0

自作問題あなぐら 5(すこし面倒にした確率漸化式)

32
0
$$$$

問題

 さいころを繰り返し投げ,$n$回目に出た目を$X_n$とおく.$n$回目までに出た目の総和$X_1 + X_2 + \cdots + X_n$$S_n$とする.$S_n$が4で割り切れる確率を$p_n$とし,$S_n$が偶数であるが4で割り切れない確率を$q_n$とする.さいころの目は全て等確率で出るものとして以下の問いに答えよ.

  1. $a_n = p_n - q_n$とする.このとき$a_n$の漸化式を求めよ.
  2. $p_n$を求めよ.

余話

 これは確率漸化式の立式だけでなく,計算技術も要求するような問題です.普通の確率漸化式の問題だけでなく,さらに負荷をかけて練習したい人にとっては良い練習問題だと思います.

解答

クリックして解答を表示


(1) $S_n$を4で割った余りが1,3となる確率をそれぞれ$r_n$$s_n$とおく.$X_n$を4で割った余りを考えると
$$ X_n = 1,\ 2,\ 3,\ 4,\ 5,\ 6 \qquad \text{に対してそれぞれ} \qquad X_n \equiv 1,\ 2,\ 3,\ 0,\ 1,\ 2 $$
となる.状態推移を考えると
\begin{align} p_{n+1} &= \frac{1}{6} p_n + \frac{2}{6} q_n + \frac{1}{6} r_n + \frac{2}{6} s_n, \\ q_{n+1} &= \frac{2}{6} p_n + \frac{1}{6} q_n + \frac{2}{6} r_n + \frac{1}{6} s_n, \\ r_{n+1} &= \frac{2}{6} p_n + \frac{1}{6} q_n + \frac{1}{6} r_n + \frac{2}{6} s_n, \\ s_{n+1} &= \frac{1}{6} p_n + \frac{2}{6} q_n + \frac{2}{6} r_n + \frac{1}{6} s_n. \end{align}
第1・2式の差をとって$a_{n+1} = - \dfrac{1}{6} a_n - \dfrac{1}{6} (r_n - s_n)$.第3・4式の差をとって$r_{n+1} - s_{n+1} = \dfrac{1}{6} a_n - \dfrac{1}{6} (r_n - s_n)$.よって前者から$r_n - s_n = -6 a_{n+1} - a_n$を得て,これを$r_{n+1} - s_{n+1} = \dfrac{1}{6} a_n - \dfrac{1}{6} (r_n - s_n)$に用いると
$$ -6 a_{n+2} - a_{n+1} = \frac{1}{6} a_n - \frac{1}{6} (-6 a_{n+1} - a_n). $$
よって
$$ a_{n+2} = - \frac{1}{3} a_{n+1} - \frac{1}{18} a_n. $$
(2) 2次方程式$\lambda^2 = - \dfrac{1}{3} \lambda - \dfrac{1}{18}$の解を$\alpha = \dfrac{-1+i}{6}$$\beta = \dfrac{-1-i}{6}$とおく.すると(1)で求めた$a_n$の漸化式は
\begin{align} a_{n+2} - \alpha a_{n+1} &= \beta (a_{n+1} - \alpha a_n), \\ a_{n+2} - \beta a_{n+1} &= \alpha (a_{n+1} - \beta a_n) \end{align}
と変形できる.$p_1 = \dfrac{1}{6}$$q_1 = \dfrac{2}{6}$$r_1 = \dfrac{2}{6}$$s_1 = \dfrac{1}{6}$であり,ここから$p_2 = q_2 = \dfrac{1}{4}$を得て$a_1 = - \dfrac{1}{6}$$a_2 = 0$がわかる.したがって
\begin{align} a_{n+1} - \alpha a_{n} &= \beta^{n-1} (a_{2} - \alpha a_1) = \frac{-1+i}{36} \beta^{n-1}, \\ a_{n+1} - \beta a_{n} &= \alpha^{n-1} (a_{2} - \beta a_1) = \frac{-1-i}{36} \alpha^{n-1}. \end{align}
辺々差をとって計算すると$a_n = p_n - q_n = \dfrac{\alpha^n + \beta^n}{2}$を得る.
 次に$p_n + q_n$を求める.全確率の和は1ゆえ$p_n + q_n + r_n + s_n = 1$.(1)の議論より
$$ p_{n+1} + q_{n+1} = \frac{p_n + q_n + r_n + s_n}{2} = \frac{1}{2}. $$
$p_1 = \dfrac{1}{6}$$q_1 = \dfrac{2}{6}$と合わせて,全ての自然数$n$に対して$p_n + q_n = \dfrac{1}{2}$が成立.
 以上,$p_n = \dfrac{(p_n + q_n) + (p_n - q_n)}{2}$ゆえ
$$ p_n = \frac{1}{4} \left\{1 + \left(\frac{-1+i}{6}\right)^n + \left(\frac{-1-i}{6}\right)^n\right\}. $$

投稿日:227
更新日:58

この記事を高評価した人

高評価したユーザはいません

この記事に送られたバッジ

バッジはありません。

投稿者

のんびりやります

コメント

他の人のコメント

コメントはありません。
読み込み中...
読み込み中