はじめまして。
$\sum_{k =0}^{n}{}_n \mathrm{ C }_k^3$
はFranel Numberと呼ばれていますが、Σを含まない簡潔な表記は見つかっていないようです。今回この有限和の新たな表現を考えました。
大学への数学(2023年の多分6月号)の今月の宿題は、二項係数入り恒等式を証明させる問題でしたが、この問題を私は確率的解釈をすることで証明しました。
そこで、このアイデアをFranel Numberに用いましょう!
3枚のコインABCを同時に投げる試行を$n$回行う。この3枚が同じ回数だけ表が出る確率を$p_n$とする。$p_n$を求めよ。
明らかに$p_n=\sum_{i=0}^{n}{}_n \mathrm{ C }_k^3/2^{3n})$と表せますね。$p_n$に関する式をほかにも導きたいです。そこで次の変数を用意します。
コインA,B,Cの表が出た回数をそれぞれ$a_n,b_n,c_n$とおき、$X_n=\frac{1}{2}({\left| a_n-b_n \right|+\left| b_n-c_n \right|+\left| c_n-a_n \right|)}$と定義します。このとき、$P(X_n=0)=p_n$です。$X_n$が$0$以上$n$以下の整数値をとることは、三角不等式や$0\leq a_n,b_n,c_n\leq n$より分かります。
$P(X_n=k)$を考えます。
$X_n=max(a_n,b_n,c_n)-min(a_n,b_n,c_n)=k$なので、$(max(a_n,b_n,c_n),min(a_n,b_n,c_n))=(n-i,n-k-i)$(ただし$0\leq i\leq n-k$)です。$i$のときの確率を$Y_k,_i$とします。$Y_k,_i$は「3枚のコインを$n$回投げて、最大値が$n-i$、最小値が$n-k-i$である確率」ですから、
$Y_k,_i=(6\sum_{j=n-k-i+1}^{n-i-1}{}{ n \choose n-i }{ n \choose n-k-i }{ n \choose j }+3{ n \choose n-i }{ n \choose n-k-i }({ n \choose n-k-i }+{ n \choose n-i })/2^{3n}$
(第一項は3枚のコインの表が出た回数がすべて違うとき、第二項はそうでないときです)
したがって、$\sum_{k=0}^{n} P(X_n=k)=1$なので、
$P(X_n=0)=1-\sum_{k=1}^{n} P(X_n=k)=1-\sum_{k=1}^{n}\sum_{i=0}^{n-k}Y_k,_i
$
よって、
$\sum_{k=0}^{n}{}_n \mathrm{ C }_k^3=2^{3n}-\sum_{k=1}^{n}\sum_{i=0}^{n-k}(6\sum_{j=n-k-i+1}^{n-i-1}{}{ n \choose n-i }{ n \choose n-k-i }{ n \choose j }+3{ n \choose n-i }{ n \choose n-k-i }({ n \choose n-k-i }+{ n \choose n-i })
\square$
という訳で、Franel Numberは$2^{3n}-\sum_{k=1}^{n}\sum_{i=0}^{n-k}(6\sum_{j=n-k-i+1}^{n-i-1}{}{ n \choose n-i }{ n \choose n-k-i }{ n \choose j }+3{ n \choose n-i }{ n \choose n-k-i }({ n \choose n-k-i }+{ n \choose n-i })$と表されます!
………Σが3重ですね。。。
今回初めてMathlogの記事を書きました。間違い等あれば指摘おねがいします。今回用いた確率解釈はほかにも応用できそう。