この記事では,リー群上の左不変ベクトル場と右不変ベクトル場の関係についてまとめておきます.多分どっかの教科書には書いてあると思うんですが,今まで知らなかったので備忘録として書いておきます.
記法の確認も込めて,基本的な事実から書いておきます.
不変ベクトル場
をリー群とし,に対してを左移動,右移動とします.上のベクトル場が
を満たすとき左不変ベクトル場といい,
を満たすとき,右不変ベクトル場と言います.
上の左不変ベクトル場全体を,右不変ベクトル場全体をと書くことにします.左(右)不変ベクトル場は単位元での接ベクトルで決まってしまうので,ベクトル空間としてです.
に対してなので,には自然にリー代数の構造が入ります.そこで,の同型を通してにリー代数の構造を入れることができます.具体的には,に対して
と定めます.ここではから生成された左不変ベクトル場を表しています.同様に,から生成される右不変ベクトル場をと表すことにします.
2つの不変ベクトル場の関係
ではとの間に何か明示的な関係式はあるでしょうか.次の命題がその答えです.
任意のに対して
となることから従う.ここでであることを用いた(例えばトゥー多様体 問15.6を参照).
右不変ベクトル場のリーブラケット
左不変ベクトル場に対してとなることは定義から明らかです.
上の結果を用いることで右不変ベクトル場のリーブラケットを計算することができます.
またこれらのことからベクトル場のレベルで
が成り立つことがわかります.