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HKA杯 解説

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求値問題

$n$ を自然数とする.
$$\gcd(2051^n+4099^n,2051^{n+1}+4099^{n+1}-2051^{n})$$
の値が最大となるような最小の $n$ を求めよ.ただし,$\gcd(X,Y)$$X$$Y$ の最大公約数を表す.

ユーグリッドの互除法より,
$$\begin{aligned} \gcd(2051^n+4099^n,2051^{n+1}+4099^{n+1}-2051^{n}) & =\gcd(2051^n+4099^n,2049\times 4099^{n})\\\\ & =\gcd(2051^n+4099^n,2049) \leqq 2049 \end{aligned}$$
よって,この式は $2051^n+4099^n$$2049$ の倍数となるとき最大値 $2049$ をとる.
$2^n+1\equiv 0 \pmod {2049}$ を満たす最小の $n$$\mathbf{11}$

$x,y,z$ は正の実数で,
$$x+2y+3z\leqq xyz$$
を満たす.このとき,$xy+yz+zx$ の最小値を求めよ.

$x,y,z$ は正より,相加・相乗平均の大小関係から,
$$\begin{aligned} xy+yz+zx=\Big( \dfrac{1}{x}+\dfrac{1}{y}+\dfrac{1}{z}\Big) xyz & \geqq \Big( \dfrac{1}{x}+\dfrac{1}{y}+\dfrac{1}{z}\Big) (x+2y+3z)\\\\ & = 6+ \dfrac{x}{y}+\dfrac{2y}{x}+\dfrac{2y}{z}+\dfrac{3z}{y}+\dfrac{3z}{x}+\dfrac{x}{z}\\\\ & \geqq \mathbf{6+2\sqrt{2}+2\sqrt{3}+2\sqrt{6}} \end{aligned}$$
等号成立は,$xyz=x+2y+3z$ かつ $x:y:z=\sqrt{6}:\sqrt{3}:\sqrt{2}$,すなわち,
$x=\sqrt{\sqrt{6}+2\sqrt{3}+3\sqrt{2}},\quad y=\sqrt{\dfrac{\sqrt{6}+2\sqrt{3}+3\sqrt{2}}{2}},\quad z=\sqrt{\dfrac{\sqrt{6}+2\sqrt{3}+3\sqrt{2}}{3}}$ のとき.

$n$ を自然数とし,$1$ から $n$ までの最小公倍数を $L(n)$ とする.すなわち,$L(n)=\mathrm{lcm}(1,2,...,n)$ である.このとき,
$$L(m)+L(m+1)=L(m+2)$$
を満たす $4$ 桁の自然数 $m$ のうち最大のものを求めよ.

$m$ が素数 $p$ の累乗の形で表されるとき $L(m)=pL(m-1)$ ,表されないとき $L(m)=L(m-1)$ である.ここで,$p,q$$1$ または素数とするとき,$L(m)+pL(m)=pqL(m)$ が成り立つ必要があるが,これを満たす $(p,q)$$(1,2)$ のみである.よって $m+2$$2$ の累乗であるときを考えればよいが,$m=8190$ のときは $8191$ が素数であるので不適である.$m=4094$ のとき,$4095=3^2\cdot 5\cdot 7\cdot 13$ より成り立つ.よって最大の $4$ 桁の $m$$\mathbf{4094}$ である.

鋭角三角形 $ABC$ の垂心を $H$$AH$$BC$$BH$$AC$$CH$$AB$ の交点をそれぞれ $D,E,F$ とする.また,$AD$ の中点を $M$ とすると,$5$$B,F,M,E,C$ は同一円周上にあった.
$$HF=3,\quad HE=5$$
を満たすとき,$AE$ の長さを求めよ.

$AE,AF$ の中点をそれぞれ $X,Y$ とする.
$\angle ECH=\angle EDH =\angle XMA$ より,$4$$X,M,H,C$ は共円.
同様に $Y,M,H,B$ も共円.
ここで,
$$\angle BMC=\angle BMH + \angle CMH=\angle FYH +\angle EXH=90\degree$$
より,$\triangle YFH ∽ \triangle HEX$ が従い,$XE=x,YF=y$ と置くと,
$$xy=15$$
また,三平方の定理より,
$$AH^2=4x^2+25=4y^2+9$$
これを解くと,$x=\sqrt{-2+\sqrt{229}}$ となり,$AE=2x=\mathbf{2\sqrt{-2+\sqrt{229}}}$ である.

一般項が $n$$2024$ 次関数で表される数列 ${a_n}$$n\geqq 0$)は以下を満たす.
$$a_{n+1}-a_{n}=\lceil 2^{n-1} \rceil \quad (n=0,1,2,...,2023)$$
このとき,$|a_{2027}|$ を最小にするような $a_0$ を求めよ.ただし,$\lceil X \rceil $$X$ 以上の最小の整数を表す.

はじめに,以下の補題を示す.


$0$ 以上の整数 $i$ に対し,
$\begin{eqnarray} \left\{ \begin{array}{l} p_0(x) = 1 \\ p_i(x) = \dfrac{x(x-1)(x-2)...(x-i+1)}{i !} \quad (i \geqq 1) \end{array} \right. \end{eqnarray}$
とおく.このとき,一般の $n$ 次多項式 $P(x)$ は,適当な実数 $c_i$ を用いて,
$$P(x)=\sum_{i=0}^n c_ip_i(x)$$
と表せる.

(ⅰ) $n=0$ のとき
 明らかに成立する.
(ⅱ) $n\leqq k (k\geqq 0)$ で補題が成り立つと仮定する.
 任意の $k+1$ 次多項式 $f(x)=a_{k+1}x^{k+1}+a_kx^k+...+a_1x+a_0$ に対して
 $g(x)=f(x)-a_{k+1}(k+1)!p_{k+1}(x)$ とおくと,$g(x)$ は高々 $k$ 次の多項式で,
 $$f(x)=a_{k+1}(k+1)!p_{k+1}(x)+\sum_{i=0}^k c_ip_i(x)$$
 と表せる.ここで,$c_{k+1}=a_{k+1}(k+1)!$ とおくことにより $k+1$ 次多項式で補題が成り立つことがわかる.
(ⅰ)(ⅱ)より,補題は示された.

$0$ 以上の整数 $k$ に対し,
$\begin{eqnarray} \left\{ \begin{array}{l} p_0(n) = 1 \\ p_k(n) = \dfrac{ n(n-1)(n-2)...(n-k+1)}{k !} \quad (k \geqq 1) \end{array} \right. \end{eqnarray}$
とおくと,補題より
$$a_n=\sum_{k=0}^{2024} c_kp_k(n)$$
とおける.
$a_1-a_0=1,\quad a_{k+1}-a_k=2^{k-1}\quad (k=1,2,...,2023)$ より,
$a_n-a_0=2^{n-1}\quad (n=1,2,...,2024)$ である.
ここで,
$$\begin{aligned} & c_k = 0 \quad(k=2,4,...,2024)\\\\ & c_k =1 \quad (k=1,3,...,2023) \end{aligned}$$
を示す.

(ⅰ) $k=1,2$ のとき
 明らかに成立する.
(ⅱ) $k\leqq2i\quad (i\geqq 1)$ で成り立つと仮定する.
 $$a_{2i+1}-a_0=\sum_{k=0}^{i-1} {}_{2i+1}\mathrm{C}_{2k+1}+c_{2i+1}=2^{2i}+c_{2i+1}-1=2^{2i}$$
 より,$c_{2i+1}=1$
 $$a_{2i+2}-a_0=\sum_{k=0}^{i} {}_{2i+2}\mathrm{C}_{2k+1}+c_{2i+2}=2^{2i+1}+c_{2i+2}=2^{2i+1}$$
 より,$c_{2i+2}=0$
(ⅰ)(ⅱ)より,示された.

ここで,
$$a_{2027}=a_0+{}_{2027}\mathrm{C}_{1}+{}_{2027}\mathrm{C}_{3}+...+{}_{2027}\mathrm{C}_{2023}=a_0+2^{2026}-2053352$$
となり,$|a_{2027}|=0$ となるとき最小であるから,そのときの $a_0$ は,
$a_0=\mathbf{2053352-2^{2026}}$

$\angle BAD=120°$ を満たす凸四角形 $ABCD$ に円 $w_1$ が内接しており,$w_1$$AB,BC,CD,DA$ との接点をそれぞれ $P,Q,R,S$ とする.$SD$ の中点を $X$ とし,$X$ を通り $CD$ と平行な直線と $BC$ の交点を $Y$ とする.ここで,$AB$ と点 $P$ で,$AY$ と点 $Z$ で接する円 $w_2$ を考える.
$$XY-AX=ZY-AZ$$
を満たすとき,( $w_1$ の半径) $:$ ( $w_2$ の半径) を求めよ.

$AS=AP=AZ$ と条件から,
$$SX=AX-AS=AX-AZ=XY-ZY$$
ここで,線分 $XY$ 上に $ZY=YW$ となるような点 $W$ をとると,
$$AS=AZ,\quad ZY=YW,\quad XW=XS$$
が従う.
ここで,三角形 $AXY$ の内心を $I$ とすると,$IA,IY,IX$ はそれぞれ $SZ,ZW,WS$ の垂直二等分線であるから,$I$ は三角形 $SZW$ の外心である.
よって,$S,W,Z$ を通る円を $w_3$ とすると,$w_3$ は三角形 $AXY$ の内接円である.
また,$\triangle SXW ∽\triangle SDR$ で,相似比は $1:2$ であるから,$w_3$ の半径を $r$ とおくと $w_1$ の半径は $2r$ である.
$w_1$ の中心を $O_1$$w_2$ の中心を $O_2$ として,$w_2$ の半径を $x$ とおく.すると,三角形 $IO_1O_2$ について,
$$IO_2=r+x,\quad IO_1=r,\quad O_1O_2=2r-x,\quad \angle IO_1O_2=60\degree$$
となるので,余弦定理を用いて,$5x=2r$ がわかる.
以上より,( $w_1$ の半径) $:$ ( $w_2$ の半径) $=2r:x=\mathbf{5:1}$

記述問題

問題7

$p$ を奇素数とする.ある自然数 $N$$p$ 進数と $p-1$ 進数で表したところ,いずれもすべての桁で $1$ が続いた.このような $10$ 進数の $N$$p$ の値によらず $1 $ のみであることを示せ.

題意を満たす $N$ は自然数 $x,y$ を用いて,
$$N=\dfrac{p^x-1}{p-1}=\dfrac{(p-1)^y-1}{p-2}$$
と表せる.整理して,
$$(p-1)^{y+1}-(p-2)p^x=1$$
である.$\mod p$ で考えると,$y+1$ は偶数であるので,$y+1=2y^{\prime}$ と表せて,
$$(p-1)^{2y^{\prime}}-(p-2)p^x=1$$
$$(p-2)p^x=((p-1)^{y^{\prime}}+1)((p-1)^{y^{\prime}}-1)$$
$p\geqq3$ より,$(p-1)^{y^{\prime}}+1$$(p-1)^{y^{\prime}}-1$ が共に $p$ の倍数となることはないので,$p-2$ の正の約数 $k$ を用いて
$$(p-1)^{y^{\prime}}+1=k\cdot p^x,\quad (p-1)^{y^{\prime}}-1=\dfrac{p-2}{k}$$
と表せる.整理して,
$$k^2\cdot p^x=p+2k-2$$
ここで,$k\geqq 2$ と仮定すると,$k\leqq p-2$ より
$$k^2\cdot p^x\geqq 4\cdot p^x\geqq 4p,\quad p+2k-2\leqq 3p-6$$
より矛盾.よって $k=1$ で, $p^x-p=0$ から $p^{x-1}=1$ より, $x=1,y^{\prime}=1$ である.
以上より,あり得る $N$ の値は $1$ のみであることが示された.

問題8

$AB \lt AC$ である鋭角三角形 $ABC$ について,$BC$ の中点を $M$$AM,BM,CM$ の中点をそれぞれ $N,X,Y$ とする.$M$ から $AC$ に下した垂線の足を $D$$X$ を通り $DY$ に平行な直線と直線 $DN$ の交点を $P$,三角形 $PNX$ の外接円と $AB,BC$ の交点をそれぞれ $Q,R$ とする.三角形 $PNX$ の外接円と $DR$ の交点を $S$ とするとき,$3$$Q,S,M$ は同一直線上にあることを示せ.

三角形 $AMC$ の九点円と$BC$ の交点のうち $B$ に近い方を $R^{\prime}$ とする.$R^{\prime}$$A$ から $BC$ に下した垂線の足である.このとき,
$$\angle NRX=\angle NPX=\angle 180\degree-\angle YDN=\angle NR^{\prime}X$$
から,$R$$R^{\prime}$ は一致する.すなわち,円 $PNX$ は三角形 $ABM$ の九点円である.
ここで,$AM\leqq BM$ と仮定すると,$\angle ABM\leqq \angle BAM$$\angle ACM\leqq \angle CAM$ より $\angle BAC$ が鋭角とならず矛盾.よって $AM\gt BM$ で,点 $Q$$AB$ の中点である.このとき $QM\parallel AC$ である.
ここで,円 $PNX$$AB$ の交点($\neq Q$)を $T$ とする. $\angle ATM=\angle ARM=\angle ADM=90\degree$ より $A,T,R,M,D$ は共円で,
$$\angle BAC=180\degree-\angle TRS=\angle TQS$$
より $AC\parallel QS$ である.
$QM\parallel AC$ と合わせて,$Q,S,M$ は共線で,示された.

問題9

実数に対して定義され,実数値をとる関数 $f$ であって,任意の実数 $x,y$ に対して
$$f(xy+f(2024y))=yf(x)$$
を満たすものを全て求めよ.

$P(p,q)$ で与式への $x=p,y=q$ の代入を表す.
$P(0,0)$ より $f(f(0))=0$
$P(2024,\dfrac{f(0)}{2024})$ より,
$$f(f(0)+f(f(0)))=\dfrac{f(0)f(2024)}{2024}=0$$
よって,$f(0)$ または $f(2024)$$0$ である.

(ⅰ) $f(0)\neq 0$ のとき
$f(2024)=0$ で,$P(0,\dfrac{y}{2024})$ より,
$$f(f(y))=\dfrac{y}{2024}f(0)$$
$f(a)=f(b)$ なる $a,b$ について,
$$f(f(a))=\dfrac{a}{2024}f(0),\quad f(f(b))=\dfrac{b}{2024}f(0)$$
$f(0)\neq 0$ より $a=b$.よって $f$ は単射である.$P(2024,\dfrac{x}{2024})$ より
$$f(x+f(x))=\dfrac{x}{2024}f(2024)=0=f(2024)$$
$f$ は単射より $x+f(x)=2024$ ,すなわち $f(x)=2024-x$ である.(これは与式を満たす)

(ⅱ) $f(0)=0$ のとき
$f$ が全射もしくは $f(x)=0 (\forall x)$ で,$f$ が全射と仮定すると,$P(0,y)$ より
$$f(f(2024y))=yf(0)=0$$
$f(y)=0 (\forall y)$ となり全射とならず矛盾.
よって $f(x)=0$ である.(これは与式を満たす)

以上より,$f(x)=0,f(x)=2024-x$ である.

問題10

$1$から $9$ までの整数が一つずつ使われた $9$ 桁の自然数 $a$ がある.この自然数 $a$ について以下の操作を行う.

  • 任意の $1$ 以上 $9$ 以下の整数 $n$ について,$a$ の上から $n$ 桁目の数字が $m$ の時に $b$ の上から $m$ 桁目の数字が $n$ であるような $9$ 桁の自然数 $b$ を作る.例えば,$a=479512638$ の時は $b=568147293$ となる.

このとき,$a-b$ の値は常に $81$ の倍数であることを示せ.

 まず,次のような操作を考える.

  • ある $a$ に対し,$a$ の上から $p$ 桁目と $q$ 桁目の数を入れ替えた数を $a_1$ とする( $p\gt q$ ).また,$a_1$ に対し,問題のような操作を行ってできた数を $b_1$ とする.また,$A=a-b$$B=a_1-b_1$ と定義する.

このとき, まず $a=123456789$ に対しこの操作を行い,次に $a_1$ に対しこの操作を行うというようなことを繰り返せばすべての $a$ について調べることができる.
ここで,$a=123456789$ のとき,$A=a-b=0$ となり $81$ の倍数であるから,$A-B$ が常に $81$ の倍数であることを示せばよい.

$a$ の上から $p$ 桁目の数を $m$$q$ 桁目の数を $n$ とすると,$b$ の上から $m$ 桁目は $p$$n$ 桁目は $q$ となる.
また, $a_1$ の上から $p$ 桁目は $n$$q$ 桁目は $m$$b_1$ の上から $m$ 桁目は $q$$n$ 桁目は $p$ となる.
よって,
$$\begin{aligned} A-B &=a-b-(a_1-b_1)\\\\ &=a-a_1-(b-b_1)\\\\ & =(m-n)\times 10^{9-p}+(n-m)\times 10^{9-q}- (q-p)\times 10^{9-n}-(p-q)\times 10^{9-m}\\\\ & =(m-n)(10^{9-p}-10^{9-q})+(p-q)(10^{9-n}-10^{9-m}) \end{aligned}$$
となる.ここで,$n\gt m$ のときを考える.すると,
$$A-B=10^{9-p}\times (m-n)\times (1-10^{p-q}) + 10^{9-n}\times (p-q)\times (1-10^{n-m})$$
となり,$p\gt q,n\gt m$ より $1-10^{p-q},1-10^{n-m}$ はともに $9$ の倍数であるから$k,l$ を整数として
$$1-10^{p-q}=9k,\quad 1-10^{n-m}=9l $$
と表せて,
$$k=-\overbrace{111...11}^{p-q個}\equiv q-p \pmod 9$$
$$l=-\overbrace{111...11}^{n-m個}\equiv m-n \pmod 9$$
となる.このとき,
$$A-B=9\cdot (10^{9-p}\times (m-n)\times k - 10^{9-n}\times (p-q)\times l )$$
となり,
$$10^{9-p}\times (m-n)\times k - 10^{9-n}\times (p-q)\times l\equiv (m-n)(q-p)+(p-q)(m-n)\equiv 0 \pmod 9$$
であるから,$A-B$$81$ の倍数である.
$n\lt m$ のときも,
$$A-B=10^{9-p}\times (m-n)\times (1-10^{p-q}) + 10^{9-m}\times (q-p)\times (1-10^{m-n})$$
と変形することで同様の議論ができて,$A-B$$81$ の倍数である.
以上より,$a-b$ の値は全て $81$ の倍数であることが示された.

問題11

$AB \lt AC$ である鋭角三角形 $ABC$ があり,その垂心を $H$ とする.$3$$A,B,C$ からそれぞれ対辺に下した垂線の足をそれぞれ $D,E,F$ とする.また,$AH$$EF$ の交点を $G$$BC$ の中点を $M$$∠BAC$ の内角の二等分線と $BC$ との交点を $P$$B$ を点 $D$ に関して対称移動させた点を $Q$ とする .ここで,$M$ を通り $AP$ に垂直な直線と,$P$ を通り $AM$ に垂直な直線は三角形 $ABC$ の外接円上で交わった.このとき,三角形 $AGE$ の外接円は直線 $QH$ に接することを示せ.

$M$ を通り $AP$ に垂直な直線と$P$ を通り $AM$ に垂直な直線との交点を $R$ とすると,$R$ は常に $AD$ 上にあり($P$ が三角形 $ARM$ の垂心),特に外接円上にある時は,$R$$AD$ と外接円の交点である.
 まず、$A$ を中心とする半径 $\sqrt{AH\times AD}$ の円で反転する.点 $X$ がこの反転によって移った点を $X^*$ というように表す.
この反転で,$B$$F$$D$$H$$C$$E$$R$$G$ は互いに移り合い,$M^*$ は円 $AFE$$AM$ の交点に, $P^*$ は円 $AFE$$AP$ の交点である.
また,$RP$$AM$ の交点を $X$$RM$$AP$ の交点を $Y$ とすると,$X^*$$AM$ 上の $\angle X^* P^* A=90°$ を満たす点,すなわち $AM$$HP^*$ の交点.同様に $Y^*$$AP$$HM^*$ の交点である.
ここで,$A,X,Y,R$ は共円より,直線 $X^* Y^*$$AB$ の交点を $S$$AC$ とのの交点を $T$ とすると,$G=R^*$ から,$G$$ST$ 上で,$Y^*$ は三角形 $AX^* H$ の垂心であるから,$\angle TGA=90°$ ,すなわち $ST\parallel BC$ が成り立つ.
ここで,三角形 $ABC$ を三角形 $AST$ に移す相似拡大を考えると,$R$$H$ に移るので,$4$$A,S,H,T$ は共円である.
$QH$$AB$ の交点を $S^{\prime}$ とすると,
$$\angle S^{\prime}HA=\angle BHD=\angle ACB=\angle ATS$$
$\angle SHA=\angle ATS$ より,$S^{\prime}$$S$ は一致する.
よって,$BE$$ST$ の交点を $I$ とすれば,$I$$S$$AD$ に関して対称移動させた点で,$A,I,Q$ は共線である.円 $AGE$$AI$ を直径としていることを考えれば,示すべきことは 「円 $ADQ$ と直線 $BR$ が接する 」ことと同値である.
$F$ を直線 $AD$ に関して対称移動させた点を $F^{\prime}$ とすると,これは反転により
「円 $AGF$ と直線 $HF^{\prime}$ が接する」ことに言い換えられ、さらに、これを直線 $AD$ に関して対称移動させると,「円 $AGF^{\prime}$ と直線 $HF$ が接する」ことと同値であることがわかる.

 以下では円 $AGF^{\prime}$ と直線 $CF$ が,$AP$$CF$ の交点 $Z$ で接することを示す.
$$\angle AHT=\angle AST=\angle FHG=\angle F^{\prime}HA$$
より,$3$$H,F^{\prime},T$ は一直線上にあり,さらに $\angle AF^{\prime}H=90°$ である.
よって,円 $AGF^{\prime}$$AT$ の中点 $N$ を中心として $A,T$ を通る円である.
 ここで,$AB\parallel X^* Z$ を示す.
反転により,これは円 $AZ^* X$ が直線 $AB$ に接することと同値で,$\angle Z^* X A =\angle BAP$ を示せばよい.($Z^*$$B$ から $AP$ に下した垂線の足)
$AM$$BZ^*$ の交点を $U$ とすると,$4$$U,X,P,Z^*$ は共円より,$\angle Z^* PU =\angle Z^* XA $ である.
ここで,以下の補題から $\angle Z^* PU =\angle BAP$ が従い,$AB\parallel X^* Z$ は示され,$AS\parallel NX^* $ と合わせて $NZ\perp CF$ が従う.


$AB \lt AC$ である鋭角三角形 $ABC$ について,$BC$ の中点を $M$,内心を $I$ として,$AI$$BC$ の交点を $X$$B$ を通る $AI$ の垂線と $AM$ との交点を $Y$ とする時,$XY\parallel AB$ が成り立つ.

$AI$$BY$ の交点を $P$$BY$$AC$ の交点を $R$とすると,$BP=PR$ より $PM\parallel AC$ である. ここで,$AB=x,AC=y$ とすると,$AR=AB$ で,
$$BX:XM=x:\dfrac{y-x}{2}$$
また,
$$AY:YM=AR:PM=AB:\dfrac{CR}{2}=x:\dfrac{y-x}{2}$$
よって $XY\parallel AB$ である.

 ここで,
$$\angle BAP=\angle AZN=\angle PAC$$
より,$AN=NZ=NT$ が従い,点 $Z$ は円 $AGF^{\prime}$ 上にある.
$NZ\perp CF$ と合わせて,円 $AGF^{\prime}$ と直線 $CF$ は,点 $Z$ で接する.
以上より,題意は示された.

問題12

正の実数に対して定義され,正の実数値をとる関数 $f$ であって,任意の正の実数 $x,y$ に対して
$$f(xf(y)+y^2)=y^4f(1+334x)$$
を満たすものを全て求めよ.

$P(p,q)$ で与式への $x=p,y=q$ の代入を表す.
$P(1,y)$ より,
$$f(f(y)+y^2)=y^4f(335)$$
右辺は任意の正の実数値をとるので $f$ は全射.
ここで、以下の補題を示す.


$\mathbf{補題 1}$.任意の $x$ に対し $f(x+a)=bf(x)$ なる $a,b$ ($a$$0$ 以上,$b$ は正の実数)が存在するならば,$b=1$ である.

$f(p)=1$ なる $p$ について,$P(x+a,p)$ より,
$$f(x+a+p^2)=p^4\cdot f(334a+334x+1)$$
$$b\cdot f(x+p^2)=p^4\cdot b^{334}\cdot f(334x+1)$$
$P(x,p)$ より,
$$f(x+p^2)=p^4\cdot f(334x+1)$$
よって,$b^{333} =1$ となり,$b=1$ である.


$\mathbf{補題 2}$$f$ は単射である.

$f(a)=f(b)$ なる $a,b$ について,$P(\dfrac{x}{f(a)},a),P(\dfrac{x}{f(b)},b)$ より,
$$f(x+a^2)=a^4\cdot f(1+\dfrac{334x}{f(a)})$$
$$f(x+b^2)=b^4\cdot f(1+\dfrac{334x}{f(b)})$$
よって,
$$f(x+a^2)=\dfrac{a^4}{b^4}f(x+b^2)$$
補題 $1$ より,$a^4=b^4$ であるから $a=b$.よって $f$ は単射である.


$\mathbf{補題 3}$$f(1)=334$ である.

$P(x,1)$ より,
$$f(xf(1)+1)=f(334x+1)$$
$f$ は単射より,$f(1)=334$ である.


$\mathbf{補題 4}$$f(x)$ は狭義単調増加である.

ある $x,y (x\lt y)$ で,$f(x)\gt f(y)$ なる正の実数 $x,y$ が存在すると仮定する.
$z=\dfrac{y^2-x^2}{f(x)-f(y)}\gt 0$ で,
$$\begin{aligned} x^2+zf(x) & =\dfrac{x^2f(x)-x^2f(y)+y^2f(x)-x^2f(x)}{f(x)-f(y)}\\\\ & =\dfrac{y^2f(x)-x^2f(y)}{f(x)-f(y)} \end{aligned}$$
$$\begin{aligned} y^2+zf(y) & =\dfrac{y^2f(x)-y^2f(y)+y^2f(y)-x^2f(y)}{f(x)-f(y)}\\\\ & =\dfrac{y^2f(x)-x^2f(y)}{f(x)-f(y)} \end{aligned}$$
よって,$x^2+zf(x)=y^2+zf(y)$ で,$P(z,x),P(z,y)$ より,
$$f(zf(x)+x^2)=x^4f(334z+1)$$
$$f(zf(y)+y^2)=y^4f(334z+1)$$
から,$x=y$ より矛盾.よって $f(x)$ は広義単調増加で,単射と合わせて狭義単調増加である.


$\mathbf{補題 5}$$f(x)\geqq 334x^2$ である.

$P(\dfrac{y}{f(\sqrt{x})},\sqrt{x})$ より,
$$f(x+y)=f(1+\dfrac{334y}{f(\sqrt{x})})\gt x^2f(1)=334x^2$$
$$f(x)\gt 334(x-y)^2$$
$y$$0$ に近づけて,$f(x)\geqq 334x^2$


$\mathbf{補題 6}$$xy\gt1$ なる任意の実数 $x,y$ について,$x^2f(y)\leqq f(xy)$ である.

 $x^2\lt y$ とする.$P(\dfrac{y-x^2}{f(x)},x)$ より,
$$\begin{aligned} f(y) & =x^4\cdot f(1+\dfrac{334(y-x^2)}{f(x)})\\\\ & \leqq x^4\cdot f(1+\dfrac{334(y-x^2)}{334x^2})\\\\ &=x^4\cdot f(\dfrac{y}{x^2}) \end{aligned}$$
$x→\dfrac{1}{\sqrt{x}}$ として,$x^2f(y)\leqq f(xy) \quad (xy\gt 1)$


 まず,$x\gt 1,y\gt 1$ のときを考える.補題 $6$ より,
$$x^2f(y)\leqq f(xy)$$
補題 $6$ で,$x→\dfrac{1}{x},y→xy$ として,
$$f(xy)\leqq x^2f(y)$$
よって,$f(xy)=x^2f(y)$ であるから,$x^2f(y)=y^2f(x)$ で,任意の $x(\gt 1)$ に対し,$\dfrac{f(x)}{x^2}=c$ とおけて,元の方程式に代入すると $c=334$ が得られる.
よって,$f(x)=334x^2\quad (x\gt 1)$ である.
$0\lt x \leqq 1$ のときも,十分大きな $y$ について,$\dfrac{f(x)}{x^2}=\dfrac{f(y)}{y^2}=334$ が得られ,$f(x)=334x^2$ である.
以上より,$f(x)=334x^2$ である.また,これは与式を満たす.

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