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現代数学解説
文献あり

ヒルベルトの定理90(前半)

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まず,言葉を準備します.

$G$-加群

$G$を群,$A$をAbel群とする.写像$G\times A\rightarrow A$が定義され,この写像が次の条件を満たすとき,$A$$G$-加群という.
(1) $g(a+b)=g(a)+g(b)$
(2) $(gh)(a)=g(h(a))$
(3) $1(a)=a$$1$$G$の単位元)

$L/K$を有限次ガロア拡大とします.このとき,$A$として$L$$L^\times$をとると,これらは$\text{Gal}(L/K)$-加群となります.

$G$-加群$A$に対して$p$次コホモロジー$H^p(G,A)$を定義します.
 まず,$C^p(G,A)$$G^p$から$A$への写像全体とします($p\ge 1$).$p=0$のときは$C^0(G,A)=A$と定義します.$A$がAbel群であることからこれらは自然にAbel群の構造を持ちます.
 境界作用素$\delta$を次のように定義します.$f\in C^p(G,A)$について$\delta f\in C^{p+1}$
\begin{align*} (\delta f)(g_1,\cdots,g_{p+1})=&g_1 f(g_2,\cdots,g_{p+1})\\ &+\sum_{i=2}^{p+1}(-1)^{i-1}f(g_1,\cdots g_{i-2},g_{i-1}g_i,g_{i+1},\cdots,g_{p+1})\\ &+(-1)^{p+1}f(g_1,\cdots,g_p) \end{align*}
$\delta$は明らかに準同型写像です.

$\delta\circ \delta=0$

単純計算で,
\begin{align*} (\delta (\delta f))(g_1,\cdots,g_{p+2})=& g_1(\delta f)(g_2,\cdots,g_{p+2})\\ &-(\delta f)(g_1g_2,g_3,\cdots,g_{p+2})\\ &+(\delta f)(g_1,g_2g_3,g_4,\cdots,g_{p+2})\\ &-\cdots\\ &+(-1)^{p+1}(\delta f)(g_1,g_2,\cdots,g_p,g_{p+1}g_{p+2})\\ &+(-1)^{p+2}(\delta f)(g_1,g_2,\cdots,g_{p+1})\\ =&\cdots\\ =&0 \end{align*}
とわかる.

補題1よりコホモロジー群を定義することができます.ちゃんと書けば,
コサイクルを$Z^p(G,A)=\text{Ker}\{\delta:C^p(G,A)\rightarrow C^{p+1}(G,A)\}$
コバウンダリーを$B^p(G,A)=\text{Im}\{\delta:C^{p-1}(G,A)\rightarrow C^p(G,A)\}$
で定義して,$p$次コホモロジー群を
$$H^p(G,A)=Z^p(G,A)/B^p(G,A)$$
で定義します.
 これについて以下が成り立ちます.

ヒルベルトの定理90

$L/K$を有限次ガロア拡大としたとき,
$H^1(\text{Gal}(L/K),L^\times)=\{1\}$
$H^1(\text{Gal}(L/K),L)=\{0\}$
が成り立つ.

この証明は必要な補題も込みで次回行います.

参考文献

[1]
藤﨑源二郎, 体とGalois理論
[2]
雪江明彦, 環と体とガロア理論
投稿日:27日前
OptHub AI Competition

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投稿者

はじめまして!楽しい記事を書ければと思いますので、よろしくお願いします。

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