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sin版チェビシェフ多項式 ほか

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はじめに

 この記事では何か数式をいじってたときに出てきた関数
fn(x)=k=0n(1)k(n+k2k)(2x)2k
について考察していきます。
 最終的には以下の主張が得られることとなります。

fn(sinθ)=cos(2n+1)θcosθ
が成り立つ。

このことからfnはチェビシェフ多項式
Tn(cosθ)=cosnθ,Un(cosθ)=sin(n+1)θsinθ
sin版のようなものであることがわかります。

母関数

 fn(x)のような関数の性質を考える上では母関数を考えると何かと便利なので
n=0fn(x)yn
がどのように表せるか考えてみます。

k=m(nm)ynm=1(1y)m+1
が成り立つ。

n=0yn=11y
の両辺をm回微分してm!で割ることでわかる。

n=0fn(x)yn=1y12(12x2)y+y2
が成り立つ。

 上の補題に注意すると
n=0fn(x)yn=k=0(1)k(2x)2kn=k(n+k2k)yn=k=0(1)k(2x)2kyk(1y)2k+1=11y11+4x2y(1y)2=1y(1y)2+4x2y=1y12(12x2)y+y2
とわかる。

sin版チェビシェフ多項式

fn(sinθ)=cos(2n+1)θcosθ
が成り立つ。

 x=sinθにおいて
12(12x2)yy2=12(cos2θ)y+y2=(e2iθy)(e2iθy)
と因数分解できることに注意すると
n=0fn(sinθ)yn=1y(e2iθy)(e2iθy)=1eiθ+eiθ(eiθe2iθy+eiθe2iθy)=1eiθ+eiθn=0(e(2n+1)iθ+e(2n+1)iθ)yn=n=0cos(2n+1)θcosθyn
と変形できることかわかる。

 またfn(x)を積分してみると
fn(x)dx=fn(sinθ)cosθdθ=cos(2n+1)θdθ=sin(2n+1)θ2n+1+C
が成り立つので以下が成り立つこともわかります。

Fn(x)=2n+12k=0n(1)k(n+k)!(nk)!(2k+1)!(2x)2k+1
とおくと
Fn(sinθ)=sin(2n+1)θ
が成り立つ。

 ちなみにチェビシェフ多項式の Wikipedia を見てみると
Tn(x)=nk=0n(2)k(n+k1)!(nk)!(2k)!(1x)kUn(x)=k=0n(2)k(n+k+1)!(nk)!(2k+1)!(1x)k
という表示が見受けられます。したがって
Tn(cos2θ)=cos2nθ,Un1(cos2θ)=sin2nθsin2θ
が成り立つことに注意すると以下のような主張も得られます。

Tn(x)=nk=0n(1)k(n+k1)!(nk)!(2k)!(2x)2kUn(x)=k=0n(1)k(n+k+12k+1)(2x)2k+1
とおいたとき
Tn(sinθ)=cos2nθ,Un1(sinθ)=sin2nθcosθ
が成り立つ。

更なる考察

 実のところ元々は
Fn(x)=k=0n(1)k(n+k2)!(nk)!(2k)!(2x)2kGn(x)=k=0n(1)k(n+k1)!(nk)!(2k+1)!(2x)2k+1
という関数の性質について考えていました。これの考察については半ば諦めていたのですが、この記事を書いている内に光明を見出したのでもう少し考察してみます。

Fn(sinθ)=12n1(cos2nθn+cos(2n2)θn1)Gn(sinθ)=1n(sin(2n+1)θ2n+1+sin(2n1)θ2n1)
が成り立つ。

 一行目については定理5より
Fn1(x)dx=sin(2n1)θcosθdθ=12(sin2nθ+sin(2n2)θ)dθ=12(cos2nθn+cos(2n2)θn1)+C=2n14Fn+C
が成り立つことから
Fn(0)=(n2)!n!=1n(n1)
に注意するとわかる。
 二行目についても同様に定理6より
Tn(x)dx=cos2nθcosθδθ=12(cos(2n+1)θ+cos(2n1)θ)dθ=12(sin(2n+1)θ2n+1+sin(2n1)θ2n1)+C=n2Gn+C
が成り立つことからわかる。

おわりに

 いままで二項係数の関わる多項式はいくつも考察したことがありますが、どうにも(nk)n,kが同時に動くタイプのものには苦手意識がありました。しかし今回いろいろ考えてみるとfn(x)の挙動などは三角関数によって特徴づけられることがわかり、いい学びになりました。
 ちなみに最後に紹介したFn(x)Gn(x)はとある問題のために考えているものであり、進展があればその問題についての記事も書こうと思っています。
 とりあえず今回の記事はこんなところで。では。

投稿日:20231011
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投稿者

子葉
子葉
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主に複素解析、代数学、数論を学んでおります。 私の経験上、その証明が簡単に探しても見つからない、英語の文献を漁らないと載ってない、なんて定理の解説を主にやっていきます。 同じ経験をしている人の助けになれば。最近は自分用のノートになっている節があります。

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