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薄い圏の考察(2).薄い圏の部分圏

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薄い圏 $C(A, \{f_{ij}\}_{i \in A, j \in A})$ に対して、 $A$ の部分類 $B$ による圏 $C(B, \{f_{ij}\}_{i \in B, j \in B})$ は自然に定まります。
ここでさらに、 $\{f_{ij}\}_{i \in B, j \in B}$ の部分類 $L$ を取ります。ただし、$L$ は以下の条件をともに満たすものとします:
1.$L$ は空類、または $B$ のすべての元 $i$ に対して $f_{ii} \in L$ である。
2.$f_{ij} \in L$ かつ $f_{jk} \in L$ ならば、 $f_{jk} \circ f_{ij} = f_{ik} \in L$ となる。
このとき、$L$ は演算 $\circ$ をもつ射の類とみなせるため、圏を導入できます。この圏 $C_A$ の部分圏を $C_A(B, L)$$C(B, L)$ などで表します。$C_A(B, L)$ もまた薄い圏となります。

薄い圏 $C_A$ に対して、その部分圏をすべて集めたものを $\mathfrak{C}_A$ と書きます。$C_1, C_2 \in \mathfrak{C}_A$ に対して、$C_1$$C_2$ の部分圏であることを $C_1 \subset C_2$ で表すと、この包含関係 $\subset$ は骨格的な薄い圏 $C(\mathfrak{C}_A, \subset)$ を定義します。この圏における始対象は$C(空類, 空類)$ (空類による空圏)、終対象は$C(A, \{f_{ij}\}_{i \in A, j \in A})$ (元の圏 $C_A$)となります。

$A$ が集合のとき、$C(\mathfrak{C}_A, \subset)$ は骨格的な薄い小圏(半順序集合)となります。
特に $A$ が基数 $n$ の集合のとき、対象の数 $\#\mathfrak{C}_A$ は次式で表されます:
$$\#\mathfrak{C}_A = \sum_{k=0}^{n} \binom{n}{k} P(k).$$
ここで $P(k)$ は、$k$ 個の元を持つ集合上の前順序の総数です。
注:$P(k)$ については
$P(k) = \sum_{i=1}^{k} S(k, i) \cdot PO(i)$ という公式が知られています。ここで
$S(k, i)$は第2種スターリング数であり、$PO(i)$$i$ 個の要素からなる集合上で定義できる半順序の個数です。
$P(k)$ はオンライン整数列大辞典(OEIS)で A000798として登録されています。

また$A$ が基数 $n$ の集合のとき、$\mathfrak{C}_A$ には、集合 $A$ のすべての非空な部分集合に対して、それぞれ唯一つの「強連結な薄い圏」が存在します。したがって、その総数は $2^n - 1$ と一致します。

具体例:$A$ が基数 2 の集合の場合。
$A = \{1, 2\}$ とし、$\text{hom}(C_A) = \{f_{11}, f_{12}, f_{21}, f_{22}\}$ とします。このとき、部分圏は以下の 7 つとなります。

①Bが空集合のとき、C(B,L)は空圏となります。
②B={1},L={f${_1}$${_1}$}のとき。  演算${ \circ }$によって、定まる関係式は自明な  f${_1}$${_1}$${ \circ }$f${_1}$${_1}$ =f${_1}$${_1}$  です。 
③B={2},L={f${_2}$${_2}$}のとき。  同様に、定まる関係式は自明な  f${_2}$${_2}$${ \circ }$f${_2}$${_2}$ =f${_2}$${_2}$  です。
④B={1,2},L={f${_1}$${_1}$,f${_2}$${_2}$}のとき。   関係式は②と③にあらわれたものです。
⑤B={1,2},L={f${_1}$${_1}$,f${_2}$${_2}$,f${_1}$${_2}$}のとき。  関係式は④にあらわれたものとf${_1}$${_2}$${ \circ }$f${_1}$${_1}$ =f${_1}$${_2}$、f${_2}$${_2}$${ \circ }$f${_1}$${_2}$ =f${_2}$${_2}$です。
⑥B={1,2},L={f${_1}$${_1}$,f${_2}$${_2}$,f${_2}$${_1}$}のとき。  関係式は④とf${_2}$${_1}$${ \circ }$f${_2}$${_2}$ =f${_2}$${_1}$、f${_1}$${_1}$${ \circ }$f${_2}$${_1}$ =f${_2}$${_1}$です。
⑦B={1,2},L={f${_1}$${_1}$,f${_2}$${_2}$,f${_1}$${_2}$,f${_2}$${_1}$}のとき。 既述以外の関係式として f${_2}$${_1}$${ \circ }$f${_1}$${_2}$ =f${_1}$${_1}$, f${_1}$${_2}$${ \circ }$f${_2}$${_1}$ =f${_2}$${_2}$  があります。
①から⑦の関係 ①から⑦の関係
 たしかにC(${\mathfrak{C}}$${_A}$,${  \subset }$)の要素の数は${\sum_{k=0}^{2} \binom{2}{k} P(k)}$ = 1⋅1+2⋅1+1⋅4 = 7個、強連結な薄い圏はC({1},{f${_1}$${_1}$​}),C({2},{f${_2}$${_2}$​}), C({1,2},{f${_1}$${_1}$​, f${_1}$${_2}$, f${_2}$${_1}$​, f${_2}$${_2}$}) の ${2^2}$-1 = 3 個あります。

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更新日:11日前
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投稿者

 数学は修士修了のアマチュアです。  圏論において、射を高々一つしか持たない薄い圏(thin category)を、対象の二項演算(広義)を射として持つ圏として捉え直し(1)、そのアイデアに基づいて薄い圏やその部分圏をいくつか例示(1)(2)したうえで、局所的小圏から薄い圏への関手(薄化関手)の性質を調べてみました(3)。また括射関手というものを定義してその性質について述べました(4)。(5)(6)では実際に局所的小圏から薄い圏を構成する方法をいくつか述べました。(7)では関手を薄くするということを考えました。(8)では薄化の応用方法をAiに考えて(予想して)もらいました。  圏論は完全独学の素人なので、論理に根本的な間違いがあるかもしれません。その際はご教示いただけますとありがたいです。The English version is on facebook.

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