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常用対数の値が与えられない指数の比較に使える不等式まとめ

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指数の比較の問題で、常用対数の値が与えられていないときに使える不等式をまとめます。210>103とかそういうやつです。

タイトルは便宜的に関連する用語を付けただけであり、必ずしも該当の不等式を指すとは限りません

よく使う

キビバイト

1024=210>103=1000であるから、両辺の常用対数を取ることで10log102>3すなわちlog102>0.3を得る。

解説: もはや解説するまでもなく、全てのプログラマが知っている事実です。

完全五度

524288=219<312=531441であるから、両辺の底を2とする対数を取ることで19<12log23すなわちlog23>1912を得る。

解説: 数字が大きいですがlog23の評価ができるのでこのまま覚えてしまいましょう。

長三度

128=27>53=125であるから、両辺の底を2とする対数を取ることで7>3log25すなわちlog25<73を得る。

解説: 1つ前の不等式の両辺を23で割るとlog25の評価にできます。10ではなく25が直接現れる場合に有効です。

5平均律

16384=214<75=16807であるから、両辺の底を2とする対数を取ることで14<5log27すなわちlog27>145を得る。

解説: log23log25と同じ手法でlog27に対する近似も行うことができます。2022年の京大入試の最初の問題は常用対数が与えられていましたがこれを使うとより簡単に解くことができます。

あまり使わない

ピタゴリアンリンマ

256=28>35=243であるから、両辺の底を2とする対数を取ることで8>5log23すなわちlog23<85を得る。

解説: 「完全五度」と合わせると、1+7001200<log23<1+7201200がわかります。分母が1200なのはこの手の近似を研究する界隈の慣習なので、答案に書くときは適宜約分して調整してください。

アポトメ

2048=211<37=2187であるから、両辺の底を2とする対数を取ることで11<7log23すなわちlog23>117を得る。

解説: 117<1912なので正直必要ありません。ピタゴリアンリンマと並べて置きたかっただけです。

短三度

1.24=2.0736>2であるから、両辺の底を2とする対数を取ることで4log21.2>1すなわちlog21.2>14を得る。

解説: log232>712,log254<412なので引き算するとlog265>312が得られますが、このように直接求める方法もあります。

長三度の下からの近似

55=3125>3072=20481.5>2112=211.5であるから、最左辺と最右辺の底を2とする対数を取ることで5log25>11.5すなわちlog25>2.3を得る。

解説: log25を下から抑えるには、少し工夫が必要です。

長二度

(98)6=5314415242882>2であるから、最左辺と最右辺の底を2とする対数を取ることで6log298>1すなわちlog298>16を得る。

解説: 21698は結果だけ知っておいても損はないかもしれません。

半音

(98)6=5314415242882>2であるから、最左辺と最右辺の底を2とする対数を取ることで6log298>1すなわちlog298>16を得る。
さらに、(1+116)2>1+18=98>216であるから、log21716>112を得る。

解説: 「長二度」の派生形です。私も使ったことがありません。二項定理を使えばlog21817<112も示せますが、現実的に不要だと思います。

おまけ

ここまでのことを悪用すると、log2<34を示すことが出来ます。折角なので、最初からやります。

524288=219<312=531441である。
この両辺の12乗根を取り2乗して23で割ることで、
98>216
がわかる。また、128=27>53=125であるから、
54<213
がわかる。
ここで、f(x)=2xとおき、y=f(x)のグラフをΓとする。
3点A(0,1),B(16,98),C(13,54)について考えると、この3点は直線y=34x+1上にある。
また、AΓ上、BΓより上、CΓより下にある。
よって、中間値の定理から、線分BCΓは共有点を持つので、これをP(p,2p)とする。
このとき、4点A,B,P,Cは同一直線上にあり、その傾きは34である。
よって、平均値の定理から、ある0<q<pが存在し、
f(q)=2qlog2=34
が成り立つ。
q>0より2q>1であるから、
log2<34
が示された。(Q.E.D.)

もっと速い解法

上の解法はさらに最適化できます。

524288=219<312=531441である。
この両辺の12乗根を取り2乗して23で割ることで、
98>216
がわかる。
ここで、f(x)=2x,g(x)=34x+1,h(x)=f(x)g(x)とおくと、
f(0)=g(0)=1,h(0)=0
f(16)<g(16),h(16)<0
が成り立つ。また、
f(0)>0f(x)は単調増加、g(x)は定数であるから、h(x)は単調増加である。
h(0)0と仮定すると、x>0h(x)>0であるからh(x)は単調増加であるが、これはh(0)>h(16)に反するので、背理法からh(0)<0が得られる。
よって、f(0)<g(0)であるから、log2<34が得られた。(Q.E.D.)

投稿日:202423
更新日:2024222
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