指数の比較の問題で、常用対数の値が与えられていないときに使える不等式をまとめます。とかそういうやつです。
タイトルは便宜的に関連する用語を付けただけであり、必ずしも該当の不等式を指すとは限りません。
よく使う
キビバイト
であるから、両辺の常用対数を取ることですなわちを得る。
解説: もはや解説するまでもなく、全てのプログラマが知っている事実です。
完全五度
であるから、両辺の底をとする対数を取ることですなわちを得る。
解説: 数字が大きいですがの評価ができるのでこのまま覚えてしまいましょう。
長三度
であるから、両辺の底をとする対数を取ることですなわちを得る。
解説: 1つ前の不等式の両辺をで割るとの評価にできます。ではなくとが直接現れる場合に有効です。
5平均律
であるから、両辺の底をとする対数を取ることですなわちを得る。
解説: やと同じ手法でに対する近似も行うことができます。2022年の京大入試の最初の問題は常用対数が与えられていましたがこれを使うとより簡単に解くことができます。
あまり使わない
ピタゴリアンリンマ
であるから、両辺の底をとする対数を取ることですなわちを得る。
解説: 「完全五度」と合わせると、がわかります。分母がなのはこの手の近似を研究する界隈の慣習なので、答案に書くときは適宜約分して調整してください。
アポトメ
であるから、両辺の底をとする対数を取ることですなわちを得る。
解説: なので正直必要ありません。ピタゴリアンリンマと並べて置きたかっただけです。
短三度
であるから、両辺の底をとする対数を取ることですなわちを得る。
解説: なので引き算するとが得られますが、このように直接求める方法もあります。
長三度の下からの近似
であるから、最左辺と最右辺の底をとする対数を取ることですなわちを得る。
解説: を下から抑えるには、少し工夫が必要です。
長二度
であるから、最左辺と最右辺の底をとする対数を取ることですなわちを得る。
解説: は結果だけ知っておいても損はないかもしれません。
半音
であるから、最左辺と最右辺の底をとする対数を取ることですなわちを得る。
さらに、であるから、を得る。
解説: 「長二度」の派生形です。私も使ったことがありません。二項定理を使えばも示せますが、現実的に不要だと思います。
おまけ
ここまでのことを悪用すると、を示すことが出来ます。折角なので、最初からやります。
である。
この両辺の乗根を取り乗してで割ることで、
がわかる。また、であるから、
がわかる。
ここで、とおき、のグラフをとする。
3点について考えると、この3点は直線上にある。
また、は上、はより上、はより下にある。
よって、中間値の定理から、線分とは共有点を持つので、これをとする。
このとき、4点は同一直線上にあり、その傾きはである。
よって、平均値の定理から、あるが存在し、
が成り立つ。
よりであるから、
が示された。(Q.E.D.)
もっと速い解法
上の解法はさらに最適化できます。
である。
この両辺の乗根を取り乗してで割ることで、
がわかる。
ここで、とおくと、
が成り立つ。また、
、は単調増加、は定数であるから、は単調増加である。
と仮定すると、でであるからは単調増加であるが、これはに反するので、背理法からが得られる。
よって、であるから、が得られた。(Q.E.D.)