こんにちは、Mark6という者です。
この記事では、「Faà di Brunoの公式」という恒等式の紹介をします。個人的には知名度が低いと思うのですが、その割にいろんなところに顔を出し、そのため幾度となく再発見が繰り返される恒等式です。私の周りにもこの恒等式の被害者再発見者が数人います......
R. Kusabaさんのはてなブログ 、 Wikipedia(英語) 、 名古屋市立大学のpdf など良質かつ詳細な解説があるので、この記事は軽い紹介をするにとどめます。
$$\sum_{k=1}^n km_k=n$$
という式に心当たりがありますか?
それは多分Faà di Brunoの公式(で解釈できるもの)です!!!
$$\frac{d^n}{dx^n}f(g(x))$$
$$=\sum\left(\prod_{i=1}^n\frac{1}{m_i!(i!)^{m_i}}\right)n!f^{(\sum m_i)}(g(x))\prod_{i=1}^n\left(g^{(i)}(x)\right)^{m_i}$$
ただし一番外のシグマは、$$\sum_{k=1}^n km_k=n$$を満たす非負整数列$(m_1,\cdots,m_n)$について和を取る。
もうすこし別の形でも述べておきましょう。ただのちょっとした式変形です。
$$\frac{(f\circ g)^{(n)}(x)}{n!}$$
$$=\sum\prod_{i=1}^n\left(\frac{g^{(i)}(x)}{i!}\right)^{m_i}\frac{f^{(\sum m_i)}(g(x))}{\prod_{i=1}^n m_i!}$$
こう見ると、「$f\circ g$の$n$階微分」を、「$f$の微分」と「$g$の微分」で表示する公式、とみることができます。この公式の$n=1$の場合が連鎖律$$(f\circ g)'(x)=g'(x)f'(g(x))$$ですね。これを高階に拡張したのがFaà di Brunoの公式です。
雑な議論ですが、
$$f(x)=\sum_{i=1}^\infty a_nx^n~,\quad g(x)=\sum_{i=1}^\infty b_nx^n$$
と級数展開し、さらに
$$(f\circ g)(x)=\sum_{i=1}^\infty c_nx^n$$
と級数展開します。そしてFaà di Brunoの公式-2の両辺に$x=0$を代入すると、左辺は$c_n$そのものであり、右辺は$a_n$と$b_n$に関する式です。
$$c_n=\sum_{\mathbf{i}\in\mathcal{C}_n} a_kb_{i_1}\cdots b_{i_k}$$
ただし
$$\mathcal{C}_n\coloneqq\{(i_1,\cdots,i_k)\mid 1\leq k\leq n,~i_1+\cdots+i_k=n\}$$
私がこの式を"発見"したときは、さすがに綺麗すぎたので既出を確信したものです。そこから色々探し、最終的にFaà di Brunoの公式という名前に辿り着いたのは「$\LaTeX$の形式で数式を打ち込むと類似の数式をネットから探し出してくれる」みたいな数式検索サービスでした。
そういった時間や手間を多少減らせていたら、この記事をMathlogに置いておく意味があったというものです。記事のはじめにもリンクを張っておきましたが、詳細な情報は参考文献を参照ください。