与えられた領域内の格子点の個数を、面積を使って大まかに評価したいときってありますよね。特に高校数学では積分の応用例とかでよく登場しますね。個人的には整数論でMinkowski空間とかを考える際にこういうことをしたくなります。格子多角形に限定するとピックの定理が有名ですが、一般の領域でこの状況を包括的に扱える道具がありそうで見つからなかったので、作ってみることにしました。これを使うと、多くの図形で面積
という形で評価できます。(ランダウの記号)
区分的になめらかな曲線
で定める。これは
馴染みない概念かもしれません。実際ふつうの弧長を使っても良かったのですが、マンハッタン長
と複雑ですが、マンハッタン長は
となります。これは次の命題からわかります。証明は簡単なので省略します。
曲線
極値とか言ってますが、命題1の条件
今回証明したいのが次の定理です。
が成り立つ。
証明は後回しにして系を紹介しましょう。少し弱い評価になってしまいますが、通常の意味での弧長で評価することもできます。
であるから従う。
次はよくある設定ですね。
とする。
が成り立つ。
また、凸領域については次の評価が得られます。これについては単純に積分とかすれば証明できそうな気もします...
とする。(
まずは証明の流れを説明します。
各格子点に対して、それを中心とする一辺1の正方形のタイルを考えると、これらで平面全体を埋め尽くすことができます。そして、これらのタイルは次の3つに分けることができますね。
(1),(2)の正方形の個数を
(2)のタイルの個数
各格子点
で定める。
「
定理2の条件の下で、
補題3より次が成り立つ。
したがって、
であるから、次の不等式が成り立つ。
よって、
である。
で定める。
曲線
が成り立つ。
であるから、
である。同様にして、
命題4より、
なので、
である。
とおける。さて、
である。また、不等式
に注意すれば、
であるから、
である。したがって、
である。これより、
という評価が得られる。
もう少し強い評価を得るために、共通部分
とおけば、
となる。
と修正できる。したがって、
が成り立つ。
最後に予想を紹介します。
が成り立つ。
厳しく評価すると
になりそうですね。閉曲線
定理.
が成り立つ.
(つまり
(つまり
また明らかに
それぞれ対偶をとることで示される.
明らかに
(すなわち変形後の
・各
・入る点と出る点が同じ辺であれば, それを直線で繋ぐような経路に変形する.
・入る点と出る点が隣接する辺であれば, それを辺に沿って最短経路でつなぐような経路に変形する.
・入る点と出る点が向かい合う辺であれば、隣接するタイルについて先に変形し、それに合わせて変形する.
(説明を端折っていますが, 入る点と出る点が隣接する辺であるような経路がない場合などでも適宜似たような変形ができます.)
変形例
補題2において、さらに
・辺の途中で戻るような経路
・頂点で180度向きを変えて戻るような経路
・頂点で同じ方向に90度向きを変えて進むのが2回続くような経路
経路
辺の途中で戻るような経路を含む場合は、単に往復する部分を削除してやれば(補題2と同様に
残りの2種類の経路を含む場合は、下のように変形してやるとどちらの場合でも
画像の名前
補題3同様に変形後の
となって変形前でも成り立つことがわかる.
補題4のもとで、補題3は正しい.
画像の名前
各領域の面積は各線分の長さの2倍であるから, 明らかにそのような領域の面積の和は
(最後の等号は
長文失礼しました.