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高校数学問題
文献あり

三角関数の最大・最小問題と指数関数・対数関数の最大・最小問題

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記号の解説

まずは高校の教科書では見慣れない記号の導入をするが, 問題の解説を見ながら確認してくれればよい。

数の集合を表す記号

C:複素数全体の集合
R:実数全体の集合
Q:有理数全体の集合
Z:整数全体の集合
N:自然数全体の集合

区間

有界閉区間:[a,b]={xR;axb}
有界開区間:(a,b)={xR;a<x<b}
半開区間:(a,b]={xR;a<xb}
半開区間:[a,b)={xR;ax<b}
無限開区間:(a,)={xR;a<x<b}
無限開区間:(,b)={xR;a<x<b}
無限閉区間:[a,)={xR;a<x<b}
無限閉区間:(,b]={xR;a<x<b}
これらとR=(,)を総称して区間という。

差集合

集合A,Bから新たな集合AB
AB={x;xA,xB}
で定めAからBを除いた差集合という。とくにAが普遍集合(考えている集合の中で最大の集合)のとき, これをBcと書きAにおけるB補集合という。

高校ではAの補集合をAで書くのが一般的だが, 本当はAは閉包の意味でとられるのが普通である。大学では, 補集合はAcと書く。今回は普遍集合をRとおいているので
A={xR;x0}
なら
Ac={xR;x<0}
である。

量化記号

P(x)xXの条件とする。
xX,P(x)
を「任意のxXに対して, P(x)である」と読む。また
xX,P(x)
で「P(x)となるxXが存在する」とか「あるxXを用いてP(x)と表される」と読む。を全称記号, を存在記号といい, ふたつ合わせて量化記号という。

xR,x20
を「任意のxRに対して, x20である」と読む。
yが2の倍数であるとは,
xZ,y=2x
が成り立つことである。これを「yが2の倍数であるとは, y=2xとなるxZが存在する」,「yが2の倍数であるとは, あるxZを用いて, y=2xと表せる」と読む。

なぜ集合を導入したのかというと, 定義域や値域が本来集合だからである。x>0と書いたら普通は「xは正の実数」と読むのに定義域のときだけ, 「xは正の実数全体を動く」は変ではないですか?後者の意味をもたせるなら, きちんと「x
{xR;x>0}
を動く」と書くべきでしょう。だから, 少なくともそれを意識してほしいのであえて集合を導入しましたが, なるべく不等式で表現しています。汚くなるとこだけ集合で書きました。量化記号は僕の怠慢です。

三角関数の最大・最小問題

三角関数の最大・最小問題のパターンは以下の通り。

定石

  1. 三角関数の合成
  2. 倍角の公式や半角の公式を使って多項式関数とみなす
  3. t=asinθ+bcosθと置いて、多項式関数とみなす(a=b=1のとき誘導がないこともある)
  4. 積和の公式・和積の公式
  5. 曲線[とくに直線]と(単位)円との交点とみなして線形計画法
  6. 微分法(数学Ⅲ)

各々の簡単な例を見ていこう(微分法は略)

θは実数とする。以下の関数f(θ)のとりうる値の範囲を求めよ。
(1) f(θ)=sinθ+cosθ(0θπ)
(2) f(θ)=cos2θ4cosθ(0θπ)
(3) f(θ)=42sinθcosθ4cosθ4sinθ(0θπ)
(4) f(θ)=sin(θ+π6)sinθ (θR)
(5) f(θ)=sinθcosθ2(0θπ)

解答

三角関数の合成

(1)

三角関数の合成

a,ba2+b20を満たす実数とする。あるαを用いて, どんな実数xに対しても
asinx+bcosx=a2+b2sin(x+α)
と表され, そのαとは
sinα=ba2+b2,cosα=aa2+b2
を満たす実数である。

f(θ)=2sin(θ+π4)
で、θ0θπの範囲を動くので, 12sin(θ+π4)1.よってf(θ)のとりうる値の範囲は
1f(θ)2.

倍角・半角の公式

(2)

倍角の公式

θは任意の実数とする。
sin2θ=2sinθcosθ,
cos2θ=2cos2θ1

半角の公式

θは任意の実数とする。
sin2θ2=1cosθ2,
cos2θ2=1+cosθ2

f(θ)=cos2θ4cosθ=2cos2θ14cosθ=2(cosθ1)23
である。ここで, cosθは, 0θπの範囲で
1cosθ1
を動くので
g(t)=2(t1)23(1t1)
の最小値が求める最小値で, この関数のグラフは, 軸が直線t=1で頂点が(1,3)の放物線の1t1の部分である。よって, 値の範囲はy3である。

対称式型

  1. t=sinθ+cosθ(0θπ)とおく。
    sinθcosθ=12{(sinθ+cosθ)2(sin2θ+cos2θ)}=t212.

以上から
42sinθcosθ4cosθ4sinθ=42t2124t=22(t22)232
である。

ただし(1)からt
1t2.
を動く。

よって,y=22(t22)232のグラフは軸が直線t=22で頂点が(22,32)の下に凸の放物線の1x2の部分である。

したがって、求める値の範囲は
32f(θ).

和積・積和の公式

和積の公式

sinA+sinB=2sinA+B2cosAB2
sinAsinB=2cosA+B2sinAB2
cosA+cosB=2cosA+B2cosAB2
cosAcosB=2sinA+B2sinAB2

積和の公式

α,βは任意の実数とする。
cosαcosβ=12(cos(α+β)+cos(αβ))
sinαsinβ=12(cos(α+β)cos(αβ))
sinαcosβ=12(sin(α+β)+sin(αβ))
cosαsinβ=12(sin(α+β)sin(αβ))

(4)
f(θ)=12(cos(2θ+π6)32).

よって求める値の範囲は
14(2+3)f(θ)14(2+3)

線形計画法

(5)
k=sinθcosθ2
となるθ[0,π]が存在することは
sinθ=k(cosθ2)
となるθ[0,π]が存在することと同値で, これを言い換えると
y=k(x2)0y1
ことである。それは, 以下の図から
13k0.
である。

(5)の図 (5)の図

補足
(5)の0k(02)は何をやっているかというと、直線と単位円(全体)が接するもうひとつを排除したいのだけど、そのときにy=k(x2)が原点の上にあるので0k(02)を利用して排除している。

応用的な例

xを実数とする。
f(x)=sin3x9cos(xπ6)
のとりうる値の範囲を求めよ。

方針
t=cos(xπ6)とおく。たまにこういう意地悪を見かける。これは、慶応のsfcの問題だった気がするやつを少し弄ったやつだが東北大でも同じような問題が出されている。また京大では、t=cos2θとおくものがあった。

3倍角の公式

θは任意の実数とする。
sin3θ=3sinθ4sin3θ,
cos3θ=4cos3θ3cosθ

解答
t=cos(xπ6)=とおくと
sin3x=cos(π23x)=cos3(xπ6)=4cos3θ3cosθ(θ=xπ6)=4t33t

よって
f(x)=4t312t(=g(t))

ddtg(t)=12(t+1)(t1)
であるから、1t1の範囲でg(t)の増減表は以下のようになる。

t-11
g(t)
g(t)2↘︎︎-2

よって求める値の範囲は
2f(x)2.

θπ2θπ2を動くときの
f(θ)=23sin3θsinθ3cosθ
の最大値と最小値を求めよ。

t=sinθ+3cosθ(π2θπ2)とおくと
t=2sin(θ+π3)
なのでt
1t2
を動く。そして
sin3θ=sin(3θ+π)=3sin(θ+π3)+4sin3(θ+π3)=32t+t32
なので
23sin3θsinθ3cosθ=13t32t
である。g(t)=13t32t1t2とおく。
g(t)=t22=(t2)(t+2)
なので, g(t)の増減表を書くと

増減表 増減表

である。よって, 最大値は53で最小値は423である。

xsinx0かつcosx0を満たす実数全体を動くとき
|sinx+cosx+tanx+1sinx+1cosx+1tanx|
の最小値を求めよ。

方針
sinx,cosxの「対称式」なので、t=sinx+cosxと置いて、tの式で表しましょう(もちろんtの値の範囲を求める必要がある)。そうするとtの有理式ができるので、相加平均と相乗平均の大小関係を使ってあげましょう。

解答

sinxcosx=0sin2x=0nZ,2x=nπnZ,x=n2π
である。sinx+cosx=2sin(x+14π)は, x{xR;nZ,x=n2}cを満たして動くとき
[2,2]{1,1}
を動く。これをDとおく。そして, sin2x+cos2=1に注意すると
sinx+cosx+tanx+1sinx+1cosx+1tanx=(sinx+cosx)+sinx+cosx+1sinxcosx=(sinx+cosx)+sinx+cosx+11(sinx+cosx)22=(sinx+cosx)+2(sinx+cosx+1)1+(sinx+cosx)2=(sinx+cosx)+2(sinx+cosx)1
と変形できるから
|t+2t1|(tD)
の最小値を求めればよい。
[1] t(1,2]のとき
t1>0なので
|t+2t1|=t+2t1=t1+2t1+1=2(t1)2t1+1()=22+1
である。
[2] tD(1,2]のとき
1t>0なので
|t+2t1|=(t+2t1)=1t+21t1=2(1t)21t1()=221
である。そして, 上の不等式は
1t=21t,
つまり
t=12
のときに成り立つ。
[1], [2]から求める最小値は,221である。

ワイエルシュトラス置換

θを任意の実数とする。
t=tanθ2
とおくと
sinθ=2t1+t2,
cosθ=1t21+t2
である。

sinθ=2sinθ2cosθ2=2tanθ2cos2θ2=2tanθ211+tan2θ2=2t1+t2,
cosθ=2cos2θ21=211+tan2θ21=21+t21=1t21+t2
である。

f(θ)=1+sinθ3+cosθ(π<θ<π)
の最大値と最小値を求めよ。

解答

t=tanθ2
とおくと
f(θ)=1+2t1+t23+1t21+t2=(t+1)22(t2+2)
である。ここで, tは実数全体を動く。

12=(t+1)22(t2+2)
のとき, t=12である。
y12とする。
y=(t+1)22(t2+2)
となる実数tが存在することは
(2y1)t22t+4y1=0
となる実数tが存在することと同値である。これは
(1)2(2y1)(4y1)0,
つまり
0y<12,12<y34
と同値である。以上から, 求める最大値は34で, 最小値は0である。

指数関数・対数関数の最大・最小

  1. f(x)=4x+12x+1+1(1x1)の最大値と
    最小値を求めよ。
  2. f(x)=4x+4x2x+121x(xR)の最小値を求めよ。
  3. f(x)=(log13x)22log13x(19x27)の値域を求めよ。

解答

  1. t=2x(1x1)とおくと
    4x+12x+1+1=4t22t+1=4(t14)2+34
    である。ただし, ここでt
    12t2
    を動く。y=4(t14)2+34(12t2)のグラフは軸が直線t=14で頂点が(14,34)の下に凸の放物線12t2の部分である。よって, 最大値は13で最小値は1である。

  2. t=2x+2x(xR)おくと
    4x+4x2x+121x=(2x+2x)222(2x+2x)=t22t2=(t1)23
    である。ただし, t
    t2
    を動く(必要がある)。なぜなら, 2x>0だから相加平均と相乗平均の大小関係から
    t22x2x=2
    だからである。よって, y=(t1)23は軸が直線t=1で頂点が(1,3)の放物線のt2の部分である。よって, f(x)2である。f(x)=2となるのは, 2=2x+2x,つまりx=0のときである。したがって, 最小値は2である。

  3. t=log13x(19x27)とおくと, tの動く範囲は
    3t2
    で,
    (log13x)22log13x=t22t=(t1)21
    である。よって, y=(t1)21(19x27)は軸が直線t=1で頂点が(1,1)の下に凸な放物線の19x27の部分である。よって, 求める地域は
    1f(x)15
    である。

参考文献

[1]
長岡亮介, 総合的研究 論理学で学ぶ数学――思考ツールとしてのロジック, 旺文社, 152ページ
[2]
松村淳平, 大学合格のための基礎知識と解法が身につく 技284 数学II・B+ベクトル, Gakken, 436ページ
[3]
東京書籍 編集部, ニューグローバル×LEGEND プレミアム版:数学の「思考力」入試を勝ち抜く!, 東京書籍, 192ページ
[4]
内田伏一, 集合と位相(増補新装版) (数学シリーズ, 裳華房, 255ページ
[5]
東京出版, 新数学スタンダード演習 2023年 04 月号 [雑誌]: 大学への数学 増刊, 東京出版, 1800
[9]
長崎憲一, 数学I+A+II+B 上級問題精講, 旺文社 , 352ページ
[10]
杉浦光夫, 解析入門 Ⅰ(基礎数学2), 東京大学出版会, 1980, 430ページ
投稿日:2023630
更新日:202463
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fancy
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自分の勉強用に投稿するのでn番煎じのものが多いよ

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