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三角関数を含む積分のテクニック

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$$\newcommand{polylog}[1]{\mathrm{Li}_{#1}} $$

はじめに

お久しぶりです。新しく書くことをみつけたのでここに書いていきます。
今回解きたいのはこんな感じの不定積分です。

今回解くやつ

$$ \int\frac{\sin^3{x}}{\sin{x}+\cos x+1}\,dx $$

分母に$\sin x+\cos x +1$があるやつですね!
実は三角関数のみを含む積分は$\tan{x/2}=t$なる置換をすると有理関数の積分になるので理論上は解けるのですが、今回のやつは$\sin^3{x}$がいるのであまり現実的ではありませんね。
ここで今回は2つのテクニックを使ってこの問題を解いていきます。

準備

分母に$\sin x+\cos x+1,$分子に$\sin x$がある積分に対して下のような等式が成り立ちます。

分母に$\sin x+\cos x+1$を含む積分

$$ \int\frac{f(x)\sin x}{\sin x+\cos x+1}\,dx=2\int\frac{f(2t)\sin t}{\sin t+\cos t}\,dt\qquad(x=2t) $$

$$ \begin{align} \int\frac{f(x)\sin x}{\sin x+\cos x+1}\,dx&=\int\frac{f(2t)\sin 2t}{\sin 2t+\cos2t+1}\,2dt\\[5pt] &=2\int\frac{f(2t)\cdot2\sin t\cos t}{2\sin t\cos t+2\cos^2t}\,dt\qquad\because\,倍角・半角公式 \\[5pt] &=2\int\frac{f(2t)\sin t}{\sin t+\cos t}\,dt \end{align} $$

これだけでは分子の1がいなくなっただけなのであまり恩恵を感じませんが、次に紹介するテクニックと合わさると非常に強力な力を発揮します。
しかし、その前に上のテクニックだけで解ける積分を1つ解いてみましょう。

$$ \int_{0}^{\pi}\frac{\sin x\sqrt{1+\sin x}}{\sin x+\cos x+1}\,dx $$

補題1において$f(x)=\sqrt{1+\sin x}$とすると、
$$ \begin{align} \int_{0}^{\pi}\frac{\sin x\sqrt{1+\sin x}}{\sin x+\cos x+1}\,dx&=2\int_{0}^{\pi/2}\frac{\sin t\sqrt{1+\sin 2t}}{\sin t+\cos t}\,dt\\[5pt] &=2\int_{0}^{\pi/2}\frac{\sin t\sqrt{(\sin t+\cos t)^2}}{\sin t+\cos t}\,dt\\[5pt] &=2\int_{0}^{\pi/2}\sin t\,dt\qquad\because\,\sin t+\cos t>0\\[5pt] &=2 \end{align} $$

$$ $$

さて、次のテクニックは対称性を持つ積分に対して有効なテクニックです。

対称性と積分

求めたい積分$I$に対して対称的な積分を$J$とする。
このとき$I+J,I-J$など、$I,J$に関する1次独立な線型結合が2つ求まれば$I$$J$がともに求まる。

これに関しては例を見たほうが分かりやすいので少し例を見てみましょう。

$$ \int_{0}^{\pi/2}\frac{\sin x}{\sin x+\sqrt{3}\cos x}\,dx $$

$\cos x$の係数に$\sqrt{3}$がいるので上手く$\text{King Property}$が使えません。
そこで、
$$ I=\int_{0}^{\pi/2}\frac{\sin x}{\sin x+\sqrt{3}\cos x}\,dx\;,\quad J=\int_{0}^{\pi/2}\frac{\cos x}{\sin x+\sqrt{3}\cos x}\,dx $$
と置きます。求めたいのは$I$ですね。
しかし、このままそれぞれの積分を見ていても進展がないので、これらをうまく調整して簡単な積分を作ります。
まず、真っ先に
$$ I+\sqrt{3}J=\int_{0}^{\pi/2}\frac{\sin x+\sqrt{3}\cos x}{\sin x+\sqrt{3}\cos x}\,dx=\frac{\pi}{2} $$
は思いつくでしょう。
しかし今回$I,J$の二つを知りたいのでもう一つの関係式を見つける必要があります。どうしたら作れるでしょうか?
色々手を動かしていると微分系の接触の形が作れそうだと分かります。
\begin{align} -\sqrt{3}I+J&=\int_{0}^{\pi/2}\frac{-\sqrt{3}\sin x+\cos x}{\sin x+\sqrt{3}\cos x}\,dx\\[5pt] &=\int_{0}^{\pi/2}\frac{(\sin x+\sqrt{3}\cos x)'}{\sin x+\sqrt{3}\cos x}\,dx\\[5pt] &=\left[\ln(\sin x+\sqrt{3}\cos x)\right]_{0}^{\pi/2}=-\frac{1}{2}\ln3 \end{align}
分母の微分が分子になるように上手く係数を調整するのがポイントですね。
今出てきた$I$$J$に関する2つの式を連立して、$I,J$を求めると、
$$ I=\frac{\pi+\sqrt{3}\ln3}{8} $$
$$ J=\frac{\sqrt{3}\pi-\ln3}{8} $$
$$ \therefore\,\int_{0}^{\pi/2}\frac{\sin x}{\sin x+\sqrt{3}\cos x}\,dx=\frac{\pi+\sqrt{3}\ln3}{8} $$

このように、一見解き方が分からない積分も対称性を考えると上手くいくことがあります。
特に三角関数の積分ではこの解法が使える問題がしばしばあるので頭の片隅にいれておくといいと思います。

証明

それでは実際に最初の積分を計算してみましょう。
求める積分は
$$ \int\frac{\sin^3{x}}{\sin{x}+\cos x+1}\,dx $$
こんなやつでしたね。
早速、補題1において$f(x)=\sin^2{x}$とすると、
\begin{align} \int\frac{\sin^3{x}}{\sin{x}+\cos x+1}\,dx&=2\int\frac{\sin^2{2t}\sin t}{\sin{t}+\cos t}\,dt\qquad\because\,x=2t\\[5pt] &=8\int\frac{\sin^3t\cos^2t}{\sin t+\cos t}\,dt\qquad\because\,倍角公式\\[5pt] \end{align}
ここで、
$$ I=8\int\frac{\sin^3t\cos^2t}{\sin t+\cos t}\,dt $$
$$ J=8\int\frac{\sin^2t\cos^3t}{\sin t+\cos t}\,dt $$
とおくと、求めたい積分は$I$で、
\begin{align} I+J&=8\int\frac{(\sin t+\cos t)\sin^2t\cos^2t}{\sin t+\cos t}\,dt\\[5pt] &=8\int\sin^2t\cos^2t\,dt\\[5pt] &=\int2\sin^2{2t}\,dt\\[5pt] &=\int(1-\cos{4t})\,dt\\[5pt] &=t-\frac{1}{4}\sin{4t}\\[5pt] &=\frac{x}{2}-\frac{1}{4}\sin{2x} \end{align}
これに関しては、わざわざ$x=2t$と置かなくてもいい気がしますがさっきの関係を分かりやすくしたかったので一度置換しました。
※積分定数は最後につければ事足りるので途中では省略して考えます。
どんどん行きましょう。
\begin{align} I-J&=8\int\frac{(\sin t-\cos t)\sin^2t\cos^2t}{\sin t+\cos t}\,dt\\[5pt] &=-\int\frac{(2\sin t\cos t)^2}{(\sin t+\cos t)^2}\cdot2(\sin t+\cos t)(\cos t-\sin t)\,dt\\[5pt] &=-\int\frac{\big((\sin t+\cos t)^2-1\big)^2}{(\sin t+\cos t)^2}\cdot\frac{d}{dt}(\sin t+\cos t)^2\,dt\\[5pt] &=-\int\frac{(y-1)^2}{y}\,dy\qquad\because\,y=(\sin t+\cos t)^2=1+\sin x\\[5pt] &=-\frac{1}{2}y^2+2y-\ln y\\[5pt] &=-\frac{1}{2}\sin^2x+\sin x-\ln(1+\sin x)+\frac{3}{2} \end{align}
これで$I+J,I-J$が求まりました。まとめるとこんな感じです。
$$ I+J=\frac{x}{2}-\frac{1}{2}\sin x\cos x $$
$$ I-J=-\frac{1}{2}\sin^2x+\sin x-\ln(1+\sin x) $$
※このとき$I-J$については定数項を0とした。
上の二つを足して2で割って整理することで
$$ I=\int\frac{\sin^3{x}}{\sin{x}+\cos x+1}\,dx=\frac{x-\sin x(\sin x+\cos x-2)}{4}-\frac{1}{2}\ln(1+\sin x)+C $$
を得る。

最後に

今回のテクニックは万能ではありませんが、積分をアクロバティックに処理するには十分なテクニックだった気がします。(高校数学で理解できるのも良いところですね!)
最後に、このテクニックを使って解ける問題をいくつかあげておきます。お暇なかたは解いてみてね!(^^)

$$ \int\frac{e^x}{e^x+e^{-x}}\,dx=\frac{\cosh x+x}{2}+C $$
$$ \int\frac{\sin^3x}{\sin x+\cos x}\,dx=\frac{2x-\sin x(\sin x+\cos x)}{4}-\frac{1}{2}\ln(1+\sin 2x)+C $$
$$ \int\frac{\sin x\cos x}{\sin x +\cos x+1}\,dx=\frac{\sin x-\cos x-x}{2}+C $$
$$ \int\frac{\sin x}{\sin x+\cos x+1}\,dx=\frac{x-\ln(1+\sin x)}{2}+C $$

投稿日:10日前
更新日:1日前
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