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レールの上の眠り姫問題

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レールの上の眠り姫問題

 次の問題は私が作った問題です。

レールの上の眠り姫問題

 実験の参加者である あなたは、実験の内容を全て説明され、眠りにつく。あなたが眠っている間に一度だけコインがトスされる。

路線図 路線図

  • コインが表であった場合、あなたはS駅で、これからH線に入る列車に乗せられる。列車が最初の停車駅Hmに着いたら、あなたは起こされて、予め決められた ある質問(以降の「質問」も全く同じ内容である)をされたのち、ある薬(以降の「薬」も同じ薬である)を投与されて眠りにつく。その後は、列車がHw駅に着くまで起こされることはない。
  • コインが裏であった場合、あなたはS駅で、これからT線に入る列車に乗せられる。列車が最初の停車駅Tmに着いたら、あなたは起こされて、質問をされたのち、薬を投与されて眠りにつく。次の停車駅Ttに着いたときも あなたは起こされて、質問をされたのち、薬を投与されて眠りにつく。その後は、列車がTw駅に着くまで起こされることはない。

 この実験で あなたに投与される薬は、誰かに起こされるまで絶対に目覚めないという睡眠導入薬で、直近の目覚めから投与時までの記憶を完全に消去する作用もある。よって、あなたが起こされ、質問を受ける際、以前に起こされたことがあるかどうかは分からない。加えて、あなたが乗せられている車両は中から外の様子を知る事が出来ないようになっている為、起こされた今、列車はどの駅で停車しているのか、あなたは決して知ることができない。
 コインが表/裏、どちらの場合でも、列車がHw/Tw駅に着けば、あなたは起こされ、質問は行われず、実験は終了する。
 さて、今あなたは起こされ、そして質問された ―「『今あなたはH線上にいる』ということに対する、今のあなたの信頼の度合いは(確率で表せば)いくらですか?」。あなたは何と答えるべきか?

 「今」あなたは…
  事象H:H線上にいる
  事象T:T線上にいる

とすると、あなたがS駅でH線/T線のどちらに入る列車に乗せられるかは、コイントスの結果で決められ、且つ どちらの線に入ったとしても、あなたは必ず起こされて質問されるので、

 P(H) = P(T) = 1/2
 
です。すなわち、「質問」の答、「今あなたはH線上にいる」確率は1/2です(ここまで、「今あなたはどの駅にいるか」ということは全く考える必要がなかったことに留意してください)。
今あなたはH線上にいる 今あなたはH線上にいる
 ちなみに、

 「今」あなたは…
  事象Hm:Hm駅にいる
  事象Tm:Tm駅にいる
  事象Tt:Tt駅にいる

とすると、HmとHは同値なので、

 P(Hm) = P(H) = 1/2

です。
 さらに、「今あなたはT線上にいる」ならば、「今あなたはTm駅/Tt駅のどちらかにいる」ので、(本当は TmとTtは 互いに排反ではありませんが)敢えて TmとTtは “互いに排反である”とみなせば

 P(Tm) = P(Tt) = 1/4

です。
 では、以上の「レールの上の眠り姫問題」の解答を踏まえて…

眠り姫問題(オリジナル)

眠り姫問題(オリジナル)

 実験の参加者である あなたは、実験の内容を全て説明され、日曜日に眠りにつく。あなたが眠っている間に一度だけコインがトスされる。

  • コインが表であった場合、あなたは月曜日に起こされ、予め決められたある質問(以降の「質問」も全く同じ内容である)をされたのち、ある薬(以降の「薬」も同じ薬である)を投与され眠りにつく。
  • コインが裏であった場合、あなたは月曜日に起こされ、質問されたのち、薬を投与され眠りにつく。そして翌日の火曜日にも起こされ、質問されたのち、再び薬を投与されて眠りにつく。

 この実験であなたに投与される薬は、誰かに起こされるまで絶対に目覚めないという睡眠導入薬で、直近の目覚めから投与時までの記憶を完全に消去する作用もある。よって、あなたが起こされ、質問を受ける際、以前に起こされたことがあるかどうかは分からない。加えて、あなたは実験の間、起こされたその日が何曜日であるかを決して知ることができない環境に置かれているものとする。
 コインが表/裏、どちらの場合でも、水曜日になれば、あなたは起こされ、質問は行われず、実験は終了する。
 さて、今あなたは起こされ、そして質問された ―「『コイントスの結果が表だった』ということに対する、今のあなたの信頼の度合いは(確率で表せば)いくらですか?」。あなたは何と答えるべきか?

 レールの上の眠り姫問題とオリジナルの眠り姫問題は同型です。従って、

  コイントスの結果は…
   事象H:表だった
   事象T:裏だった

 「今」は、コインが…
   Hm:表だった時の月曜日である
   Tm:裏だった時の月曜日である
   Tt:裏だった時の火曜日である

とすると、敢えて TmとTtは “互いに排反である”とみなすならば

 P(H) = P(T) = 1/2
 P(Hm) = 1/2、P(Tm) = P(Tt) =1/4

です。
 ところで、

私の結論に対する反論について

私の結論

あなたが起こされた時、敢えて TmとTtは “互いに排反である”とみなすならば、
P(Hm) = 1/2、P(Tm) = P(Tt) = 1/4

に対しては、次のような反論がなされるかもしれません。

私の結論に対する反論

 コイントスの結果が表/裏 どちらであるかに関わらず、月曜日には あなたは必ず起こされて質問されるので、もし あなたが起こされた時に、「今日は月曜日である」ことを知らされた とすると、明日の火曜日に起こされる確率は「コイントスの結果が裏であった確率」と同じ1/2だ。従って、「今」が、「明日も起こされる月曜日である」確率、つまり、「コイントスの結果が裏だった時の月曜日である」(Tm)確率は1/2、そして「明日は起こされない月曜日である」確率、つまり、「コイントスの結果が表だった時の月曜日である」(Hm)確率も1/2だ。
 しかし、遅読猫が主張しているように

 あなたが起こされた時、
 P(Hm) = 1/2、P(Tm) = P(Tt) = 1/4

だとしたら、「今日は月曜日である」という情報を与えられたなら、正規化の結果、

 P(Hm) = 2/3、P(Tm) = 1/3

となるはずである。だが これは先の論証の結果

 あなたが「今日は月曜日である」という情報を得た場合、
 P(Hm) = P(Tm) = 1/2

との間に齟齬を生じる。
 従って、遅読猫の主張する

 あなたが起こされた時、
 P(Hm) = 1/2、P(Tm) = P(Tt) = 1/4

は間違いであり、先の論証の結果との間に齟齬が生じない

 あなたが起こされた時、
 P(Hm) = P(Tm) = P(Tt) = 1/3

が正しい。

確かに、「先の論証の結果」、

 あなたが「今日は月曜日である」という情報を得た場合、
 P(Hm) = P(Tm) = 1/2

は正しいです。しかしながら、私が主張するように、

 あなたが起こされた時、
 P(Hm) = 1/2、P(Tm) = P(Tt) = 1/4

だとしても、「今日は月曜日である」という情報を与えられた場合、正規化の結果は、

 P(Hm) = 2/3、P(Tm) = 1/3

とはならずに、「先の論証の結果」と同じ

  P(Hm) = P(Tm) = 1/2

となります。これについては、拙書『 こうして眠り姫問題は解決しましたとさ… 』の第4章で詳述しています。

投稿日:1017
更新日:1017
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お仕事:システム エンジニア

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