$a,b,c$ を正の整数とする。
$$
a < b,\qquad \frac{1}{a}+\frac{1}{b}=\frac{1}{3}
$$
を満たす組 $(a,b)$ はただ1組存在し,そのときの積 $ab$ は $\boxed{\text{1}}$ である。
また,
$$
a < b < c,\qquad \frac{1}{a}+\frac{1}{b}+\frac{1}{c}=\frac{1}{3}
$$
を満たす組 $(a,b,c)$ を考える。$a$ が最大値をとるとき,そのような組 $(a,b,c)$ は全部で $\boxed{\text{2}}$ 組ある。
逆数は分母について単調減少であるから,順序条件は最小の分母の範囲を上下から押さえる。
$r > 0$ とし,正の実数 $x_1 < x_2 < \cdots < x_k$($k\geqq2$)が $\displaystyle\sum_{i=1}^{k}\frac1{x_i}=r$ を満たすとする。このとき
$$
\frac1r < x_1 < \frac kr.
$$
さらに $k=2$ の場合,正の実数 $x_1$ に対し,「$x_1 < x_2$ かつ $\dfrac1{x_1}+\dfrac1{x_2}=r$ を満たす正の実数 $x_2$ が存在する」ことは $\dfrac1r < x_1 < \dfrac2r$ と同値であり,このとき $x_2=\dfrac{x_1}{rx_1-1}$ はただ一つに定まる。
$i\geqq2$ に対して $0 < \dfrac1{x_i} < \dfrac1{x_1}$ であるから,$\dfrac1{x_1} < r < \dfrac k{x_1}$ である。$k=2$ のとき,$x_2$ は $\dfrac1{x_2}=r-\dfrac1{x_1}$ により一意に定まる。$x_2 > 0\iff x_1 > \dfrac1r$ であり,そのもとで $x_2 > x_1\iff r-\dfrac1{x_1} < \dfrac1{x_1}\iff x_1 < \dfrac2r$ である。
補題1 を本問に適用すると次が従う。
| $a$ | $R_a=\frac pq$ | $\frac qp$ | $\frac{2q}{p}$ | $b$ の候補 | 候補数 |
|---|---|---|---|---|---|
| $4$ | $\frac1{12}$ | $12$ | $24$ | $13\leqq b\leqq 23$ | $11$ |
| $5$ | $\frac2{15}$ | $\frac{15}{2}$ | $15$ | $8\leqq b\leqq 14$ | $7$ |
| $6$ | $\frac16$ | $6$ | $12$ | $7\leqq b\leqq 11$ | $5$ |
| $7$ | $\frac4{21}$ | $\frac{21}{4}$ | $\frac{21}{2}$ | $8\leqq b\leqq 10$ | $3$ |
| $8$ | $\frac5{24}$ | $\frac{24}{5}$ | $\frac{48}{5}$ | $b=9$ | $1$ |
本問が要求する内容は,論理的に異なる三つの主張に分かれる。
$3 < a < 9$ を満たす任意の実数 $a$ に対し,
補題1
から定まる区間 $\max\lbrace a,\frac1{R_a}\rbrace < b < \frac2{R_a}$ は空でない。実際 $\frac1{R_a} < \frac2{R_a}$ であり,$a < \frac2{R_a}\iff \frac{a-3}{3} < 2\iff a < 9$ である。この区間の $b$ に対し $c=\frac{b}{R_ab-1}$ とおけば $(a,b,c)$ は実数解となる。したがって実数の範囲では $a$ を $9$ 未満に押さえる以上の情報は得られない。具体的には
$$
(a,b,c)=\left(8,\ 9,\ \frac{72}{7}\right),\qquad \left(7,\ 8,\ \frac{168}{11}\right)
$$
は順序条件と等式を満たす実数解である。さらに
$$
\frac1a+\frac1b+\frac1c-\frac13=\frac{3(ab+bc+ca)-abc}{3abc}
$$
により,整数の組でも等式をわずかに外れるだけのものがある。
$$
(7,10,11):\ 3(ab+bc+ca)-abc=1,\qquad (8,9,10):\ 3(ab+bc+ca)-abc=6.
$$
前者は $\frac13$ との差が $\frac1{2310}$,後者は $\frac1{360}$ である。ゆえに (E) の証明は,大小評価に加えて整数性に由来する情報を必ず用いる。本問で使われる整数的情報は,大きさに関する制約(
補題1
)で探索範囲を有限にしたうえで,素数ごとの割り切れ方で候補を消すという二層構造をもつ。後者を一般的に定式化したものが次の補題である。
正の整数 $m_1,\ldots,m_r$($r\geqq2$)と $\varepsilon_1,\ldots,\varepsilon_r\in\lbrace 1,-1\rbrace$ が
$$
\sum_{i=1}^{r}\frac{\varepsilon_i}{m_i}=0
$$
を満たすとする。素数 $\ell$ に対し $e=\max_i v_\ell(m_i)$ とおくと,$v_\ell(m_i)=e$ となる添字 $i$ は少なくとも2個ある。
$L=\operatorname{lcm}(m_1,\ldots,m_r)$ とすると $v_\ell(L)=e$ であり,$\sum_i\varepsilon_i\dfrac{L}{m_i}=0$ が成り立つ。$v_\ell\left(\dfrac L{m_i}\right)=e-v_\ell(m_i)$ であるから,$\dfrac L{m_i}$ が $\ell$ で割り切れないことと $v_\ell(m_i)=e$ は同値である。$v_\ell(m_i)=e$ となる添字が $j$ ただ一つならば,$\varepsilon_j\dfrac L{m_j}=-\sum_{i\neq j}\varepsilon_i\dfrac L{m_i}$ の右辺は $\ell$ で割り切れ,左辺は割り切れない。これは矛盾である。
本問では $(m_1,m_2,m_3,m_4)=(a,b,c,3)$,$(\varepsilon_i)=(1,1,1,-1)$ に適用する。各素数について,$a,b,c,3$ の中で最大の冪は2個以上の分母に現れなければならない。特に各分母は他の三つの分母の最小公倍数を割り切る(
補題4
)。
注意として,残差 $R_a$ が単位分数であること($p=1$)は解の存在の必要条件ではない。実際 $R_5=\frac2{15}$ であるが
$$
\frac15+\frac18+\frac1{120}=\frac13
$$
であり,$N_5=4$ である(
2.3 節
)。したがって「$R_7,R_8$ が単位分数でないから解がない」という推論は誤りである。
$0$ でない実数 $x,y,K$ について,両辺に $Kxy$ を掛けて整理すれば
$$
\frac1x+\frac1y=\frac1K\iff (x-K)(y-K)=K^2. \tag{1}
$$
前半は $K=3$ の場合で,$(a-3)(b-3)=9$ となる。後半で $\dfrac1B=\dfrac1b+\dfrac1c$,すなわち $B=\dfrac{bc}{b+c}$ とおくと,等式は $\dfrac1a+\dfrac1B=\dfrac13$ となり,(1) より
$$
(a-3)(B-3)=9,\qquad B=3+\frac9{a-3}=\frac qp.
$$
後半の方程式は,前半と同一の方程式を有理数 $B$ について解く問題を内部に含む。$3a=3(a-3)+9$ より $\gcd(a-3,3a)=\gcd(a-3,9)$ であるから
$$
p=\frac{a-3}{\gcd(a-3,\,9)},\qquad B\in\mathbb{Z}\iff p=1\iff (a-3)\mid 9\iff a\in\lbrace 4,6,12\rbrace.
$$
$4\leqq a\leqq8$ の範囲でこれを満たす最大の $a$ は $6$ であり,そのとき $B=6$,残る方程式は (1) により
$$
\frac1b+\frac1c=\frac16\iff (b-6)(c-6)=36
$$
となる。前半の方程式が $K=3$ から $K=6$ へ置き換わって再び現れる。ただし $B\in\mathbb{Z}$ は解の存在の必要条件ではない($a=5$ では $B=\frac{15}{2}$ であるが $N_5=4$)。入れ子構造は $a=6$ という候補の発見と $S_6$ の計数を与えるが,最大性 (E) の証明にはならない。
以上の構造から,作問の設計は次のように読める(数値設定からの分析であり,出題者の意図についての推定を含む)。
| 着目する構造 | 数学的翻訳 | 導かれる解法 |
|---|---|---|
| 逆数の大小と厳密な順序 | 有限個の $b$,$c$ の一意性 | 本解 |
| 分母を払った等式の整除 | $a\mid bc$ | 3.1 節 |
| 分母の素因数構造 | 最大素数冪の共有( 補題2 ) | 3.2 節,別解2 |
| 直角双曲線の中心移動 | $(pb-q)(pc-q)=q^2$,約数と合同 | 別解1 |
| 対称和 $s=b+c$ | 短い区間と $p\mid s$ | 参考解1 |
| 公約数と既約比 | $uv\mid q$,$p\mid(u+v)$ | 参考解2 |
| 入れ子構造 | $(a-3)(B-3)=9$ | $a=6$ の発見(1.5 節) |
補題1 により,前半は $a$ の候補を2個に,後半は $a$ と $b$ の候補を有限個に絞る。後半では $c$ を $a,b$ の関数として一意に表し,その整数性を判定する。$a$ は最大の候補 $8$ から降順に調べ,最初に解が存在する値で停止する。
$a < b$ より
$$
\frac1a < \frac13=\frac1a+\frac1b < \frac2a
$$
であるから $3 < a < 6$,すなわち $a\in\lbrace 4,5\rbrace$ である。等式を $b$ について解くと
$$
b=\frac{3a}{a-3}
$$
であり,$a=4$ のとき $b=12$,$a=5$ のとき $b=\frac{15}{2}\notin\mathbb{Z}$ である。よって条件を満たす組は $(a,b)=(4,12)$ ただ1組であり,
$$
ab=48.
$$
$a < b < c$ より
$$
\frac1a < \frac13=\frac1a+\frac1b+\frac1c < \frac3a
$$
であるから $3 < a < 9$,すなわち $4\leqq a\leqq 8$ である。$a$ を固定すると
$$
\frac1b+\frac1c=\frac{a-3}{3a}.
$$
$0 < \frac1c < \frac1b$ より $\frac1b < \frac{a-3}{3a} < \frac2b$ であり,これと $b > a$ を合わせて
$$
\max\left\lbrace a,\ \frac{3a}{a-3}\right\rbrace < b < \frac{6a}{a-3}. \tag{2}
$$
また等式を $c$ について解くと
$$
c=\frac{3ab}{(a-3)b-3a}. \tag{3}
$$
(2) の左側の不等式 $b > \frac{3a}{a-3}$ より (3) の分母は正である。(2) の右側の不等式より $\frac1c=\frac{a-3}{3a}-\frac1b < \frac1b$,すなわち $c > b$ が成り立つ。したがって各 $a$ について,解 $(a,b,c)$ は「(2) を満たす整数 $b$ のうち,(3) の $c$ が整数となるもの」と一対一に対応する。
| $b$ | $8$ | $9$ | $10$ |
|---|---|---|---|
| $c$ | $\frac{168}{11}$ | $\frac{63}{5}$ | $\frac{210}{19}$ |
| $b$ | $7$ | $8$ | $9$ | $10$ | $11$ |
|---|---|---|---|---|---|
| $c$ | $42$ | $24$ | $18$ | $15$ | $\frac{66}{5}$ |
$S_8=S_7=\varnothing$ かつ $S_6\neq\varnothing$ であるから $a_{\max}=6$ であり,そのときの組は
$$
(a,b,c)=(6,7,42),\ (6,8,24),\ (6,9,18),\ (6,10,15)
$$
の4組である。
| 空欄 | 答 | 該当する組 |
|---|---|---|
| $\boxed{\text{1}}$ | $48$ | $(a,b)=(4,12)$ |
| $\boxed{\text{2}}$ | $4$ | $(6,7,42),\ (6,8,24),\ (6,9,18),\ (6,10,15)$ |
| $a$ | $S_a$ | $N_a$ |
|---|---|---|
| $4$ | $(13,156),\ (14,84),\ (15,60),\ (16,48),\ (18,36),\ (20,30),\ (21,28)$ | $7$ |
| $5$ | $(8,120),\ (9,45),\ (10,30),\ (12,20)$ | $4$ |
| $6$ | $(7,42),\ (8,24),\ (9,18),\ (10,15)$ | $4$ |
| $7$ | なし | $0$ |
| $8$ | なし | $0$ |
3.1〜3.2 節は排除 (E)($a=7,8$)に対する別証,3.3〜3.4 節は答案として完結する別解,3.5〜3.6 節は高校数学の範囲で完結するが答案としては迂遠であり,構造の説明を主目的とする参考解である。
分母を払った等式 $abc=3(ab+bc+ca)$ を $a$ を法として読む。$a$ が $3$ と互いに素なら $a\mid bc$ となり,$c$ の上界と合わせて候補が消える。
$abc=3(ab+bc+ca)$ より $3bc=a(bc-3b-3c)$,したがって $a\mid 3bc$ である。$a\in\lbrace 7,8\rbrace$ は $3$ と互いに素であるから $a\mid bc$ である。
また $a\geqq7$ のとき $b\geqq8$ であり,
$$
\frac1c=\frac13-\frac1a-\frac1b\geqq\frac13-\frac17-\frac18=\frac{11}{168} > \frac1{16}
$$
より $c\leqq15$ である。すなわち
$$
a\geqq 7\implies 7\leqq a < b < c\leqq 15. \tag{4}
$$
$a=8$ のとき,(2) より $b=9$ である。$\gcd(8,9)=1$ より $8\mid c$ となるが,$9 < c\leqq15$ に $8$ の倍数はない。
$a=7$ のとき,(2) より $b\in\lbrace 8,9,10\rbrace$ であり,いずれも $7$ と互いに素である。$7$ は素数であるから $7\mid c$,さらに $b < c\leqq 15$ より $c=14$ である。このとき
$$
\frac1b=\frac13-\frac17-\frac1{14}=\frac5{42}
$$
となり $b=\frac{42}{5}\notin\mathbb{Z}$ である。
以上より $S_8=S_7=\varnothing$ である。
$\frac13-\frac17-\frac1{14}=\frac{14-6-3}{42}=\frac5{42}$。本解の $a=8$ における $c=\frac{72}{7}$ が $8$ の倍数でない(整数ですらない)ことと整合する。この議論は,本解の候補制限 (2) と,別解2 の整除条件の初等的な形 $a\mid 3bc$ を接続したものである。
補題2 を範囲 (4) の整数に適用し,分母として使える整数を素因数だけから絞り込む。$a=7,8$ の場合分けをせず,分母の集合が「対」の和集合になることから矛盾を導く。
$a\geqq7$ と仮定し,$D=\lbrace a,b,c\rbrace$ とおく。(4) より $D$ は $\lbrace 7,8,\ldots,15\rbrace$ の3元部分集合である。 補題2 を4つの分母 $a,b,c,3$(符号 $+,+,+,-$)に適用すると,各素数の最大の冪は $D\cup\lbrace 3\rbrace$ の2個以上の元に現れなければならない。
実際の解は 補題2 の条件を満たす。たとえば $(6,10,15)$ と $3$ では,$\ell=2$ の最大冪 $2^1$ は $6,10$ に,$\ell=3$ の最大冪 $3^1$ は $6,15,3$ に,$\ell=5$ の最大冪 $5^1$ は $10,15$ に現れる。一方,近似解 $(7,10,11)$( 1.4 節 )では $11$ が孤立しており,解でないことと整合する。
$p,q$ を互いに素な正の整数とする。$x < y$,$\dfrac1x+\dfrac1y=\dfrac pq$ を満たす正の整数の組 $(x,y)$ と,
$$
d\mid q^2,\qquad 0 < d < q,\qquad d\equiv -q\pmod p
$$
を満たす整数 $d$ とは,$d=px-q$ により一対一に対応する。逆対応は $x=\dfrac{q+d}{p}$,$y=\dfrac{q+q^2/d}{p}$ である。
分母を払うと $pxy=q(x+y)$ であり,両辺に $p$ を掛けて $q^2$ を加えれば
$$
\frac1x+\frac1y=\frac pq\iff (px-q)(py-q)=q^2. \tag{5}
$$
$(x,y)$ を解とし,$d=px-q$,$e=py-q$ とおく。$\frac1x < \frac pq$ より $d > 0$,同様に $e > 0$ であり,$de=q^2$ である。$x < y\iff d < e\iff d^2 < de=q^2\iff d < q$。また $d+q=px$ より $d\equiv-q\pmod p$。
逆に $d$ が条件を満たすとき,$e=\frac{q^2}{d}$ は $e > q > d$ を満たす正の整数である。$de=q^2$ と $d\equiv-q$ より $-qe\equiv q^2\pmod p$ であり,$\gcd(p,q)=1$ より $q$ は $p$ を法として可逆であるから $e\equiv-q\pmod p$。よって $x=\frac{q+d}{p}$,$y=\frac{q+e}{p}$ は $x < y$ を満たす正の整数であり,(5) より解である。二つの対応は互いに逆である。
$(p,q)=(1,3)$ の場合で,条件は $d\mid 9$,$0 < d < 3$ である。$d=1$ に限るから $(a,b)=(4,12)$,$ab=48$。
後半
補題1
より $4\leqq a\leqq8$。$a$ を固定し,
補題3
を $(x,y)=(b,c)$,$\frac pq=R_a$ に適用する。$b > a\iff d=pb-q > pa-q$ であるから,$S_a$ は
$$
d\mid q^2,\qquad \max\lbrace 0,\ pa-q\rbrace < d < q,\qquad d\equiv-q\pmod p \tag{6}
$$
を満たす整数 $d$ と一対一に対応する。
$a=8$ のとき $(p,q)=(5,24)$,$q^2=576=2^6\cdot3^2$ であり,(6) の範囲は $16 < d < 24$ である。この範囲にある $576$ の約数は $d=18$ のみであるが,$18\equiv3$,$-24\equiv1\pmod 5$ であるから合同条件を満たさない。
$a=7$ のとき $(p,q)=(4,21)$,$q^2=441=3^2\cdot7^2$ であり,(6) の範囲は $7 < d < 21$ である。この範囲にある $441$ の約数は $d=9$ のみであるが,$9\equiv1$,$-21\equiv3\pmod 4$ であるから合同条件を満たさない。
$a=6$ のとき $(p,q)=(1,6)$ であり,(6) は $d\mid36$,$0 < d < 6$ となる(合同条件は自明)。$d\in\lbrace 1,2,3,4\rbrace$ であり,
$$
(b,c)=\left(6+d,\ 6+\frac{36}{d}\right)=(7,42),\ (8,24),\ (9,18),\ (10,15).
$$
以上より $a_{\max}=6$,$N_6=4$ である。
単位分数の等式では,各分母は残りの分母の最小公倍数を割り切る。$a\geqq7$ ならば分母は (4) の狭い範囲に入るので,この整除条件だけで $a=7,8$ が排除される。組数は (1) で数える。
正の整数 $n,x,y,z$ が $\dfrac1x+\dfrac1y+\dfrac1z=\dfrac1n$ を満たすならば,$x\mid\operatorname{lcm}(n,y,z)$ である。
$L=\operatorname{lcm}(n,y,z)$ とおくと,$\dfrac Lx=\dfrac Ln-\dfrac Ly-\dfrac Lz$ の右辺は整数である。よって $x\mid L$。
補題4
は
補題2
の特別な場合でもある。$v_\ell(x) > \max\lbrace v_\ell(n),v_\ell(y),v_\ell(z)\rbrace$ となる素数 $\ell$ があれば,最大冪が $x$ だけに現れるからである。
前半 (1) より $(a-3)(b-3)=9$。$a > 3$ と $a < b$ より $0 < a-3 < b-3$ であるから $(a-3,b-3)=(1,9)$,$(a,b)=(4,12)$,$ab=48$。
後半
補題1
より $4\leqq a\leqq8$ である。$a\geqq7$ と仮定すると (4) が成り立つ。
$a=8$ のとき,
補題4
より $8\mid\operatorname{lcm}(3,b,c)$ である。$v_2(3)=0$ であるから $b,c$ の一方が $8$ の倍数でなければならないが,$9\leqq b < c\leqq15$ に $8$ の倍数はない。
$a=7$ のとき,$7\mid\operatorname{lcm}(3,b,c)$ であり,$7$ は素数であるから $b,c$ の一方は $7$ の倍数である。$8\leqq b < c\leqq 15$ よりそれは $14$ に限る。残りの分母を $d$ とすると
$$
\frac1d=\frac13-\frac17-\frac1{14}=\frac5{42},\qquad d=\frac{42}{5}\notin\mathbb{Z}.
$$
よって $a\leqq6$ である。
$a=6$ のとき,(1) より $\frac1b+\frac1c=\frac16\iff(b-6)(c-6)=36$。$6 < b < c$ より $0 < b-6 < c-6$ であり,$(b-6)^2 < 36$,すなわち $0 < b-6 < 6$。$36$ の約数でこの範囲にあるものは $1,2,3,4$ であり,それぞれ $c=6+\frac{36}{b-6} > b$ を与える。よって $N_6=4$ であり,$a_{\max}=6$ である。
$b,c$ を個別に求めず,和 $s=b+c$ の可動範囲を調べる。等式から $p\mid s$ が従い,相加相乗平均と $b,c$ の下限から $s$ は短い区間に閉じ込められる。区間内に許される整数がなければ解はない。
$p,q$ を互いに素な正の整数,$m$ を正の整数とし,正の整数 $b < c$ が $b,c\geqq m$ と $\dfrac1b+\dfrac1c=\dfrac pq$ を満たすとする。このとき $s=b+c$ は
$$
p\mid s,\qquad s > \frac{4q}{p}
$$
を満たし,さらに $pm > q$ ならば
$$
s\leqq\frac{pm^2}{pm-q}. \tag{7}
$$
等式より $pbc=qs$ であり,$\gcd(p,q)=1$ より $p\mid s$。$b < c$ より $s^2=(b+c)^2 > 4bc=\dfrac{4q}{p}s$,$s > 0$ で割って $s > \dfrac{4q}{p}$。また $(b-m)(c-m)\geqq0$ より $bc\geqq m(s-m)$,すなわち $\dfrac qp s\geqq ms-m^2$。$pm > q$ のとき整理して (7) を得る。
前半は (1) により $(a,b)=(4,12)$,$ab=48$ である。後半では
補題1
より $4\leqq a\leqq8$ であり,$a$ を固定して
補題5
を $m=a+1$ で用いる。
$a=8$ のとき $(p,q,m)=(5,24,9)$,$pm-q=21 > 0$ であり,
$$
19 < \frac{96}{5} < s\leqq\frac{135}{7} < 20.
$$
この区間に整数は存在しない。
$a=7$ のとき $(p,q,m)=(4,21,8)$,$pm-q=11 > 0$ であり,
$$
21 < s\leqq\frac{256}{11} < 24,\qquad 4\mid s.
$$
$s\in\lbrace 22,23\rbrace$ はいずれも $4$ の倍数でない。
よって $S_8=S_7=\varnothing$ である。$a=6$ のときは $bc=6s$ であり,$t=c-b > 0$ とおくと $t^2=s^2-4bc=s^2-24s$,すなわち
$$
(s-12)^2-t^2=144,\qquad (s-12-t)(s-12+t)=144.
$$
$s-12-t=2(b-6)$,$s-12+t=2(c-6)$ であるから $(b-6)(c-6)=36$ となり,
3.4 節
と同様に4組を得る。以上より $a_{\max}=6$,$N_6=4$ である。
$b,c$ を「大きさ」$g=\gcd(b,c)$ と「形」(既約比 $u:v$)に分離する。互いに素な $u,v$ について $\gcd(uv,u+v)=1$ が成り立つことから,積と和に関する二つの整除条件が得られる。
$p,q$ を互いに素な正の整数とする。$x < y$,$\dfrac1x+\dfrac1y=\dfrac pq$ を満たす正の整数の組 $(x,y)$ と,
$$
1\leqq u < v,\qquad \gcd(u,v)=1,\qquad uv\mid q,\qquad p\mid(u+v)
$$
を満たす整数の組 $(u,v)$ とは,$g=\gcd(x,y)$,$x=gu$,$y=gv$ により一対一に対応する。逆対応は $g=\dfrac{q}{uv}\cdot\dfrac{u+v}{p}$ で与えられる。
$(x,y)$ を解とし,$g=\gcd(x,y)$,$x=gu$,$y=gv$ とおくと $\gcd(u,v)=1$,$u < v$ であり,等式は $pguv=q(u+v)$ となる。素数 $\ell$ が $uv$ と $u+v$ をともに割り切れば,$\ell$ は $u,v$ の一方を割り切り,したがって他方も割り切るので $\gcd(u,v)=1$ に反する。よって $\gcd(uv,u+v)=1$ であり,$uv\mid q(u+v)$ から $uv\mid q$ を得る。また $p\mid q(u+v)$ と $\gcd(p,q)=1$ から $p\mid(u+v)$。
逆に $(u,v)$ が条件を満たすとき,$g=\frac q{uv}\cdot\frac{u+v}{p}$ は正の整数であり,$x=gu$,$y=gv$ は $pguv=q(u+v)$,すなわち元の等式を満たす。$\gcd(x,y)=g\gcd(u,v)=g$ であるから,二つの対応は互いに逆である。
$b=gu$ とすると $b=\dfrac qp\left(1+\dfrac uv\right)$ であるから,
$$
b > a\iff \frac uv > \frac{ap}{q}-1. \tag{8}
$$
前半 $(p,q)=(1,3)$ で $uv\mid3$,$u < v$,$\gcd(u,v)=1$ を満たすのは $(u,v)=(1,3)$ のみである。$g=\frac{3\cdot4}{3}=4$ より $(a,b)=(4,12)$,$ab=48$。
後半
補題1
より $4\leqq a\leqq8$ である。
$a=8$ のとき $(p,q)=(5,24)$ で,(8) は $\frac uv > \frac23$ となる。$uv\mid24$,$\gcd(u,v)=1$,$u < v$ を満たす組は $(1,2),(1,3),(1,4),(1,6),(1,8),(1,12),(1,24),(2,3),(3,4),(3,8)$ であり,$\frac23 < \frac uv < 1$ を満たすのは $(3,4)$ のみである。$u+v=7$ は $5$ の倍数でないから不適。
$a=7$ のとき $(p,q)=(4,21)$ で,(8) は $\frac uv > \frac13$ となる。$uv\mid21$ を満たす組 $(1,3),(1,7),(1,21),(3,7)$ のうち $\frac13 < \frac uv$ を満たすのは $(3,7)$ のみであり,$u+v=10$ は $4$ の倍数でないから不適。
$a=6$ のとき $(p,q)=(1,6)$ で,(8) は $\frac uv > 0$ となり自明に成り立つ。$uv\mid6$ を満たす既約比は $(1,2),(1,3),(1,6),(2,3)$ の4組であり,$g=\frac{6(u+v)}{uv}$ から
| $(u,v)$ | $(1,6)$ | $(1,3)$ | $(1,2)$ | $(2,3)$ |
|---|---|---|---|---|
| $g$ | $7$ | $8$ | $9$ | $5$ |
| $(b,c)$ | $(7,42)$ | $(8,24)$ | $(9,18)$ | $(10,15)$ |
を得る。以上より $a_{\max}=6$,$N_6=4$ である。
$r=\frac q{uv}$ とおくと $q=ruv$,$g=\frac{r(u+v)}{p}$ であり,
$$
pb-q=ru^2,\qquad pc-q=rv^2.
$$
すなわち別解1 の約数対は $(d,e)=(ru^2,rv^2)$ である。
| 場合 | $(u,v)$ | $r$ | $(d,e)=(ru^2,rv^2)$ | 別解1 との対応 |
|---|---|---|---|---|
| $a=6$ | $(1,6)$ | $1$ | $(1,36)$ | $d=1$ |
| $a=6$ | $(1,3)$ | $2$ | $(2,18)$ | $d=2$ |
| $a=6$ | $(1,2)$ | $3$ | $(3,12)$ | $d=3$ |
| $a=6$ | $(2,3)$ | $1$ | $(4,9)$ | $d=4$ |
| $a=8$ | $(3,4)$ | $2$ | $(18,32)$ | 合同条件で不適の $d=18$ |
| $a=7$ | $(3,7)$ | $1$ | $(9,49)$ | 合同条件で不適の $d=9$ |
$d+q=ru(u+v)$ であり,$\gcd(p,ru)=1$($ru$ は $q$ の約数)であるから,$d\equiv-q\pmod p\iff p\mid(u+v)$ が成り立つ。別解1 の合同条件と本解法の和の整除条件は同じ条件である。
以下は独立の解法とは数えず,既出の解法の表現の違いまたは部分的な短縮として扱う。
| 解法 | 主に利用する構造 | 排除($a=7,8$) | 構成・数え上げ($a=6$) | 必要な事実 | 注意点 |
|---|---|---|---|---|---|
| 本解 | 逆数の大小と順序 | $b$ の候補 $1+3$ 個を代入 | $b$ の候補 $5$ 個を代入 | 不等式のみ | (2) に $b > a$ と $b < c$ の両方を入れる |
| 3.1 節 | 等式の整除 | $a\mid bc$ と (4) | 扱わない | 整除の基本 | $\gcd(a,3)=1$ の確認 |
| 3.2 節 | 素数冪の共有 | 場合分けなしで一括 | 扱わない | 補題2 | 範囲 (4) が前提 |
| 別解1 | 中心移動と約数 | 約数1個と合同条件 | 約数4個 | 補題3 | $p > 1$ で合同条件を落とさない |
| 別解2 | 最小公倍数 | 倍数の有無の確認 | (1) による約数 | 補題4 | 補題は必要条件にすぎない |
| 参考解1 | 対称和 | 区間端点の計算 | 別解1 に帰着 | 補題5 | $pm > q$ と不等号の向き |
| 参考解2 | 既約比 | 既約比1組と整除 | 既約比4組 | 補題6 | $\gcd(u,v)=1$ が本質 |
試験場での第一選択は本解である。必要な事実が不等式だけであり,代入は $9$ 回で済み,各段階に検算点がある。答案の短さでは,(E) を別解2,(C) を (1) による約数で処理する組合せが最もよい。別解1 は解と約数の全単射を与えるため,組数の完全性を最も直接に保証する。参考解1 は「区間に整数がない」と「区間に指定の倍数がない」という二種類の離散的障害の区別を,参考解2 は解を共通倍率と既約比に分解する見方を示す。別解1 と参考解2 は $(d,e)=(ru^2,rv^2)$ により同値であり,同じ分類を異なる入口から与える。
本問から抽出される,単位分数の和 $\sum_{i=1}^{k}\frac1{x_i}=r$($x_1 < \cdots < x_k$)に関する整数問題の探索手順を述べる。
| 症状 | 検討する表現・道具 | 本問での例 |
|---|---|---|
| 変数の候補が数個に絞れる | 逐次決定と直接代入 | 本解 |
| 二つの逆数の和が一定 | 中心移動 $(px-q)(py-q)=q^2$ | 別解1 |
| 残差の分子 $p$ が $1$ でない | 合同条件,既約比と $p\mid(u+v)$ | 別解1,参考解2 |
| 大きな分母の非存在を示したい | 最大素数冪の共有,最小公倍数 | 別解2,3.2 節 |
| 実数解はあるが整数解がない | 整数性に由来する障害を探す | 1.4 節 |
| 和と積が一次関係で結ばれる | 対称和の区間と整除 | 参考解1 |
| 解の個数が問われる | 約数との全単射,約数関数 | 別解1,5.3 節 |
| 解の候補を予想したい | 入れ子表示,等分からの構成 | 1.5 節 |
右辺を $\frac1n$ に変えると,最小分母の範囲は $n < a < 3n$ となり,等分 $\frac1n=\frac1{2n}+\frac1{2n}$ から $a=2n$ の解が常に構成できる( 命題8 )。本問の $n=3$ は,この自然な候補が最大値に一致し,しかも上位候補 $a=7,8$ の排除に整数性の議論を要する設定である。$n=4$ にすると最大値は $10$ となり( 5.5 節 ),最大値の発見そのものが探索問題に変わる。排除の難しさは,上位候補における残差の分子 $p$ と,$q^2$ の約数が狭い区間にいくつあるかで決まる。候補数・合同条件・区間幅の三つを調整することで難易度を設計できる。
| 事項 | 高校数学での扱い | 一般理論 |
|---|---|---|
| 順序による有限化 | 逆数の大小 | 単位分数表示の有限性と分母の上界 |
| 二単位分数の解 | 因数分解と約数の列挙 | 直角双曲線上の格子点,約数関数 $\tau$ |
| 合同条件 | 余りによる分類 | 剰余環 $\mathbb{Z}/p\mathbb{Z}$ における可逆元 |
| 最小公倍数の補題 | 通分 | $\ell$ 進付値と非アルキメデス的三角不等式 |
| 大小評価と整除の併用 | 不等式と倍数判定 | $\mathbb{Q}$ 上の絶対値の分類(Ostrowski の定理) |
| 既約比による表示 | 最大公約数と互いに素 | 解の大きさと形の分離(原始解への分解) |
| 降順の場合分け | 場合分け | 分枝限定法 |
本解,別解1・2,参考解1・2 と 3.1〜3.2 節はすべて左欄の範囲で完結する。右欄は,それらの計算が成り立つ理由を説明する理論である。
正の有理数 $r$ と正の整数 $k$ に対し,$x_1 < x_2 < \cdots < x_k$ かつ $\displaystyle\sum_{i=1}^{k}\frac1{x_i}=r$ を満たす正の整数の組 $(x_1,\ldots,x_k)$ は有限個である。
$k$ に関する帰納法による。$k=1$ では $x_1=\frac1r$ に限る。$k\geqq2$ とすると, 補題1 より $x_1$ は区間 $\left(\frac1r,\frac kr\right)$ 内の整数であり,有限個である。各 $x_1$ に対し $r'=r-\frac1{x_1}$ とおくと,$(x_2,\ldots,x_k)$ は $\sum_{i=2}^{k}\frac1{x_i}=r'$ を満たす $k-1$ 項の組である。$r'\leqq0$ ならそのような組は存在せず,$r' > 0$ なら帰納法の仮定により有限個である。
この証明は探索の手続きそのものであり,本解は $k=3$,$r=\frac13$ の場合にあたる。分母の大きさについては,$1$ を $k$ 個の単位分数の和で表すとき,最大の分母が Sylvester 数列 $u_1=2$,$u_{j+1}=u_j^2-u_j+1$($2,3,7,43,1807,\ldots$)を用いて $u_k-1$ 以下に抑えられることが知られている(Kellogg 1921,Curtiss 1922)。$1=\frac12+\frac13+\frac17+\frac1{42}$ はこの上界 $42=u_4-1$ を実現する。また $0 < r < 1$ を満たす任意の有理数 $r$ は,「残差を超えない最大の単位分数を順に取る」貪欲法により,有限個の相異なる単位分数の和に表される。残差 $\frac xy$($0 < x < y$)から $\frac1n$($n=\lceil y/x\rceil\geqq2$)を引くと,分子は $nx-y < x$ と真に減少するので手続きは有限回で終わる。また $\frac xy < \frac1{n-1}$ より新しい残差は $\frac1{n(n-1)}$ 未満となり,次の分母は $n$ より大きい。
補題3
より,$x < y$,$\frac1x+\frac1y=\frac pq$ の解の個数は,$q^2$ の約数 $d$ で $d < q$ かつ $d\equiv-q\pmod p$ を満たすものの個数に等しい。$p=1$,$q=n$ のとき合同条件は自明である。$n^2$ の約数は $d\leftrightarrow\frac{n^2}{d}$ により $d < n$ のものと $d > n$ のものが対になり,$d=n$ だけが自分自身と対になるから,
$$
\left(\frac1x+\frac1y=\frac1n,\ x < y\ \text{の解の個数}\right)=\frac{\tau(n^2)-1}{2},\qquad n=\prod_i\ell_i^{e_i}\implies\tau(n^2)=\prod_i(2e_i+1).
$$
$n=3,6,12$ では $\tau(n^2)=3,9,15$ より解の個数は $1,4,7$ であり,それぞれ前半の解,$N_6$,$N_4$ に一致する($a=4$ では $b > 4$ が自動的に成り立つ)。$p > 1$ では合同条件が個数を減らしうる。$a=5$($\frac pq=\frac2{15}$)では $225$ の $15$ 未満の約数 $1,3,5,9$ がすべて奇数なので4個とも残り,$a=7,8$ では範囲内の唯一の約数が合同条件で除かれる。
幾何学的には,$X=px-q$,$Y=py-q$ とおくと,解は直角双曲線 $XY=q^2$ 上の格子点のうち,$X\equiv Y\equiv-q\pmod p$ と $0 < X < Y$ を満たすものに対応する。
補題6
はこれらを既約比 $u:v$ と倍率 $r=\frac q{uv}$ により $(X,Y)=(ru^2,rv^2)$ と表す。逆に $de=q^2$ のとき $r=\gcd(d,e)$ とすれば $\frac dr\cdot\frac er=\left(\frac qr\right)^2$ であり,互いに素な二数の積が平方数なら各数が平方数であることから $d=ru^2$,$e=rv^2$ を得る。この事実が二つの記述の同値性を支えている。
素数 $\ell$ について,$0$ でない有理数の $\ell$ 進付値は $v_\ell(xy)=v_\ell(x)+v_\ell(y)$ と
$$
v_\ell(x+y)\geqq\min\lbrace v_\ell(x),v_\ell(y)\rbrace\quad(x+y\neq0),\qquad v_\ell(x)\neq v_\ell(y)\implies v_\ell(x+y)=\min\lbrace v_\ell(x),v_\ell(y)\rbrace
$$
を満たす。$\lvert x\rvert_\ell=\ell^{-v_\ell(x)}$ とおけば,これは強い三角不等式 $\lvert x+y\rvert_\ell\leqq\max\lbrace\lvert x\rvert_\ell,\lvert y\rvert_\ell\rbrace$ であり,$\lvert\cdot\rvert_\ell$ は非アルキメデス的絶対値である。帰結として,有理数の和において最小の付値をとる項がただ一つならば,その和は $0$ でない。
補題2
は,各項 $\frac{\varepsilon_i}{m_i}$ の付値が $-v_\ell(m_i)$ であることに注意して,和が $0$ であることからこの状況を排除したものにほかならない。
Ostrowski の定理によれば,$\mathbb{Q}$ 上の自明でない絶対値は,通常の絶対値 $\lvert\cdot\rvert_\infty$ か,ある素数 $\ell$ に対する $\lvert\cdot\rvert_\ell$ のいずれかと同値である。本問の (E) の証明は,$\lvert\cdot\rvert_\infty$ による大小評価(
補題1
,(4))で探索範囲を有限にし,$\lvert\cdot\rvert_\ell$($\ell=2,7$ など)による評価で候補を消すという,二種類の絶対値の併用とみなせる。
同じ視点は解の存在も説明する。$\frac1b+\frac1c=\frac16$ において $L=\operatorname{lcm}(6,b)$,$K=\frac L6-\frac Lb$ とおくと $\frac1c=\frac KL$ であり,$c\in\mathbb{Z}\iff K\mid L$ である。$L$ の各素因数について,$6$ と $b$ の指数の最大値が一方だけでとられる(最大冪を共有しない)ならば,$\frac L6,\frac Lb$ の一方だけがその素数で割り切れないので $K$ はその素数で割り切れず,$\gcd(K,L)=1$ となる。このとき $c\in\mathbb{Z}\iff K=1\iff c=L$ である。
| $b$ | $L=\operatorname{lcm}(6,b)$ | $K=\frac L6-\frac Lb$ | 最大冪の共有 | $c=\frac LK$ |
|---|---|---|---|---|
| $7$ | $42$ | $1$ | なし | $42$ |
| $8$ | $24$ | $1$ | なし | $24$ |
| $9$ | $18$ | $1$ | なし | $18$ |
| $10$ | $30$ | $2$ | $2^1$ を共有 | $15$ |
| $11$ | $66$ | $5$ | なし | $\frac{66}{5}$ |
$b=7,8,9$ では最大冪の共有がなく,$K=1$ となって $c=L$ が実現する。$b=10$ では $2^1$ の共有により $K=2$ が $L$ を割り切る。$b=11$ では共有がなく $K=5 > 1$ であるから $c$ は整数にならない。
正の整数 $n$ に対し,$a < b < c$,$\frac1a+\frac1b+\frac1c=\frac1n$ を満たす正の整数の組 $(a,b,c)$ における $a$ の最大値を $M(n)$ とする( 命題7 より組は有限個であり,次の命題より空でない)。本問は $M(3)=6$ を求めている。
すべての正の整数 $n$ について $2n\leqq M(n) < 3n$ である。
上界は
補題1
($k=3$,$r=\frac1n$)による。下界は,(1) から得られる恒等式
$$
\frac1n=\frac1{2n}+\frac1{2n+1}+\frac1{2n(2n+1)}
$$
において $2n < 2n+1 < 2n(2n+1)$ が成り立つことによる。
補題1 の区間を用いた計算機による全探索で,$n\leqq12$ の値は次のとおりである。
| $n$ | $M(n)$ | $2n$ | 最大を与える組 $(a,b,c)$ |
|---|---|---|---|
| $1$ | $2$ | $2$ | $(2,3,6)$ |
| $2$ | $4$ | $4$ | $(4,5,20),\ (4,6,12)$ |
| $3$ | $6$ | $6$ | $(6,7,42),\ (6,8,24),\ (6,9,18),\ (6,10,15)$ |
| $4$ | $10$ | $8$ | $(10,12,15)$ |
| $5$ | $12$ | $10$ | $(12,15,20)$ |
| $6$ | $14$ | $12$ | $(14,15,35)$ |
| $7$ | $15$ | $14$ | $(15,21,35)$ |
| $8$ | $21$ | $16$ | $(21,24,28)$ |
| $9$ | $21$ | $18$ | $(21,28,36)$ |
| $10$ | $24$ | $20$ | $(24,30,40)$ |
| $11$ | $22$ | $22$ | $(22,23,506),\ (22,24,264),\ (22,26,143),\ (22,33,66)$ |
| $12$ | $30$ | $24$ | $(30,36,45)$ |
この範囲で $M(n)=2n$ となるのは $n=1,2,3,11$ のみである。$M(n) > 2n$ の場合の最大を与える組は,$\frac1{10}+\frac1{12}+\frac1{15}=\frac{6+5+4}{60}$ のように,三つの分母が小さな公倍数 $L$ を共有し,$L$ の約数による分子の和として $\frac1n$ を作る形をとる。本問の $n=3$ は,この範囲で等分による自然な候補がそのまま最大値となる場合の一つである。
$\frac1x+\frac1y=\frac1K$ はレンズの結像公式,並列抵抗の合成,調和平均などに現れる。これらは (1) の双曲線構造を直観的に説明し,実数の範囲の評価(
補題1
)を与えるが,整数性については何も述べない。整数格子を保つ条件を加えない限り,$a=7,8$ の非存在は導けない(
1.4 節
)。
三角形の高さによるモデルには,さらに実現可能性の制約がある。面積 $\Delta$,内接円半径 $\rho$ の三角形で,辺 $x,y,z$ に対する高さを $h_x,h_y,h_z$ とすると,$x=\frac{2\Delta}{h_x}$ などより
$$
\frac1{h_x}+\frac1{h_y}+\frac1{h_z}=\frac{x+y+z}{2\Delta}=\frac1\rho
$$
が成り立つ。一方,正の数 $a < b < c$ がある三角形の高さの組となるのは,辺の比 $\frac1a:\frac1b:\frac1c$ が三角不等式を満たすとき,すなわち $\frac1a < \frac1b+\frac1c$ のときに限る。本問の解はすべて $a\leqq6$ を満たすから
$$
\frac1b+\frac1c=\frac13-\frac1a\leqq\frac1a
$$
となり(等号は $a=6$),どの解も非退化三角形を与えない。したがってこのモデルは本問の解集合を表現しない。
相異なる単位分数の和による分数の表示は古代エジプトの計算法に由来し,エジプト分数と呼ばれる。Rhind パピルス(紀元前1550年頃の写本)には,$\frac2n$ を単位分数の和に分解した表が収められている。Fibonacci は『算盤の書』(Liber Abaci,1202年)で貪欲法に相当する手続きを記し,Sylvester(1880年)がこれを論じた。単位分数表示の分母の上界は Kellogg(1921年)と Curtiss(1922年)により Sylvester 数列を用いて与えられた。3項の表示 $\frac4n=\frac1x+\frac1y+\frac1z$ がすべての $n\geqq2$ について存在するかという問いは Erdős–Straus 予想(1948年)として知られ,$n$ の剰余類ごとに分解の恒等式を与える方法などで研究されてきた。本問の (1) や分割恒等式は,こうした研究で用いられる最も基本的な代数的恒等式である。
| 空欄 | 答 | 内容 |
|---|---|---|
| $\boxed{\text{1}}$ | $48$ | 唯一の組 $(a,b)=(4,12)$ |
| $\boxed{\text{2}}$ | $4$ | $a_{\max}=6$,$(6,7,42),\ (6,8,24),\ (6,9,18),\ (6,10,15)$ |