局所小圏 $\mathcal{C}$から具体的に薄い圏を構成する(薄化する)方法としては、すでに括射圏C(Ob($\mathcal{C}$),{hom(i,j)}$ _{i,j\in Ob(\mathcal{C})}$)を見た。ただし、これは強連結という強すぎる性質を持つ圏なので、実用としては使い勝手が悪いかと思う。標準的な薄い圏の構成法として、以下をあげる。
任意のi,j$\in Ob(\mathcal{C})$に対して、hom(i,j)が空集合でないとき、なんでもよいので$ f'_{ij} $ を唯ひとつ定める。
hom(i,j)が空集合のときは$ f'_{ij} $は存在しないとする。
このとき、C(Ob($\mathcal{C}$),{$ f'_{ij} $}$ _{i,j\in Ob(\mathcal{C})}$)は薄い圏とみなせる。
(証明)
$\mathcal{C}$において、射f:i → j と g:j → k が存在するとき、
g$ \circ $f : i → k が存在する。このとき仮定より$ f'_{ij} $, $ g'_{jk},$ $(g\circ f)'_{ik} $がそれぞれ唯一存在する。そこで$ g'_{jk}\circ f'_{ij} $ :=$(g\circ f)'_{ik} $ とすれば、$ f'_{ij} $は『薄い圏の考察(1)』の定義1の条件を満たす(広義の)二項演算となるので、C(Ob($\mathcal{C}$),{$ f'_{ij} $}$ _{i,j\in Ob(\mathcal{C})}$)は薄い圏となる。(証明終)
例。命題「A⇒B」が成り立つとする証明が(ひとつでも)世の中で認められると、命題「A⇒B」は真として確定する。このようにして厚い「証明の圏」から薄い「命題論理の圏」が構成できる。
上の設定に基づいて、対象についての写像
$T(i)=i$ と
射についての写像
$T(f:i→j)={f'_{ij}}$ を定めると、薄化関手
$T:\mathcal{C}$ → C(Ob($\mathcal{C}$),{$ f'_{ij} $}$_{i,j\in Ob(\mathcal{C})}$)
が定義できる。
($T$が関手となるのは『薄い圏の考察3」の命題1よりわかる)
また特に、$ f'_{ij} $ をhom(i,j)の要素から取り、かつ$ f'_{ii} $として$\mathcal{C}$における恒等射id$_i$をとったとき、C(Ob($\mathcal{C}$),{$ f'_{ij} $}$_{i,j\in Ob(\mathcal{C})}$)は$\mathcal{C}$の部分圏となることに注意する。
次に、今度は逆に$\mathcal{C}$のふたつの薄い部分圏C(Ob($\mathcal{C}$),f)とC(Ob($\mathcal{C}$),g)があるとする。このとき$\mathcal{C}$における任意の対象i,j,kに対して
$g_{jk}\circ f_{ij}$と$f_{jk}\circ g_{ij}$の有限回の合成で表される射を集めたものを{f,g}とすると、Ob($\mathcal{C}$)を対象のあつまり、{f,g}を射のあつまりとする$\mathcal{C}$の部分圏が定義できる。これを(筆者のかってな思いつきで、この論考の中でしか通じない定義だが)
C(Ob($\mathcal{C}$),f)とC(Ob($\mathcal{C}$),g)の合成圏と呼ぶ。
ここでまたこの論考の中でしか通じない定義だが、一般に対象を同じくするふたつの薄い圏C(A,f)とC(A,g)が、i$\neq$jのときはf$_{ij}$が存在しないまたはg$_{ij}$が存在しないまたはf$_{ij}$$\neq$g$_{ij}$となり、i=jのときはf$_{ij}$=g$_{ij}$=id$_i$ となる場合、薄い圏C(A,f)とC(A,g)(または射のあつまり$f=${${f_{ij}}$}$_{i,j \in A}$と$g=${${g_{ij}}$}$_{i,j\in A}$)は、互いに素であると呼ぶ。
$\mathcal{C}$が互いに素な薄い圏C(Ob($\mathcal{C}$),f)とC(Ob($\mathcal{C}$),g)の合成圏になっているとき、
$\mathcal{C}$はC(Ob($\mathcal{C}$),f)とC(Ob($\mathcal{C}$),g)によって直和分解されると(この論考の中でしか通じないが)呼ぶ。