コンパクト空間からHausdorff空間への連続全単射が同相であることは位相空間論で有名な命題であるが、これはフィルターの収束という概念を用いれば"代数的"に示すことができる。フィルターによる位相空間論についてはmathpediaなどによくまとまっていて、以下で引用する命題の証明などもそこを参照されたい。ただし、宗教上の理由によりと上のフィルターに対して順像フィルターをと表し、また上のフィルターに対して逆像フィルターをと以下では表している。
連続写像の特徴付け
を位相空間、を写像とする。
このときに対して以下は同値。
- はに於いて連続。
- が成り立つ。
- 任意の上の超フィルターに対してならとなる。
- 任意の上のフィルターに対してならとなる。
Hausdorff性の特徴付け
を位相空間とする。
このとき以下は同値。
- はHausdorff。
- 上のフィルターの収束点は一意。
コンパクト性の特徴付け
を位相空間とする。
このとき以下は同値。
- はコンパクト。
- 上のフィルターは収束する細分を持つ。
- 上の任意の超フィルターは収束する。
をコンパクト、をHausdorffとなる位相空間とする。このときが連続全単射なら同相写像である。
が連続であることを示せば良い。と上の超フィルターでとなるものを任意に取る。は全単射なので上の超フィルターでとなるようなものが一意に存在する (単にによる逆像フィルターを考えれば良い) 。以下のように計算できる。
よってがコンパクトなのでとなるが存在する。の連続性からとなり、のHausdorff性からを得る。すなわちであり、となることが分かる。
以下に群の場合の全単射群準同型が同型であることの証明を見てみよう。
を群とし、を全単射群準同型とする。このときは同型写像である。
が群準同型であることを示せば良い。面倒なので積が保たれることのみを確認する。
を任意に取る。の全単射性から、が成り立つようなが一意に存在する。以下ように計算できる。
よっては群準同型である。
このように証明にアナロジーがあることが分かるだろう。これらはモナド上の代数の言葉を使えば部分的に説明できる。群の圏とコンパクトHausdorff空間の圏どちらのへの忘却関手もモナディックであることが背景にある。すなわち群の圏やコンパクトHausdorffの圏もあるモナド上の代数の圏と同値になる。群の場合は自由群モナドと呼ばれる、集合からで生成された自由群の台集合を返すモナドであり、コンパクトHausdorff空間の場合は超フィルターモナドと呼ばれる集合から上の超フィルター全体を返すモナドとなる。具体的に代数としてはコンパクトHausdorff空間の場合、任意の超フィルターは収束先が一意に存在することから超フィルターを受け取って収束先を返すという無限項の演算を構造として持った代数として理解できる。そのような一般の上のモナドの代数の圏に対して全単射準同型は同型であることが示せる。その証明を修正したものが上の証明になっている。
一般に位相空間をフィルターの収束により圏論的に扱う方法として関係加群 (relational module) というのがBarrBarrによって考えられており、また倍圏上の超フィルターモナドによる-モノイドとして扱えるため、豊穣圏や多重圏、距離空間などと統一的に扱うフレームワークも考えられているらしいCruttwell-Shulman。