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幾何学の本質を教えよう!(上級者向け)

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幾何学の本質を教えよう!

自由度とは
自由度ーある問題の自由度とは、長さをnこ定めたときに一意にその図をかけるような最小のnとする。(図はそのなかで自由度が最大になるものを用意する)
ただし、平行移動、回転移動、対称移動によって一致する図は同一視する。

この内容が最も言いたかったことである。
いろいろ用語の定義
・図ー問題が与えられたときに、出てくる点、直線、円の全て
・確定辺ー図が一意に定まるような、長さのとりかたのうち長さの数が最も少なくなるような長さのとり方をしたとき、長さに対応する線分。確定辺のとり方は複数あることが多い。
基本的には追加要素の度に確定辺を用意すれば問題ないが、結果的束縛がある場合これが上手くいかないこともある。
・自由度ー確定辺の数
・暫定自由度ー問題文をn文字目まで読んだときにかける図の暫定の自由度
・追加要素ー新たに何らかの自由な点を用意する。自由度が増加する。
・束縛ーある点に対して与えられる条件。ほとんどが定義的束縛である。
・定義的束縛ー「ΔABCの外接円上に点Pをとる」など、追加とセットの束縛のこと。そのため、暫定自由度が減少しない。
・結果的束縛ー「このときB,C,P,Qが共円になった」など。この瞬間、暫定自由度が減少する。これはとく過程で上手く言い換えがいかない場合、非常に厄介である。はじめの初等的考察によって、確定辺のとり方を変更すると良い。この際、証明の議論に同一法が必要になる。
・同一法
自由度の副産物。船旅を参照。
・辺比点
辺上の点が与えられたとき、長さではなく比で管理すること。重心座標のチェバ線と相性がいい。
・解析的手法
直交座標、複素座標、重心座標といった、計算で議論して問題を解く手法
・直交座標
平面に直交座標を与えて平面図形の問題を解く手法。
・複素座標
平面を複素平面として、平面図形の問題を解く手法。対称性が高い。
・重心座標
3つのベクトルの比から平面図形の問題を解く手法。対称性が高い。
・基準系統
解析的手法の基準となるもの
直交座標なら原点
複素座標なら単位円
重心座標なら基準三角形
・単位円
複素座標の原点中心の半径1の円
この円上にΔABCを配置することが多い。
・基準三角形
重心座標の基準となる三角形
ΔABCのことが多い。

まず、問題文を読んだときに、絶対に自由度をかんがえないといけない。
限定する条件で自由度が下がり、新たに自由な文字を置いて自由度は上がる。
試しにこの問題の自由度をかんがえてみよう。
三角形DBCの垂心をH、BCの中点をAとする。EはDBとCHの交点である。また、直線AEと直線DHの交点をGとする。ここで、CEBGが共円であるとすると、
(1)∠EGB=∠GDBとなることを示せ
(2)DHとBCの交点をFとして、FH=2,DH=9として、ΔDBCの面積を求めよ。
ΔDCBは自由度が初めは3だが、
E,B,C,Gが共円であることから自由度が減ってそうだと予想する。
これは結果的束縛である。
ここでEBGCは長方形だから、
GからBCに下ろした垂線とBEの交点をD’とすると、残りの長さも勝手に定まると分かる。つまり必要な長さはEB,ECのみで、これが確定辺である。よって自由度は2だ。
このように文字の取り方を変えて、点の一致を示す証明の流れを、同一法というのだ。
自由度を考えることで、「長方形を基準に考えるといい」って分かるから、長方形に出てくる文字から角度追求すればいいって分かる。
(2)に関しては、これからは確定辺の長さを文字で置くといい。これは予選でも大事な考え方だ。
確定辺のとり方は複数あることが多いが、それは解いたら分かる。
もちろんこの形でないといけないという制約はない。
求値問題、つまり長さが元から与えられている問題は自由度は0か1であることがほとんどだ。このとき、0か1かが非常に重要である。
・自由度0のときーごり押しで全ての長さが判明し、解けることを意味する。
・自由度1のときー求める長さ(面積)を文字式で表したとき、わからん長さは含まれないことを意味する。「ここの長さはこことここの長さだけで表せる」のように文字式で考えるのがおすすめ。構図を使えるとさらに強い。
実際にいろんな場合をみていこう

①自由度が0でない問題について、XYがある範囲内で自由な長さをとれるとき、
その長さをその範囲内で勝手に置いてよい(JMO予選やマーク式入試においては、「自由な長さは勝手に置いていい」というチートテクニックがある。これは自由度を議論して得られる副産物だ)
極端に簡単な例を出そう

問題
2つの同心円について、外の円上のある弦が長さ10で、内側の円と接する。外側の円の面積と内側の面積の差を求めよ。

解法
内側の円の半径は自由にとり得る。よって
内側の円の半径を1として計算すれば、答えは25πとなる。メタいことに幾何の問題の答えはいつも1個であることから(角度は例外あり)、その長さが条件を満たすならそれが答えなのだ。
もし勝手においた長さで答えが間違っているなら、そもそもそのような図形は描けないのでどこかで矛盾に気付くはずだ。
(もっと強い考え方。極限をイメージして、内側の円の半径を0として、弦は直径になるから25π)
この「メタさ」を突くのが数オリ予選のグリッチの腕の見せどころだ。

②長さが与えられていない問題について、勝手に1つの長さを置いてよい。
(相似拡大縮小によって任意の辺は任意の長さをとる。このとき自由度が1減少する。)
しかしこの手法は解析的な方向性に依存するならば危険になることの方が多い。
文字を減らすとは、対称性を減らすということだからだ。

③稀にいらない情報のせて自由度を減らしている求値問題もある
(数学学習会G試験第6問)ごり押しできないトラップである。

④解析的手法(直交座標、複素座標、重心座標)において、自由度が高いほどおく文字が増える。上手い文字の置き方を考えると、理解がすごく深まる。
詳しくは「基準系統のとり方」を参照

⑤長さが表れないかつ自由度が高い証明問題は射影を用いる。
自由度が高いからといって怖がる必要はない。使う手法が変わるだけだ。
Geogebraの活用
幾何学の問題はその辺が任意の長さをとるかどうかGeogebraでかくといい。
Geogebraは動点が青、定点が黒でデフォルトで表示される。
青い点が多いほど自由度が高い。

★何故幾何に同値な定理が多いのか
実はそのからくりには、自由度が絡んでいる。
ある図形において、AならばBという関係が成り立つとき、Aが成り立つときの図の自由度とBが成り立つときの図の自由度は当然一致する。つまり、位置関係に関する弱い束縛(鋭角三角形か鈍角三角形や、正三角形でないことや、AB>ACとか、点の並び順がX,Y,Zであること、もしくはある点が三角形の内部か外部か、一致する点は存在しないとか、外接円を定義するために共線であることが必要だとか)が成り立つとき、
BならばAはいつも成立する。ここで、弱い束縛とは自由度の下がらない束縛であり、究極は束縛ではない。ノイズのようなものだ。同値な命題は、基準系統の取り方をより弱い束縛(ノイズ)の少ないものへ導き、本質を教えてくれる。

★基準系統のとり方
自由度が3以上の問題は、基準三角形のとり方が重要であるし、0〜2の問題については、複素座標や重心座標はいらないことが多く、これは直交座標の出番である。
直交座標においては、そもそも対称性が低くなるため、対称性が表れるように、文字を置くといい。詳しくは獲得金メダル5章の前半を参照すること。
自由度2のときは確定辺を含む三角形が直角三角形であることが理想で、その次に二等辺三角形であるとよい。自由度3なら確定辺を任意の三角形にすることを目指す、とはいってもそれは大抵ΔABCだ。解析的手法に頼るならそれを基準三角形にする。4のとき、複素座標なら同一円上の4点へ、重心座標なら基準三角形と、辺上の1点を目指す。5以上でも考え方は同じだ。

投稿日:822
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Youteru
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高二です。JMOの合宿に参加するために数学オリンピックの勉強をしています。

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