Initial-boundary value problems for the time-fractional diffusion equations with the classical time derivatives.
今回の記事では, 次の初期値境界値問題
を考える. ここで, は階Riemann-Liouville微分と呼ばれ,十分滑らかなとに対して
と定義される. また, は階Riemann-Liouville積分と呼ばれ,
で定義される. のとき, Riemann-Liouville微分は十分滑らかなに対して,
と書き換えられ, は階Caputo微分と呼ばれる. さらに, は一様楕円型作用素すなわち,
であり, 任意のに対して
となるが存在し, をみたす.
次に, 問題のweak solutionの定義を次のように与える.
weak solution
が次の(i), (ii), (iii)をみたすとき, 問題のweak solutionという.
(i) ,
(ii) ,
(iii)任意のに対して,
をみたす.
問題に対して, 次の定理が成立する.
Existence of weak solutions and energy estimate
, , とし, が成立すると仮定する.
このとき, 問題のweak solution
が一意に存在し,
が成立する.
ただし, はに依存する定数であり,
である.
Existence of regular solutions and second energy estimate
, , , が成立し,
をみたすと仮定する.
このとき,
となる問題のweak solution
が一意に存在し,
が成立する.
ただし, は, の正則性に依存する定数である.
Notations
まず最初に, と表す. 関数空間を
とし, ノルムを
と定める. このとき, はBanach空間となる. ここで, をmollifier, すなわち
をみたすものとする. さらに,
と定め,
をみたすとする. さらに, 式より, 任意のに対して
が成立する. 実際,
であるので, 式より
となるので, 式が得られる. 同様にして,
と定義する.
Approximate solutions
本章では, 通常の放物型方程式に対するGalerkin methodと同様に, 式の近似解を構成することを目標とする.
を
をみたすの正規直交基底, の直交基底とし, 次のような問題の近似解
を求める. すなわち, 係数を決定する. そのため, 次の初期値境界値問題
について考える. ただし,
である. 係数は式をによる有限次元空間への射影を考えることによって決定する.
すなわち, 問題の行目の方程式の両辺にをかけて上で積分をすると, 左辺は
となり, 右辺第1項は部分積分より,
となるので,
が得られる. ここで,
と定義すると, は
と表される. は滑らかかつ, よりとすれば
を得る. を仮定し, 両辺をからまで積分すると, 積分方程式
に書き直せる. さらに, に対して距離を
と定めると, これは上で完備距離空間となる. 以上の議論より, 次の補題が得られる.
Banachの不動点定理を用いて示す. 作用素を
と定義する. 証明を2段階に分ける.
Step 1: .
の両辺でノルムを取ると,
である. の両辺を微分すると,
となるので, 同様にして
がしたがう. さらに, の両辺を微分すると,
となるので, 両辺にをかけると
が得られる. よって,
と評価できる. ここで, 第一種オイラー積分公式を用いると
であるので,
が得られる. 故に,
である. 以上より, が示された.
Step 2: が縮小写像であること.
とすると, 先程の評価より
が得られる. よって, まとめると
であるので,
となるようにを選べば, は縮小写像になる. 以上より, Banachの不動点定理から, 積分方程式をみたすが一意に存在する.
補題3より, 次の系が得られる.
, とする. このとき, で与えられるは, に対して
をみたす. さらに, とに対して, が十分滑らかなときかつである.
Existence of weak solutions and energy estimate
本章では, 定理1を証明する. そのため, まず次の補題を示す.
定理1と同様の仮定を与える. このとき, と各に対して近似解は
をみたす. ただし, はに依存する定数である.
の両辺にをかけてからまで和をとると,
となる. 左辺はそれぞれ
が得られる. 右辺はぞれぞれ, Holderの不等式とCauchyの不等式を用いれば,
と評価できるので, 以上をまとめると
が得られる. ただし, はに依存する関数である. したがって, の両辺をからまで積分すると,
を得る. ただし, はに依存するに関する非減少関数である. ここで, に対して評価を行う. より
であるので,
とおけば, である. したがって,
となるので, Gronwallの不等式より
が得られる.
ここで, であり,
と評価できるので, まとめると
が得られる. 故に, の評価を式に適用すると, 補題の証明が完了する.
定理1の証明
補題4より
が得られる. 故に,
がしたがう. 次に, の評価を行う. を定数, とする. と表し, の両辺にをかけてからまで和をとると,
となり, Holderの不等式を用いると,
が得られる. ここで, より, であるので
を得る. の右辺はの意味でについて一様有界なので,
が得られる. よって, 弱コンパクト性定理より,
となる部分列と, が存在する. まず最初に, 弱微分がの意味で存在し, であることを示す. テスト関数とをとると, 先程の議論から
がしたがう. よって, in the weak senseが示された. 最後に, 得られたが等式をみたしていることを確かめる. 稠密性より, について成立することを示せば十分である. を任意に固定し, 式の両辺にmolliifier をかけてについて積分すると,
となるので, それぞれの項に対して, , の極限を考える. 左辺第1項は
となり, 左辺第2項は同様にすると, の上での滑らかさと, in なので
となる. 右辺も同様に計算すると, 仮定より in であるので,
となる. in であるので, in となる. よって
と評価でき, とすれば右辺はに収束する. したがって,
を得る. さらに
となるので, 得られたが定義1をみたしていることが確かめられた. 一意性は, とし, に関する初期値境界値問題
を考え, 先程と同様の議論をすれば
が得られる. よって, ノルムの定義より a.e. を得る. 以上で証明が完了した.
Regular solutions
本章では, 定理2の証明を行う. そのため, 次の補題を示す.
定理2と同様の仮定を与える. このとき, と各に対して近似解は
をみたす. ただし, はとの正則性に依存する定数である.
の両辺にをかけて, からまで和をとると,
となる. 左辺第1項, 第2項は部分積分を用いると, , on かつなので,
とできる. 左辺第3項は部分積分と楕円型作用素の性質より
を得る. ここで, はのノルムとに依存する定数である. 一方, 右辺はHolderの不等式とCauchyの不等式より
と評価できるので, 以上をまとめると
となる. よって, 任意のに対してとなるので, をみたすとの正則性のみに依存するある定数が存在する. したがって,
が得られる. ここで, はとの正則性, , , に依存する関数である. 故に, の両辺をからまで積分すると,
が得られる. ただし, はとの正則性, , , に依存するに関する非減少関数である. 右辺は補題4よりに関して一様有界である. 以上で補題の証明が完了した.
定理2の証明
補題5より, 定理1と同様の議論をすることで, となるweak solution の存在が示され,
が得られる. 以上で証明が完了した.