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現代数学解説
文献あり

貼り合わせによるスキームの構成

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$$\newcommand{dim}[0]{\operatorname{dim}} \newcommand{GL}[0]{\operatorname{GL}} \newcommand{Ind}[0]{\operatorname{Ind}} $$

本稿は ワセマ 裏企画 Advent Calendar 2025 の12月12日の記事です.
最近Uenoを読んで勉強する中で,スキームを張り合わせるというアイデアを使うことがあったので具体的に何をやっているのか書いたものを個人的なメモを兼ねて投稿します.考え方そのものはアフィン空間を貼り合わせて射影空間を構成するのと全く同じです.あまり代数幾何に慣れていないので誤ったことを書いていたら教えてください.

スキームの貼り合わせ

スキームの族が与えられたときにそれらを貼り合わせて新しいスキームを構成することを考える.
具体的には以下の状況を考える:

  • $\{X_{i} = (X_{i}, \mathcal{O}_{X_{i}}) \}_{i \in I}$をスキームの族とする.
  • $j \in I$に対して,開集合$X_{ij} \subset X_{i}$が与えられているとする.ただし,$X_{ii} = X_{i}$である.
  • $i,j \in I$に対して,スキームの同型射$\phi_{ij}:X_{ij} \rightarrow X_{ji}$が与えられているとする.ただし,$\phi_{ii}:X_{ii} \rightarrow X_{ii}$は恒等射$id_{X_{i}}$である.
  • $i,j \in I$に対して,$\phi_{ij}^{-1} = \phi_{ji}$である.
  • $i,j,k \in I$に対して,$\phi_{ij}(X_{ij} \cap X_{ik}) = X_{ji} \cap X_{jk}$であり,$X_{ij} \cap X_{ik}$において$\phi_{ik} = \phi_{jk} \circ \phi_{ij}$である.
問題

この仮定の下で$\{(X_{i}, \mathcal{O}_{X_{i}})\}_{i \in I}$を開被覆とするようなスキーム$(X,\mathcal{O}_{X})$を構成せよ.

 底空間$X$を構成する.形式的な非交和集合$\bigsqcup_{i \in I} X_{i}$を考え,その上の関係$\sim$を次で定める:

$x,y \in \bigsqcup_{i \in I} X_{i}$に対して$x \sim y$であるとは,ある$i,j \in I$に対して$y = \phi_{ij}(x)$となっていることである.

これが同値関係になることは最初の5つの仮定の内の下3つがそれぞれ反射律,対称律,推移律を導くことからわかる.集合$X$をこの同値関係による商集合$X \coloneqq \bigsqcup_{i \in I} X_{i}/\sim$で定める.この時点で,各$i \in I$に対して$X_{i} \subset X$$X = \bigcup_{i \in I}X_{i}$,各$i,j \in I$に対して$X_{ij} = X_{i} \cap X_{j}$とみなしていることを注意する.$X$の位相は各$X_i$に誘導される相対位相が元の$X_i$の位相と一致するように定める.すなわち,部分集合$U \subset X$$X$の開集合であるとは,各$i \in I$に対して$U \cap X_i \subset X_{i}$$X_{i}$の開集合となっていることである.これは明らかに開集合系の公理を満たす.よって底空間$X$が構成された.
 構造層$\mathcal{O}_{X}$を構成する.$x \in X$に対して可換環$\mathcal{O}_{X,x}$$x \in X_{i}$ならば$\mathcal{O}_{X,x} \coloneqq \mathcal{O}_{X_{i},x}$とすることで定める.ここで,$\mathcal{O}_{X_{i},x}$$\mathcal{O}_{X_{i}}$$x$における茎である.この定義は$x \in X_{i}$なる$i \in I$の取り方によらない.実際,$x \in X_{i} \cap X_{j} = X_{ij}$ならばスキームの同型$\phi_{ij}:X_{ij} \rightarrow X_{ji}$によって茎の同型$\mathcal{O}_{X_{j},\phi_{ij}(x)} \cong \mathcal{O}_{X_{i},x}$が誘導される.開集合$U \subset X$に対して可換環$\mathcal{O}_{X}(U)$を次で定める:
\begin{equation} \mathcal{O}_{X}(U) \coloneqq \left\{(s_{x})_{x \in X} \in \prod_{x \in X}\mathcal{O}_{X,x} \, \middle\vert \, \begin{aligned} &\text{ある $U$ の開被覆 $\set{U_{\alpha}}_{\alpha \in A}$ ($U_{\alpha}$ はある$X_{i}$の開集合)が存在し,さらに各$\alpha \in A$に対して} \\ &\text{ある切断$s_{\alpha} \in \Gamma(U_{\alpha},X_{i})$が存在して,$x \in U_{\alpha}$ ならば$s_{x} = s_{\alpha,x}$がなりたつ.} \end{aligned} \right\} \end{equation}
ここで,$s_{\alpha,x}$は切断$s_{\alpha}$が点$x \in X_{i}$で定める芽である.これがよく定義されていることはスキームの同型$\phi_{ij}:X_{ij} \rightarrow X_{ji}$を用いればわかる.
$V \subset U \subset X$なる$X$の開集合$U,V$に対して制限写像$\rho^{U}_{V}:\mathcal{O}_{X}(U) \rightarrow \mathcal{O}_{X}(V)$$(s_x)_{x \in U} \mapsto (s_{x})_{x \in V}$で定める.以上により$\mathcal{O}_{X}$$X$上の可換環の層になる.証明はアフィンスキームの場合と同様なので省略する.
したがって,所望のスキーム$(X,\mathcal{O}_{X})$を得た.

あとがき

こんな具合で,拙速ながら記事を書かせていただきました.見切り発車で,代数幾何の知識も浅く,またMathlogにも不慣れなので色々な意味で見苦しい記事になってしまいました.本当は実際に射影空間を具体例として扱うパートも入れたかったのですが,これ以上ダラダラ延ばしてもアレなのでここで切り上げて投稿します.何か数学的な誤りや質問があればコメントをお願いします.

参考文献

[1]
上野 健爾, 代数幾何
投稿日:6日前
更新日:5日前
OptHub AI Competition

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投稿者

浅井
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