こんにちは、itouです。
### 導入
$f,g,h$を$n$についての多項式として、
$$　　
f(n)u_{n+1}=g(n)u_n+h(n)u_{n-1}  (u_0=a,u_1=b) (n\geq1)\tag{1.0}\label{name1}
$$
で定められる数列の一般項はどんな関数になるでしょうか。この問題を一般的に解くことは難しいですが、いくつか分かった性質があるので解説します。


###直交性
\ref{name1}の解でヤコビ多項式というものがあります。
ヤコビ多項式（$P_n^{(\alpha,\beta)}(x)$）は次のような表示を持ちます。
![画像の名前](/uploads/mathdown/Cx6rt7VOjSW5ku2h0SsS.png)




ヤコビ多項式は次の漸化式を満たします。
![ヤコビ多項式の漸化式](/uploads/mathdown/kRWpTvSUQBwFlNssgWFi.png)

[wolfram Matworldの記事から](Jacobi Polynomial -- from Wolfram MathWorld)

（~~tex打ちめんどくさかった~~）
普通ヤコビ多項式はｘについての多項式と見なされますが、ここではｘは定数と考えてください。なお、ヤコビ多項式はルジャンドル多項式やチェビシェフ多項式の一般化です。



### リーマンゼータ関数との関係
\ref{name1}において、$f(n)=(n+1)^r,h(n)=n^r$のとき、リーマンゼータ関数と密接な関係があります。
$c$を実数として、
\begin{multline}
    \begin{split} 
(n+1)^ra_{n+1}&=g(n)a_n-cn^ra_{n-1}　\\
(n+1)^ra'_{n+1}&=g(n)a'_n-cn^ra'_{n-1}\\
     \end{split}
\end{multline}
という２つの数列を考えます。ただし、$a_n,a'_n$は同じ漸化式を満たすが初期条件が異なるものとします。
この２式にそれぞれ$ a'_n,a_n$をかけて辺辺引くことで、
$(n+1)^r(a_{n+1}a'_n-a'_{n+1}a_n)=cn^r(a_{n}a'_{n-1}-a'_{n}a_{n-1})$
より、
$(n+1)^r(a_{n+1}a'_n-a'_{n+1}a_n)=c^n(a_{1}a'_{0}-a'_{1}a_{0}) $
なので
$\sum_{n=0}^{\infty}=\sum_{n=1}^{\infty}\frac{c^{n-1}}{n^r}$
となります。特に、$c=1$のときは右辺はリーマンゼータそのものですね。

#### 例
$r=2,c=1$の例
[ルジャンドル多項式](
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AB%E3%82%B8%E3%83%A3%E3%83%B3%E3%83%89%E3%83%AB%E5%A4%9A%E9%A0%85%E5%BC%8F)のボネの漸化式がそれにあたります。


$r=2,c=-8$の例
Franel number($Fr_n=\sum_{k=0}^{n}{ n \choose k }^3$)があたります。
$(n+1)^2Fr_{n+1}=(7n^2+7n+2)Fr_n+8n^2Fr_{n-1}   (n\geq1)$

$r=2,c=-1$の例
$\pi$の連分数展開に現れる数列があたります。[参考](pi2002.pdf (juen.ac.jp))の１４ページをみてください。

$r=3,c=1$の例
アペリーの数列($a_n=\sum_{k=0}^{n}{ n \choose k }^2{ n+k \choose k }^2$)があたります。
	$(n+1)^3a_{n+1}=(34n^3+51n^2+27n+5)a_n-n^3a_{n-1}   (n\geq1)$


### 私が見つけた例
例を見てきた通り、\ref{name1}にはいろいろと面白い性質があるようです。
しかしまだまだ具体例が少なく、一般的に解を導くのは難しそうです。そこで私は解をもってきてそれが満たす漸化式を求める、という方法で解と漸化式のセットをいくつか得ました。

**注意：以下の解が漸化式を満たすことは厳密に証明していません。**

1．$a_n=\sum_{k=0}^{n}{ n \choose k }^2{ n-1 \choose k }$は
$ (n+1)^2(n-1)a_{n+1}=(n+1)(7n^2+7n+2)a_n+8n^2(n-1)a_{n-1}$を満たす。

2．$a_n=\sum_{k=0}^{n}{ n \choose k }^2{ n-2 \choose k }$は
$ (n+1)^2(3n^2-n-6)a_{n+1}=n(n+1)(21n^2-7n-10)a_n+8n(n-2)(3n^2+5n-4)a_{n-1}$を満たす。

3．$a_n=\sum_{k=0}^{n}{ n \choose k }^2{ n+3 \choose k }$は
$ (n+1)(n+4)^2(2n^3+5n^2+n-4)a_{n+1}=(14n^6+147n^5+580n^4+941n^3+270n^2-664n-320)a_n+8n^2(n+4)(2n^3+11n^2+17n+4)a_{n-1}$を満たす。

4.$a_n=\sum_{k=0}^{n}{ 2k \choose k }^6$は
$ (n+1)^6a_{n+1}=(17n^2+18n+5)(241n^4 + 468 n^3 + 338 n^2 + 108 n + 13)a_n-64(2n+1)^6a_{n-1}$を満たす。

1．$a_n=\sum_{k=0}^{n}(-1)^k{ 2n-2k \choose n-k }(n!)^2/(k!2^{2n-k})$は
$a_{n+1}=n(n+1)(a_n+na_{n-1})$を満たす。（これは[この記事](https://mathlog.info/articles/q1HjHyMlZTuynPg9h14)で見つけた式を用いました。）

### 疑問
特に$c=1,r$は奇数であるような解と漸化式のセットの表示はどのようでしょうか。また、二項係数が入った級数との関係はどのようでしょうか。ヤコビ多項式のように、\ref{name1}にパラメータｘを導入し、多項式としたとき、直交性をもつようなものは他にあるでしょうか。






