0
現代数学解説
文献あり

バーンサイドの補題の証明

850
1

バーンサイドの補題

バーンサイドの補題

|X/G|=1|G|gG|Xg|
が成り立つ。

を証明する。証明を懇切丁寧に書いただけなので, 群論に一回も触れたことはない人は読むのが厳しいと思います。応用例などはググれば出てくると思うので, 各自調べてください。数え上げ問題にとっても有効な定理です。時間を見つけて, そこも書いたりしようと思います。

用語の準備

Gを群, Xを集合とする。写像φ:G×XX,(g,h)gx
(1) xX,1Gx=x
(2) g,hG,xX,(gh)x=g(hx)
を満たすとき, GXに作用するという。

以後, G有限群X有限集合とし, さらにGXに作用しているとします。

軌道

xXに対し, O(x)X
O(x):={gxgG}
で定め, これをxの軌道という。

不動点全体の集合

gGとする。XgX
Xg:={xXgx=x}
で定め, これをgによるXの不動点全体の集合と呼ぶことにする。

固定群

xXに対し, Stab(x)G
Stab(x):={gGgx=x}
で定め, これをxの固定群という。

不動点全体の集合と固定群を混同しないように注意せよ。

固定群は部分群

Stab(x):={gGgx=x}
Gの部分群である。

結合法則は明らかだから, 演算で閉じていることと, 単位元と逆元をともにもつことを示せばよい。g,hStab(x)とする。
(gh)x=g(hx)((2))=gx((1))=x((1))
であるから, Stab(x)は演算で閉じている。そして
1Gx=x((1))
であるから, 1GStab(x)である。
gx=x
なので
g1(gx)=g1x,
つまり
(g1g)x=g1x((2))
で, g1g=1gなので
1Gx=g1x
である。すなわち
g1x=x((1))
である。よって, g1Stab(x)である。

以上から,
Stab(x):={gGgx=x}
Gの部分群である。

集合Xに関係
xygG,y=gx
で定めると, は同値関係である。もちろん, x,yXの元である。

x,y,zを集合Xの任意の元とする。xxは, 群の作用の定義(1)1x=xからすぐにわかる。xyであるとき
gG,y=gx
なので
gG,g1y=g1(gx)
群の作用の定義の(2)よりg1(gx)=(g1g)xで, 当然g1g=1Gだから
gG,g1y=x
である。よって
hG,x=hy
なので, yxである。xyyzが成り立つとすると
gG,y=gx,hG,z=hy
なので
g,hG,z=h(gx)
である。群の作用の定義(2)を用いると
g,hG,z=(hg)x
なので
gG,z=gx
が成り立つ。以上から, X上の関係が, 同値関係であることが示された。

以降, X上の関係は上で定義した同値関係とする。

さっきので同値類と商集合をつくる

xXに対し, C(x)
C(x):={yXxy}
で定め, X/G
X/G:={C(x)xX}
で定める。すなわち, C(x)とは, xの同値類で, X/Gで定まる商集合である(剰余群ではないですよ)。

バーンサイドの補題

いよいよ本題

バーンサイドの補題

|X/G|=1|G|gG|Xg|
が成り立つ。

を示していこうと思います。そのために補題をいくつか示します。

補題の証明

xyO(x)=O(y)
が成り立つ。言い換えれば
C(x)=C(y)O(x)=O(y)
である。

まず, 右向きの矢印が成り立つのを示そう。xyとする。このとき
gG,y=gx
だから
O(x)O(y)
である。そして, xyなら, yxであったから
O(x)O(y)
でもある。よって
O(x)=O(y)
が成り立つ。次に, 逆が成り立つことを示そう。O(x)=O(y)であるとする。gxO(x)
hG,hy=gx
だから
hG,y=(h1g)x
よって, xyである。以上から
xyO(x)=O(y)
が成り立つ。

xX1|O(x)|=|X/G|
が成り立つ。

xX1|O(x)|=(1|O(x)|+1|O(y)|++1|O(z)|)+(1|O(x)|+1|O(y)|++1|O(z)|)++(1|O(x)|+1|O(y)|++1|O(z)|)=(1|O(x)|+1|O(x)|++1|O(x)|)+(1|O(x)|+1|O(x)|++1|O(x)|)++(1|O(x)|+1|O(x)|++1|O(x)|)=1|O(x)||O(x)|+1|O(x)||O(x)|++1|O(x)||O(x)|=1+1+1=|X/G|

1段目の右辺は, x,y,,zC(x),x,y,,zC(x),,x,y,,zC(x)で別々で足し算しようということである。そうすると, 補題5を用いると2段目の右辺のようにかける。そして, また補題5を用いると|C(x)|=|O(x)|であるので2段目の1|O(x)||O(x)|個あるとわかるので3段目のように書ける。4段目の1は, |X/G|個ある。なぜなら, 4段目はこれは異なる軌道は何種類ありますかということを聞いているのだが, またまた補題5から異なる同値類は何種類ありますかという問いに変わるからだ。それは当然|X/G|個である。

gG|Xg|=xG|Stab(x)|
が成り立つ。

gGの任意の元として, YgG×X
Yg:={(g,x)G×Xgx=x},
そして, xを集合Xの元としてY(x)G×X
Y(x):={(g,x)G×XgG,gx=x}
と定めると, 明らかに
gG|Yg|=xX|Y(x)|
である(g,xのどちらを固定するかの違い。受験数学の格子点の数え上げのときに用いた考え方に近い)。そして, 当然
gG|Yg|=gG|Xg|
である。なぜなら, Xgx(g,x)Ygが全単射だからである。そして
xG|Y(x)|=xG|Stab(x)|
である。なぜなら, Stab(x)g(g,x)Y(x)が全単射だからである。したがって
gG|Xg|=xG|Stab(x)|
を得る。

|Stab(x)|=|G||O(x)|
が成り立つ。

ラグランジュの定理から
|Stab(x)|=|G||G/Stab(x)|
なので
|G/Stab(x)|=|O(x)|
が成り立つことを示せばよい。そのためにf:G/Stab(x)O(x)
f(gStab(x))=g(x)(gStab(x)G/Stab(x))
がwell-definedでしかも全単射であることを示そう。
gStab(x)=hStab(x)g1hStab(x)(g1h)x=x(Stab(x))gx=hx((2))
なので, fは写像としてwell-definedで, 単射であることが示された。全射は自明である。なぜなら任意のO(x)の元gxに対し, G/Stab(x)の元gStab(x)がとれるからである。

注意ではなく補足だが, fがwell-definedと単射であることを示した部分は, 右向きの矢印がwell-definedで, 逆が単射の証明である。

バーンサイドの補題の証明

さあ, バーンサイドの補題を示しましょう。

xX|Stab(x)|=xX|G||O(x)|(8)=|G|xX1|O(x)|=|G||X/G|(5)

gG|Xg|=xG|Stab(x)|(7)
なので
xG|Xg|=|G||X/G|,
つまり
|X/G|=1|G|gG|Xg|
を得る。

感想

いやー大変ですね笑笑

参考文献

[1]
新妻弘, 独習ガロア理論, 近代科学社
[2]
雪江明彦, 代数学1群論入門, 日本評論社
[3]
佐久間正樹, 取扱注意!高校数学を大学数学で解く「チート解法」, エール出版社
投稿日:2024526
更新日:202463
OptHub AI Competition

この記事を高評価した人

高評価したユーザはいません

この記事に送られたバッジ

バッジはありません。
バッチを贈って投稿者を応援しよう

バッチを贈ると投稿者に現金やAmazonのギフトカードが還元されます。

投稿者

fancy
fancy
21
6696
自分の勉強用に投稿するのでn番煎じのものが多いよ

コメント

他の人のコメント

コメントはありません。
読み込み中...
読み込み中
  1. バーンサイドの補題
  2. 用語の準備
  3. バーンサイドの補題
  4. 感想
  5. 参考文献