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エンタメ議論
文献あり

「三角形の内角の和はなぜ180°なのか」の説明について、数学において原因って何?

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1.イントロ

こんにちは、hureです。
Twitterで
https://x.com/MNeeton/status/2005099983478124797 https://x.com/MNeeton/status/2005099983478124797
というツイートを見かけました。
リプライや引用rtでいろんな方が意見を書いているものの、私が満足できる様なものが見つからなかったので自己満のためにここで私の考えをつらつら書いていきます。

1.説明になっているか

このツイートの疑問は「引用元のツイートの説明がどの様に『三角形の内角の和はなぜ180°なのか』の説明になっているか」です。
引用元のツイートの説明は

  1. 三角形の紙を用意する
  2. 紙を三角形の三つの角を分割するように切断
  3. 角を合わせる様に紙を並べると直線をなしている(様に見える)
  4. 幾何的に解釈すると三角形の角を合わせると直線をなす(と思われる)
  5. 角度に直すと三角形の角度を足すと直線の角度180°になるとわかる

というステップです。
ここでは、
「三角形の紙を角を合わせて貼り合わせると直線をなす紙になる」
という個別の事実を確認。
それを「三角形の内角が180°である」という普遍な事実だと解釈している。
ということによって「三角形の内角の和は180°」の説明をしています。

このステップを見ると
個別事象から普遍事象を導いており、
帰納的な推論による「三角形の内角の和は180°」の説明と言えます。

私は哲学に明るくないので帰納、演繹を正しく理解しているわけではないです、

ただ私の感覚的には帰納的な推論でその事象の原因がわかるかと言われると
そんなことないんじゃないかと思いますし、

演繹的な推論で「前提が正しければ結論は正しい」という基盤があった上で、
前提が真になることが原因となって結果がある。
といってはじめて原因がどこかが判断できるのではないでしょうか。

というわけで、
帰納的な推論による「三角形の内角の和は180°」の説明に「三角形の内角の和はなぜ180°なのか」の原因は含まれていない
のは必然だと思えます。

以上もろもろを考えると、
ツイート主のネオ高等遊民が指摘している
「実際に180°であるという事実は示されているが、「なぜ」の原因が示されてない」
というのは
実際示されていないし元ツイートも示しているとはいっていない
と言えるでしょう。

これから、疑問「引用元のツイートの説明がどの様に『三角形の内角の和はなぜ180°なのか』の説明になっているか」の私の回答は
「『三角形の内角の和はなぜ180°なのか』の説明にはなっていない」となります。

2.じゃあ「三角形の内角の和はなぜ180°なのか」(導入)

ここからは疑問が「三角形の内角の和はなぜ180°なのか」に変わります。
この疑問に答えるために考えるべきは

三角形の内角の和が180°になる原因を何とするべきか

ということを考えなければならないでしょう。
私が真っ先に原因として妥当だと考えられるのは命題の証明でした。
多くの数学徒は原因と証明は似通ったところにあると考えるんじゃないでしょうか。
もちろん三角形の内角の和が180°になる証明はあります。

ただ、
その証明が原因なの?
証明が原因だったら証明全体が原因?それとも一部分?...

等々の疑問が残るので、これからもっと踏み込んで
何を原因と定めると納得できるかを探っていきましょう
(納得できるかは私の感覚なのでそこは注意です)

3.とりあえず三角形の内角の和が180°になる証明

前に言った様に、
私の感覚としては帰納的な推論は原因を考えられるとは思えません。

前提が真になることが原因となって結果がある。という様な演繹的な推論をやっていきたいところです。

証明はちゃんと演繹的な推論で進んでいるのでここまでで私の感覚は大きな問題はなく進んでそうです。

さて一旦証明を書いておきましょう。

証明とは

数学で証明は

$ \text{既知の命題} \stackrel{\text{推論規則}}{\longrightarrow} \text{欲しい命題}$

という様な構造になっています。
(推論規則というのは$\forall,\exists,\Rightarrow$...とかの記号の使い方で基礎論とかでちゃんと定まってるものです。あまり気にせずスルーしていただけると...)

こうなっているため既知の命題が何かを知らないと欲しい命題が得られません。
しかも、最初に認められる命題がないとどんな命題も証明できません。

というわけで、
数学ではこれは認めていいだろうという当たり前の命題を定めています。
これに該当するのが公理です。

公理を定めよう

今考える命題「三角形の内角の和が180°」は初等幾何の命題
なので初等幾何の公理を考えたいわけです。
初等幾何の公理として有名なのはユークリッドの『原論』にあるやつ

『原論』の公理



  1. 与えられた2点に対して、それらを結ぶ線分をちょうど1つ引く事ができる。

  2. 与えられた線分はどちら側にも限りなく伸ばすことができる。

  3. 平面上に2点が与えられたとき、一方を中心とし、他方をを通る円をちょうど1つかくことができる。

  4. 直角はすべて相等しい。

  5. 2直線と交わる1つの直線が同じ側につくる内角の和が180度より小さいならば、2直線をその側に伸ばせばどこかで交わる。




(文言はこちらの記事から拝借しました
https://www.mathsoc.jp/publication/tushin/1202/izumiya.pdf )

ですが、見た通り「限りなく」「結ぶ」とか、あまり厳密とは言えません。
さらに今回の命題は円を使わないので代わりの公理を定めます。

今回の証明で使う公理、用語の定義を定めておきましょう。
(※クソ長いです)

抽象的な用語の定義


(公理の基盤となっている用語のため対象自体をここで定義することはできません。そのため対象それ自体を定義せず、用語をどう使うかをある程度定めておきます。)


  • 点:後に定める直線、平面とは異なる対象で、
    $A$が直線$l$に含まれる$(A \in l)$と書くことができる。
    $A$が平面$\pi$に含まれる$(A \in \pi)$と書くことができる。

  • 直線:点、平面とは異なる対象で、
    直線$l$が点$A$を含む$(A \in l)$と書くことができる。
    直線$l$が平面$\pi$に含まれる$(l \in \pi)$と書くことができる。

  • 平面:点、直線とは異なる対象で、
    平面$\pi$が点$A$を含む$(A \in \pi)$と書くことができる。
    平面$\pi$が直線$l$を含む$(l \in \pi)$と書くことができる。 

  • 等しい:対象$A,B$について
    $A,B$が等しい$(A=B)$か異なる$(A\ne B)$か判断することができる。

  • 間にある:直線に含まれる三つの点$A,B,C$について
    $A,B$の間に$C$がある$(A*C*B)$
    $A,B$の間に$C$がない$(\neg A*C*B)$か判断することができる。

  • 合同:平面に含まれる点の集合$\text{A},\text{B}$について
    $\text{A},\text{B}$が合同$(\text{A}\equiv\text{B})$
    合同でないか$(\text{A}\not\equiv\text{B})$か判断することができる



用語の定義


(上で定めた点、直線、平面で定まる用語を定義します。)


  • 線分:直線$l$について$l$に含まれる異なる二点$A,B$を線分といい$AB$と書く
    直線$l$に含まれる点$C$$A,B$の間にある時$C$は線分$AB$の内点
    $C$$A,B$の間にない時$C$は線分$AB$の外点という
    $A,B$を特に線分$AB$の端点という
    $(\text{CがA,Bの内点}\stackrel{\text{def}}{\Leftrightarrow}\exists l(A\in l,B\in l, C\in l,A*C*B))$
    $(\text{CがA,Bの外点}\stackrel{\text{def}}{\Leftrightarrow}\exists l(A\in l,B\in l, C\in l,\neg A*C*B))$

  • 半直線:直線$l$$l$に含まれる点$O$に対し、
    $l$に含まれ、$O$と異なる二点$A,B$について、
    $A,B$が異なる時、$O$が線分$AB$の外点となる時
    $B$は直線$l$に属する$O$から出る$A$と同じ側の半直線に含まれるという。
    $A,B$が等しい時、
    $B$は直線$l$に属する$O$から出る$A$と同じ側の半直線に含まれるという。
    直線$l$に属する$O$から出る$A$と同じ側の半直線に含まれる点全体を
    直線$l$に属する$O$から出る$A$と同じ側の半直線という。
    $(\text{$B$が直線$l$に属する$O$から出る$A$と同じ側の半直線に含まれる}$
    $\stackrel{\text{def}}{\Leftrightarrow}(B\in l,O\in l,A\in l,A\ne B \land\neg B*O*A)\lor(A=B))$

  • 半平面:平面$\pi$$\pi$に含まれる直線$l$に対し、
    $\pi$に含まれ、$l$に含まれない二点$A,B$について、
    $A,B$が異なる時
    $AB$の内点であり$l$に含まれる点が存在しない時
    $B$は平面$\pi$に属する$l$で分ける$A$と同じ側の半平面に含まれるという。
    $A,B$が等しい時
    $B$は平面$\pi$に属する$l$で分ける$A$と同じ側の半平面に含まれるという。
    平面$\pi$に属する$l$で分けられる$A$と同じ側の半平面に含まれる点全体を
    平面$\pi$に属する$l$で分けられる$A$と同じ側の半平面という。
    $(\text{$B$が平面$\pi$に属する$l$で分ける$A$と同じ側の半平面に含まれる}$
    $\stackrel{\text{def}}{\Leftrightarrow}A\notin l,B\notin l(A\ne B\land\nexists P(\text{$P$が$AB$の内点}\land P\in l))\lor(A=B))$

  • 角:平面$\pi$に含まれる二直線$l,m$
    $l,m$に共に含まれる点$O$が存在する時、
    $l$に属する$O$から出る半直線$l_{h}$
    $m$に属する$O$から出る半直線$m_{h}$の組を半直線の角という。
    $l_{h}$$m_{h}$の角を$\angle(l_{h},m_{h})$と書く。
    $O$を特に$\angle(l_{h},m_{h})$の頂点、$l_{h},m_{h}$に含まれる
    $A,B$をとった時$\angle AOB = \angle(l_{h},m_{h})$とも書く。
    $\pi$に属する$l$で分けられる$B$と同じ側の半平面と
    $\pi$に属する$m$で分けられる$A$と同じ側の半平面が共に定義された時、
    その両方に含まれる点を
    $\angle AOB$の内部に含まれる点と言いその点全体を$\angle AOB$の内部という。
    また特に$l_{h},m_{h}$が同一の直線$l$に含まれている時、$l$で分けられる特定の半平面を角$\angle(l_{h},m_{h})$の内部という
    $l_{h},m_{h}$$\angle AOB$の内部のどれにも含まれない点を
    $\angle AOB$の外部に含まれる点と言いその点全体を$\angle AOB$の外部という。

  • 180°:直線$l$$l$に含まれる二点$A,B及びAB$の内点$O$
    $\angle(l_{h},l'_{h}) = \angle AOB$があり、角$\angle(m_{h},m'_{h})$について、
    $(l_{h},l'_{h})\equiv (m_{h},m'_{h})$となる時$\angle(m_{h},m'_{h})$が180°と書く。
    $(\text{$\angle(m_{h},m'_{h})$が180°}$
    $\stackrel{\text{def}}{\Leftrightarrow}\exists l(A\in l,B\in l,O\in l,A*O*B\land$
    $\exists\angle(l_{h},l'_{h})(\angle(l_{h},l'_{h})=\angle AOB,(l_{h},l'_{h})\equiv(m_{h},m'_{h}))))$

  • 平行:直線$l,m$について$l,m$に共に含まれる点が存在しない時
    直線$l,m$が平行であるという。
    $(\text{$l,m$が平行}\stackrel{\text{def}}{\Leftrightarrow}\nexists P(P\in l\land P\in m))$



使う公理たち



  • 任意の二点を含む直線が存在
    $\forall A,B,\exists l(A\in l\land B\in l)$

  • 任意の異なる二点を含む直線はただ一つ存在
    $\forall A,B,\exists! l(A\in l\land B\in l)$

  • 異なる二直線に共に含まれる点は高々1つである。
    $\forall l\ne m(\exists A,B(A,B\in l\land A,B\in m)\Rightarrow A=B)$

  • 任意の直線は少なくとも異なる二点を含む
    $\forall l,\exists A,B(A\ne B,A\in l, B\in l)$

  • 同一直線に含まれない三点が存在
    $\exists A,B,C,\nexists l(A\in l, B\in l,C\in l)$

  • 同一平面に含まれ同一直線に含まれない三点$A,B,C$について直線$l$$A,B,C$を含まないとする。この時$l$$AB$の内点を通る時$l$$AC,BC$の内点のどちらかを含む。

  • $=$の反射律
    $\forall A(A=A)$

  • $=$の対称律
    $\forall A,B(A=B\Rightarrow B=A)$

  • $=$の推移律
    $\forall A,B,C(A=B\land B=C\Rightarrow A=C)$

  • 代入則
    任意の命題$P(X)$について$X=Y$の時$P(X)\Leftrightarrow P(Y)$

  • 任意の対象について$\text{A}=\text{B}$の時、$\forall a(a\in\text{A}\Leftrightarrow a\in\text{B})$

  • 異なる二点$A,B$の間にある任意の点$C$$B,A$の間にある
    $A\ne B,\forall C(A*C*B\Rightarrow B*C*A)$

  • $A,B$$A,B$の間にない
    $\neg A*A*B,\neg A*B*B$

  • 任意の二点$A,B$について、$A*B*C$となる点$C$が存在

  • 直線$l$に含まれる点$A,B$と直線$l'$に含まれる点$A'$に対し
    $AB\equiv A'B'$なる$B'\in l'$が存在
    $\forall l,l',\forall A,B,A',\exists B'(A,B\in l,A',B'\in l',AB\equiv A'B')$

  • $\equiv$の反射律(線分)
    $\forall A,B(AB\equiv AB)$

  • $\equiv$の推移律(線分)
    $\forall A,A',B,B',C,C'(AA'\equiv BB'\land BB'\equiv CC'\Rightarrow AA'\equiv CC')$

  • 線分の加法性
    直線$l$に含まれる点$A,B,C$$C$$A,B$の間にあり、
    直線$l'$に含まれる点$A',B',C'$$C'$$A',B'$の間にある時、
    $AC\equiv A'C', CB\equiv C'B' \Rightarrow AB ≡ A'B'$となる。
    $(\forall l,l',\forall A,B,C,A',B',C'(A*C*B\land A'*C'*B'$
    $\land AC\equiv A'C'\land CB\equiv C'B'\Rightarrow AB\equiv A'B'))$

  • 平面$\pi$に含まれる直線$l$に属し、$l$に含まれる$O$から出る半直線$l_{h}$について
    $O$を含む$l$と異なる直線$m$によって、$\pi$に属し$m$で分ける半平面で$l_{h}$を含むものが存在する。

  • 平面$\pi$に属し直線$m$で分ける半平面$\pi_{h}$について
    $m$に含まれる点$O$を含み、$O$を含む$m$と異なる任意直線の$l$に属し$O$から出る半直線$l_{h}$$\pi_{h}$に含まれるものが存在する。

  • $\equiv$の反射律(角)
    $\forall l_{h},m_{h}(\angle(l_{h},m_{h})\equiv \angle(l_{h},m_{h}))$

  • 同じ半直線からなる角は合同、$\forall l_{h},m_{h}(\angle(l_{h},m_{h})\equiv \angle(m_{h},l_{h}))$

  • $\equiv$の推移律(角)
    $\angle(l_{h},m_{h})\equiv\angle(l'_{h},m'_{h})\land\angle(l'_{h},m'_{h})\equiv\angle(l''_{h},m''_{h})\Rightarrow\angle(l_{h},m_{h})\equiv\angle(l''_{h},m''_{h})$

  • 角の加法性
    四つの角$\angle(l_{h},m_{h}),\angle(l'_{h},m'_{h}),\angle(l_{h},n_{h}),\angle(l'_{h},n'_{h})$について、
    半直線$n_{h},n'_{h}$がそれぞれ角$\angle(l_{h},m_{h}),\angle(l'_{h},m'_{h})$の内部に含まれる時
    $\angle(l_{h},m_{h})\equiv\angle(l'_{h},m'_{h})\land\angle(l_{h},n_{h})\equiv\angle(l'_{h},n'_{h})\Rightarrow\angle(n_{h},m_{h})\equiv\angle(n'_{h},m'_{h})$となる。

  • 角の一意性
    平面$\pi$に含まれる半直線$l_{h},m_{h}$と角$\angle(l_{h},m_{h})$
    及び平面$\pi'$に含まれる直線$l'$$l'$に含まれる点$O'$に対し、
    直線$l'$に属する$O'$から出る半直線$l'_{h}$、また平面$\pi'$に属する$l'$で分けられた半平面$\pi'_{h}$に含まれる$O$から出る半直線$m'_{h}$
    $\angle(l'_{h},m'_{h})\equiv\angle(l_{h},m_{h})$となるものがただ一つ存在する。

  • 二辺挟角の性質
    同一直線上にない3点$A,B,C$と点$A',B',C'$について
    $AB\equiv A'B', AC\equiv A'C', \angle BAC \equiv\angle B'A'C'\Rightarrow\angle ABC\equiv\angle A'B'C'$となる。

  • 任意の直線$l$$l$に含まれない点$A$に対し、
    $A$を通る$l$と平行な直線はたかだか一つである。


証明しよう

やっと公理が書き終わったので証明に移れます。
必要な命題たちから示していきましょう

直線に乗る角は180°

三点$A,B,C$について$A*B*C$の時$\angle ABC$が180°である。

$A*B*C$より定義から$\exists l(A\in l, B\in l, C\in l)$
$l$に属する$B$から出る$A$と同じ側の半直線を$\textbf{l}_{h}$
$l$に属する$B$から出る$C$と同じ側の半直線を$\textbf{l}'_{h}$とすると
$A\in \textbf{l}_{h},C\in \textbf{l}'_{h}$となるため$\angle ABC=\angle(\textbf{l}_{h},\textbf{l}'_{h})$と書ける
$\text{$\angle(m_{h},m'_{h})$が180°}\stackrel{\text{def}}{\Leftrightarrow}\exists l(A\in l,B\in l,O\in l,A*O*B\land\exists\angle(l_{h},l'_{h})(\angle(l_{h},l'_{h})=\angle AOB,(l_{h},l'_{h})\equiv(m_{h},m'_{h})))$
という定義から、定義中の$\angle(l_{h},l_{h'})$を今回定めた$\angle(\textbf{l}_{h},\textbf{l}'_{h})$とすると
$\angle ABC=\angle(\textbf{l}_{h},\textbf{l}'_{h})$と書けるため
$\angle ABC$は180°の定義を満たす。

対頂角は等しい

平面$\pi$に含まれ、同一直線に含まれない異なる三点$A,B,C$
$A,B$を通る直線$l$$A,C$を通る直線$m$をとる。
$l$に属する$A$から出る$B$と同じ側にある半直線を$l_{h}$
$B'*A*B$なる点$B'$が存在する。これにより
$l$に属する$A$から出る$B'$と同じ側にある半直線を$l'_{h}$とする。
$m$に属する$A$から出る$C$と同じ側にある半直線を$m_{h}$
$C'*A*C$なる点$C'$が存在する。これにより
$m$に属する$A$から出る$C'$と同じ側にある半直線を$m'_{h}$とする。
この時$\angle(l_{h},m_{h})\equiv\angle(l'_{h},m'_{h})$

定義から明らかに$\angle(l_{h},m_{h})=\angle BAC,\angle(l_{h},m'_{h})=\angle BAC',\angle(m_{h},m'_{h})=\angle CAC'$
となっている。
ここで$C*A*C'$より$\angle(m_{h},m'_{h})$は180°と書け,
同様$B*A*B'$より$\angle(l_{h},l'_{h})$は180°と書ける。
180°の定義及び角の推移律より$\angle(m_{h},m'_{h})\equiv\angle(l_{h},l'_{h})$
定義から$l_{h},l'_{h}$は同一直線$l$に含まれ$m_{h},m'_{h}$も同一直線$m$に含まれる。
それより$\angle(l_{h},l'_{h}),\angle(m_{h},m'_{h})$の内部をそれそれ、
$l$で分けられた$C'$と同じ側の半平面、$m$で分けられた$B$と同じ側の半平面とすると
$m'_{h}$$\angle(l_{h},l'_{h})$の内部に含まれ、$l_{h}$$\angle(m_{h},m'_{h})$の内部に含まれると言える。
ここで$\angle(l_{h},m'_{h})\equiv\angle(m'_{h},l_{h})$及び、$\angle(l_{h},l'_{h})\equiv\angle(m'_{h},m_{h})$より角の加法性より、
$\angle(l_{h},l'_{h})\equiv\angle(m'_{h},m_{h})\land\angle(l_{h},m'_{h})\equiv\angle(m'_{h},l_{h})\Rightarrow\angle(l'_{h},m'_{h})\equiv\angle(l_{h},m_{h})$となる。

平面$\pi$に含まれ、平行な直線$l,m$$l$に含まれない点$A$及び、
$A$$l$に含まれる点$B$を含む任意の直線$n$について、
$n,m$に共に含まれる点$C$が存在する。

$n$$l$に含まれない$A$を含むため$n\ne l$
平行の定義より$l$に含まれる$B$$m$に含まれない。
$m$に並行で$B$を通る直線は$l$ただ一つ。よって$n\ne l$から$n$$m$に並行でない。
すなわち$m,n$に共に含まれる点$C$が存在。

平行な直線の推移律

$l,m$が平行な時$m$でない$l$に平行な直線$n$$m$に平行。

$n$に含まれ、$m$に含まれない点$A$を取ると$l$に並行で$A$を含むものは$n$ただ一つ。
$n$$m$に含まれる点$B$が存在した時、命題3より$n,l$に共に含まれる$C$が存在する。
これは$n,l$が並行であることに反し$n,m$に含まれる$B$は存在せず$m,n$は並行。

二等辺三角形

任意の$B,C$について$A$$AB\equiv AC$なる$A$が存在する。さらに
三点$A,B,C$について
$AB\equiv AC\Leftrightarrow \angle ABC\equiv\angle ACB$

$B,C$を含む$l$をとり、$l_{h}$$l$に属し$B$から出る$C$と同じ側の半直線、
$l'_{h}$$l$に属し$C$から出る$B$と同じ側の半直線とする。
$m$$l$と異なる$B$を含む直線とし$m$に属し$B$から出るの半直線$m_{h}$及び$m_{h}$と異なる$m$に属し$B$から出るの半直線$m'_{h}$を取る。
$l$で分けられる半平面で$m_{h}$を含むものを取り、そこに含まれる点$C$から出る半直線$n_{h},n'_{h}$$\angle(l_{h},m_{h})\equiv\angle(l'_{h},n_{h}),\angle(l_{h},m'_{h})\equiv\angle(l'_{h},n'_{h})$となるものが存在。
同様$l$で分けられる半平面で$m'_{h}$を含むものを取り、そこに含まれる点$C$から出る半直線$n''_{h},n'''_{h}$$\angle(l_{h},m_{h})\equiv\angle(l'_{h},n''_{h}),\angle(l_{h},m'_{h})\equiv\angle(l'_{h},n'''_{h})$となるものが存在。
一点を含む平行線の一意性より$m_{h}$または$m'_{h}$$n_{h},n'_{h},n''_{h},n'''_{h}$のいずれかと交点(二半直線に共に含まれる点)を持つ。
これより$m_{h},n_{h}$に共に含まれる$A$が存在するとして良い。
$AB\equiv AC$を示すことで題意の$A$の存在を示そう
$AB\not\equiv AC$を仮定すると$AB,AC$のどちらかの内点$B',C'$があり$AB'\equiv AC,AC'\equiv AB$となる。
それゆえ$AB$の内点で$AB'\equiv AC$なる$B'$が存在するとしよう。
$AC\equiv B'B,\angle B'BC\equiv \angle ACB,BC\equiv CB$より$\angle ABC\equiv\angle B'CB$が成り立つ。
$\angle ABC\equiv\angle ACB$より$\angle B'CB\equiv\angle ABC$が成立するが$l$で分けられた$A$と同じ側に$B'$があるため角の一意性より$A,B'$$C$から出る同一の半直線$n_{h}$に含まれる。
しかし$A,B'$は同一の半直線$m_{h}$にも含まれるため$A=B'$でありこれは$A*B'*B$に反する。
よって$AB\equiv AC$となり、題意を満たす$A$が存在する。

さらに上から$AB\equiv AC\Leftarrow \angle ABC\equiv\angle ACB$もわかる。
$AB\equiv AC$の時$\angle BAC\equiv\angle CAB$も踏まえると$\angle ABC\equiv\angle ACB$となるため、
$AB\equiv AC\Rightarrow \angle ABC\equiv\angle ACB$が示された。

直角の存在

直線$l$$l$に含まれる$O$について、$l$に含まれない$A$$A'*O*A$なる$A'$を取り、
$l$に属し$O$から出る$A$と同じ側にある半直線$l_{h}$
$l$に属し$O$から出る$A'$と同じ側にある半直線$l'_{h}$とすると、
$O$から出る半直線$m_{h}$$\angle(l_{h},m_{h})\equiv\angle(l'_{h},m_{h})$となるものが存在する。
この角$\angle(l_{h},m_{h})$と合同な角を直角であるという。

$l'_{h}$に含まれ$AO\equiv A''O$となる$A''$が存在するので$A''$$A'$として取り直すとしよう。
命題5より$A,A'$から$AB\equiv A'B$なる点$B$が存在、命題5から$l$で分けられる半平面で$B$と異なる側に$\angle B'AA'\equiv\angle B'A'A$なる$B'$が取れる。
$B$と同様$B'$についても命題5から$B'A\equiv B'A'$となる。
$AA',BB'$共に内点となる$O'$をとる。
$\angle BAA'\equiv\angle BA'A,\angle B'AA'\equiv\angle B'A'A$より$\angle BAB'\equiv\angle BA'B'$となるため。
$AB\equiv A'B,AB'\equiv A'B',\angle BAB'\equiv\angle BA'B'$より
$\angle ABB'\equiv\angle A'BB'$が成り立つ。
$A*O'*A',B*O'*B'$より
$\angle BAO'\equiv\angle BAA'\equiv\angle BA'A\equiv\angle BA'O',\angle B'AO'\equiv\angle B'AA'\equiv\angle B'A'A\equiv\angle B'A'O'$
となる。
$BO'\equiv BO',AB\equiv A'B,\angle ABO'\equiv\angle A'BO'$より$\angle BO'A\equiv\angle BO'A'$となり、
これまでと同じ様に$O'A\not\equiv O'A'$とした時$O'A''\equiv O'A,O'*A''*A'$となる$A''$が存在するとしてよく$\angle O'BA''\equiv\angle O'BA'$となるが角の一意性より$A'=A'',O'A\equiv O'A'$でないといけない。
線分の加法性と$AO\equiv A'O,AO'\equiv A'O'$より$O'=O$となる。
以上より$O,B$を含む直線を$m$とし$m$に属し$O$から出る$B$と同じ側にある半直線を
$m_{h}$とすると$\angle(l_{h},m_{h})\equiv\angle(l'_{h},m_{h})$が成り立つ。

二点$A,B$について$\angle BAC,\angle ABD$が直角となる点$C,D$が存在
$A,C$を含む直線$l$$B,D$を含む直線$m$は平行。

$l,m$が平行でないとすると$l,m$に共に含まれる点$E$が存在、命題6から$E$$l,m$$C,D$と同じ側にある時も、そうでない時も$\angle BAE,\angle ABE$は共に直角となる。
ここで$C'*A*E,D'*B*E$となる様に$C',D'$をとった時について
$\angle C'AB,\angle D'BA$も命題6から直角となる。
$l$に属する$A$から出る$C'$と同じ側の半直線は$AE\equiv AE'$なる$E'$を含むが、
この$E'$$\angle E'BA\equiv \angle BAE$となる。角の一意性から$\angle E'BA$が直角の時$E'$$m$に含まれる、すなわち$E'$$l,m$ともに含まれる。
$l,m$$E,E'$はそれぞれ明らかに異なり異なる直線$l,m$に共に含まれる点が2つとなってしまい矛盾。
よって$l,m$は平行。

平行線公準

二点$A,B$について$A,B$を含む直線を$l$$l$に属し$A$から出る$B$と同じ側にある半直線$l_{h}$$l$に属し$B$から出る$A$と同じ側にある半直線$l'_{h}$をとる。
$\angle(l_{h},m_{h}),\angle(l'_{h},n_{h})$を取り、$m_{h}$$m$に、$n_{h}$$n$に属する半直線とし、
$n_{h},m_{h}$$l$に分けられた同じ側の半平面に含まれるとする。
$m_{h}$に含まれる点$I$を取り、$I*O*I'$なる$I'$も取る。
この時$l$で分けられ$I'$と同じ側の半平面を取り、$\angle(l_{h},n'_{h})\equiv\angle(l'_{h},n_{h})$なる$n'_{h}$がこの半平面に含まれる様に取れる。
この時、$n'_{h}$$m$に含まれるならば$m,n$は平行。
$n'_{h}$$m$に含まれないならば$m,n$は平行でない。

$n'_{h}$$n'$に属する半直線とする。
$n'$$n$と平行であることを示せば良い。
命題5の証明より$A,B$について$A*M*B,AM\equiv BM$なる点$M$が取れた。
$n$に並行で$M$を含む直線$k$を取り$M$から出る半直線$k_{h}$を一つとっておくと
命題6で$M$を頂点とする角$\angle(k_{h},j_{h})$が直角である様なものが取れる、$j_{h}$$j$に属するとする。
$n,j$が共に含む点を$H$$n',j$が共に含む点を$H'$とする、
$MH\not\equiv MH'$とした時$j$に含まれ$MH''\equiv MH$なる$H'$でない点$H''$$j$$M$から出る$H'$と同じ側の半直線に含まれる。
$MH''\equiv MH,AM\equiv BM,\angle HMB\equiv\angle H''MA$より、
$\angle H''AM\equiv\angle HBM$となるが、$\angle H'AM\equiv\angle HBM$となっていたので
角の一意性から$H',H''$は同一の直線に含まれ$H'=H''$となってしまう。
よって$MH\equiv MH'$
命題2から
$MH\equiv MH',MA\equiv MB,\angle AMH'\equiv\angle BMH$より$\angle MH'A\equiv\angle MBH$
つまり$\angle MH'A$が直角とわかる。
命題7より$n,n'$は平行である。

平行なら同位角、錯角が合同

$l,m$が平行な二直線とする。
$l,m$と並行でない直線$n$について$l,n$に共に含まれる点を$A$
$m,n$に共に含まれる点を$B$とし、$A*B*C$なる点$C$をとる。
$l$の半直線$l_{h}$$m$の半直線$m_{h}$$n$が分ける同じ側の半平面に含まれるとし、さらに$m_{h}$に含まれる点$I$及び$I'*B*I$なる点$I'$も取り、
$m'_{h}$$m$に属し$B$から出る$I'$と同じ側の半直線とする。
$n$に属し$A$から出る$B$と同じ側の半直線$n_{h}$
$n$に属し$B$から出る$C$と同じ側の半直線$n'_{h}$
$n$に属し$B$から出る$A$と同じ側の半直線$n''_{h}$について、
$\angle(l_{h},n_{h})\equiv\angle(m_{h},n'_{h}),\angle(l_{h},n_{h})\equiv\angle(m'_{h},n''_{h})$が成り立つ。

命題8及び一点を通る平行線の一意性より
$\angle(m'_{h},n''_{h})\equiv\angle(l_{h},n_{h})$でない時$l,m$が平行でなく$\angle(m'_{h},n''_{h})\equiv\angle(l_{h},n_{h})$となる。
さらに命題2より$\angle(m'_{h},n''_{h})\equiv\angle(m_{h},n'_{h})$となるため
$\angle(l_{h},n_{h})\equiv\angle(m_{h},n'_{h})$

やっと辿り着きました主定理を示しましょう。

主定理「三角形の内角の和は180°」

同一直線に含まれない三点$A,B,C$について
ある4つの半直線$l_{h},m_{h},n_{h},k_{h}$が存在し
$\angle ABC\equiv\angle(l_{h},m_{h}),\angle BCA\equiv\angle(m_{h},n_{h}),\angle CAB\equiv\angle(n_{h},k_{h})$
となり、$\angle(l_{h},k_{h})$は180°となる。

$B,C$を共に含む$C$から出る$B$と同じ側の半直線を$m_{h}$$m$に属す、
$C,A$を共に含む$C$から出る$A$と同じ側の半直線を$n_{h}$$n$に属す、とする。
$AB$の内点$D$を一つ取り$C,D$を共に含む直線を$i$とする。
$\angle ABC\equiv\angle(m_{h},l_{h})$なる$l_{h}$
$i$で分けられた$B$と同じ側の半平面に含まれているものをとる。
$\angle CAB\equiv\angle(n_{h},k_{h})$なる$k_{h}$
$i$で分けられた$A$と同じ側の半平面に含まれているものをとる。
$A,B$を共に含む直線に平行で$C$を含むものを$j$とする。
この時命題9より$j$に属す半直線$l'_{h},k'_{h}$$\angle ABC\equiv\angle(m_{h},l'_{h}),\angle BAC\equiv\angle(n_{h},k'_{h})$
となる。これにより$\angle(m_{h},l'_{h})\equiv\angle(m_{h},l_{h}),\angle(m_{h},l_{h})\equiv\angle(m_{h},k_{h})$がわかる。
角の一意性より$l_{h},k_{h}$$j$に含まれる半直線である。
$A,B$$i$で分けられた半平面で異なる側に含まれるため$l_{h},k_{h}$$C$で分けられる異なる側の半直線2つ。
故に$l_{h}$に含まれる$E$$k_{h}$に含まれる$E'$を取ると、
$E*C*E'$となり$\angle(l_{h},k_{h})$は180°となる。
以上の時$\angle ABC\equiv\angle(l_{h},m_{h}),\angle BCA\equiv\angle(m_{h},n_{h}),\angle CAB\equiv\angle(n_{h},k_{h})$
となり、$\angle(l_{h},k_{h})$は180°となっている。

4.証明の中に原因はある?

はあ... はあ...、 やっと証明が終わりました。
とりあえずで証明したのがここまで長くなるとは...

さあ本来やりたかったのは
この証明の中に「三角形の内角の和が180°」の原因があるのか、あったあらどの辺りが原因かの検討です。

今回の証明の特徴

こんな長々した証明を書いておいてなんですが、
普通証明をこんな分量書く人はいません。
じゃあお前はこんなたらたら長い証明をかいて何をしたいんだ、 と言われそうなので早々に今回の証明でやりたかったことを書いておきます。

今回の証明でやったのは

  1. 必要最低限の用語、公理を用意すること。
    ここで用意する公理は本当に最低限で、集合論の公理(ZF公理系とか)もなるべく使わない様にしています。
  2. 用意した公理のみから証明すること。
    あまりわざわざ示す人がいない「直感的に明らかやろ」という命題も公理と推論規則からいちいち示しています。

の2ステップです。
このステップで注意しているのは証明の段階で前提としているものを「公理」「論理」の二つのみに絞ることです。

数学の証明はいろいろありますが、絶対に必要となるのは「論理の整合性」と「公理に準拠していること」です。
公理は人間の直感をもとに定式化されており、人間の直感は素朴なものであればまず間違いなく正しいです(「直角が描ける」とか)、
そのため普通証明であれば「公理に準拠していること」について直感を使ってバンバンに端折っています。

そこで今回の証明では普通の証明で直感に頼っているところをなるべく排除し、暗黙のうちに使っている事実がなんだったのかを洗いざらい書き下しています。

これによって「三角形の内角の和が180°」の証明中、暗黙のうちに使っている事実が原因として相応しいのではという懸念がなくなったのではないでしょうか。
そのために全て書き下す今回の証明を行ったのでした。

原因として相応しいものを探そう。

やっと今回の証明の中から「三角形の内角の和が180°」の原因を探していけそうです。

原因として相応しいポイントはどんなものかを考えていきましょう。
原因とは事象を引き起こすもとになる要素、または直接のきっかけを与える要素らしいので、 証明のなかで原因と呼べる様な要素があったら、

  1. 証明の中で最も使う前提
  2. 証明の中で効果的に使われている前提
  3. 主定理に直接影響している前提

の様な前提が原因として相応しいのではないでしょうか。                                                                                                                                               

原因ポイント1「証明の中で最も使う前提」

今回の証明の中で最も使う前提を考えてみると、

「角の一意性」と「二辺挟角の性質」の組み合わせが最も使った命題なのではないでしょうか

角の一意性

平面$\pi$に含まれる半直線$l_{h},m_{h}$と角$\angle(l_{h},m_{h})$
及び平面$\pi'$に含まれる直線$l'$$l'$に含まれる点$O'$に対し、
直線$l'$に属する$O'$から出る半直線$l'_{h}$、また平面$\pi'$に属する$l'$で分けられた半平面$\pi'_{h}$に含まれる$O$から出る半直線$m'_{h}$
$\angle(l'_{h},m'_{h})\equiv\angle(l_{h},m_{h})$となるものがただ一つ存在する。

二辺挟角の性質

同一直線上にない3点$A,B,C$と点$A',B',C'$について
$AB\equiv A'B', AC\equiv A'C', \angle BAC \equiv\angle B'A'C'\Rightarrow\angle ABC\equiv\angle A'B'C'$となる。

これによって「二等辺三角形の底角が等しい」「直角の存在」「平行線公準」などの数多くの命題を示せました。
なぜこの二命題で多くの命題を示せる様になったか、つまりどんなとこが使いやすいかを考えてみると、三角形の合同条件が使えるというのが大きいです。

三角形の合同条件

三点$A,B,C$ともう三点$A',B',C'$について

  • $AB\equiv A'B',AC\equiv A'C',\angle BAC\equiv \angle B'A'C'$の時$\angle ABC\equiv\angle A'B'C',\angle ACB\equiv\angle A'C'B',BC\equiv B'C'$
  • $AB\equiv A'B',\angle CAB\equiv\angle C'A'B',\angle ABC\equiv\angle A'B'C$の時$AC\equiv A'C',BC\equiv B'C',\angle ACB\equiv\angle A'C'B'$

が成り立つ。はじめの命題の前提を「二辺挟角が等しい」、
次の命題の前提を「一辺とその両端の角が等しい」とか言ったりする。

(すいません証明は略します)

「合同である」という用語の使い方は公理だけで決まっており、人間が持っている「合同な図形だとその点のなす角、線分も全て合同」という直感は(直接には)描かれてないです。
しかしこの直感は図形的な直感の礎をなすため、2000年強やってきた初等幾何では必須な命題です。
この有用な命題を(部分的にも)使える様にしたのが「角の一意性」と「二辺挟角の性質」なのでした。

というわけで命題の有用性として「合同な図形だとその点のなす角、線分も全て合同」が、「三角形の内角の和が180°」の原因として挙げられそうです。

原因ポイント2「証明の中で効果的に使われている前提」

今回の証明の中で効果的な前提は何かと考えると、

証明の中では平行線公準が大きな役割をになっていそうです。

平行線公準

二点$A,B$について$A,B$を含む直線を$l$$l$に属し$A$から出る$B$と同じ側にある半直線$l_{h}$$l$に属し$B$から出る$A$と同じ側にある半直線$l'_{h}$をとる。
$\angle(l_{h},m_{h}),\angle(l'_{h},n_{h})$を取り、$m_{h}$$m$に、$n_{h}$$n$に属する半直線とし、
$n_{h},m_{h}$$l$に分けられた同じ側の半平面に含まれるとする。
$m_{h}$に含まれる点$I$を取り、$I*O*I'$なる$I'$も取る。
この時$l$で分けられ$I'$と同じ側の半平面を取り、$\angle(l_{h},n'_{h})\equiv\angle(l'_{h},n_{h})$なる$n'_{h}$がこの半平面に含まれる様に取れる。
この時、$n'_{h}$$m$に含まれるならば$m,n$は平行。
$n'_{h}$$m$に含まれないならば$m,n$は平行でない。

(命題番号変わってるのキモい、詳しい方やり方教えてください)

有名な話ですが、平行線公準はユークリッドの『原論』の5個目の公理で、これが成り立たない世界を考えることにより非ユークリッド幾何学ができたのでした。
正直私は詳しくないのですが、非ユークリッド幾何では三角形の内角の和は180°になるとは限らないらしいので、「三角形の内角の和が180°」という命題には平行線公準が成り立つことが必要です。

この命題の真偽が主定理の真偽との関連が深いことから今回の証明の中で効果的な前提として「平行線公準」が「三角形の内角の和が180°」の原因として挙げられそうです。

原因ポイント3「主定理に直接影響している前提」

今回の証明の中で直接影響している前提は、
主定理の証明に直接使われる命題がいいでしょう。

これから直接影響しているのは「平行なら同位角、錯角が合同」となるでしょう。

平行なら同位角、錯角が合同

$l,m$が平行な二直線とする。
$l,m$と並行でない直線$n$について$l,n$に共に含まれる点を$A$
$m,n$に共に含まれる点を$B$とし、$A*B*C$なる点$C$をとる。
$l$の半直線$l_{h}$$m$の半直線$m_{h}$$n$が分ける同じ側の半平面に含まれるとし、さらに$m_{h}$に含まれる点$I$及び$I'*B*I$なる点$I'$も取り、
$m'_{h}$$m$に属し$B$から出る$I'$と同じ側の半直線とする。
$n$に属し$A$から出る$B$と同じ側の半直線$n_{h}$
$n$に属し$B$から出る$C$と同じ側の半直線$n'_{h}$
$n$に属し$B$から出る$A$と同じ側の半直線$n''_{h}$について、
$\angle(l_{h},n_{h})\equiv\angle(m_{h},n'_{h}),\angle(l_{h},n_{h})\equiv\angle(m'_{h},n''_{h})$が成り立つ。

平行線が合同ということを知っていた時、三角形の内角の和が180°というのは中学でもやった様な簡単な議論で直接示せました。

ただ、証明の手法はいくつかあり得るため「定理が成り立つ」原因として「証明の最後の段階で用いたもの」とすると一意に定りません。
私は知りませんが「平行なら同位角、錯角が合同」が証明に直接使われる命題でない証明法もあるかもしれません。
というわけで今回した証明の中から原因を探るにしても、今回の証明の特殊なポイントかもしれない命題を採用するのはあまりよろしくないでしょう。

じゃあ主定理に直接影響している前提は何にすればいいか、ということですが、
私の感覚に従うと、より普遍的な使い方をする命題まで遡らなければならないでしょう。
平行線公準と平行なら同位角、錯角が合同はほとんど同じことを言っているのではないでしょうか、

そして先に言った様に平行線公準はその真偽が主定理の真偽との関連が深いことから、主定理と平行線公準はかなり近い命題として挙げられないでしょうか。
私にはこの「命題の関連性の高さ」と「主定理に直接影響している」がとても似通った性質に感じました。
というわけで命題の関連性の高さから、主定理に直接影響している前提として「平行線公準」が「三角形の内角の和が180°」の原因として挙げられそうです。

私が思う原因

さてさてここまでの様に「三角形の内角の和が180°」の原因を挙げてきましたが

  • 合同な図形だとその点のなす角、線分も全て合同
  • 平行線公準

の二点が有力候補です。

どっちが「三角形の内角の和が180°」の原因として適切かを考えるわけですが、
私の結論は完全に平行線公準です。

私には「合同な図形だとその点のなす角、線分も全て合同」があまりに根本的すぎることが「三角形の内角の和が180°」の原因として適切でないのではと感じてしまいます。

初等幾何の中の関係は「長さが等しい」「角度が等しい」「相似である」の様にさまざま登場しますが、
私には、合同という関係が代入則を持っていることが初等幾何を最も特徴づけている性質の様に感じます。

実際ある図形で成り立った命題はその図形と合同な図形でもなり立っており、どこに図形があるかを気にしない分野が初等幾何なのです。

この合同の代入則を成り立たせているのが「合同な図形だとその点のなす角、線分も全て合同」という命題なのです。

というわけで

「合同な図形だとその点のなす角、線分も全て合同」という命題は初等幾何の特徴づけであり個別の「三角形の内角の和が180°」という命題の原因としては大きすぎる。

というのが私の感覚でした。

5.おわり

というわけでここまでで私の「三角形の内角の和はなぜ180°なのか」に対しての回答は

「平行線公準」が成り立つから

としておきます。

こう結論だけ見るとうっすいですが
幾何のちまちました公理を書き下して証明した結果2000年前に提唱された命題が原因として一番適切というのは
2000年前に提唱された公理の分け方が適切であった証拠の様に思えてきます。

現代数学では厳密さのためちまちました公理は必須です。

ただ各命題を吟味して、それぞれの命題に必要な要素はどの様なものであるべきかを考え続けた人間中心の公理の分け方には、
人間が命題を証明する時に必要な公理が
適切な粒度(合同の代入則は自明などで端折る)で入っており、
数学の人間中心な設計もありだな、と思ったのでした。

参考文献

投稿日:15日前
OptHub AI Competition

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投稿者

数学徒(B2)です. あまり数学活動はできてませんがちょくちょくかけたらいいなと思います.

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