2
現代数学解説
文献あり

床関数[x]の弱微分を求めるだけ

106
0

はじめに

実数xに対して, xを超えない最大の整数を返す関数のことをガウス記号や床関数と言い, [x]xと表される. この記事では床関数とxをメインの表記として使う.

微分

床関数の微分

微分の定義式から確認する.
ddxx=limh0x+hxh=limh0(xx+h)+xxh=limh0xx+hh

xZxx0のとき

xxxの小数部分で十分に小さいhを取れば, 0xx+h<1となるので
ddxx=limh0xx+hh=limh00h=0

xZxx=0のとき

小数部分が0つまりxが整数のときでは, 左極限h0h=1, 右極限h+0h=0なので
ddxx=limh0xx+hh=limh0hh
limh0hh=,limh+0hh=0となり, 微分係数は定まらない.

このことから通常の微分の意味では
ddxx={0(xZ)Undefined(xZ)
となる.

床関数の弱微分

弱微分の導入

ΩRNを開集合とするとき, Ω上の連続関数φの台suppφ:={xΩφ(x)0}(上線は閉包)がコンパクト部分集合となっているような, Ω上の無限回微分可能な関数全体の集合をC0(Ω)と表し, これをΩ上のテスト空間と言う.

C0(Ω)の元の関数はΩの境界の近傍で恒等的に0である.

(Schwartz の)超関数

ΩRN:開集合, C0(Ω)上の線型汎関数(線型性を持ち, 定義域が関数からなり, 値域が数からなる関数)Tで次を満たすものをΩ上の超関数と言う:
C0(Ω)の関数列{φn}nが次の(1), (2)を満たすとき, T(φn)0が必ず成り立つ.
(1) あるコンパクト集合K(Ω)が存在して任意のnに対して, suppφnK
(2) φnのすべての階の偏導関数がnのとき, K上で0に一様収束

汎関数とは, あるx0を固定して定義域に関数fを取り, fを動かした関数gx0:ff(x0)のことである.

弱導関数

ΩRN:開集合, Ω上の可測関数かつΩに含まれる任意のコンパクト集合上で可積分な関数全体の集合:Lloc1(Ω)とする.
uLloc1(Ω)に対して, 任意のφC0(Ω)
Ωu(x)φxi(x)dx=Ωvi(x)φ(x)dx
が成り立つような, 局所可積分関数viが存在するとき, これをuxi方向の弱導関数, または超関数の意味での導関数と言う.


xの弱微分の導出

Diracの超関数(Diracのデルタ関数)

たDiracの超関数をδと表す. δは任意のテスト関数φC0(Ω)に対して, 次の(1), (2)を満たすことで定義される.
(1) x0suppφδ(φ)=0
(2) Ωδ(xx0)φ(x)dx=φ(x0)

また, 性質として
ϵ>0;B(x0,ϵ)δ(xx0)φ(x)dx=φ(x0)
が成り立つ.

H1R上局所可積分関数であり, φC0(R)に対して,
Rxφ(x)dx=nZnn+1nφ(x)dx=nZn(φ(n+1)φ(n))=nZφ(n)
Diracの超関数より

=nZRδ(xn)φ(x)dx
φはコンパクト台を持つので
=RnZδ(xn)φ(x)dx
となるので, 床関数の弱微分は
ddxx=nZδ(xn)
となる.

余談だが, Diracの超関数を周期Tで並べた関数として, くし型関数
combT(x):=nZδ(xnT)
というものがあり, 今回の床関数の弱微分はddxx=comb1(x)とも書ける.

床関数xの弱微分

ddxx=nZδ(xn)

Heavisideの階段関数H1(x):={1(0x)0(x<0)を用いて,
x=nZH1(xn)
と表せる.

nZに対して, H1(xn)H1(xn1)={1(x[n,n+1))0(otherwise)が成り立つので,
x=nZn(H1(xn)H1(xn1))=nZH1(xn)
と得られる.

また, H1の弱微分がddxH1(x)=δ(x)であることからもこの式は証明できる.

参考文献

[1]
宮島 静雄, ソボレフ空間の基礎と応用, 共立出版, 2006
投稿日:214
OptHub AI Competition

この記事を高評価した人

高評価したユーザはいません

この記事に送られたバッジ

バッジはありません。
バッチを贈って投稿者を応援しよう

バッチを贈ると投稿者に現金やAmazonのギフトカードが還元されます。

投稿者

▽X/Twitter▽ | TyLite(トワイライト)です。認知欲求のためにSNSとMathlogしてる。フォロバはほぼ返すと思う。

コメント

他の人のコメント

コメントはありません。
読み込み中...
読み込み中
  1. はじめに
  2. 微分
  3. 床関数の微分
  4. 床関数の弱微分
  5. 参考文献