$\partial$-多様体$M$のDouble(ダブル)$DM$は、$(M×0)\cup (M×1)$から、$x\in\partial M$のとき$(x,0)$と$(x,1)$を同一視して得られる空間とする。この時$DM$は、$M$が埋め込まれている同じ次元の境界のない$C^0$級多様体である。
Doubleというのは要するに、多様体の境界を鏡にペタッと貼り付けてできる、その多様体と鏡の奥の多様体を繋げた多様体の事です。
今回は$C^0$級の構造なので難しくはないですが、$C^\infty$構造が入るかは、少し注意が必要です。(鏡の例でも分かるように、境界では“かくっと”なっている可能性があるため。)
滑らかな曲面のDouble。赤丸は、Doubleによって生じる特異点
$M$の内点だったDoubleの点上のチャートについては、$M$のチャートが自然に使えるので良い。よって、$M$の境界点であったDoubleの点$p$上のチャートを構成すれば十分である。
そこで、$p\in\partial M$とする。
このとき、この点の境界チャート$\phi:U\to \mathbb H^n(=\mathbb R^{n-1}×[0,\infty))$で、$\phi(p)=0$なるものを考える。
ここでDoubleの定義から、$U×0\cup U×1$において、その境界部分$\mathbb R^{n-1}×\{0\}$が張り合わさり、この張り合わせ空間は$\mathbb R^{n-1}×(-\infty,\infty)\approx \mathbb R^n$と同相である。
よって、$DM$内としての$U×0\cup U×1$は、$DM$内としての点$p$周りのチャートになる。
$p$は任意だったので、これは境界のない$C^0$級多様体であることを示す。
また、$M$の埋め込みは、単に自然な包含写像$p\mapsto [(p,0)]$で与えられる。
1.$\partial M=\emptyset $ならば、$M$はある$\partial$-部分多様体$N$の境界$M=\partial N$として表せる。
2.$M$がコンパクトでも、そのような$N$をコンパクトに取れない例がある。
直感的には、それはそうという話なんですが、コンパクト性についての例は想像しにくいですね。
ヒントとして「$M$の次元が$0$の時を考えよ」とあるので、これを元に考えます。
1.$N=M×[0,\infty)$とすると、$N$のチャートは各$M$のチャートに$[0,\infty)$をかけるだけで得られるので、自然に次元が一つ上の境界付き多様体になる。
また、その構成から$\partial N=M×\{0\}$であり、包含関係による自然な同一視により$\partial N=M$である。
2.$M=\{\ast\}$とすると、これはコンパクトであるが、$N$としてコンパクトなものは取れない例となる。
実際、$N$を任意の境界付きコンパクト一次元多様体とすると、$N$の各連結成分は$1$次元多様体の分類から、コンパクト性より$S^1$か$[0,1]$に同相であるため、その境界の点の個数は必ず各連結成分の$[0,1]$の境界点からなり、偶数個である。
$M$は奇数個の点なので$N$では表せないことが分かり、よってこれが問題の例となる。
もちろん2.については、$N$のコンパクト条件を外せばすぐに$[0,1)$として実現可能です。
また、もう少し非自明な例はないかと思い調べたところ、$\mathbb RP^2$(この本では$P^2$)が良い反例になるようです。(Stiefel-Whitney数を考えれば良いらしい。)
1次元連結パラコンパクトHausdorff$C^r$級$\partial$-多様体$(0\leq r\leq \infty)$は閉区間、半開区間のいずれかに$C^r$級微分同相である。
Hirschの本では、$\partial$-多様体を、その境界が空でないものとして定めているのでこの二つのどちらかになります。
空でも良いのであれば、円周と開区間にも微分同相です。
ちなみに、今回は$C^\infty$級まででの証明ですが、$C^\omega$級でも成立します。
証明は問題1.1.9と流れがほぼ同じなので、ここでは割愛します。(パラコンパクト性が入るので、少し議論が簡単になるはずです。)
証明中に、以下の連結化補題を使用します。
1次元連結パラコンパクトHausdorff$C^r$級$\partial$-多様体のチャート$\phi:U\to I,\psi:V\to J$を有界像チャートとし、$U\cap V$が非空かつ連結とする。このとき、$U\cup V$に$C^r$チャート$U\cup V\to K$で、$K$は開区間、半開区間、閉区間のいずれかになるようなものが取れる。
任意のチャートは、単調増加有界像チャートとして取れることに注意する。
いま、$M$は連結パラコンパクト多様体なので、特に第二可算多様体である。従って、有界像チャートの可算被覆$\{(U_i,\phi_i:U_i\to V_i)\}_{i\geq 1}$を取れる。特に、$M$の連結性から、各$U_k,U_{k+1}$の共通部分が非空になるように$\{U_k\}$を並べ替えておく。
ここで、各$k$に対して$W_k=U_1\cup…\cup U_k$とおく。連結化補題を帰納的に各$W_k$に対して適用することで、各$W_k$上に$C^r$級チャートが構成でき、その像は開区間、半開区間、閉区間のいずれかである。
とくにそのチャートを、$W_{k+1}$のチャートが$W_k$上でそのチャートに一致するように順に取り直すことができ(これを$(\psi_k,W_k)$とする)、これによって区間への大域チャート$s:M\to I,x\mapsto \psi_k(x),(x\in W_k)$が構成できる。(この区間は、$M$が境界を持つことから半開区間か閉区間である。)
故に、$M$は半開区間か閉区間へ$C^r$級微分同相である。