代数の高度典型を紹介していきたいと思います.
こんな式が成り立ちます
$f(x),g(x)$をそれぞれ$m,n$次のモニック多項式(※)
$f(x)=0$の解を$α_1,α_2,...,α_m$,$g(x)=0$の解を$β_1,β_2,…,β_n$としたとき,
$$ \prod_{i=1}^{n}f(\beta_i)=(−1)^{mn}\prod_{j=1}^{m}g(\alpha_j)$$
が成り立つ.
※最高次の係数が$1$である$1$変数多項式
$f(x)=(x-\alpha_1)(x-\alpha_2)...(x-\alpha_m)$
$g(x)=(x-\beta_1)(x-\beta_2)...(x-\beta_n)$
である.よって,
$$(\mathtt{左辺})=\prod_{i=1}^{n}f(\beta_i)=\prod_{i=1}^{n}\prod_{j=1}^{m}(\beta_i-\alpha_j)$$
また,
$$\prod_{j=1}^{m}g(\alpha_j)=\prod_{j=1}^{m}\prod_{i=1}^{n}(\alpha_j-\beta_i)=\prod_{i=1}^{n}\prod_{j=1}^{m}(\alpha_j-\beta_i)$$
であるから,
$$(\mathtt{右辺})=(−1)^{mn}\prod_{j=1}^{m}g(\alpha_j)=(−1)^{mn}\prod_{i=1}^{n}\prod_{j=1}^{m}(\alpha_j-\beta_i)$$
$$=\prod_{i=1}^{n}\prod_{j=1}^{m}(\beta_i-\alpha_j)=(\mathtt{左辺})$$
よって,示された.
証明はやるだけといった感じですが,この定理自体を無から思いつくのは結構難しいのではないでしょうか.
さっそくこの定理を使っていきましょう!
多少問題文を書き換えています.
解答を見る前に自分で解いてみることをおすすめします.
$\omega(\neq 1)$を$1$の$13$乗根とする.以下の値を求めよ.
$$ \prod_{k=0}^{12}(2-2ω^k+ω^{2k})$$
${\omega^{k}}_{(k=0,1,...,12)}$は$x^{13}-1=0$の相異なる複素数解である.
$f(x)=x^2-2x+2,g(x)=x^{13}-1$とし,$f(x)=0$の解を$\alpha_1,\alpha_2$とすると,定理から
$$ \prod_{k=0}^{12}f(\omega^k)=\prod_{i=1}^{2}g(α_i)=(\alpha_1^{13}-1)(\alpha_2^{13}-1)$$
$$=(\alpha_1\alpha_2)^{13}-(\alpha_1^{13}+\alpha_2^{13})+1$$
この値を計算すればよい.$S_n=\alpha_1^n+\alpha_2^n$とする.
$\alpha_1^2-2\alpha_1+2=0,\alpha_2^2-2\alpha_2+2=0$から
$\alpha_1^{n+2}-2\alpha_1^{n+1}+2\alpha_1^n=0,\alpha_2^{n+2}-2\alpha_2^{n+1}+2\alpha_2^n=0$
辺々を足し合わせて,$S_{n+2}-2S_{n+1}+2S_{n}=0$
$S_0=2,S_1=2$から計算すれば,$S_{13}=-128$
$\alpha_1\alpha_2=2$から,求める値は
$2^{13}-(-128)+1=\boldsymbol{8321}$
$x^{10}+x^5+2=0$の複素数解を$a_1,a_2,...,a_{10}$とする.以下の値を求めよ.
$$ \prod_{m=1}^{10}\prod_{n=1}^{10} (a_{m}^{2}-a_n)$$
$f(x)=x^{10}+x^5+2$とする.
$f(x)=(x-a_1)(x-a_2)...(x-a_{10})$であるから,
$$\prod_{m=1}^{10}\prod_{n=1}^{10}(a_{m}^{2}-a_n)=\prod_{m=1}^{10}f(a_m^2)=\prod_{m=1}^{10}(a_m^{20}+a_m^{10}+2)$$
ここで,$a_m^{10}+a_m^5+2=0$から,
$a_m^{20}+a_m^{10}+2=a_m^{10}(-a_m^5-2)+a_m^{10}+2$
$=-a_m^{15}-a_m^{10}+2=2a_m^5+2$
すなわち
$$\prod_{m=1}^{10}(a_m^{20}+a_m^{10}+2)=\prod_{m=1}^{10}(2a_m^5+2)=2^{10}\prod_{m=1}^{10}(a_m^5+1)$$
$g(x)=x^5+1$とし,$g(x)=0$の複素数解を$b_1,b_2,...,b_5$とすると,定理から
$$\prod_{m=1}^{10}(a_m^5+1)=\prod_{m=1}^{10}g(a_m)=\prod_{n=1}^{5}f(b_n)=\prod_{n=1}^{5}(b_n^{10}+b_n^{5}+2)$$
また,$b_n^5+1=0$から,$b_n^{10}+b_n^5=0$である.よって,
$$\prod_{n=1}^{5}(b_n^{10}+b_n^{5}+2)=\prod_{n=1}^{5}2=32$$
求める値は
$$2^{10}\prod_{m=1}^{10}(a_m^5+1)=2^{10}×32=\boldsymbol{32768}$$
以下の$128$次方程式の複素数解を$a_1,a_2,...,a_{128}$とする.
$$ x^{128}+2x^6+4x^5+8x^4+16x^3+32x^2+64x+128=0$$
このとき,以下の値は整数になるので,これを素数$127$で割った余りを求めよ.
$$ \prod_{i=1}^{128}\prod_{j=1}^{128}(a_i+a_j)$$
$f(x)=x^{128}+2x^6+4x^5+8x^4+16x^3+32x^2+64x+128$ とする.
$f(x)=(x-a_1)(x-a_2)...(x-a_{128})$であるから,
$$\prod_{i=1}^{128}\prod_{j=1}^{128}(a_i+a_j)=\prod_{i=1}^{128}f(-a_i)$$
$f(a_i)=0$を用いれば,$f(-a_i)=-8a_i^5-32a_i^3-128a_i$が分かり,
$$\prod_{i=1}^{128}f(-a_i)=\prod_{i=1}^{128}(-8a_i^5-32a_i^3-128a_i)$$
$$=(-8)^{128}\left(\prod_{i=1}^{128}a_i\right)\left(\prod_{i=1}^{128}(a_1^4+4a_i^2+16)\right)$$
$$=2^{384}2^7\prod_{i=1}^{128}(a_1^4+4a_i^2+16)$$
$g(x)=x^4+4x^2+16$とし,$g(x)=0$の解を$b_1,b_2,b_3,b_4$とすれば,定理から
$$\prod_{i=1}^{128}(a_1^4+4a_i^2+16)=\prod_{i=1}^{128}g(a_i)=\prod_{j=1}^{4}f(b_j)$$
$b_j^4+4b_j^2+16=0$の両辺に$b_j^2-4$をかければ$b_j^6=64$が分かり
$$\prod_{j=1}^{4}f(b_j)=\prod_{j=1}^{4}\left(b_j^{128}+\frac{2b_j^7-256}{b_j-2}\right)$$
$$=\prod_{j=1}^{4}\left(64^{21}b_j^{2}+\frac{128b_j-256}{b_j-2}\right)=\prod_{j=1}^{4}(2^{126}b_j^2+128)$$
$b_j^4+4b_j^2+16=0$から,$1$の原始$3$乗根を$\omega$とすれば,
${b_{j}^2}_{(j=1,2,3,4)}$は$4\omega$と$4\omega^2$が$2$個ずつであることが分かり
$$\prod_{j=1}^{4}(2^{126}b_j^2+128)=((2^{128}\omega+128)(2^{128}\omega^2+128))^2$$
$$=(2^{256}-2^{128}+2^{14})^2$$
求める値は
$$2^{384}2^7\prod_{i=1}^{128}(a_1^4+4a_i^2+16)=2^{384}2^7(2^{256}-2^{128}+2^{14})^2$$
を$127$で割った余りであり,$2^7 \equiv 1$から
$$2^{384}2^7(2^{256}-2^{128}+2^{14})^2 \equiv 2^6(2^4-2^2+1)^2 \equiv \boldsymbol{21}$$
自力で解いていきましょう!
記事の都合上,問題文を多少変えています.
方程式$x^3−9x−9=0$の$3$つの複素数解を$x=\alpha_1,\alpha_2,\alpha_3$とする.以下の値を求めよ.
$$ \prod_{k=1}^{3}(\alpha_k^3+\alpha_k^2-10\alpha_k-8)$$
この定理を意識しなくても解けると思いますが,定理を使って機械的に解いてみましょう
次の方程式は相異なる$10$個の複素数解$x=x_1,x_2,\dots,x_{10}$を持つ.
$$ \frac{x^{11}-1}{x-1}=0$$
以下の値を求めよ.
$$ \prod_{k=1}^{10}(x_k^2-x_k-1)$$
ちゃんと解きたい方は,改変前の問題を見にいきましょう
$2025$次方程式$x^{2025}=x^8+x^4+x+1$の重複を含めた$2025$個の複素数解を$α_1,α_2,…,α_{2025}$とし,
$$ M=\prod_{n=1}^{2025}\prod_{m=1}^{2025}(α_n+α_m)$$
とおく.$M$は正の整数となるので,$M$を素数$2027$で割った余りを求めよ.
$X$に関する$101$次方程式
$$ X^{101}+2024X^{50}−2025=0$$
の重複を含めた$101$個の複素数解を$X=α_1,α_2,...,α_{101}$とする.このとき,
$$ \prod_{i =1}^{101}\left(\sum_{j= 0}^{100}(α_i)^j\right)$$
の値は正の整数になるので,それがもつ正の約数の個数を求めよ.
$x$の$5050$次方程式
$$ \left(\prod_{k=1}^{100}(x^k − 1)\right)+x^{50}+x^{49}+...+x+1=0$$の重複を含めた複素数解をそれぞれ$a_1,a_2,...,a_{5050}$とする.このとき,以下の値は整数となるので,これを$10403=101×103$で割った余り求めよ.
$$ \prod_{k=1}^{5050}(a_k^{101}−1)$$
このページにある問題で一番難しいと思います
解説
記事は以上です.
他にも使えそうな問題を見つけたら載せていきたいと思います.