アーベル群の部分群の和集合はいつアーベル群になるでしょうか.次の命題が成り立ちます.
$A$を群とする.$S$, $T$をその部分群とするとき, $S\cup T$が群となるための必要十分条件は片方がもう片方に含まれることである.
十分性は明らかである.$S\cup T$が部分群であるとする.どちらももう片方を含まないとすると, $T$に入らない$S$の元$s$と$S$に入らない$T$の元$t$が存在する. $S\cup T$は部分群だから$st$は$S\cup T$の元. これが$S$の元なら$s$を引いて$t$も$S$の元となり仮定に反する. $T$の元でも同様.
背理法では, 結論が弱いとその否定は強くなります.
一方多くの和を取る場合は包含がなくても部分群になります.
群$G$の元$g$は$g^n=e$となる$n\in \mathbb{N}$がある時捩れ元(torsion element)という.全ての元が捩れ元であるとき捩れ群(torison group)といい, 単位元を除く全ての元が捩れ元でないとき捩れのない群(torsion-free group)という.
アーベル群$A$の捩れ元全体$T$は部分群をなし, $A/T$は捩れのない群となる.
$x,\ y\in A$を捩れ元とし, それぞれの位数を$m,\ n$とする. $mn(x-y)=n(mx)-m(ny)=0$なので$x-y$も捩れ元であり, 部分群となる. もし$x\in A$に対し$xT$が捩れ元ならある$n$が存在して$nxT=T$, $nx\in T$となり$x$が捩れ元でない仮定に反する.
最後に捩れなし群の性質を結果だけ書きます.
全ての元の位数がある素数$p$のべきになっている群を準素群という.
捩れ群は準素群の直和である.
$\mathbb{Q}/\mathbb{Z}$は全ての素数に対する$\mathbb{Z}(p^{\infty})$の直和である.ここで$\mathbb{Z}(p^{\infty})$は$1$の全ての$p^n$乗根達が複素数の積でなす群である.