級数の変形には様々な方法がある.この記事では,その中で色々な応用が利く考え方を教えたいと思う.僕が過去に見つけた等式のほとんどはこの方法で証明できるので,身に付けて損はないだろう.
ここで詳しく述べることはしないが,多重ゼータ値という多重級数は双対性と呼ばれる性質を持つことが知られている.そして,その双対性に級数証明を与える際に重要となる因子 (コネクターと呼ばれる) が
文字が複数あるので注意.
これは普通の高校生でも示すことができるレベルかもしれない.
これを利用すると,次のような変形が可能になる.
後の都合上,この方法を(Ⅰ)とする.これだけでも非自明で面白く,簡潔に示すことができているように見えるが,ここで終わらせるのは勿体ない!さらなる一歩を踏み出すことは研究において非常に重要である.上で示した等式を別の視点から考えてみよう.
読者はどのように感じただろう.得られる結果は同じだから,証明の短さ故に(Ⅱ)より(Ⅰ)の方が優れていると感じたかもしれない.しかし,次の例を見ても同じことが言えるだろうか.
〈方法(Ⅰ)の場合〉
〈方法(Ⅱ)の場合〉
が示せる.
さて,この例では方法(Ⅰ)で簡単に扱えなかった級数を方法(Ⅱ)で変形することができた.ところで,勘の鋭い読者は方法(Ⅱ)がさらに応用できるということに気付いているかもしれない.
〈方法(Ⅰ)の場合〉
結果だけ述べる.
あまり面白くない.
〈方法(Ⅱ)の場合〉
これにより,
を得る.
となる.
この変形方法を
さて,ここからは僕は今までに示した等式の一部を例として紹介していく.まずはシグマの中身を少し工夫してみよう.
得られた等式は,
両辺に
先ほどと同様に
したがって,
これにより,結局
を得る.
となる.
もちろん
次は和をとる変数を増やしてみよう.
したがって,
先程示した通り
を得る.
したがって,
よって
それでは最後に,双対性コネクターの2乗について書こう.今までの変形とは少し異なるが,漸化式を立てるという目標は同じである.
よって
よって
ここで,
であるから,
したがって,
両辺に
よって,
が成り立つ.
より
したがって
よって
を得る.
もっと応用してみよう.
より
この記事をここまで読んだ人はこのまま
よって
したがって
を得る.
余談ではあるが,これを用いて少し遊んでみよう.
また,
であるから,
を得る.
が成り立つ.よって
したがって
を得る.
様々な例を通して学びを深めてもらったが,どうだっただろうか?突飛な発想をしている箇所はあまりないと思うし,実際僕はこの方法を1年半ほど前に自分で見つけている.