まず,言葉を準備します.
$G$を群,$A$をAbel群とする.写像$G\times A\rightarrow A$が定義され,この写像が次の条件を満たすとき,$A$を$G$-加群という.
(1) $g(a+b)=g(a)+g(b)$
(2) $(gh)(a)=g(h(a))$
(3) $1(a)=a$($1$は$G$の単位元)
$L/K$を有限次ガロア拡大とします.このとき,$A$として$L$や$L^\times$をとると,これらは$\text{Gal}(L/K)$-加群となります.
$G$-加群$A$に対して$p$次コホモロジー$H^p(G,A)$を定義します.
まず,$C^p(G,A)$を$G^p$から$A$への写像全体とします($p\ge 1$).$p=0$のときは$C^0(G,A)=A$と定義します.$A$がAbel群であることからこれらは自然にAbel群の構造を持ちます.
境界作用素$\delta$を次のように定義します.$f\in C^p(G,A)$について$\delta f\in C^{p+1}$を
\begin{align*}
(\delta f)(g_1,\cdots,g_{p+1})=&g_1 f(g_2,\cdots,g_{p+1})\\
&+\sum_{i=2}^{p+1}(-1)^{i-1}f(g_1,\cdots g_{i-2},g_{i-1}g_i,g_{i+1},\cdots,g_{p+1})\\
&+(-1)^{p+1}f(g_1,\cdots,g_p)
\end{align*}
$\delta$は明らかに準同型写像です.
$\delta\circ \delta=0$
単純計算で,
\begin{align*}
(\delta (\delta f))(g_1,\cdots,g_{p+2})=& g_1(\delta f)(g_2,\cdots,g_{p+2})\\
&-(\delta f)(g_1g_2,g_3,\cdots,g_{p+2})\\
&+(\delta f)(g_1,g_2g_3,g_4,\cdots,g_{p+2})\\
&-\cdots\\
&+(-1)^{p+1}(\delta f)(g_1,g_2,\cdots,g_p,g_{p+1}g_{p+2})\\
&+(-1)^{p+2}(\delta f)(g_1,g_2,\cdots,g_{p+1})\\
=&\cdots\\
=&0
\end{align*}
とわかる.
補題1よりコホモロジー群を定義することができます.ちゃんと書けば,
コサイクルを$Z^p(G,A)=\text{Ker}\{\delta:C^p(G,A)\rightarrow C^{p+1}(G,A)\}$,
コバウンダリーを$B^p(G,A)=\text{Im}\{\delta:C^{p-1}(G,A)\rightarrow C^p(G,A)\}$,
で定義して,$p$次コホモロジー群を
$$H^p(G,A)=Z^p(G,A)/B^p(G,A)$$
で定義します.
これについて以下が成り立ちます.
$L/K$を有限次ガロア拡大としたとき,
$H^1(\text{Gal}(L/K),L^\times)=\{1\}$
$H^1(\text{Gal}(L/K),L)=\{0\}$
が成り立つ.
この証明は必要な補題も込みで次回行います.