こんばんわーむどめいん.
この記事では Hörmander Hor90 をなるべく短期間で読みたいという場合の一つの速習ルートの提示をしようと思います.
まずは速習ルートとは関係なしに,本全体の流れをまとめます.
| 章 | $L^2$ 理論 | コメント |
|---|---|---|
| 1 | なし | 一変数複素解析 |
| 2 | なし | $\mathbb{C}^n$ の基礎的な幾何 |
| 3 | なし | 読んでいない... |
| 4 | あり | $\mathbb{C}^n$ の擬凸開集合で $L^2$ |
| 5 | あり | Stein 多様体で $L^2$ |
| 6 | なし | 解析的集合とか |
| 7 | あり | Cartan A, B などを $L^2$ で殴る |
ちなみに,まえがきには“Both Chapter III and section 2.7 can be bypassed without any loss of the continuity”とあるため,この二つの部分は飛ばしても問題ないです.
また 1,2 章は Noguchiとの共通部分も大きいことを注意しておきます (実際自分が Hor90 を読んだ時も頻繁に参考にしていました).
最後に Hor90 は 1,2,3 版と 2 版の邦訳が存在しますが,基本的には 3 版を読み進めるのがいいです.しかし 4.4 節だけは内容が旧版とガラッと変わっているため,ここだけは旧版も別に見るのが良いと思います (いつか詳しく書くかもですが,完備な多様体では重みを 3 つとる必要がない,というのが旧版のこの部分です).
$\mathbb{C}^n$ の開集合に対する擬凸性などの概念を一通り学んでいる場合,メインの4章から読み始めることができます.しかし定理 2.6.11 (擬凸開集合上に$C^\infty$級皆既強多重劣調和関数が存在することだけで十分) は 4 章で中心的役割を果たすので,追ったことがない場合は一度読むべきでしょう.
続いて 4 章 1,2 節は全て丁寧に読むべきだと思います.3 節は Runge 近似なので一旦は飛ばしてもよく,4節は前半 (重み関数 $\varphi$ を一つにする部分) は丁寧に読むべきだと思います.5 節も飛ばして問題ないでしょう.
続いて 5 章ですが,定理 2.6.11 に対応する定理 5.1.6 を確認したのち,2 節をまた丁寧に読むと良いと思います.ここはかなり計算が重いですが.そして 3,4,5 節は一旦飛ばして,6 節で Stein 多様体上の正則ベクトル束に対しても同様の $L^2$ ができるということを確認すれば,Hor90 で最低限抑えるポイントは全て網羅できるのではないかと思います.
飛ばした部分 (1,2,6,7 章, 5 章 3,4,5,7 節) は必ずしも $L^2$ を使わないといけないわけではないので,Hor90 以外で知識があれば読まなくても良いと思っています.