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薄い圏の考察(10).(薄い)圏の連結成分

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局所小圏${\mathcal C}$を任意に固定します。任意のi,j${ \in }$Ob(${\mathcal C}$)に対して
(広義の)関係iSjを「各 $t= 1, \dots ,n$ について、$x_{t-1}$ から $x_{t}$ への射が存在する、または$x_{t}$ から $x_{t-1}$ への射が存在する対象の有限列$i=x_0, x_1, \dots, x_n=j$ を持つ」で定義します。この関係は

  1. ${\mathcal C}$が空でないならば、任意のi${ \in }$Ob(${\mathcal C}$)に対して、iSi が成り立つ。
  2. 任意の i,j${ \in }$Ob(${\mathcal C}$)に対して  iSj ならば jSi が成り立つ。
  3. 任意の i,j,k${ \in }$Ob(${\mathcal C}$)に対して  iSj かつ jSk ならば iSk が成り立つ。
    という同値関係の条件を満たします。
    (証明)1.恒等射の存在より射の列$i \to i$を持つ。
    2.「各 $t= 1, \dots ,n$ について、$x_{t-1}$ から $x_{t}$ への射が存在する、または$x_{t}$ から $x_{t-1}$ への射が存在する対象の有限列$i=x_0, x_1, \dots, x_n=j$ を持つ」ならばそれを反転した対象の有限列$j=x_n, x_{n-1}, \dots, x_1=i$も各射に求められる条件を満たす。
    3.「各 $t= 1, \dots ,n$ について、$x_{t-1}$ から $x_{t}$ への射が存在する、または$x_{t}$ から $x_{t-1}$ への射が存在する対象の有限列$i=x_0, x_1, \dots, x_n=j$ を持つ」かつ「各 $t= 1, \dots ,m$ について、$y_{t-1}$ から $y_{t}$ への射が存在する、または$y_{t}$ から $y_{t-1}$ への射が存在する対象の有限列$j=y_0, y_1, \dots, y_m=k$ を持つ」ならば対象の有限列$i=x_0, x_1, \dots, x_n=j=y_0, y_1, \dots, y_m=k$も各射に求められる条件を満たす。(証明終)

このとき同値類[i]:={j$\in $ Ob(${\mathcal C}$)|i$\in $ Ob(${\mathcal C}$)と関係iSjを持つ}を、iを含む連結成分とよびます。同値類の基本的な性質として
Ob(${\mathcal C}$)=$ \bigcup_{i \in Ob({\mathcal C})} [i]$ かつ 「$[i]\cap[j]\neq\emptyset\iff[i]=[j]$」が成り立ちます。(証明略)

 また各$i\in Ob({\mathcal C})$に対して、[i]を対象の集まり、各$i',j'\in [i]$に対しての射$f:i' \to j'$を集めたものを射のあつまりとした${\mathcal C}$の部分圏${\mathcal C}_{[i]}$が定義できます。

次に局所小圏${\mathcal C}$から局所小圏${\mathcal D}$に、関手Fが定義されているとします。
$F[i]:=${$F(i')| i'\in [i]$}とすると、上で見たのと同様に
$F(ob({\mathcal C}))=\bigcup_{i \in ob({\mathcal C})}F[i]$ かつ 
$F[i]\cap F[j]\neq\emptyset\iff F[i]=F[j]$」が成り立ちます。

${\mathcal C}$における各連結成分の集まり{$[i]|i \in ob({\mathcal C})$} から$F({\mathcal C})$における各連結成分の集まり{$ F[i]|i \in ob({\mathcal C})$}への写像$\Phi $$\Phi $([i])=F[i]で定めると、これは写像です。
(証明)[i]=[j]として、任意の$i',j'\in[i]=[j]$を取る。このとき「各 $t= 1, \dots ,n$ について、$x_{t-1}$ から $x_{t}$ への射が存在する、または$x_{t}$ から $x_{t-1}$ への射が存在する対象の有限列$i'=x_0, x_1, \dots, x_n=j'$ を持つ」が成り立つならば、Fは関手なので「$F(x_{t-1})$ から $F(x_{t})$ への射が存在する、または$F(x_{t})$ から $F(x_{t-1})$ への射が存在する対象の有限列$F(i')=F(x_0),F(x_1), \dots,F(x_n)=F(j')$ を持つ」となり $F(i'),F(j')\in F[i]=F[j].$
すなわち「[i]=[j]ならばF[i]=F[j]」が成り立つので、$\Phi $は写像。
(証明終)

命題。Fが充満関手のとき、${\mathcal C}$における連結成分の集まりと$F({\mathcal C})$における連結成分の集まりは(類として)対等となる。
(証明)$\Phi $が逆写像を持つことを示せばよい。$F[i]=F[j]$ として任意の$F(i'),F(j')\in F[i]=F[j]$を取る。ここで「$F(x_{t-1})$ から $F(x_{t})$ への射が存在する、または$F(x_{t})$ から $F(x_{t-1})$ への射が存在する対象の有限列$F(i')=F(x_0),F(x_1), \dots,F(x_n)=F(j')$ を持つ」とすると、Fの充満関手性より「$x_{t-1}$ から $x_{t}$ への射が存在する、または$x_{t}$ から $x_{t-1}$ への射が存在する対象の有限列$i'=x_0, x_1, \dots, x_n=j'$ を持つ」が成立。すなわち$[i]=[j].$逆写像が定義できる。 (証明終)

命題。$F:{\mathcal C}\to {\mathcal D}$が本質的に全射な充満関手のとき、${\mathcal C}$における連結成分の集まりと${\mathcal D}$における連結成分の集まりは(類として)対等となる。
(証明)Fが本質的に全射ならば、任意のk$\in {\mathcal D}$に対してあるi$\in {\mathcal C}$があってk$\in F[i].$よって${\mathcal D}=\bigcup_{i \in ob({\mathcal C})}F[i].$ これに上命題を適用すれば、求める結果が得られる。(証明終)

系。$F:{\mathcal C}\to {\mathcal D}$が圏同値をあたえる関手のとき、${\mathcal C}$における連結成分の集まりと${\mathcal D}$における連結成分の集まりは(類として)対等となる。
(証明)Fが圏同値ならば本質的に全射な充満関手なので、上命題よりわかる。(証明終)

 ${\mathcal D}$が薄い圏の場合、連結成分はどうなるかを見ておきます。たとえばFを括射関手とすると、F(${\mathcal C}$)は強連結なので連結成分はF(${\mathcal C}$)ひとつになります。
 「薄い圏の考察(5)」であげた標準的な薄い圏を構成する関手をFとすると、Fは充満関手なので${\mathcal C}$における連結成分の集まりと$F({\mathcal C})$における連結成分の集まりは対等になります。

${\mathcal C}$とF(${\mathcal C}$)をもっと細かく位相的に比較しようとすると、神経の分類空間を考えたり、アレクサンドロフ位相を考えたりすることになりますが、それは本稿では触れません。

投稿日:12日前
更新日:5日前
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投稿者

書き足しや書き直しを始終してます。  数学は修士修了のアマチュアです。  圏論において、射を高々一つしか持たない薄い圏(thin category)を、対象の二項演算(広義)を射として持つ圏として捉え直し(1)、そのアイデアに基づいて薄い圏やその部分圏をいくつか例示(1)(2)したうえで、局所的小圏から薄い圏への関手(薄化関手)の性質を調べてみました(3)。また括射関手というものを定義してその性質について述べました(4)。(5)(6)では実際に局所的小圏から薄い圏を構成する方法をいくつか述べました。(7)では関手を薄くするということを考えました。(8)では薄化の応用方法をAiに考えて(予想して)もらいました。  圏論は完全独学の素人なので、論理に根本的な間違いがあるかもしれません。その際はご教示いただけますとありがたいです。The English version is on facebook.

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