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時間1階微分と非整数階時間微分を含む拡散方程式の初期値境界値問題

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Initial-boundary value problems for the time-fractional diffusion equations with the classical time derivatives.

今回の記事では, 次の初期値境界値問題
(TFDE){tu+tα(uu0)=Lu+fin  QT,u=0on  ΣT,u=u0on  Ω×{t=0}
を考える. ここで, tαα階Riemann-Liouville微分と呼ばれ,十分滑らかなuα(0,1)に対して
tαu(t)=ddtI1αu(t)=ddt0tgα(tτ)u(τ) dτ,   gα(t)=tαΓ(1α)
と定義される. また, Iαα階Riemann-Liouville積分と呼ばれ,
Iαu(t)=0tg1α(tτ)u(τ) dτ
で定義される. 0<α<1のとき, Riemann-Liouville微分は十分滑らかなuに対して,
tα(uu0)(t)=I1αu(t)=0tgα(tτ)u(τ) dτ=:0cDtαu(t)
と書き換えられ, 0cDtαα階Caputo微分と呼ばれる. さらに, Lは一様楕円型作用素すなわち,
Lu(x,t)=i,j=1Ni(ai,j(x,t)ju(x,t))+j=1Nbj(x,t)ju(x,t)+c(x,t)u(x,t),   i:=xi
であり, 任意の(x,t)QTに対して
(1)λ|ξ|2i,j=1Nai,j(x,t)ξiξjμ|ξ|2   for  ξRN
となるλ,μ>0が存在し, ai,j=aj,iをみたす.

次に, 問題(TFDE)のweak solutionの定義を次のように与える.

weak solution

uが次の(i), (ii), (iii)をみたすとき, 問題(TFDE)のweak solutionという.
(i) uL2(0,T;H01(Ω)),
(ii) u+I1α[uu0]H1(0,T;H1(Ω)),
(iii)任意のφH01(Ω)に対して,
ddtΩ(u(x,t)+I1α[u(x,)u0(x)](t))φ(x) dx+i,j=1NΩai,j(x,t)ju(x,t)iφ(x) dx(2)=j=1NΩbj(x,t)ju(x,t)φ(x) dx+Ωc(x,t)u(x,t)φ(x) dx+Ωf(x,t)φ(x) dx,  a.e.  t(0,T)
をみたす.

問題(TFDE)に対して, 次の定理が成立する.

Existence of weak solutions and energy estimate

u0L2(Ω), fL2(0,T;H1(Ω)), b,cL(QT)とし, (1)が成立すると仮定する.
このとき, 問題(TFDE)のweak solution
uL2(0,T;H01(Ω))L(0,T;L2(Ω))Hα2(0,T;L2(Ω))
が一意に存在し,
u+I1α[uu0]H1(0,T;H1(Ω))+uL2(0,T;H01(Ω))+uL(0,T;L2(Ω))+uHα2(0,T;L2(Ω))(3)C(u0L2(Ω)+fL2(0,T;H1(Ω)))
が成立する.
ただし, Cα,λ,μ,T,N,bL(QT),cL(QT)に依存する定数であり,
vHβ(0,T)=(vL2(0,T)2+0T0T|v(t)v(s)|2|ts|1+2β dsdt)12
である.

Existence of regular solutions and second energy estimate

u0H01(Ω), fL2(0,T;L2(Ω)), b,cL(QT), (1)が成立し,
maxi,jai,jL(QT)<
をみたすと仮定する.
このとき,
u+I1α[uu0]H1(0,T;L2(Ω))W1,(0,T;H1(Ω))
となる問題(TFDE)のweak solution
uL(0,T;H01(Ω))L2(0,T;H2(Ω))Hα2(0,T;H01(Ω))
が一意に存在し,
u+I1α[uu0]H1(0,T;L2(Ω))+u+I1α[uu0]W1,(0,T;H1(Ω)+uL2(0,T;H2(Ω))+uL(0,T;H01(Ω))+uHα2(0,T;H01(Ω))(4)C(u0H01(Ω)+fL2(0,T;L2(Ω)))
が成立する.
ただし, Cα,λ,μ,T,N,bL(QT),cL(QT), Ωの正則性に依存する定数である.

Notations

まず最初に, =ddtと表す. 関数空間X
(6)X={hC2((0,T])C1([0,T]); tαhC([0,T])}
とし, ノルムを
hX=hC([0,T])+hC([0,T])+tαhC([0,T])
と定める. このとき, XはBanach空間となる. ここで, ηε=ηε(t)をmollifier, すなわち
ηεC0(ε,ε),  ηε0,  Rηε(t) dt=1
をみたすものとする. さらに,
(7)ai,j,n=(η1/nai,j(x,))(t)
と定め,
(8)ai,j,nai,j  strongly in  L2(QT)  as  n
をみたすとする. さらに, 式(1)より, 任意の(x,t)QTに対して
(9)λ|ξ|2i,j=1Nai,j,n(x,t)ξiξjμ|ξ|2   for  ξRN
が成立する. 実際,
i,j=1Nai,j,n(x,t)ξiξj=Rη1/n(ts)(i,j=1Nai,j(x,s)ξiξj) ds
であるので, 式(1)より
λ|ξ|2=Rη1/n(ts)λ|ξ|2 dsRη1/n(ts)(i,j=1Nai,j(x,s)ξiξj) dsRη1/n(ts)μ|ξ|2 ds=μ|ξ|2
となるので, 式(9)が得られる. 同様にして,
bj,n(x,t)=(η1/nbj(x,))(t),  cn(x,t)=(η1/nc(x,))(t),  fn(x,t)=(η1/nf(x,))(t)
と定義する.

Approximate solutions

本章では, 通常の放物型方程式に対するGalerkin methodと同様に, 式(TFDE)の近似解を構成することを目標とする.
{ϕn(x)}nN
{Δϕn=λnϕnin  Ω,ϕn=0on  Ω
をみたすL2(Ω)の正規直交基底, H01(Ω)の直交基底とし, 次のような問題(TFDE)の近似解
(10)un(x,t)=k=1ndn,k(t)ϕk(x)
を求める. すなわち, 係数dn,k(t)を決定する. そのため, 次の初期値境界値問題
(11){tun+tα(unun,0)=Lnun+fnin  QT,un=0on  ΣT,un=un,0on  Ω×{t=0}
について考える. ただし,
un,0(x)=ϕk(x)(k=1nΩu0(y)ϕk(y) dy),
Lnu(x,t)=i,j=1Ni(ai,j,n(x,t)ju(x,t))+j=1Nbj,n(x,t)ju(x,t)+cn(x,t)u(x,t)
である. 係数dn,kは式(11){ϕ1,,ϕn}による有限次元空間への射影を考えることによって決定する.
すなわち, 問題(11)1行目の方程式の両辺にϕmをかけてΩ上で積分をすると, 左辺は
Ωϕm(x)tun(x,t) dx=Ωϕm(x)t(k=1ndn,k(t)ϕk(x)) dx=k=1ntdn,k(t)Ωϕm(x)ϕk(x) dx=tdn,m(t),
Ωϕm(x)tα(un(x,)un,0(x))(t) dx=Ωϕm(x)tα(k=1n(dn,k()dn,k(0))ϕk(x))(t) dx=k=1ntα(dn,k()dn,k(0))(t)Ωϕm(x)ϕk(x) dx=tα(dn,m()dn,m(0))(t)
となり, 右辺第1項は部分積分より,
i,j=1NΩϕm(x)i(ai,j,n(x,t)jun(x,t)) dx=i,j=1NΩai,j,n(x,t)(k=1ndn,k(t)jϕk(x))iϕm(x) dx=i,j=1Nk=1ndn,k(t)Ωai,j,n(x,t)jϕk(x)iϕm(x) dx
となるので,
tdn,m(t)+tα(dn,m()dn,m(0))(t)=k=1ni,j=1Ndn,k(t)Ωai,j,n(x,t)jϕk(x)iϕ(x) dx+k=1nj=1Ndn,k(t)Ωbj,n(x,t)jϕk(x)ϕm(x) dx+k=1ndn,k(t)Ωcn(x,t)ϕk(x)ϕm(x) dx(12)+Ωfn(x,t)ϕm(x) dx
が得られる. ここで,
dn(t)=(dn,1(t),,dn,n(t)),
Am,kn(t)=i,j=1NΩai,j,n(x,t)jϕk(x)iϕm(x) dx,  An(t)={Am,kn(t)}k,m=1n,
Bm,kn(t)=j=1NΩbj,n(x,t)jϕk(x)ϕm(x) dx,  Bn(t)={Bm,kn(t)}k,m=1n,
Cm,kn(t)=Ωcn(x,t)ϕk(x)ϕm(x)dx,  Cn(t)={Cm,kn(t)}k,m=1n,
Fn(t)=(Ωfn(y,t)ϕ1(y) dy,,Ωfn(y,t)ϕn(y) dy),
dn,0=(Ωu0(y)ϕ1(y) dy,,Ωu0(y)ϕn(y) dy)
と定義すると, (12)
(13){dn,m(t)+tα(dn()dn,0)(t)=An(t)dn(t)+Bn(t)dn(t)+Cn(t)dn(t)+Fn(t),dn(0)=dn,0
と表される. Fnは滑らかかつ, An,Bn,CnXよりA~n:=AnBnCnとすれば
A~nX
を得る. dn,mAC[0,T]を仮定し, 両辺を0からtまで積分すると, 積分方程式
(14)dn(t)=dn,01Γ(1α)0t(tτ)α(dn(τ)dn,0) dτ+0tA~n(τ)dn(τ) dτ
に書き直せる. さらに, z1,z2Xに対して距離を
ρ(z1,z2)=z1z2X
と定めると, これはX上で完備距離空間となる. 以上の議論より, 次の補題が得られる.

任意のnNT>0に対して, 式(14)をみたすdnXが一意に存在する.

Banachの不動点定理を用いて示す. 作用素Φ
(15)Φ[dn](t)=dn,01Γ(1α)0t(tτ)α(dn(τ)dn,0) dτ+0tA~n(τ)dn(τ) dτ
と定義する. 証明を2段階に分ける.
Step 1: dnXΦ[dn]X.
(15)の両辺でノルムを取ると,
Φ[dn]C([0,T])|dn,0|+1Γ(1α)0t(tτ)α(dn(τ)dn,0) dτC([0,T])+0tA~n(τ)dn(τ) dτC([0,T])|dn,0|+T1αΓ(2α)(dnC([0,T])+|dn,0|)+TA~nC([0,T])dnC([0,T])<
である. (15)の両辺を微分すると,
(16)Φ[dn](t)=1Γ(1α)0t(tτ)αdn(τ) dτ+A~n(t)dn(t)
となるので, 同様にして
Φ[dn]C([0,T])T1αΓ(2α)dnC([0,T])+A~nC([0,T])dnC([0,T])<
がしたがう. さらに, (16)の両辺を微分すると,
Φ[dn](t)=1Γ(1α)0t(tτ)αdn(τ) dτ+tαΓ(1α)dn,0+(A~n)(t)dn(t)+A~n(t)dn(t)
となるので, 両辺にtαをかけると
(17)tαΦ[dn](t)=tαΓ(1α)0t(tτ)αdn(τ) dτ+1Γ(1α)dn(0)+tα(A~n)(t)dn(t)+tαA~n(t)dn(t)
が得られる. よって,
tαΦ[dn]C([0,T])tαΓ(1α)tαdnC([0,T])0t(tτ)ατα dτ+1Γ(1α)dnC([0,T])+Tα(A~n)C([0,T])dnC([0,T])+TαA~nC([0,T])dnC([0,T])
と評価できる. ここで, 第一種オイラー積分公式を用いると
1Γ(1α)0t(tτ)ατα dτ=Γ(1α)Γ(22α)t12α
であるので,
tαΓ(1α)0t(tτ)ατα dτ=Γ(1α)Γ(22α)t1α
が得られる. 故に,
tαΦ[dn]C([0,T])Γ(1α)Γ(22α)T1αtαdnC([0,T])+dnC([0,T])Γ(1α)+Tα(A~n)C([0,T])dnC([0,T])+TαA~nC([0,T])dnC([0,T])<
である. 以上より, Φ[dn]X<が示された.
Step 2: Φ[dn]が縮小写像であること.
dn1,dn2Xとすると, 先程の評価より
Φ[dn1]Φ[dn2]C([0,T])T1αΓ(2α)dn1dn2C([0,T])+TA~nC([0,T])dn1dn2C([0,T]),
Φ[dn1]Φ[dn2]C([0,T])T1αΓ(2α)(dn1)(dn2)C([0,T])+A~nC([0,T])dn1dn2C([0,T]),
tαΦ[dn1]tαΦ[dn2]C([0,T])Γ(1α)Γ(22α)T1αtα(dn1)tα(dn2)C([0,T])+1Γ(1α)(dn1)(dn2)C([0,T])+Tα(A~n)C([0,T])dn1dn2C([0,T])+TαA~nC([0,T])(dn1)(dn2)C([0,T])
が得られる. よって, まとめると
Φ[dn1]Φ[dn2]XC(α,T)A~nXdn1dn2X
であるので,
C(α,T)A~nX<1
となるようにT>0を選べば, Φは縮小写像になる. 以上より, Banachの不動点定理から, 積分方程式(14)をみたすdnXが一意に存在する.

補題3より, 次の系が得られる.

nN, T>0とする. このとき, (10)で与えられるunは, m{1,,n}に対して
Ωun(x,t)ϕm(x) dx+Ω0cDtαun(x,t)ϕm(x) dx+i,j=1NΩai,j,n(x,t)jun(x,t)iϕm(x) dx(18)=j=1NΩbj,n(x,t)jun(x,t)ϕm(x) dx+Ωcn(x,t)un(x,t)ϕm(x) dx+Ωfn(x,t)ϕm(x) dx
をみたす. さらに, xΩβNNに対して, Ωが十分滑らかなときxβun(x,)C2((0,T])C1([0,T])かつtαxβun(x,)C(QT)である.

Existence of weak solutions and energy estimate

本章では, 定理1を証明する. そのため, まず次の補題を示す.

定理1と同様の仮定を与える. このとき, t[0,T]と各nNに対して近似解un
maxt[0,T]un(t)L2(Ω)2+I1αun(t)L2(Ω)2+αΓ(1α)0t0τun(τ)un(s)L2(Ω)2|τs|α+1 dsdτ+λ0tun(t)L2(Ω)2 dτC0(u0L2(Ω)2+0tfn(τ)H1(Ω)2 dτ)
をみたす. ただし, C0α,λ,T,N,bL(QT),cL(QT)に依存する定数である.

(18)の両辺にdn,mをかけてm=1からnまで和をとると,
Ωun(x,t)un(x,t) dx+Ω0cDtαun(x,t)un(x,t) dx+i,j=1NΩai,j,n(x,t)jun(x,t)iun(x,t) dx(19)=j=1NΩbj,n(x,t)jun(x,t)un(x,t) dx+Ωcn(x,t)|un(x,t)|2 dx+Ωfn(x,t)un(x,t) dx
となる. 左辺はそれぞれ
Ωun(x,t)un(x,t) dx=12ddtun(t)L2(Ω)2,
Ω0cDtαun(x,t)un(x,t) dx120cDtαun(t)L2(Ω)+α2Γ(1α)0tun(t)un(τ)L2(Ω)2|tτ|1+α dτ,
i,j=1NΩai,j,n(x,t)jun(x,t)iun(x,t) dxλun(t)L2(Ω)2
が得られる. 右辺はぞれぞれ, Holderの不等式とCauchyの不等式を用いれば,
j=1NΩbj,n(x,t)jun(x,t)un(x,t) dxbn(t)L(Ω)un(t)L2(Ω)un(t)L2(Ω)1λbn(t)L(Ω)2un(t)L2(Ω)2+λ4un(t)L2(Ω)2,Ωcn(x,t)|un(x,t)|2 dxcn(t)L(Ω)un(t)L2(Ω)2,Ωfn(x,t)un(x,t) dxfn(t)H1(Ω)(un(t)L2(Ω)2+un(t)L2(Ω)2)1/21λfn(t)H1(Ω)2+λ4un(t)L2(Ω)2+λ4un(t)L2(Ω)2
と評価できるので, 以上をまとめると
ddtun(t)L2(Ω)2+0cDtαun(t)L2(Ω)+αΓ(1α)0tun(t)un(τ)L2(Ω)2|tτ|1+α dτ+λun(t)L2(Ω)2(20)hn(t)un(t)L2(Ω)2+2λfn(t)H1(Ω)2
が得られる. ただし, hn(t)bn(t)L(Ω),cn(t)L(Ω),λに依存する関数である. したがって, (20)の両辺を0からtまで積分すると,
un(t)L2(Ω)2+I1αun(t)L2(Ω)2+αΓ(1α)0t0τun(τ)un(s)L2(Ω)2|τs|1+α dsdτ+λ0tun(τ)L2(Ω)2 dτ(21)un,0L2(Ω)2+t1αΓ(2α)un,0L2(Ω)2+qn(t)0tun(t)L2(Ω)2+2λ0tfn(τ)H1(Ω)2 dτ
を得る. ただし, qn(t)bnL(Qt),cnL(Qt),λに依存するtに関する非減少関数である. ここで, un(t)L2(Ω)に対して評価を行う. (21)より
un(t)L2(Ω)2(1+t1αΓ(2α))un,0L2(Ω)2+qn(t)0tun(t)L2(Ω)2+2λ0tfn(τ)H1(Ω)2 dτ
であるので,
η(t)=0tun(τ)L2(Ω) dτ,   ψ(t)=(1+t1αΓ(2α))un,0L2(Ω)2+2λ0tfn(τ)H1(Ω)2 dτ
とおけば, η(t)=un(t)L2(Ω)2である. したがって,
η(t)qn(t)η(t)+ψ(t)
となるので, Gronwallの不等式より
η(t)etqn(t)(η(0)+0tψ(τ) dτ)
が得られる.
ここで, η(0)=un,0L2(Ω)2であり,
0tψ(τ) dτ=0t((1+τ1αΓ(2α))un,0L2(Ω)2+2λ0τfn(s)H1(Ω)2 ds) dτ(t+t2αΓ(3α))u0,nL2(Ω)2+2tλ0tfn(τ)H1(Ω)2 dτ
と評価できるので, まとめると
(22)un(t)L2(Ω)2C(α,T,λ)(un,0L2(Ω)2+0tfn(τ)H1(Ω)2 dτ)
が得られる. 故に, (22)の評価を式(21)に適用すると, 補題の証明が完了する.

定理1の証明

補題4より
I1αun(t)L2(Ω)=0tgα(tτ)un(τ)L2(Ω)2 dτgα(T)0tun(τ)L2(Ω)2 dτ
が得られる. 故に,
unL(0,T;L2(Ω))2+unL2(0,T;H01(Ω))2+unHα2(0,T;L2(Ω))<
がしたがう. 次に, un+0cDtαunの評価を行う. θmを定数, w(x)=m=1θmϕm(x)とする. wn(x)=m=1nθmϕm(x)と表し, (18)の両辺にθmをかけてm=1からnまで和をとると,
Ω(un(x,t)+0cDtαun(x,t))wn(x) dx+i,j=1NΩai,j,n(x,t)jun(x,t)iwn(x) dx=j=1NΩbj,n(x,t)jun(x,t)wn(x) dx+Ωcn(x,t)un(x,t)wn(x) dx+Ωfn(x,t)wn(x) dx
となり, Holderの不等式を用いると,
|Ω(un(x,t)+0cDtαun(x,t))wn(x) dx|N2μun(t)L2(Ω)wnL2(Ω)+bn(t)L(Ω)un(t)L2(Ω)wnL2(Ω)(23)+cn(t)L(Ω)unL2(Ω)wnL2(Ω)+fn(t)H1(Ω)wnH01(Ω)
が得られる. ここで, un(x,)AC[0,T]より, 0cDtαun(x,t)=ddtI1α[un(x,)un,0(x)](t)であるので
ddt(un(t)+I1α[unun,0](t))H1(Ω)=supwH01(Ω)|Ω(tun(x,t)+0cDtαun(x,t))wn(x) dx|
を得る. (23)の右辺はL2(0,T)の意味でnについて一様有界なので,
(24)supnddt(un+I1α[unun,0])L2(0,T;H1(Ω))<
が得られる. よって, 弱コンパクト性定理より,
(25)unku  weakly in  L(0,T;L2(Ω))  as  k,
(26)unku  weakly in  L2(0,T;H01(Ω))  as  k,
(27)unk+I1α[unkunk,0]v  weakly in  H1(0,T;H1(Ω))  as  k
となる部分列{unk}uL(0,T;L2(Ω))L2(0,T;H01(Ω))Hα2(0,T;L2(Ω)), vH1(0,T;H1(0,T))が存在する. まず最初に, 弱微分t(u+I1α[uu0])L2(0,T;H1(Ω))の意味で存在し, t(u+I1α[uu0])=tvであることを示す. テスト関数φC0(0,T)ϕH01(Ω)をとると, 先程の議論から
0Tφ(t)Ωtv(x,t)ϕ(x) dxdt=limk0Tφ(t)Ωt(unk(x,t)+I1α[unk(x,)unk,0(x)](t))ϕ(x) dxdt=limkΩ0Tφ(t)t(unk(x,t)+I1α[unk(x,)unk,0(x)](t)) dt ϕ(x) dx=limkΩ0Tφ(t)(unk(x,t)+I1α[unk(x,)unk,0(x)](t)) dt ϕ(x) dx=limk0Tφ(t)Ωϕ(x)(unk(x,t)+I1α[unk(x,)unk,0(x)](t)) dxdt=0Tφ(t)Ωϕ(x)(u(x,t)+I1α[u(x,)u0(x)](t)) dxdt
がしたがう. よって, t(u+I1α[uu0])=tvL2(0,T;H1(Ω)) in the weak senseが示された. 最後に, 得られたuが等式(2)をみたしていることを確かめる. 稠密性より, w(x)=k=0Kθmϕm(x)について成立することを示せば十分である. t0(0,T)を任意に固定し, 式(18)の両辺にmolliifier ηε(tt0)をかけてt(0,T)について積分すると,
0Tηε(tt0)Ωt(unk(x,t)+I1α[unk(x,)unk,0(x)](t))w(x) dxdt+i,j=1N0TΩai,j,nk(x,t)junk(x,t)iw(x)ηε(tt0) dxdt=j=1N0TΩbj,nk(x,t)junk(x,t)w(x)ηε(tt0) dxdt+0TΩcnk(x,t)unk(x,t)w(x)ηε(tt0) dxdt+0TΩfnk(x,t)w(x)ηε(tt0) dxdt
となるので, それぞれの項に対して, k, ε0の極限を考える. 左辺第1項は
0Tηε(tt0)Ωt(un,k(x,t)+I1α[unk(x,)unk,0(x)](t))w(x) dxdt=0Tηε(tt0)Ω(unk+I1α[unk(x,)unk,0(x)](t))w(x) dxdtk0Tηε(tt0)Ω(u(x,t)+I1α[u(x,)u0(x)](t))w(x) dxdt=0Tηε(tt0)ddtΩ(u(x,t)+I1α[u(x,)u0(x)](t))w(x) dxdtε0ddtΩ(u(x,t0)+I1α[u(x,)u0(x)](t0))w(x) dx  for  a.e.  t0(0,T)
となり, 左辺第2項は同様にすると, iw(x)ηε(tt0)QT上での滑らかさと, ai,j,nkai,j in L2(QT)なので
0TΩai,j,nk(x,t)junk(x,t)iw(x)ηε(tt0) dxdtk0TΩai,j(x,t)ju(x,t)iw(x)ηε(tt0) dxdtε0Ωai,j(x,t0)ju(x,t0)iw(x) dx  for  a.e.  t0(0,T)
となる. 右辺も同様に計算すると, 仮定よりbj,nkbj in L2(QT)であるので,
0TΩbj,nk(x,t)junk(x,t)w(x)ηε(tt0) dxdtk0TΩbj(x,t)ju(x,t)w(x)ηε(tt0) dxdtε0Ωbj(x,t0)ju(x,t0)w(x) dx  for  a.e.  t0(0,T)
となる. cnkc in L2(QT)であるので, cnkunkcu in L2(QT)となる. よって
|0TΩ(cnk(x,t)unk(x,t)c(x,t)u(x,t))w(x)ηε(tt0) dxdt|0TΩ|cnk(x,t)c(x,t)||unk(x,t)|w(x)ηε(tt0) dxdt+|0TΩcnk(x,t)(unk(x,t)u(x,t))w(x)ηε(tt0) dxdt|
と評価でき, kとすれば右辺は0に収束する. したがって,
0TΩcnk(x,t)unk(x,t)w(x)ηε(tt0) dxdtΩc(x,t0)u(x,t0)w(x) dx  for  a.e.  t0(0,T)
を得る. さらに
0TΩfnk(x,t)w(x)ηε(tt0) dxdtk0TΩf(x,t)w(x)ηε(tt0) dxdtε0Ωf(x,t0)w(x) dx  for  a.e.  t0(0,T)
となるので, 得られたuが定義1をみたしていることが確かめられた. 一意性は, u~=u1u2とし, u~に関する初期値境界値問題
{tu~+tαu~=Lu~in  QT,u~=0on  ΣT,u~=0on  Ω×{t=0}
を考え, 先程と同様の議論をすれば
u~+I1αu~H1(0,T;H1(Ω))+u~L2(0,T;H01(Ω))+u~L(0,T;L2(Ω))+u~Hα2(0,T;L2(Ω))0
が得られる. よって, ノルムの定義よりu~=0 a.e. を得る. 以上で証明が完了した.

Regular solutions

本章では, 定理2の証明を行う. そのため, 次の補題を示す.

定理2と同様の仮定を与える. このとき, t[0,T]と各nNに対して近似解un
maxt[0,T]un(t)L2(Ω)2+I1αun(t)L2(Ω)2+αΓ(1α)0t0τun(τ)un(s)L2(Ω)2|τs|α+1 dsdτ+λ80t2un(t)L2(Ω)2 dτC1(un,0L2(Ω)2+0tun(τ)H01(Ω)2 dτ+0tfn(τ)L2(Ω)2 dτ)
をみたす. ただし, C1α,λ,T,bL(QT),cL(QT)Ωの正則性に依存する定数である.

(18)の両辺にλmdn,mをかけて, m=1からnまで和をとると,
Ωun(x,t)Δun(x,t) dxΩ0cDtαun(x,t)Δun(x,t) dxi,j=1NΩai,j,n(x,t)jun(x,t)iΔun(x,t) dx=j=1NΩbj,n(x,t)jun(x,t)Δun(x,t) dxΩcn(x,t)u(x,t)Δun(x,t) dxΩfn(x,t)Δun(x,t) dx
となる. 左辺第1項, 第2項は部分積分を用いると, Δun=0, 0cDtαun=0 on Ωかつun(x,)AC[0,T]なので,
Ωun(x,t)Δun(x,t) dxΩ0cDtαun(x,t)Δun(x,t) dx=Ωun(x,t)un(x,t) dx+Ω0cDtαun(x,t)un(x,t) dx12ddtun(t)L2(Ω)2+120cDtαun(t)L2(Ω)2+α2Γ(1α)0tun(t)un(τ)L2(Ω)2(tτ)α+1 dτ
とできる. 左辺第3項は部分積分と楕円型作用素の性質より
i,j=1NΩai,j,n(x,t)jun(x,t)iΔun(x,t) dx=i,j=1NΩi(ai,j,n(x,t)jun(x,t))Δun(x,t) dxλ42un(t)L2(Ω)2C0,nun(t)L2(Ω)2
を得る. ここで, C0,nΩC2ノルムとmaxi,jai,j,n(t)L(Ω)に依存する定数である. 一方, 右辺はHolderの不等式とCauchyの不等式より
j=1NΩbj,n(x,t)jun(x,t)Δun(x,t) dxΩcn(x,t)u(x,t)Δun(x,t) dxΩfn(x,t)Δun(x,t) dxbn(t)L(Ω)un(t)L2(Ω)2un(t)L2(Ω)+cn(t)L(Ω)un(t)L2(Ω)2un(t)L2(Ω)+fn(t)L2(Ω)2un(t)L2(Ω)4λbn(t)L(Ω)2un(t)L2(Ω)2+λ162un(t)L2(Ω)2+4λcn(t)L(Ω)2un(t)L2(Ω)2+λ162un(t)L2(Ω)2+4λfn(t)L2(Ω)2+λ162un(t)L2(Ω)2
と評価できるので, 以上をまとめると
ddtun(t)L2(Ω)2+0cDtαun(t)L2(Ω)2+αΓ(1α)0tun(t)un(τ)L2(Ω)2|tτ|1+α dτ+λ82un(t)L2(Ω)2(28)C0,nun(t)L2(Ω)2+8λbn(t)L(Ω)2un(t)L2(Ω)2+8λcn(t)L(Ω)2un(t)L2(Ω)2+8λfn(t)L2(Ω)2
となる. よって, 任意のnN,t[0,T]に対してκn(t)maxi,jai,jL(QT)となるので, C0,nC0をみたすmaxi,jai,jL(QT)Ωの正則性のみに依存するある定数C0が存在する. したがって,
ddtun(t)L2(Ω)2+0cDtαun(t)L2(Ω)2+αΓ(1α)0tun(t)un(τ)L2(Ω)2|tτ|1+α dτ+λ82un(t)L2(Ω)2(29)h^n(t)un(t)H01(Ω)2+8λfn(t)L2(Ω)2
が得られる. ここで, h^n(t)maxi,jai,j(t)L(Ω)Ωの正則性, b(t)L(Ω), cn(t)L(Ω), λに依存する関数である. 故に, (29)の両辺を0からtまで積分すると,
un(t)L2(Ω)2+I1αun(t)L2(Ω)2+αΓ(1α)0t0τun(τ)un(s)L2(Ω)2|τs|1+α dsdτ+λ80t2un(τ)L2(Ω)2 dτ(30)un,0L2(Ω)+t1αΓ(2α)u0,nL2(Ω)2+q^n(t)0tun(τ)H01(Ω)2 dτ+8λ0tfn(τ)L2(Ω)2 dτ
が得られる. ただし, q^n(t)maxi,jai,jL(Qt)Ωの正則性, bL(Qt), cL(Qt), λに依存するtに関する非減少関数である. 右辺は補題4よりnに関して一様有界である. 以上で補題の証明が完了した.

定理2の証明

補題5より, 定理1と同様の議論をすることで, uL(0,T;H01(Ω))L2(0,T;H2(Ω))Hα2(0,T;H01(Ω))となるweak solution uの存在が示され,
supnddt(un+I1α[unun,0])L2(0,T;L2(Ω))+supnddt(un+I1α[unun,0])L(0,T;H1(Ω))<
が得られる. 以上で証明が完了した.

投稿日:202455
更新日:202455
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カメ
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大学院では非線形拡散方程式(主にFast Diffusion, Porous Medium), 非整数階時間微分を含む拡散方程式を専攻していました. 現在は非整数階時間微分を含む拡散方程式の可解性の研究をしています.

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