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2026年 防衛医科大学校 医学教育部医学科 第1問

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2026年 防衛医科大学校 医学教育部医学科 第1問

$a,b,c$ を正の整数とする。
$$ a < b,\qquad \frac{1}{a}+\frac{1}{b}=\frac{1}{3} $$
を満たす組 $(a,b)$ はただ1組存在し,そのときの積 $ab$ は $\boxed{\text{1}}$ である。
また,
$$ a < b < c,\qquad \frac{1}{a}+\frac{1}{b}+\frac{1}{c}=\frac{1}{3} $$
を満たす組 $(a,b,c)$ を考える。$a$ が最大値をとるとき,そのような組 $(a,b,c)$ は全部で $\boxed{\text{2}}$ 組ある。


1. 問題の構造

1.1 記法

  • 後半の条件を満たす正の整数の組 $(a,b,c)$ 全体を $S$ とし,$S_a=\lbrace (b,c)\mid (a,b,c)\in S\rbrace$,$N_a$ を $S_a$ の要素の個数とする。$a_{\max}=\max\lbrace a\mid S_a\neq\varnothing\rbrace$ とおくと,$\boxed{\text{2}}=N_{a_{\max}}$ である。
  • 後半で $a$ を固定したとき,残差を $R_a=\dfrac13-\dfrac1a=\dfrac{a-3}{3a}$ とし,これを既約分数 $R_a=\dfrac pq$($p,q$ は互いに素な正の整数)で表す。$p,q$ は $a$ に依存する。
  • $\gcd$,$\operatorname{lcm}$ は最大公約数・最小公倍数,$\tau(N)$ は正の整数 $N$ の正の約数の個数を表す。素数 $\ell$ と $0$ でない有理数 $x$ に対し,$v_\ell(x)$ は $x$ の素因数分解における $\ell$ の指数($\ell$ 進付値)である。素数に $\ell$ を用いるのは,$p$ を残差の分子に充てるためである。
  • 「解」は断りのない限り正の整数解を指す。実数の範囲で考えるときは「実数解」と明記する。

1.2 順序による有限化

逆数は分母について単調減少であるから,順序条件は最小の分母の範囲を上下から押さえる。

順序による有限化

$r > 0$ とし,正の実数 $x_1 < x_2 < \cdots < x_k$($k\geqq2$)が $\displaystyle\sum_{i=1}^{k}\frac1{x_i}=r$ を満たすとする。このとき
$$ \frac1r < x_1 < \frac kr. $$
さらに $k=2$ の場合,正の実数 $x_1$ に対し,「$x_1 < x_2$ かつ $\dfrac1{x_1}+\dfrac1{x_2}=r$ を満たす正の実数 $x_2$ が存在する」ことは $\dfrac1r < x_1 < \dfrac2r$ と同値であり,このとき $x_2=\dfrac{x_1}{rx_1-1}$ はただ一つに定まる。

$i\geqq2$ に対して $0 < \dfrac1{x_i} < \dfrac1{x_1}$ であるから,$\dfrac1{x_1} < r < \dfrac k{x_1}$ である。$k=2$ のとき,$x_2$ は $\dfrac1{x_2}=r-\dfrac1{x_1}$ により一意に定まる。$x_2 > 0\iff x_1 > \dfrac1r$ であり,そのもとで $x_2 > x_1\iff r-\dfrac1{x_1} < \dfrac1{x_1}\iff x_1 < \dfrac2r$ である。

補題1 を本問に適用すると次が従う。

  • 前半:$k=2$,$r=\frac13$ より $3 < a < 6$,すなわち $a\in\lbrace 4,5\rbrace$。
  • 後半:$k=3$,$r=\frac13$ より $3 < a < 9$,すなわち $a\in\lbrace 4,5,6,7,8\rbrace$。$a$ を固定すると $(b,c)$ は $k=2$,$r=R_a=\frac pq$ の場合にあたり,$b > a$ を合わせて
    $$ (a,b,c)\in S\iff 4\leqq a\leqq 8,\quad b\in\mathbb{Z},\quad \max\left\lbrace a,\ \frac qp\right\rbrace < b < \frac{2q}{p},\quad c=\frac{qb}{pb-q}\in\mathbb{Z}. $$
    右辺の条件のもとで $c > b$ は自動的に成り立つ。すなわち,後半は「各 $a$ について有限個の整数 $b$ を調べ,一意に定まる $c$ の整数性を判定する」問題に帰着する。
    $a$$R_a=\frac pq$$\frac qp$$\frac{2q}{p}$$b$ の候補候補数
    $4$$\frac1{12}$$12$$24$$13\leqq b\leqq 23$$11$
    $5$$\frac2{15}$$\frac{15}{2}$$15$$8\leqq b\leqq 14$$7$
    $6$$\frac16$$6$$12$$7\leqq b\leqq 11$$5$
    $7$$\frac4{21}$$\frac{21}{4}$$\frac{21}{2}$$8\leqq b\leqq 10$$3$
    $8$$\frac5{24}$$\frac{24}{5}$$\frac{48}{5}$$b=9$$1$
    $\dfrac qp=\dfrac{3a}{a-3}$ であり,$a > 3$ のもとで
    $$ \frac{3a}{a-3}\geqq a\iff a\leqq 6,\qquad R_a > \frac1a\iff a > 6 $$
    が成り立つ。$a\leqq6$ では $b > a$ は $b > \frac qp$ から従い,下限を決めるのは残差である。$a\geqq7$ では残差 $R_a$ が $\frac1a$ を超える一方で,$\frac1b,\frac1c$ はいずれも $\frac1a$ 未満でなければならない。このため $b$ は狭い区間 $a < b < \frac{2q}{p}$ に押し込まれ,候補数は $3,1$ に減る。境界 $a=6$ は等分 $\frac13=\frac16+\frac16$ に対応する。

1.3 求めるものの論理構造

本問が要求する内容は,論理的に異なる三つの主張に分かれる。

  • (T) 前半の解の存在と一意性。
  • (E) 排除:$S_8=S_7=\varnothing$。
  • (C) 構成と数え上げ:$S_6\neq\varnothing$ と,$S_6$ の完全な列挙($N_6$ の決定)。
    (E) と (C) をあわせて $a_{\max}=6$ が確定する。$a=6$ の解を作るだけでは最大性は示されず,逆に $a=7,8$ を排除しても $a=6$ の実現を示さなければ最大値は決まらない。最大値を問う以上,$a=4,5$ の解を調べる必要はない。(E) は非存在命題,(C) は存在と完全性の命題であり,有効な道具が異なる。この非対称性が解法の分岐を生む( 3.8 節 )。

1.4 実数解と整数解

$3 < a < 9$ を満たす任意の実数 $a$ に対し, 補題1 から定まる区間 $\max\lbrace a,\frac1{R_a}\rbrace < b < \frac2{R_a}$ は空でない。実際 $\frac1{R_a} < \frac2{R_a}$ であり,$a < \frac2{R_a}\iff \frac{a-3}{3} < 2\iff a < 9$ である。この区間の $b$ に対し $c=\frac{b}{R_ab-1}$ とおけば $(a,b,c)$ は実数解となる。したがって実数の範囲では $a$ を $9$ 未満に押さえる以上の情報は得られない。具体的には
$$ (a,b,c)=\left(8,\ 9,\ \frac{72}{7}\right),\qquad \left(7,\ 8,\ \frac{168}{11}\right) $$
は順序条件と等式を満たす実数解である。さらに
$$ \frac1a+\frac1b+\frac1c-\frac13=\frac{3(ab+bc+ca)-abc}{3abc} $$
により,整数の組でも等式をわずかに外れるだけのものがある。
$$ (7,10,11):\ 3(ab+bc+ca)-abc=1,\qquad (8,9,10):\ 3(ab+bc+ca)-abc=6. $$
前者は $\frac13$ との差が $\frac1{2310}$,後者は $\frac1{360}$ である。ゆえに (E) の証明は,大小評価に加えて整数性に由来する情報を必ず用いる。本問で使われる整数的情報は,大きさに関する制約( 補題1 )で探索範囲を有限にしたうえで,素数ごとの割り切れ方で候補を消すという二層構造をもつ。後者を一般的に定式化したものが次の補題である。

最大素数冪の共有

正の整数 $m_1,\ldots,m_r$($r\geqq2$)と $\varepsilon_1,\ldots,\varepsilon_r\in\lbrace 1,-1\rbrace$ が
$$ \sum_{i=1}^{r}\frac{\varepsilon_i}{m_i}=0 $$
を満たすとする。素数 $\ell$ に対し $e=\max_i v_\ell(m_i)$ とおくと,$v_\ell(m_i)=e$ となる添字 $i$ は少なくとも2個ある。

$L=\operatorname{lcm}(m_1,\ldots,m_r)$ とすると $v_\ell(L)=e$ であり,$\sum_i\varepsilon_i\dfrac{L}{m_i}=0$ が成り立つ。$v_\ell\left(\dfrac L{m_i}\right)=e-v_\ell(m_i)$ であるから,$\dfrac L{m_i}$ が $\ell$ で割り切れないことと $v_\ell(m_i)=e$ は同値である。$v_\ell(m_i)=e$ となる添字が $j$ ただ一つならば,$\varepsilon_j\dfrac L{m_j}=-\sum_{i\neq j}\varepsilon_i\dfrac L{m_i}$ の右辺は $\ell$ で割り切れ,左辺は割り切れない。これは矛盾である。

本問では $(m_1,m_2,m_3,m_4)=(a,b,c,3)$,$(\varepsilon_i)=(1,1,1,-1)$ に適用する。各素数について,$a,b,c,3$ の中で最大の冪は2個以上の分母に現れなければならない。特に各分母は他の三つの分母の最小公倍数を割り切る( 補題4 )。
注意として,残差 $R_a$ が単位分数であること($p=1$)は解の存在の必要条件ではない。実際 $R_5=\frac2{15}$ であるが
$$ \frac15+\frac18+\frac1{120}=\frac13 $$
であり,$N_5=4$ である( 2.3 節 )。したがって「$R_7,R_8$ が単位分数でないから解がない」という推論は誤りである。

1.5 入れ子構造:前半は後半の部品

$0$ でない実数 $x,y,K$ について,両辺に $Kxy$ を掛けて整理すれば
$$ \frac1x+\frac1y=\frac1K\iff (x-K)(y-K)=K^2. \tag{1} $$
前半は $K=3$ の場合で,$(a-3)(b-3)=9$ となる。後半で $\dfrac1B=\dfrac1b+\dfrac1c$,すなわち $B=\dfrac{bc}{b+c}$ とおくと,等式は $\dfrac1a+\dfrac1B=\dfrac13$ となり,(1) より
$$ (a-3)(B-3)=9,\qquad B=3+\frac9{a-3}=\frac qp. $$
後半の方程式は,前半と同一の方程式を有理数 $B$ について解く問題を内部に含む。$3a=3(a-3)+9$ より $\gcd(a-3,3a)=\gcd(a-3,9)$ であるから
$$ p=\frac{a-3}{\gcd(a-3,\,9)},\qquad B\in\mathbb{Z}\iff p=1\iff (a-3)\mid 9\iff a\in\lbrace 4,6,12\rbrace. $$
$4\leqq a\leqq8$ の範囲でこれを満たす最大の $a$ は $6$ であり,そのとき $B=6$,残る方程式は (1) により
$$ \frac1b+\frac1c=\frac16\iff (b-6)(c-6)=36 $$
となる。前半の方程式が $K=3$ から $K=6$ へ置き換わって再び現れる。ただし $B\in\mathbb{Z}$ は解の存在の必要条件ではない($a=5$ では $B=\frac{15}{2}$ であるが $N_5=4$)。入れ子構造は $a=6$ という候補の発見と $S_6$ の計数を与えるが,最大性 (E) の証明にはならない。

1.6 作問の設計と解法の導出

以上の構造から,作問の設計は次のように読める(数値設定からの分析であり,出題者の意図についての推定を含む)。

  • 右辺 $\frac13$ と厳密な順序:最小分母の範囲は $4\leqq a\leqq8$ であり,$a=8,7,6$ に対する $b$ の候補は $1,3,5$ 個にとどまる( 1.2 節 )。試験場で完全な場合分けが可能な規模に設定されている。
  • 前半の役割:$(a-3)(b-3)=9=3^2$ の解は $\tau(9)=3$ より一つだけであり,中心移動 (1) の技法を導入する。同じ技法は後半の $a=6$ で $(b-6)(c-6)=36=6^2$ として再登場し,組数は $\frac{\tau(36)-1}{2}=4$ となる。$-1$ は厳密な順序 $b < c$ により $b=c=12$ を除くことに対応する。
  • 最大値という問い方:全15解の列挙ではなく,論理的に異質な (E) と (C) の両方を要求する( 1.3 節 )。$a=7,8$ には実数解と近似的な整数解があり( 1.4 節 ),整数性を用いた非存在証明が試される。
  • 自然な候補と最大値の一致:等分 $\frac1n=\frac1{2n}+\frac1{2n}$ から,任意の $n$ で最小分母 $2n$ の3項表示が作れる。$n=3$ ではこれが最大値 $6$ に一致するが,$n=4$ では最大値は $10$ であり $2n=8$ を超える( 5.5 節 )。「等分から作った解が最大である」という直観は一般には正しくなく,(E) の論証を省略できない。
  • 残差の分子 $p$:$a=7,8$ では $p=4,5$ であり,整数性の障害は $p$ を法とする合同条件(別解1)や $p\mid(b+c)$(参考解1)として現れる。$a=6$ では $p=1$ となりこの障害が消える。算術的な閾値も $a=6$ にある。
    各構造がどの解法を導くかを整理する。
    着目する構造数学的翻訳導かれる解法
    逆数の大小と厳密な順序有限個の $b$,$c$ の一意性本解
    分母を払った等式の整除$a\mid bc$3.1 節
    分母の素因数構造最大素数冪の共有( 補題2 )3.2 節,別解2
    直角双曲線の中心移動$(pb-q)(pc-q)=q^2$,約数と合同別解1
    対称和 $s=b+c$短い区間と $p\mid s$参考解1
    公約数と既約比$uv\mid q$,$p\mid(u+v)$参考解2
    入れ子構造$(a-3)(B-3)=9$$a=6$ の発見(1.5 節)

2. 本解:順序条件による逐次決定

2.1 方針

補題1 により,前半は $a$ の候補を2個に,後半は $a$ と $b$ の候補を有限個に絞る。後半では $c$ を $a,b$ の関数として一意に表し,その整数性を判定する。$a$ は最大の候補 $8$ から降順に調べ,最初に解が存在する値で停止する。

2.2 解答

前半

$a < b$ より
$$ \frac1a < \frac13=\frac1a+\frac1b < \frac2a $$
であるから $3 < a < 6$,すなわち $a\in\lbrace 4,5\rbrace$ である。等式を $b$ について解くと
$$ b=\frac{3a}{a-3} $$
であり,$a=4$ のとき $b=12$,$a=5$ のとき $b=\frac{15}{2}\notin\mathbb{Z}$ である。よって条件を満たす組は $(a,b)=(4,12)$ ただ1組であり,
$$ ab=48. $$

後半

候補の有限化

$a < b < c$ より
$$ \frac1a < \frac13=\frac1a+\frac1b+\frac1c < \frac3a $$
であるから $3 < a < 9$,すなわち $4\leqq a\leqq 8$ である。$a$ を固定すると
$$ \frac1b+\frac1c=\frac{a-3}{3a}. $$
$0 < \frac1c < \frac1b$ より $\frac1b < \frac{a-3}{3a} < \frac2b$ であり,これと $b > a$ を合わせて
$$ \max\left\lbrace a,\ \frac{3a}{a-3}\right\rbrace < b < \frac{6a}{a-3}. \tag{2} $$
また等式を $c$ について解くと
$$ c=\frac{3ab}{(a-3)b-3a}. \tag{3} $$
(2) の左側の不等式 $b > \frac{3a}{a-3}$ より (3) の分母は正である。(2) の右側の不等式より $\frac1c=\frac{a-3}{3a}-\frac1b < \frac1b$,すなわち $c > b$ が成り立つ。したがって各 $a$ について,解 $(a,b,c)$ は「(2) を満たす整数 $b$ のうち,(3) の $c$ が整数となるもの」と一対一に対応する。

$a=8$ のとき
  1. は $8 < b < \frac{48}{5}$ となり $b=9$ に限る。(3) より
    $$ c=\frac{3\cdot8\cdot9}{5\cdot9-24}=\frac{216}{21}=\frac{72}{7}\notin\mathbb{Z}. $$
    よって $S_8=\varnothing$ である。
$a=7$ のとき
  1. は $7 < b < \frac{21}{2}$ となり $b\in\lbrace 8,9,10\rbrace$ である。(3) は $c=\dfrac{21b}{4b-21}$ となり,
    $b$$8$$9$$10$
    $c$$\frac{168}{11}$$\frac{63}{5}$$\frac{210}{19}$
    いずれも整数でない。よって $S_7=\varnothing$ である。
$a=6$ のとき
  1. は $6 < b < 12$ となり $b\in\lbrace 7,8,9,10,11\rbrace$ である。(3) は $c=\dfrac{6b}{b-6}$ となり,
    $b$$7$$8$$9$$10$$11$
    $c$$42$$24$$18$$15$$\frac{66}{5}$
    $c$ が整数となるのは $b=7,8,9,10$ の場合であり,
    $$ S_6=\lbrace (7,42),\ (8,24),\ (9,18),\ (10,15)\rbrace . $$
結論

$S_8=S_7=\varnothing$ かつ $S_6\neq\varnothing$ であるから $a_{\max}=6$ であり,そのときの組は
$$ (a,b,c)=(6,7,42),\ (6,8,24),\ (6,9,18),\ (6,10,15) $$
の4組である。

解答のまとめ

空欄答該当する組
$\boxed{\text{1}}$$48$$(a,b)=(4,12)$
$\boxed{\text{2}}$$4$$(6,7,42),\ (6,8,24),\ (6,9,18),\ (6,10,15)$

2.3 検証・検算

  • 代入:各解は共通分母で確かめられ,いずれも分子の和が分母の $\frac13$ になる。
    $$ \frac16+\frac17+\frac1{42}=\frac{7+6+1}{42},\quad \frac16+\frac18+\frac1{24}=\frac{4+3+1}{24},\quad \frac16+\frac19+\frac1{18}=\frac{3+2+1}{18},\quad \frac16+\frac1{10}+\frac1{15}=\frac{5+3+2}{30}. $$
  • 積一定の形:$(b-6)(c-6)$ はそれぞれ $1\cdot36,\ 2\cdot18,\ 3\cdot12,\ 4\cdot9$ であり,すべて $36$ に等しい( 1.5 節 )。
  • 候補数:$a=8,7,6$ に対する $b$ の候補数 $1,3,5$ は,区間 (2) の幅 $\frac85,\ \frac72,\ 6$ と整合する。
  • 全解との照合: 補題3 をすべての $a$ に適用すると( 3.3 節 ),後半の解は次の15組である。$a_{\max}=6$,$N_6=4$ と一致する。
    $a$$S_a$$N_a$
    $4$$(13,156),\ (14,84),\ (15,60),\ (16,48),\ (18,36),\ (20,30),\ (21,28)$$7$
    $5$$(8,120),\ (9,45),\ (10,30),\ (12,20)$$4$
    $6$$(7,42),\ (8,24),\ (9,18),\ (10,15)$$4$
    $7$なし$0$
    $8$なし$0$
  • 実数解との比較:$a=8$ の候補 $b=9$ に対する $c=\frac{72}{7}$ は等式を厳密に満たす実数解であり,障害は整数性のみである( 1.4 節 )。

3. 別解と参考解

3.1〜3.2 節は排除 (E)($a=7,8$)に対する別証,3.3〜3.4 節は答案として完結する別解,3.5〜3.6 節は高校数学の範囲で完結するが答案としては迂遠であり,構造の説明を主目的とする参考解である。

3.1 $a=7,8$ の排除の別証:直接整除

着想・方針

分母を払った等式 $abc=3(ab+bc+ca)$ を $a$ を法として読む。$a$ が $3$ と互いに素なら $a\mid bc$ となり,$c$ の上界と合わせて候補が消える。

解答

$abc=3(ab+bc+ca)$ より $3bc=a(bc-3b-3c)$,したがって $a\mid 3bc$ である。$a\in\lbrace 7,8\rbrace$ は $3$ と互いに素であるから $a\mid bc$ である。
また $a\geqq7$ のとき $b\geqq8$ であり,
$$ \frac1c=\frac13-\frac1a-\frac1b\geqq\frac13-\frac17-\frac18=\frac{11}{168} > \frac1{16} $$
より $c\leqq15$ である。すなわち
$$ a\geqq 7\implies 7\leqq a < b < c\leqq 15. \tag{4} $$
$a=8$ のとき,(2) より $b=9$ である。$\gcd(8,9)=1$ より $8\mid c$ となるが,$9 < c\leqq15$ に $8$ の倍数はない。
$a=7$ のとき,(2) より $b\in\lbrace 8,9,10\rbrace$ であり,いずれも $7$ と互いに素である。$7$ は素数であるから $7\mid c$,さらに $b < c\leqq 15$ より $c=14$ である。このとき
$$ \frac1b=\frac13-\frac17-\frac1{14}=\frac5{42} $$
となり $b=\frac{42}{5}\notin\mathbb{Z}$ である。
以上より $S_8=S_7=\varnothing$ である。

検証・検算

$\frac13-\frac17-\frac1{14}=\frac{14-6-3}{42}=\frac5{42}$。本解の $a=8$ における $c=\frac{72}{7}$ が $8$ の倍数でない(整数ですらない)ことと整合する。この議論は,本解の候補制限 (2) と,別解2 の整除条件の初等的な形 $a\mid 3bc$ を接続したものである。

3.2 $a\geqq7$ の排除の別証:素数冪のペアリング

着想・方針

補題2 を範囲 (4) の整数に適用し,分母として使える整数を素因数だけから絞り込む。$a=7,8$ の場合分けをせず,分母の集合が「対」の和集合になることから矛盾を導く。

解答

$a\geqq7$ と仮定し,$D=\lbrace a,b,c\rbrace$ とおく。(4) より $D$ は $\lbrace 7,8,\ldots,15\rbrace$ の3元部分集合である。 補題2 を4つの分母 $a,b,c,3$(符号 $+,+,+,-$)に適用すると,各素数の最大の冪は $D\cup\lbrace 3\rbrace$ の2個以上の元に現れなければならない。

  • $8\notin D$:$v_2(8)=3$ であり,$\lbrace 3,7,8,\ldots,15\rbrace$ で $v_2\geqq3$ となる数は $8$ のみである。
  • $9\notin D$:$v_3(9)=2$ であり,同じ範囲で $v_3\geqq2$ となる数は $9$ のみである。
  • $11,13\notin D$:範囲内の $11$ の倍数,$13$ の倍数はそれ自身のみである。
  • $12\notin D$:$v_2(12)=2$ であり,範囲内で $v_2\geqq2$ となる数は $8,12$ のみである。$8\notin D$ であるから,$12\in D$ ならば $2$ の最大冪は $12$ だけに現れる。
    ゆえに $D\subset\lbrace 7,10,14,15\rbrace$ である。範囲内の $7$ の倍数は $7,14$(いずれも $v_7=1$),$5$ の倍数は $10,15$(いずれも $v_5=1$)のみであるから, 補題2 を $\ell=7,5$ に用いて
    $$ 7\in D\iff 14\in D,\qquad 10\in D\iff 15\in D. $$
    よって $D$ は $\lbrace 7,14\rbrace$ と $\lbrace 10,15\rbrace$ のいくつかの和集合であり,要素数は偶数である。これは $D$ の要素数が $3$ であることに反する。したがって $a\leqq6$ である。

検証・検算

実際の解は 補題2 の条件を満たす。たとえば $(6,10,15)$ と $3$ では,$\ell=2$ の最大冪 $2^1$ は $6,10$ に,$\ell=3$ の最大冪 $3^1$ は $6,15,3$ に,$\ell=5$ の最大冪 $5^1$ は $10,15$ に現れる。一方,近似解 $(7,10,11)$( 1.4 節 )では $11$ が孤立しており,解でないことと整合する。

3.3 別解1:平行移動による積一定と約数分類

着想・方針

  1. を残差が一般の既約分数 $\frac pq$ の場合に拡張する。$\frac1x+\frac1y=\frac pq$ は $(px-q)(py-q)=q^2$ と同値であり,解は $q^2$ の約数と一対一に対応する。$p > 1$ のとき,整数性は $p$ を法とする合同条件として現れる。

解答

二単位分数の約数表示

$p,q$ を互いに素な正の整数とする。$x < y$,$\dfrac1x+\dfrac1y=\dfrac pq$ を満たす正の整数の組 $(x,y)$ と,
$$ d\mid q^2,\qquad 0 < d < q,\qquad d\equiv -q\pmod p $$
を満たす整数 $d$ とは,$d=px-q$ により一対一に対応する。逆対応は $x=\dfrac{q+d}{p}$,$y=\dfrac{q+q^2/d}{p}$ である。

分母を払うと $pxy=q(x+y)$ であり,両辺に $p$ を掛けて $q^2$ を加えれば
$$ \frac1x+\frac1y=\frac pq\iff (px-q)(py-q)=q^2. \tag{5} $$
$(x,y)$ を解とし,$d=px-q$,$e=py-q$ とおく。$\frac1x < \frac pq$ より $d > 0$,同様に $e > 0$ であり,$de=q^2$ である。$x < y\iff d < e\iff d^2 < de=q^2\iff d < q$。また $d+q=px$ より $d\equiv-q\pmod p$。
逆に $d$ が条件を満たすとき,$e=\frac{q^2}{d}$ は $e > q > d$ を満たす正の整数である。$de=q^2$ と $d\equiv-q$ より $-qe\equiv q^2\pmod p$ であり,$\gcd(p,q)=1$ より $q$ は $p$ を法として可逆であるから $e\equiv-q\pmod p$。よって $x=\frac{q+d}{p}$,$y=\frac{q+e}{p}$ は $x < y$ を満たす正の整数であり,(5) より解である。二つの対応は互いに逆である。

前半

 $(p,q)=(1,3)$ の場合で,条件は $d\mid 9$,$0 < d < 3$ である。$d=1$ に限るから $(a,b)=(4,12)$,$ab=48$。
後半  補題1 より $4\leqq a\leqq8$。$a$ を固定し, 補題3 を $(x,y)=(b,c)$,$\frac pq=R_a$ に適用する。$b > a\iff d=pb-q > pa-q$ であるから,$S_a$ は
$$ d\mid q^2,\qquad \max\lbrace 0,\ pa-q\rbrace < d < q,\qquad d\equiv-q\pmod p \tag{6} $$
を満たす整数 $d$ と一対一に対応する。
$a=8$ のとき $(p,q)=(5,24)$,$q^2=576=2^6\cdot3^2$ であり,(6) の範囲は $16 < d < 24$ である。この範囲にある $576$ の約数は $d=18$ のみであるが,$18\equiv3$,$-24\equiv1\pmod 5$ であるから合同条件を満たさない。
$a=7$ のとき $(p,q)=(4,21)$,$q^2=441=3^2\cdot7^2$ であり,(6) の範囲は $7 < d < 21$ である。この範囲にある $441$ の約数は $d=9$ のみであるが,$9\equiv1$,$-21\equiv3\pmod 4$ であるから合同条件を満たさない。
$a=6$ のとき $(p,q)=(1,6)$ であり,(6) は $d\mid36$,$0 < d < 6$ となる(合同条件は自明)。$d\in\lbrace 1,2,3,4\rbrace$ であり,
$$ (b,c)=\left(6+d,\ 6+\frac{36}{d}\right)=(7,42),\ (8,24),\ (9,18),\ (10,15). $$
以上より $a_{\max}=6$,$N_6=4$ である。

検証・検算

  • $d=6$ は $b=c=12$ に対応し,厳密な順序により除かれる。$N_6=\frac{\tau(36)-1}{2}=4$ と一致する( 5.3 節 )。
  • $a=8$ の $d=18$ は $b=\frac{42}{5}$ を,$a=7$ の $d=9$ は $b=\frac{15}{2}$ を与える。約数としての候補は存在し,障害は $p$ を法とする合同条件だけである( 1.6 節 )。
  • $a=4$($(p,q)=(1,12)$)では $144$ の $12$ 未満の約数 $1,2,3,4,6,8,9$ の7個,$a=5$($(p,q)=(2,15)$)では $225$ の $15$ 未満の約数 $1,3,5,9$ がすべて奇数で4個となり, 2.3 節 の全解表と一致する。

3.4 別解2:最小公倍数による排除

着想・方針

単位分数の等式では,各分母は残りの分母の最小公倍数を割り切る。$a\geqq7$ ならば分母は (4) の狭い範囲に入るので,この整除条件だけで $a=7,8$ が排除される。組数は (1) で数える。

解答

分母の整除

正の整数 $n,x,y,z$ が $\dfrac1x+\dfrac1y+\dfrac1z=\dfrac1n$ を満たすならば,$x\mid\operatorname{lcm}(n,y,z)$ である。

$L=\operatorname{lcm}(n,y,z)$ とおくと,$\dfrac Lx=\dfrac Ln-\dfrac Ly-\dfrac Lz$ の右辺は整数である。よって $x\mid L$。

補題4 は 補題2 の特別な場合でもある。$v_\ell(x) > \max\lbrace v_\ell(n),v_\ell(y),v_\ell(z)\rbrace$ となる素数 $\ell$ があれば,最大冪が $x$ だけに現れるからである。
前半 (1) より $(a-3)(b-3)=9$。$a > 3$ と $a < b$ より $0 < a-3 < b-3$ であるから $(a-3,b-3)=(1,9)$,$(a,b)=(4,12)$,$ab=48$。
後半  補題1 より $4\leqq a\leqq8$ である。$a\geqq7$ と仮定すると (4) が成り立つ。
$a=8$ のとき, 補題4 より $8\mid\operatorname{lcm}(3,b,c)$ である。$v_2(3)=0$ であるから $b,c$ の一方が $8$ の倍数でなければならないが,$9\leqq b < c\leqq15$ に $8$ の倍数はない。
$a=7$ のとき,$7\mid\operatorname{lcm}(3,b,c)$ であり,$7$ は素数であるから $b,c$ の一方は $7$ の倍数である。$8\leqq b < c\leqq 15$ よりそれは $14$ に限る。残りの分母を $d$ とすると
$$ \frac1d=\frac13-\frac17-\frac1{14}=\frac5{42},\qquad d=\frac{42}{5}\notin\mathbb{Z}. $$
よって $a\leqq6$ である。
$a=6$ のとき,(1) より $\frac1b+\frac1c=\frac16\iff(b-6)(c-6)=36$。$6 < b < c$ より $0 < b-6 < c-6$ であり,$(b-6)^2 < 36$,すなわち $0 < b-6 < 6$。$36$ の約数でこの範囲にあるものは $1,2,3,4$ であり,それぞれ $c=6+\frac{36}{b-6} > b$ を与える。よって $N_6=4$ であり,$a_{\max}=6$ である。

検証・検算

  • 実際の解 $(6,10,15)$ では $6\mid\operatorname{lcm}(3,10,15)=30$,$10\mid\operatorname{lcm}(3,6,15)=30$,$15\mid\operatorname{lcm}(3,6,10)=30$ が成り立つ。
  • 補題4 は必要条件にすぎない。たとえば $(4,6,12)$ は4つの分母 $4,6,12,3$ のどれについても「残り三つの最小公倍数を割り切る」を満たすが,$\frac14+\frac16+\frac1{12}=\frac12\neq\frac13$ である。本解法は必要条件に反することから非存在を導くので,この点は論証に影響しない。
  • 上界 $c\leqq15$ は $a\geqq7$ の仮定のもとでのみ用いている。

3.5 参考解1:対称和の整数区間と整除条件

着想・方針

$b,c$ を個別に求めず,和 $s=b+c$ の可動範囲を調べる。等式から $p\mid s$ が従い,相加相乗平均と $b,c$ の下限から $s$ は短い区間に閉じ込められる。区間内に許される整数がなければ解はない。

解答

対称和の存在区間

$p,q$ を互いに素な正の整数,$m$ を正の整数とし,正の整数 $b < c$ が $b,c\geqq m$ と $\dfrac1b+\dfrac1c=\dfrac pq$ を満たすとする。このとき $s=b+c$ は
$$ p\mid s,\qquad s > \frac{4q}{p} $$
を満たし,さらに $pm > q$ ならば
$$ s\leqq\frac{pm^2}{pm-q}. \tag{7} $$

等式より $pbc=qs$ であり,$\gcd(p,q)=1$ より $p\mid s$。$b < c$ より $s^2=(b+c)^2 > 4bc=\dfrac{4q}{p}s$,$s > 0$ で割って $s > \dfrac{4q}{p}$。また $(b-m)(c-m)\geqq0$ より $bc\geqq m(s-m)$,すなわち $\dfrac qp s\geqq ms-m^2$。$pm > q$ のとき整理して (7) を得る。

前半は (1) により $(a,b)=(4,12)$,$ab=48$ である。後半では 補題1 より $4\leqq a\leqq8$ であり,$a$ を固定して 補題5 を $m=a+1$ で用いる。
$a=8$ のとき $(p,q,m)=(5,24,9)$,$pm-q=21 > 0$ であり,
$$ 19 < \frac{96}{5} < s\leqq\frac{135}{7} < 20. $$
この区間に整数は存在しない。
$a=7$ のとき $(p,q,m)=(4,21,8)$,$pm-q=11 > 0$ であり,
$$ 21 < s\leqq\frac{256}{11} < 24,\qquad 4\mid s. $$
$s\in\lbrace 22,23\rbrace$ はいずれも $4$ の倍数でない。
よって $S_8=S_7=\varnothing$ である。$a=6$ のときは $bc=6s$ であり,$t=c-b > 0$ とおくと $t^2=s^2-4bc=s^2-24s$,すなわち
$$ (s-12)^2-t^2=144,\qquad (s-12-t)(s-12+t)=144. $$
$s-12-t=2(b-6)$,$s-12+t=2(c-6)$ であるから $(b-6)(c-6)=36$ となり, 3.4 節 と同様に4組を得る。以上より $a_{\max}=6$,$N_6=4$ である。

検証・検算

  • $a=8$ の区間の幅は $\frac{135}{7}-\frac{96}{5}=\frac{3}{35}$ であり,整数を含む余地がない。$a=8$ は「区間に整数がない」,$a=7$ は「区間に整数はあるが $4$ の倍数がない」という異なる理由で排除される。
  • $a=6$ では 補題5 の区間は $24 < s\leqq 49$ であり,実際の和 $49,32,27,25$ はすべてこの中にある。$s=49$ は $b=7=m$ のときで,$(b-m)(c-m)\geqq0$ の等号に対応する。
  • $a=6$ の数え上げは差の平方の因数分解により別解1 の約数分類に帰着する。この参考解に固有の内容は (E) の部分である。

3.6 参考解2:最大公約数と既約比による原始化

着想・方針

$b,c$ を「大きさ」$g=\gcd(b,c)$ と「形」(既約比 $u:v$)に分離する。互いに素な $u,v$ について $\gcd(uv,u+v)=1$ が成り立つことから,積と和に関する二つの整除条件が得られる。

解答

既約比による表示

$p,q$ を互いに素な正の整数とする。$x < y$,$\dfrac1x+\dfrac1y=\dfrac pq$ を満たす正の整数の組 $(x,y)$ と,
$$ 1\leqq u < v,\qquad \gcd(u,v)=1,\qquad uv\mid q,\qquad p\mid(u+v) $$
を満たす整数の組 $(u,v)$ とは,$g=\gcd(x,y)$,$x=gu$,$y=gv$ により一対一に対応する。逆対応は $g=\dfrac{q}{uv}\cdot\dfrac{u+v}{p}$ で与えられる。

$(x,y)$ を解とし,$g=\gcd(x,y)$,$x=gu$,$y=gv$ とおくと $\gcd(u,v)=1$,$u < v$ であり,等式は $pguv=q(u+v)$ となる。素数 $\ell$ が $uv$ と $u+v$ をともに割り切れば,$\ell$ は $u,v$ の一方を割り切り,したがって他方も割り切るので $\gcd(u,v)=1$ に反する。よって $\gcd(uv,u+v)=1$ であり,$uv\mid q(u+v)$ から $uv\mid q$ を得る。また $p\mid q(u+v)$ と $\gcd(p,q)=1$ から $p\mid(u+v)$。
逆に $(u,v)$ が条件を満たすとき,$g=\frac q{uv}\cdot\frac{u+v}{p}$ は正の整数であり,$x=gu$,$y=gv$ は $pguv=q(u+v)$,すなわち元の等式を満たす。$\gcd(x,y)=g\gcd(u,v)=g$ であるから,二つの対応は互いに逆である。

$b=gu$ とすると $b=\dfrac qp\left(1+\dfrac uv\right)$ であるから,
$$ b > a\iff \frac uv > \frac{ap}{q}-1. \tag{8} $$
前半 $(p,q)=(1,3)$ で $uv\mid3$,$u < v$,$\gcd(u,v)=1$ を満たすのは $(u,v)=(1,3)$ のみである。$g=\frac{3\cdot4}{3}=4$ より $(a,b)=(4,12)$,$ab=48$。
後半  補題1 より $4\leqq a\leqq8$ である。
$a=8$ のとき $(p,q)=(5,24)$ で,(8) は $\frac uv > \frac23$ となる。$uv\mid24$,$\gcd(u,v)=1$,$u < v$ を満たす組は $(1,2),(1,3),(1,4),(1,6),(1,8),(1,12),(1,24),(2,3),(3,4),(3,8)$ であり,$\frac23 < \frac uv < 1$ を満たすのは $(3,4)$ のみである。$u+v=7$ は $5$ の倍数でないから不適。
$a=7$ のとき $(p,q)=(4,21)$ で,(8) は $\frac uv > \frac13$ となる。$uv\mid21$ を満たす組 $(1,3),(1,7),(1,21),(3,7)$ のうち $\frac13 < \frac uv$ を満たすのは $(3,7)$ のみであり,$u+v=10$ は $4$ の倍数でないから不適。
$a=6$ のとき $(p,q)=(1,6)$ で,(8) は $\frac uv > 0$ となり自明に成り立つ。$uv\mid6$ を満たす既約比は $(1,2),(1,3),(1,6),(2,3)$ の4組であり,$g=\frac{6(u+v)}{uv}$ から

$(u,v)$$(1,6)$$(1,3)$$(1,2)$$(2,3)$
$g$$7$$8$$9$$5$
$(b,c)$$(7,42)$$(8,24)$$(9,18)$$(10,15)$

を得る。以上より $a_{\max}=6$,$N_6=4$ である。

検証・検算

$r=\frac q{uv}$ とおくと $q=ruv$,$g=\frac{r(u+v)}{p}$ であり,
$$ pb-q=ru^2,\qquad pc-q=rv^2. $$
すなわち別解1 の約数対は $(d,e)=(ru^2,rv^2)$ である。

場合$(u,v)$$r$$(d,e)=(ru^2,rv^2)$別解1 との対応
$a=6$$(1,6)$$1$$(1,36)$$d=1$
$a=6$$(1,3)$$2$$(2,18)$$d=2$
$a=6$$(1,2)$$3$$(3,12)$$d=3$
$a=6$$(2,3)$$1$$(4,9)$$d=4$
$a=8$$(3,4)$$2$$(18,32)$合同条件で不適の $d=18$
$a=7$$(3,7)$$1$$(9,49)$合同条件で不適の $d=9$

$d+q=ru(u+v)$ であり,$\gcd(p,ru)=1$($ru$ は $q$ の約数)であるから,$d\equiv-q\pmod p\iff p\mid(u+v)$ が成り立つ。別解1 の合同条件と本解法の和の整除条件は同じ条件である。

3.7 同じ系列に属する変形

以下は独立の解法とは数えず,既出の解法の表現の違いまたは部分的な短縮として扱う。

  • 帯分数化 $c=\frac qp+\dfrac{q^2/p}{pb-q}$($p=1$,$q=n$ では $c=n+\frac{n^2}{b-n}$),分割恒等式 $\frac1n=\frac1{n+d}+\frac1{n+n^2/d}$($d\mid n^2$),直角双曲線 $XY=q^2$ 上の格子点,面積 $q^2$ の長方形の整数辺,レンズの結像公式 $\frac1x+\frac1y=\frac1f$ との類比:いずれも (5) の言い換えであり,別解1 に属する。
  • 判別式による数え上げ:$a=6$ では $b,c$ は $X^2-sX+6s=0$ の2解であり,$t=c-b$ について $t^2=s(s-24)$ である。$t^2\equiv s^2\pmod 2$ より偶奇の一致 $t\equiv s$ は自動的に成り立つ。平方数条件は $(s-12)^2-t^2=144$ の因数分解で処理され,別解1 に帰着する。
  • 入れ子表示 $(a-3)(B-3)=9$( 1.5 節 ):$a=6$ を発見する手順であり,(E) の証明にはならない。
  • 関数 $c=\frac{qb}{pb-q}$ の単調減少性 $\frac{dc}{db}=-\frac{q^2}{(pb-q)^2} < 0$,調和平均による $a < 9$,降順の分枝限定探索:いずれも本解の (2) と探索順序の言い換えである。貪欲法は前半の解 $\frac13=\frac14+\frac1{12}$ を与えるが,一意性は示さない。
  • 直接整除(3.1 節)は本解と別解2 の接続形,素数冪のペアリング(3.2 節)と最小公倍数(別解2)は 補題2 の二通りの使い方である。最小公倍数の飽和( 5.4 節 )は $a=6$ の4解の素因数的な説明を与える。
    次のものは独立の解法として採用しない。
  • 「$R_7,R_8$ が単位分数でないから解がない」とする議論:$R_5=\frac2{15}$ でも解があり,誤りである( 1.4 節 )。
  • 三角形の高さと内接円半径によるモデル:本問のどの解も非退化三角形の高さの組にならない( 5.6 節 )。
  • 換算質量・エントロピー最大化などの物理的・情報理論的類比:実数の範囲の評価($a < 9$ 程度)を与えるにとどまり,整数性を扱わない。

3.8 解法の比較

解法主に利用する構造排除($a=7,8$)構成・数え上げ($a=6$)必要な事実注意点
本解逆数の大小と順序$b$ の候補 $1+3$ 個を代入$b$ の候補 $5$ 個を代入不等式のみ(2) に $b > a$ と $b < c$ の両方を入れる
3.1 節等式の整除$a\mid bc$ と (4)扱わない整除の基本$\gcd(a,3)=1$ の確認
3.2 節素数冪の共有場合分けなしで一括扱わない 補題2 範囲 (4) が前提
別解1中心移動と約数約数1個と合同条件約数4個 補題3 $p > 1$ で合同条件を落とさない
別解2最小公倍数倍数の有無の確認(1) による約数 補題4 補題は必要条件にすぎない
参考解1対称和区間端点の計算別解1 に帰着 補題5 $pm > q$ と不等号の向き
参考解2既約比既約比1組と整除既約比4組 補題6 $\gcd(u,v)=1$ が本質

試験場での第一選択は本解である。必要な事実が不等式だけであり,代入は $9$ 回で済み,各段階に検算点がある。答案の短さでは,(E) を別解2,(C) を (1) による約数で処理する組合せが最もよい。別解1 は解と約数の全単射を与えるため,組数の完全性を最も直接に保証する。参考解1 は「区間に整数がない」と「区間に指定の倍数がない」という二種類の離散的障害の区別を,参考解2 は解を共通倍率と既約比に分解する見方を示す。別解1 と参考解2 は $(d,e)=(ru^2,rv^2)$ により同値であり,同じ分類を異なる入口から与える。


4. 汎用的な探索手順

本問から抽出される,単位分数の和 $\sum_{i=1}^{k}\frac1{x_i}=r$($x_1 < \cdots < x_k$)に関する整数問題の探索手順を述べる。

4.1 意思決定の流れ

  1. 順序で有限化する。最小の分母は $\frac1r < x_1 < \frac kr$ を満たす( 補題1 )。以後の候補数を先に見積もる。
  2. 問いの論理型を確認する。最大値・最小値が問われていれば,最も極端な候補から順に存在を判定し,最初に解が存在した値で止める。このとき必要なのは「上位候補の排除」と「その値での構成」の二つである。組数が問われていれば完全な分類を要する。
  3. 一つの変数を固定し,残差を既約分数 $\frac pq$ に直す。$p=1$ か $p > 1$ かで整数条件の形が変わる。
  4. 残る二変数の候補が少なければ逐次決定する。直前の分母を $x_0$ として区間 $\max\lbrace x_0,\frac qp\rbrace < x < \frac{2q}{p}$ の整数を調べる。最後の変数は一意に定まり,順序は自動的に満たされる。
  5. 組数は全単射で数える。$(px-q)(py-q)=q^2$ により解を $q^2$ の約数 $d$ に対応させ,範囲と合同条件 $d\equiv-q\pmod p$ を管理する( 補題3 )。$p=1$ で下限の制約が効かなければ,個数は $\frac{\tau(q^2)-1}{2}$ である。
  6. 非存在は弱い必要条件から試す。まず実数解の有無を確かめ,実数解があるなら整数性に由来する障害が不可欠であると判断する。障害の候補は,最大素数冪の共有( 補題2 ),最小公倍数,区間内の整数や指定の倍数の有無,合同条件である。必要条件に反すれば解を計算する必要はない。
  7. 構成には分割恒等式 $\frac1n=\frac1{n+d}+\frac1{n+n^2/d}$($d\mid n^2$)や入れ子表示を用いる。発見した候補は,(6) の排除と組み合わせて初めて最大性の証明になる。
  8. 検算する。共通分母での代入,積一定の形への変換,解法間の対応($(d,e)=(ru^2,rv^2)$ など),全解の表との照合を行う。

4.2 症状と有効な表現

症状検討する表現・道具本問での例
変数の候補が数個に絞れる逐次決定と直接代入本解
二つの逆数の和が一定中心移動 $(px-q)(py-q)=q^2$別解1
残差の分子 $p$ が $1$ でない合同条件,既約比と $p\mid(u+v)$別解1,参考解2
大きな分母の非存在を示したい最大素数冪の共有,最小公倍数別解2,3.2 節
実数解はあるが整数解がない整数性に由来する障害を探す1.4 節
和と積が一次関係で結ばれる対称和の区間と整除参考解1
解の個数が問われる約数との全単射,約数関数別解1,5.3 節
解の候補を予想したい入れ子表示,等分からの構成1.5 節

4.3 作問・類題設計への応用

右辺を $\frac1n$ に変えると,最小分母の範囲は $n < a < 3n$ となり,等分 $\frac1n=\frac1{2n}+\frac1{2n}$ から $a=2n$ の解が常に構成できる( 命題8 )。本問の $n=3$ は,この自然な候補が最大値に一致し,しかも上位候補 $a=7,8$ の排除に整数性の議論を要する設定である。$n=4$ にすると最大値は $10$ となり( 5.5 節 ),最大値の発見そのものが探索問題に変わる。排除の難しさは,上位候補における残差の分子 $p$ と,$q^2$ の約数が狭い区間にいくつあるかで決まる。候補数・合同条件・区間幅の三つを調整することで難易度を設計できる。


5. 発展事項

5.1 高校数学と一般理論の境界

事項高校数学での扱い一般理論
順序による有限化逆数の大小単位分数表示の有限性と分母の上界
二単位分数の解因数分解と約数の列挙直角双曲線上の格子点,約数関数 $\tau$
合同条件余りによる分類剰余環 $\mathbb{Z}/p\mathbb{Z}$ における可逆元
最小公倍数の補題通分$\ell$ 進付値と非アルキメデス的三角不等式
大小評価と整除の併用不等式と倍数判定$\mathbb{Q}$ 上の絶対値の分類(Ostrowski の定理)
既約比による表示最大公約数と互いに素解の大きさと形の分離(原始解への分解)
降順の場合分け場合分け分枝限定法

本解,別解1・2,参考解1・2 と 3.1〜3.2 節はすべて左欄の範囲で完結する。右欄は,それらの計算が成り立つ理由を説明する理論である。

5.2 単位分数表示の有限性

単位分数表示の有限性

正の有理数 $r$ と正の整数 $k$ に対し,$x_1 < x_2 < \cdots < x_k$ かつ $\displaystyle\sum_{i=1}^{k}\frac1{x_i}=r$ を満たす正の整数の組 $(x_1,\ldots,x_k)$ は有限個である。

$k$ に関する帰納法による。$k=1$ では $x_1=\frac1r$ に限る。$k\geqq2$ とすると, 補題1 より $x_1$ は区間 $\left(\frac1r,\frac kr\right)$ 内の整数であり,有限個である。各 $x_1$ に対し $r'=r-\frac1{x_1}$ とおくと,$(x_2,\ldots,x_k)$ は $\sum_{i=2}^{k}\frac1{x_i}=r'$ を満たす $k-1$ 項の組である。$r'\leqq0$ ならそのような組は存在せず,$r' > 0$ なら帰納法の仮定により有限個である。

この証明は探索の手続きそのものであり,本解は $k=3$,$r=\frac13$ の場合にあたる。分母の大きさについては,$1$ を $k$ 個の単位分数の和で表すとき,最大の分母が Sylvester 数列 $u_1=2$,$u_{j+1}=u_j^2-u_j+1$($2,3,7,43,1807,\ldots$)を用いて $u_k-1$ 以下に抑えられることが知られている(Kellogg 1921,Curtiss 1922)。$1=\frac12+\frac13+\frac17+\frac1{42}$ はこの上界 $42=u_4-1$ を実現する。また $0 < r < 1$ を満たす任意の有理数 $r$ は,「残差を超えない最大の単位分数を順に取る」貪欲法により,有限個の相異なる単位分数の和に表される。残差 $\frac xy$($0 < x < y$)から $\frac1n$($n=\lceil y/x\rceil\geqq2$)を引くと,分子は $nx-y < x$ と真に減少するので手続きは有限回で終わる。また $\frac xy < \frac1{n-1}$ より新しい残差は $\frac1{n(n-1)}$ 未満となり,次の分母は $n$ より大きい。

5.3 二単位分数の解の個数

補題3 より,$x < y$,$\frac1x+\frac1y=\frac pq$ の解の個数は,$q^2$ の約数 $d$ で $d < q$ かつ $d\equiv-q\pmod p$ を満たすものの個数に等しい。$p=1$,$q=n$ のとき合同条件は自明である。$n^2$ の約数は $d\leftrightarrow\frac{n^2}{d}$ により $d < n$ のものと $d > n$ のものが対になり,$d=n$ だけが自分自身と対になるから,
$$ \left(\frac1x+\frac1y=\frac1n,\ x < y\ \text{の解の個数}\right)=\frac{\tau(n^2)-1}{2},\qquad n=\prod_i\ell_i^{e_i}\implies\tau(n^2)=\prod_i(2e_i+1). $$
$n=3,6,12$ では $\tau(n^2)=3,9,15$ より解の個数は $1,4,7$ であり,それぞれ前半の解,$N_6$,$N_4$ に一致する($a=4$ では $b > 4$ が自動的に成り立つ)。$p > 1$ では合同条件が個数を減らしうる。$a=5$($\frac pq=\frac2{15}$)では $225$ の $15$ 未満の約数 $1,3,5,9$ がすべて奇数なので4個とも残り,$a=7,8$ では範囲内の唯一の約数が合同条件で除かれる。
幾何学的には,$X=px-q$,$Y=py-q$ とおくと,解は直角双曲線 $XY=q^2$ 上の格子点のうち,$X\equiv Y\equiv-q\pmod p$ と $0 < X < Y$ を満たすものに対応する。 補題6 はこれらを既約比 $u:v$ と倍率 $r=\frac q{uv}$ により $(X,Y)=(ru^2,rv^2)$ と表す。逆に $de=q^2$ のとき $r=\gcd(d,e)$ とすれば $\frac dr\cdot\frac er=\left(\frac qr\right)^2$ であり,互いに素な二数の積が平方数なら各数が平方数であることから $d=ru^2$,$e=rv^2$ を得る。この事実が二つの記述の同値性を支えている。

5.4 素数ごとの評価:$\ell$ 進付値

素数 $\ell$ について,$0$ でない有理数の $\ell$ 進付値は $v_\ell(xy)=v_\ell(x)+v_\ell(y)$ と
$$ v_\ell(x+y)\geqq\min\lbrace v_\ell(x),v_\ell(y)\rbrace\quad(x+y\neq0),\qquad v_\ell(x)\neq v_\ell(y)\implies v_\ell(x+y)=\min\lbrace v_\ell(x),v_\ell(y)\rbrace $$
を満たす。$\lvert x\rvert_\ell=\ell^{-v_\ell(x)}$ とおけば,これは強い三角不等式 $\lvert x+y\rvert_\ell\leqq\max\lbrace\lvert x\rvert_\ell,\lvert y\rvert_\ell\rbrace$ であり,$\lvert\cdot\rvert_\ell$ は非アルキメデス的絶対値である。帰結として,有理数の和において最小の付値をとる項がただ一つならば,その和は $0$ でない。 補題2 は,各項 $\frac{\varepsilon_i}{m_i}$ の付値が $-v_\ell(m_i)$ であることに注意して,和が $0$ であることからこの状況を排除したものにほかならない。
Ostrowski の定理によれば,$\mathbb{Q}$ 上の自明でない絶対値は,通常の絶対値 $\lvert\cdot\rvert_\infty$ か,ある素数 $\ell$ に対する $\lvert\cdot\rvert_\ell$ のいずれかと同値である。本問の (E) の証明は,$\lvert\cdot\rvert_\infty$ による大小評価( 補題1 ,(4))で探索範囲を有限にし,$\lvert\cdot\rvert_\ell$($\ell=2,7$ など)による評価で候補を消すという,二種類の絶対値の併用とみなせる。
同じ視点は解の存在も説明する。$\frac1b+\frac1c=\frac16$ において $L=\operatorname{lcm}(6,b)$,$K=\frac L6-\frac Lb$ とおくと $\frac1c=\frac KL$ であり,$c\in\mathbb{Z}\iff K\mid L$ である。$L$ の各素因数について,$6$ と $b$ の指数の最大値が一方だけでとられる(最大冪を共有しない)ならば,$\frac L6,\frac Lb$ の一方だけがその素数で割り切れないので $K$ はその素数で割り切れず,$\gcd(K,L)=1$ となる。このとき $c\in\mathbb{Z}\iff K=1\iff c=L$ である。

$b$$L=\operatorname{lcm}(6,b)$$K=\frac L6-\frac Lb$最大冪の共有$c=\frac LK$
$7$$42$$1$なし$42$
$8$$24$$1$なし$24$
$9$$18$$1$なし$18$
$10$$30$$2$$2^1$ を共有$15$
$11$$66$$5$なし$\frac{66}{5}$

$b=7,8,9$ では最大冪の共有がなく,$K=1$ となって $c=L$ が実現する。$b=10$ では $2^1$ の共有により $K=2$ が $L$ を割り切る。$b=11$ では共有がなく $K=5 > 1$ であるから $c$ は整数にならない。

5.5 本問の一般化:最小分母の最大値

正の整数 $n$ に対し,$a < b < c$,$\frac1a+\frac1b+\frac1c=\frac1n$ を満たす正の整数の組 $(a,b,c)$ における $a$ の最大値を $M(n)$ とする( 命題7 より組は有限個であり,次の命題より空でない)。本問は $M(3)=6$ を求めている。

最小分母の最大値の範囲

すべての正の整数 $n$ について $2n\leqq M(n) < 3n$ である。

上界は 補題1 ($k=3$,$r=\frac1n$)による。下界は,(1) から得られる恒等式
$$ \frac1n=\frac1{2n}+\frac1{2n+1}+\frac1{2n(2n+1)} $$
において $2n < 2n+1 < 2n(2n+1)$ が成り立つことによる。

補題1 の区間を用いた計算機による全探索で,$n\leqq12$ の値は次のとおりである。

$n$$M(n)$$2n$最大を与える組 $(a,b,c)$
$1$$2$$2$$(2,3,6)$
$2$$4$$4$$(4,5,20),\ (4,6,12)$
$3$$6$$6$$(6,7,42),\ (6,8,24),\ (6,9,18),\ (6,10,15)$
$4$$10$$8$$(10,12,15)$
$5$$12$$10$$(12,15,20)$
$6$$14$$12$$(14,15,35)$
$7$$15$$14$$(15,21,35)$
$8$$21$$16$$(21,24,28)$
$9$$21$$18$$(21,28,36)$
$10$$24$$20$$(24,30,40)$
$11$$22$$22$$(22,23,506),\ (22,24,264),\ (22,26,143),\ (22,33,66)$
$12$$30$$24$$(30,36,45)$

この範囲で $M(n)=2n$ となるのは $n=1,2,3,11$ のみである。$M(n) > 2n$ の場合の最大を与える組は,$\frac1{10}+\frac1{12}+\frac1{15}=\frac{6+5+4}{60}$ のように,三つの分母が小さな公倍数 $L$ を共有し,$L$ の約数による分子の和として $\frac1n$ を作る形をとる。本問の $n=3$ は,この範囲で等分による自然な候補がそのまま最大値となる場合の一つである。

5.6 連続モデルの有効範囲

$\frac1x+\frac1y=\frac1K$ はレンズの結像公式,並列抵抗の合成,調和平均などに現れる。これらは (1) の双曲線構造を直観的に説明し,実数の範囲の評価( 補題1 )を与えるが,整数性については何も述べない。整数格子を保つ条件を加えない限り,$a=7,8$ の非存在は導けない( 1.4 節 )。
三角形の高さによるモデルには,さらに実現可能性の制約がある。面積 $\Delta$,内接円半径 $\rho$ の三角形で,辺 $x,y,z$ に対する高さを $h_x,h_y,h_z$ とすると,$x=\frac{2\Delta}{h_x}$ などより
$$ \frac1{h_x}+\frac1{h_y}+\frac1{h_z}=\frac{x+y+z}{2\Delta}=\frac1\rho $$
が成り立つ。一方,正の数 $a < b < c$ がある三角形の高さの組となるのは,辺の比 $\frac1a:\frac1b:\frac1c$ が三角不等式を満たすとき,すなわち $\frac1a < \frac1b+\frac1c$ のときに限る。本問の解はすべて $a\leqq6$ を満たすから
$$ \frac1b+\frac1c=\frac13-\frac1a\leqq\frac1a $$
となり(等号は $a=6$),どの解も非退化三角形を与えない。したがってこのモデルは本問の解集合を表現しない。

5.7 歴史的背景

相異なる単位分数の和による分数の表示は古代エジプトの計算法に由来し,エジプト分数と呼ばれる。Rhind パピルス(紀元前1550年頃の写本)には,$\frac2n$ を単位分数の和に分解した表が収められている。Fibonacci は『算盤の書』(Liber Abaci,1202年)で貪欲法に相当する手続きを記し,Sylvester(1880年)がこれを論じた。単位分数表示の分母の上界は Kellogg(1921年)と Curtiss(1922年)により Sylvester 数列を用いて与えられた。3項の表示 $\frac4n=\frac1x+\frac1y+\frac1z$ がすべての $n\geqq2$ について存在するかという問いは Erdős–Straus 予想(1948年)として知られ,$n$ の剰余類ごとに分解の恒等式を与える方法などで研究されてきた。本問の (1) や分割恒等式は,こうした研究で用いられる最も基本的な代数的恒等式である。


6. 最終整理

6.1 全体の構造マップ

  • 前半:(1) より $(a-3)(b-3)=9$ → $(a,b)=(4,12)$,$ab=48$
  • 後半:$\frac1a+\frac1b+\frac1c=\frac13$,$a < b < c$
    • 順序による有限化( 補題1 )→ $4\leqq a\leqq8$,$b$ は区間 (2) の整数,$c$ は (3) で一意,$c > b$ は自動
    • 実数解の存在( 1.4 節 )→ 排除には整数性が必須
    • 排除 (E):$S_8=S_7=\varnothing$
      • 候補の直接代入 → 本解
      • $a\mid bc$ と $c\leqq15$ → 3.1 節
      • 最大素数冪の共有( 補題2 )→ 3.2 節(ペアリング),別解2(最小公倍数)
      • 約数と合同条件 → 別解1,既約比と $p\mid(u+v)$ → 参考解2(両者は同値)
      • 対称和の区間と $p\mid s$ → 参考解1
    • 構成と数え上げ (C):$S_6$
      • 入れ子表示 $(a-3)(B-3)=9$ により $a=6$,$B=6$ を発見(1.5 節)
      • $(b-6)(c-6)=36$,$0 < b-6 < 6$ → 4組(別解1,別解2,参考解1)
      • 既約比 $uv\mid6$ → 4組(参考解2)
    • 結論:$a_{\max}=6$,$N_6=4$

6.2 解答一覧

空欄答内容
$\boxed{\text{1}}$$48$唯一の組 $(a,b)=(4,12)$
$\boxed{\text{2}}$$4$$a_{\max}=6$,$(6,7,42),\ (6,8,24),\ (6,9,18),\ (6,10,15)$

6.3 数学的教訓

  • 順序条件は,計算の前に探索範囲を有限にする情報である。最小の分母は $\frac1r < x_1 < \frac kr$ に入る。
  • 最大値の決定には,上位候補の排除と,その値での構成の両方が要る。両者は論理的に異質であり,適した道具も異なる。
  • 実数解が存在する範囲では,大小評価だけで整数解の非存在は示せない。候補の代入,合同条件,区間内の倍数,素数冪の共有といった整数性に由来する障害を必ず用いる。
  • 二つの逆数の和は中心移動により積一定 $(px-q)(py-q)=q^2$ に変わり,解は約数と全単射で結ばれる。$p > 1$ では合同条件が本質的な障害になる。
  • 単位分数の等式では,各素数の最大冪は2個以上の分母に現れなければならない。大きさの制約と素数ごとの制約を組み合わせると,解を計算せずに非存在を示せる。
  • 発見的な観察(入れ子表示で $B$ が整数となる $a$,等分からの構成)は候補の発見に有効であるが,最大性の証明にはならない。また $p=1$ は解の存在の必要条件ではない($a=5$)。
  • 異なる解法の対応($(d,e)=(ru^2,rv^2)$,合同条件と $p\mid(u+v)$ の同値性)を確かめることは,それ自体が強い検算になる。
投稿日:3日前
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医学部・難関大受験生の指導を行っています。

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