるが)

a,b,cはどれも1の三乗根となりました。
あとはこれをワイエルシュトラスの乗積表示に代入するだけです。
(以後、1+3i2=ωとする。)

1Γ(x)=xeγxn=1(1+xn)exn, 1Γ(ωx)=ωxeγωxn=1(1+ωxn)eωxn, 1Γ(ω2x)=ω2xeγω2xn=1(1+ω2xn)eω2xn
この3つの式を掛け合わせると
1Γ(x)Γ(ωx)Γ(ω2x)=xeγxn=1(1+xn)exnωxeγωxn=1(1+ωxn)eωxnω2xeγω2xn=1(1+ω2xn)eω2xn=ω3x3e(ω2+ω+1)γxn=1(1+xn)(1+ωxn)(1+ω2xn)e(ω2+ω+1)xn=x3n=1(1+x3n3)
よって、
n=1(1+x3n3)=1x3Γ(x)Γ(ωx)Γ(ω2x)=1xΓ(x)ωxΓ(ωx)ω2xΓ(ω2x)=1Γ(1+x)Γ(1+ωx)Γ(1+ω2x)
xxに置き換えて、
n=1(1x3n3)=1Γ(1x)Γ(1ωx)Γ(1ω2x)

n=1(1x3n3)=1Γ(1x)Γ(1ωx)Γ(1ω2x) (ここでωは1の三乗根,1+3i2)

できましたー!!!x3=1の解が出てきましたね。
ガンマ関数が残っているのでζ(3)を求めることはできませんでしたが…
ガンマ関数が消えた形で表せたらζ(3)の閉じた形が得られちゃいます(多分)。

特殊値

x=m,mω,mω2 (mN)のとき

これに関しては、簡単に0と分かります。

m3=(mω)3=(mω2)3であるため、m3を代入すればいい
n=1(1m3n3)=1Γ(1m)Γ(1ωm)Γ(1ω2m)
1Γ(1m)mが自然数であるとき0になる。

x=1のとき

次に
n=1(1+1n3)の値を求めましょう。

n=1(1+1n3)=1Γ(2)Γ(1+ω)Γ(1+ω2)=1Γ(1+ω)Γ(1+ω2)=1Γ(112+32i)Γ(11232i)=1Γ(12+32i)Γ(1(12+32i))=1πsin(π(12+32i))=1πsin(π2+32πi)=1πcos(32πi)=1πcosh(32π)

n=1(1+1n3)=1πcosh(32π)

ちゃんと閉じた値が得られました。やはりπとは関係が深いんですね。

さらに次数を上げる

3乗の時のようにすれば次数が自然数のときは計算できます。

n=1(1xknk)=n=1k1Γ(1e2niπkx)

k=4

n=1(1x4n4)=n=141Γ(1e2niπ4x)=1Γ(1eiπ2x)Γ(1eiπx)Γ(1e3iπ2x)Γ(1e2iπx)=1Γ(1ix)Γ(1+x)Γ(1+ix)Γ(1x)=1ixΓ(ix)Γ(1ix)xΓ(x)Γ(1x)=sin(iπx)sin(πx)ix2π2=sinh(πx)sin(πx)x2π2
よって、n=1(1x4n4)=sinh(πx)sin(πx)x2π2
右辺をテイラー展開したものとx4の項を比較すると、
n=11n4=π490より、
ζ(4)=n=11n4=π490

こんな感じで次数が偶数の時は相反公式を利用することによって、ガンマ関数を消してζ(2n)を求めることができます。
しかし奇数の時は相反公式を適用できないためこの方法ではζ(2n+1)を求めることはできません。
ここにも奇数ゼータの難しさが現れていますね。

おわりに

次回は多分関数的平方根の続きをやります。
いずれ私のアイコンの数式(今回のにかなり関係がある)についても記事にしたいです。

参考文献

投稿日:23日前
OptHub AI Competition

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投稿者

cbrtx
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  3. 3乗の場合はどうなるか
  4. 次の手
  5. 特殊値
  6. さらに次数を上げる
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