はじめに
実数に対して, を超えない最大の整数を返す関数のことをガウス記号や床関数と言い, やと表される. この記事では床関数とをメインの表記として使う.
微分
床関数の微分
微分の定義式から確認する.
のとき
はの小数部分で十分に小さいを取れば, となるので
のとき
小数部分がつまりが整数のときでは, 左極限で, 右極限でなので
となり, 微分係数は定まらない.
このことから通常の微分の意味では
となる.
床関数の弱微分
弱微分の導入
を開集合とするとき, 上の連続関数の台(上線は閉包)がコンパクト部分集合となっているような, 上の無限回微分可能な関数全体の集合をと表し, これを上のテスト空間と言う.
の元の関数はの境界の近傍で恒等的にである.
(Schwartz の)超関数
:開集合, 上の線型汎関数(線型性を持ち, 定義域が関数からなり, 値域が数からなる関数)で次を満たすものを上の超関数と言う:
の関数列が次の(1), (2)を満たすとき, が必ず成り立つ.
(1) あるコンパクト集合が存在して任意のに対して,
(2) のすべての階の偏導関数がのとき, 上でに一様収束
汎関数とは, あるを固定して定義域に関数を取り, を動かした関数のことである.
弱導関数
:開集合, 上の可測関数かつに含まれる任意のコンパクト集合上で可積分な関数全体の集合:とする.
に対して, 任意ので
が成り立つような, 局所可積分関数が存在するとき, これをの方向の弱導関数, または超関数の意味での導関数と言う.
の弱微分の導出
Diracの超関数(Diracのデルタ関数)
たDiracの超関数をと表す. は任意のテスト関数に対して, 次の(1), (2)を満たすことで定義される.
(1)
(2)
また, 性質として
が成り立つ.
は上局所可積分関数であり, に対して,
Diracの超関数より
はコンパクト台を持つので
となるので, 床関数の弱微分は
となる.
余談だが, Diracの超関数を周期で並べた関数として, くし型関数
というものがあり, 今回の床関数の弱微分はとも書ける.
に対して, が成り立つので,
と得られる.
また, の弱微分がであることからもこの式は証明できる.