1

p=6N+1でy^2≡x^3-a の解の個数mod p は -a^N*C(3N,N)

148
0
$$$$

1.前書き
Chevalley–Warning theoremというのがあって
https://en.wikipedia.org/wiki/Chevalley%E2%80%93Warning_theorem
証明には以下の2つの性質が本質的である
https://mathoverflow.net/questions/178318/proofs-of-the-chevalley-warning-theorem

[1-1] $f(x,y,z)\equiv 0 \pmod{p}$ を満たす素数 $p$ を法とする剰余類の組 $(x,y,z)$ の個数は
$S = \sum_{x,y,z\in \mathbb{F}_p^3} (1-f(x,y,z)^{p-1} )$
で与えられる
なぜなら $f(x,y,z)\equiv 0$ のときのみ $f(x,y,z)^{p-1}\equiv 0$ でその他のときは $f(x,y,z)^{p-1}\equiv 1$ だからである。
[1-2] $1 \le r \le p-2$ のとき $\sum_{x\in \mathbb{F}_p}x^r\equiv 0 \mod p$

よって$S$$p$ で割った余りには、$x,y,z$ のすべての指数が $(p-1)$ の倍数の項だけが寄与する。
$f$$x,y,z$ の2次式の場合には$x,y,z$ のすべての指数が $(p-1)$ の倍数の項は存在しないので$S$ は常に $p$ の倍数である。
だから「任意の3変数2次形式、例えば $ax^2 + by^2 \equiv cz^2 \pmod{p}$ は自明解 $(x,y,z)\equiv(0,0,0)$ 以外の解を持つ」ことが言える。
https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q14155395959
これを一般化したのがChevalley–Warning theoremであるが、今回はChevalley–Warning theoremの範囲外での同じ手法の応用を紹介する。


2.例
[2-1]
素数$p=6N+1$ に対して$y^2\equiv x^3-a \pmod{p}$の解の個数を考えるために
$p \equiv 2 \pmod{3}$ の場合は $x^3$ は全部の剰余類を走るので簡単になる。)
$f(x,y,z) = x^3-y^2 z - az^3$とおく。
$S = \sum_{x,y,z\in \mathbb{F}_p^3} (1-f(x,y,z)^{p-1} )$
を展開すると、$x^{p-1}y^{p-1}z^{p-1}$ の項だけがmod pで寄与する。その項は
$- \frac{6N!}{N!2N!3N!} (x^3)^{2N}\ (-y^2)^{3N}\ (-az^3)^{N}$
$= - (-1)^{3N} \frac{3N!}{N!2N!} (-1)^N a^N x^{p-1}\ y^{p-1}\ z^{p-1}$
$= - \frac{3N!}{N!2N!} a^N x^{p-1}\ y^{p-1}\ z^{p-1}$
$\sum x^{p-1}\ y^{p-1}\ z^{p-1} = (p-1)^3 \equiv -1$ なので結局$S \equiv \frac{3N!}{N!2N!} a^N$ ということになる

$y^2 \equiv x^3 - a \pmod{p}$ の解の個数を $M$ 個とおくと、
$f(x,y,z) \equiv 0$ の解の個数とは $S = p + (p-1)M$ の関係がある。
($z=0$の解は$x=0$$y$は任意なp個、$z\neq 0$の解については$x/z,y/z$が非斉次方程式の解に対応するから)
よって、$M\equiv -\frac{3N!}{N!2N!} a^N \pmod p$
特に、右辺はpの倍数でないので解が存在することが言えた!

[2-2]
同様に、$x^3+y^3\equiv a \pmod{p}$の解の個数をM個とおいてこれを考える。
$x^3+y^3≡az^3$ の解の個数をSとおくと同じ手法でS≡4N!/2N!2N!がいえるが、
それらの関係が $S = 1 + 3(p-1) + (p-1)M$ となって
($z=0$の解は$x=y=0$$x\neq 0$に対して$y$が3つずつ)
$M\equiv 2 - \frac{4N!}{2N!2N!} a^{2N} \pmod p$となる
ここからは解の存在についての結論は出せず、この手法は万能でない。

[2-3] $p=4N+1$について
$y^2 \equiv x^4 - a \pmod p$ の解の個数を同様に考察すると
$ M \equiv -1 - \frac{2N!}{N!N!} (-a)^N \pmod p$

[2-4] 同様に
$f(x,y,z) = x^4+y^4+z^4\equiv 0 \pmod p$ の解の個数($x=y=z=0$を含む)考察すると
$S \equiv 3 \cdot \frac{2N!}{N!N!} \pmod p$


3.ヤコビ和との関係

[3-1] $p=4N+1$を素数とする。
$χ:F_p \rightarrow \mathbb{C} $ を4次の指標(の1つ)とする。具体的には$\bmod p$の原始根$r$を1つとって、$χ(r^n)=i^n, χ(0)=0$ で定める。
ヤコビ和$J(χ,χ)$は、 $\sum_{k=1}^{p-1} χ(k)χ(1-k)$ で定義され、$J(χ,χ)=(X+Yi)$となる。ここで$X,Y$$X^2+Y^2=p$を満たす整数で、$X$$X\equiv -1 \pmod 4$の条件で決定され、この$X$を使って、$x^4+y^4+z^4 \equiv 0 \pmod p$を満たす$[x:y:z]∈\mathbb{P}_{F_p}^3$の個数が$p+1+6X$と書かれることを以前観察した( 4次のガウス和と周辺

さらに、 ヤコビ和とガウス和の観察 で知ったように
$ 2X \equiv - \frac{2N!}{N!N!} \pmod p$が成り立つ。(これの一般化は
A Classical Introduction to Modern Number Theory
の14章の練習問題として扱われていた。今回、この証明を探して追ったがそれはまた後回しとして)
[2-4] の結果と辻褄が合っている。
(1つの$[x:y:z]∈\mathbb{P}_{F_p}^3$に対して$p-1$個の$(x,y,z)$が対応することと$x=y=z=0$の追加を考慮する。)

[3-2] 3次のヤコビ和についても同様に、p=6N+1を素数、$χ:F_p \rightarrow \mathbb{C}$ を3次の指標(の1つ)として、ヤコビ和$ J(χ,χ)=\sum_{k=1}^{p-1} χ(k)χ(1-k) $を考えると、これは、$ X+Y\sqrt{-3}, X\equiv 2 \pmod 3$の形で書ける。
4次のときと類似してこの$X$について$2X ≡ - \frac{3N!}{N!2N!} \pmod p$が成り立ち、一方で 過去に見た (あるいはそこの リンク先 )のように$y^2=x^3+1$の解の個数もこの$X$で記述され、[2-1]の結果と辻褄が合う。


4.後回しにした話
$χ(r)=i$となるように原始根$r$と指標$χ$をとっているとする。
$p$の上にある$\mathbb{Z}[i]$の素イデアル$P$を、$r^N\equiv i \pmod P$となるように選ぶ。そうすると$χ(k)\equiv k^N$である。
$X+Yi=J(χ,χ)$の共役である$X-Yi=J(χ^3,χ^3)$を評価する。

$J(χ^3,χ^3)=\sum_{k=1}^{p-1} χ^3(k)χ^3(1-k) $
$≡\sum_{k=1}^{p-1} k^{3N} (1-k)^{3N}$
$≡\sum_{k=1}^{p-1} k^{3N} \sum_{t=0}^{3N} C(3N,t) (-k)^t$
$=\sum_{t=0}^{3N} (-1)^t C(3N,t) \sum_{k=1}^{p-1} k^(t+3N)$
$≡ (-1)^N C(3N,p-1-3N) Σ[k] k^(p-1)$
$= (-1)^N C(3N,N) (p-1)$
$≡ -(-1)^N \frac {C(4N,N)}{C(4N,2N)} C(2N,N)$
$ ≡ -C(2N,N)$

補足:$ C(4N,x) = \prod_{k=1}^{x} (p-k)/k \equiv \prod_{k=1}^{x} (-1) = (-1)^x$

Binomial coefficients and jacobi sums, R.H.Hudson, K.S.Williams の17ページThe basic theoremを参考にした

追記:それで、$X^2+Y^2=p$の性質があったから$X+Yi$$X-Yi$のどちらかは素イデアル$P$の生成元そのもので、上記よりX-YiがそうでなかったのでX+Yiがそうである。よって
$ 2X=(X+Yi)+(X-Yi) \equiv 0+(- \frac{2N!}{N!N!}) \pmod P$
となり、最左辺と最右辺は有理整数だから、$P$を法として合同なら$p$を法として合同である。


5.その他雑多なこと

$|X|\le \sqrt p$なので、$4N+1$が素数ならば$C(2N,N)$$4N+1$で割った余りは$±2\sqrt p$ぐらい以内に入ることになる。たとえば$N$$2500$ぐらいなら、$4N+1$を割った余りは$±5000$の範囲で分布できるのに、$±200$ぐらい以内に入ることを要求する。これは結構すごいように思う。ちなみに$4N+1$が合成数のときは全然これにおさまらない。

https://math.stackexchange.com/questions/5059888/x2y3-generating-the-complete-residual-system
[2-1]の解の存在について、$f(x)=k-x^3$とおいて$f(-4k)=65k-f(x)$および、pで割った剰余類のうちだいたい3/4個の$a$に対して$a, 65k-a$のどちらかは平方剰余になることを利用するテクニカルな証明を見かけた。

投稿日:430
更新日:726
OptHub AI Competition

この記事を高評価した人

高評価したユーザはいません

この記事に送られたバッジ

バッジはありません。

投稿者

aerile_re
aerile_re
18
5577
https://twitter.com/icqk3

コメント

他の人のコメント

コメントはありません。
読み込み中...
読み込み中