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トポロジーを用いた代数学の基本定理の証明

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トポロジーを使って, 代数学の基本定理の証明をしてみたいと思います。

代数学の基本定理とは

代数学の基本定理

f(x)C[x]は, 定数多項式でないとする。このとき, f(α)=0となるαCが存在する。

この定理を代数学の基本定理というのであった。すなわち, 定数多項式でない複素係数のn次方程式は, すべての解が複素数となる。だから「実数係数のn次方程式が実数解を必ずもつわけではないから, 複素数を考えよう」と同じようなことは考えなくてもよいということである。

用語の準備

以降S1C内の円周, つまり
S1:={zC|z|=1}
とします。

持ち上げ

p:RCp(t)=e2πit(tR)で定める。1S1を始点とする道α:[0,1]S1に対して, pα~=αかつ, α~(0)=0を満たすα~:[0,1]Rが一意的に存在する。このα~0を始点とするα持ち上げという。

写像度

S1内の1S1を基点とする閉道αに対して
degα=α~(1)
とすると, degαZで, degαα写像度という。そして, S1内の1S1を基点とする閉道α,βに対し, αβがホモトープであることとdegα=degβは同値である。

この2つの定理の証明は今回はしないが, 例をひとつ挙げよう。

持ち上げと写像度の例

nを正の整数とする。α:[0,1]S1
α(s)=e2nπis(s[0,1])
で定めると, α~
α~(s)=ns(s[0,1])
で, そして
degα=n
である。

代数学の基本定理の証明

大体の証明

f(x)がモニックなときに, 上の主張が成り立つことを示せば十分である。背理法で示そう。あるf(x)C[x]が存在して

  1. f(x)はモニック
  2. f(x)は定数多項式ではない
  3. 任意のzCに対し, f(z)0

が成り立つとする。
nf(x):=xn+an1xn1++a0C[x]
が, この(i), (ii), (iii)をすべて満たすとする。そうすると, rを非負の実数として, S1内の1を基点とするループαr:[0,1]S1
αr(s)=f(re2πis)|f(re2πis)||f(r)|f(r)(s[0,1])
で定めることができ, αrα0はホモトープである。なぜなら, 写像H:[0,1]×[0,1]S1
H(s,t):=f((1t)re2πis)|f((1t)re2πis)||f((1t)r)|f((1t)r)((s,t)[0,1]×[0,1])
と定めれば, Hは連続で,
{H(s,0)=αr(s)(s[0,1])H(s,1)=α0(s)(s[0,1])H(0,t)=H(1,t)=1(t[0,1])
であるからである。次に, S1内の1を基点とするループβ:[0,1]S1
β(s)=e2πisn(s[0,1])
で定めると, 実は, rが十分大きければ, αrβはホモトープである(後で示す)。以上から, α0βはホモトープであるので
degα0=degβ
が成り立つ。ところが, α0は定値道なので, degα0=0で, 一方, βは定義から, degβ=nであるから
degα0degβ
である。これは矛盾である。したがって, 背理法から, 代数学の基本定理が示された。

後で示すと書いた主張の証明

r>0が十分大きければ, αrβはホモトープである。

|a0|rn+|a1|rn1++|an1|r0(r0)
なので,r>0が十分大きいとき
12>|a0|rn+|a1|rn1++|an1|r,
つまり
12rn>|a0|+|a1|r++|an1|rn1()
である。()を満たすrを任意に固定する。また
|f(re2πis)||(re2πis)n||a0++an1re2πis|()|(re2πis)n|(|a0|++|an1||re2πis|)()=rn(|a0|++|an1|rn1)()
である。(),()を用いると
|f(re2πis)|>12rn()
が成り立つ。よって, 任意の(s,t)[0,1]×[0,1]に対し
|(1t)f(re2πis)+tre2πisn|=|f(re2πis)+t(f(re2πis)+re2πisn)||f(re2πis)|t|j=0n1aj(re2πins)j|>12rn|j=0n1aj(re2πins)j|=|f(re2πis)|12rn>0(())
このrを用いて, 写像G:[0,1]×[0,1]R
G(s,t):=(1t)f(re2πis)+tre2πisn((s,t)[0,1]×[0,1])
で定めることができ, 写像H[0,1]×[0,1]S1
H(s,t):=G(s,t)|G(s,t)||G(0,t)|G(0,t)((s,t)[0,1]×[0,1])
で定めると, Hは連続で
{H(s,0)=αr(s)(s[0,1])H(s,1)=β(s)(s[0,1])H(0,t)=H(1,t)=1(t[0,1])
なので, αrβはホモトープである。

終わりに

ある程度トポロジーが分かっている人向けの内容になってしまった。本当は, ホモトープとかもっと前のとこから話さないといけなんだけどな...

投稿日:2024520
更新日:2024526
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投稿者

fancy
fancy
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6588
自分の勉強用に投稿するのでn番煎じのものが多いよ

コメント

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