2

sin^2n xをcos2kxの線形結合で書く

127
1

はじめに

 この記事ではsin2nxcos2kx(kN)の線形結合で表す方法を考える。一週間ほど考えていたが解決に至ったため議論する。のちの自分が見返しやすいように解決までの道筋もたどろうと思う。

本題

 sinxの偶数乗は半角の公式を考えれば容易にわかる通りcos2kxの線形結合で表せる。今回知りたいのはsinxの偶数乗をcos2kxの線形結合で表した時の各係数である。
 まず最初に漸化式を立てることを考えた。

任意の自然数nについて
ak(n)
{an+1(n+1)=14an(n) (n1)an(n+1)=12an(n)14an1(n) (n2)ak(n+1)=12ak(n)14(ak+1(n)+ak1(n)) (2kn1)a1(n+1)=12a1(n)12a0(n)14a2(n) (n2)a0(n+1)=12a0(n)14a1(n) (n1)a1(2)=12a1(1)12a0(1)a1(1)=12a0(1)=12

により定める。このとき
sin2nx=a0(n)+a1(n)cos2x+a2(n)cos4x+...+an(n)cos2nx
と表せる。

数学的帰納法により示す。
n=1のときはsin2x=1cos2x2よりよい。
n=kのとき正しいとすると
sin2k+2x=sin2kx1cos2x2
=12i=0kai(k)cos2ix12i=0kai(k)cos2ixcos2x
=12i=0kai(k)cos2ix14i=1kai(k){cos2(i+1)x+cos2(i1)x}12a0(k)cos2x
=14ak(k)cos2(k+1)x+(12ak(k)14ak1(k))cos2kx+i=2k1{12ai(k)14(ai+1(k)+ai1(k))}cos2ix+(12a1(k)12a0(k)14a2(k))cos2x+(12a0(k)14a1(k))
よりn=k+1のときもよい。

 この漸化式を解けば問題の解決となる。そこでこれを行列により表示しよう。次のようになる。
(an+1(n+1)an(n+1)an1(n+1)an2(n+1)a2(n+1)a1(n+1)a0(n+1))=(14001214001412140001412140000141214000141212001412)(an(n)an1(n)an2(n)an3(n)a2(n)a1(n)a0(n))
これをan+1=Ananと書くこととするとAn(n+2)×(n+1)行列である。このとき
an=An1An2A1a1
となる。これが計算できれば良い。しかし計算してみるとわかるが規則性がよくわからない。計算結果を以下に記す(手計算なので間違いがあるかもしれない)。また、漸化式はn=1,2n3では様子が異なるのでA3から計算を試みている。

A4A3=(1160001411600381411601438141811614381201161438 ),A5A4A3=(164000332164001564332164051615643321321564516156431633214381532164332732516 )
A6A5A4A3=(1256000132125600764132125607327641321128351287327641167327125615647327641491256716132732136435128 )

となり、以降は右上の上三角が0であるような行列になる。ここで少し詰まってしまった。Anはかなりきれいな形をしているのですぐ求まるだろうという直感に反する事態となる。この原因はおそらくAn(n+1,n+1)成分にあると見当をつけた。ここがもし14であればとても対称的な形になり計算できるかもしれない。そしてこのことは命題1の計算途中でシグマのなかを積和の公式で計算した際にcos2xだけそのままにして計算しなかったせいだと気づいた。そこでこのことを考慮し命題1を修正し新たな漸化式を得た。

任意の自然数nについて
ak(n)
{an+1(n+1)=14an(n)an(n+1)=12an(n)14an1(n)ak(n+1)=12ak(n)14(ak+1(n)+ak1(n)) (n+1kn1)an(n+1)=12an(n)14an+1(n)an1(n+1)=14an(n)a1(1)=14a0(1)=12a1(1)=14

により定める。このとき
sin2nx=k=nnak(n)cos2kx
   =an(n)cos2nx+an1(n)cos2(n1)x+...+a1(n)cos2x+a0(n)+a1(n)cos(2x)+...+an(n)cos(2nx)
と表せる。

数学的帰納法により示す。
n=1のときはcos(2x)=cos2xよりsin2x=1214{cos2x+cos(2x)}となりよい。
n=kのとき成り立つとしてn=k+1のときを考える。
sin2k+2x=12l=kkal(k)cos2lx14l=kkal(k){cos2(l+1)x+cos2(l1)x}
=14ak(k)cos2(k+1)x+(12ak(k)14ak1(k))cos2kx+l=k+1k1{12al(k)14(al+1(k)+al1(k))}cos2lx+(12ak(k)14ak+1(k))cos2(k)x14ak(k)cos2(k1)x
よりn=k+1のときもよく、題意が示された。

命題1の場合と違って自然数nの範囲によって関係式を分けなくてもよくなり、とても対称的な式になった。この漸化式を行列にて表すと
(an+1(n+1)an(n+1)an1(n+1)an2(n+1)an+2(n+1)an+1(n+1)an(n+1)an1(n+1))=14(100210012100012100001210001210012001)(an(n)an1(n)an2(n)an+2(n)an+1(n)an(n))

となる。これを新たにan+1=14Ananと書くことにすると、An(2n+3)×(2n+1)行列であり
an=14nAn1An2...A1(121)
となる。ここでbn=4nanとおき、bnをいくつか計算してみると
b2=(14641),b3=(1615201561),b4=(18285670562881)

となる。各bnは真ん中で折り返すと一致する対称性を持っていることが分かる。また、符号は交代的である。ここで何か気づくことはないだろうか...なんと驚くべきことに次が成り立つ。

bn=(1)n(2nC02nC12nC22nC32nC2n12nC2n)

数学的帰納法で示す。
n=1のときは自明。
n=kのとき成り立つとしてn=k+1のとき示す。
bk+1=Akbk
=(1)k(100210012100012100001210001210012001)(2kC02kC12kC22kC32kC2k12kC2k)
=(1)k(2kC022kC0+2kC12kC022kC12kC22kC1+22kC2+2kC32kC2k222kC2k12kC2k2kC2k1+22kC2k2kC2k)

=(1)k+1(2kC022kC02kC12kC0+22kC1+2kC22kC122kC22kC32kC2k2+22kC2k1+2kC2k2kC2k122kC2k2kC2k)

ここで、1l2k1なる整数lに対し
2kCl1+22kCl+2kCl+1=(2kCl1+2kCl)+(2kCl+2kCl+1)=2k+1Cl+2k+1Cl+1=2k+2Cl+1
が成り立ち、また
2kC0=2kC2k=1=2k+2C0=2k+2C2k+2 , 22kC0+2kC1=2kC2k1+22kC2k=2k+2=2k+2C1=2k+2C2k+1
より
bk+1=(1)k+1(2k+2C02k+2C12k+2C22k+2C32k+2C2k+12k+2C2k+2)
となりn=k+1のときも成り立つ。ゆえに題意が示された。

以上の結果をanに還元することにより
ak(n)=(14)n(1)nk2nCnk
となるため、次が成り立つことが分かる。

sin2nx=(2n1)!!(2n)!!+122n1k=1n(1)k2nCnkcos2kx

命題3で示したことと簡単な計算により
a±k(n)=(1)k4n2nCnk
特にk=0として
a0(n)=14n2nCn=(2n)!!22n(n!)2=(2n1)!!(2n)!!
であるから
sin2nx=k=nnak(n)cos2kx=a0(n)+k=1nak(n)cos2kx+k=n1ak(n)cos2kx
=(2n1)!!(2n)!!+k=1nak(n)cos2kx+k=1nak(n)cos2(k)x
=(2n1)!!(2n)!!+2k=1nak(n)cos2kx
=(2n1)!!(2n)!!+122n1k=1n(1)k2nCnkcos2kx
となり示された。

以上により当初の目的は果たされたわけだが、せっかくなのでこの式で少し遊んでみることにする。
まず、xπ2xにすることで次が従う。

命題4

cos2nx=(2n1)!!(2n)!!+122n1k=1n2nCnkcos2kx

また、多少計算することで以下も従う。

(1)sin2n+1x=14nk=0n(1)k(2k+1)2nCnkn+k+1sin(2k+1)x
(2)cos2n+1x=14nk=0n(2k+1)2nCnkn+k+1cos(2k+1)x

(2)は(1)にてxπ2xにすれば従うため(1)のみ示す。
sin2n+1x=(2n1)!!(2n)!!sinx+14nk=1n(1)k2nCnk{cos(2k+1)x+cos(2k1)x}
=14n(2nCn2nCn1)sinx+14nk=1n1(1)k(2nCnk2nCnk1)sin(2k+1)x+(14)nsin(2n+1)x
2nCn4n(n+1)sinx+14nk=1n1(1)k(2k+1)2nCnkn+k+1sin(2k+1)x+(14)nsin(2n+1)x
=14nk=0n(1)k(2k+1)2nCnkn+k+1sin(2k+1)x
より従う。ただし2nCn2nCn1=2nCnn+1,2nCnk2nCnk1=(2k+1)2nCnkn+k+1
を用いた。

次が成り立つ。ただしmNに対しf(m)fm階導関数。
(1)(sin2nx)(m)=2m22n1k=1n(1)kkm2nCnkcos(2kx+π2m)
(2)
(cos2nx)(m)=2m22n1k=1nkm2nCnkcos(2kx+π2m)
(3)
(sin2n+1x)(m)=14nk=0n(1)k(2k+1)m+12nCnkn+k+1sin{(2k+1)x+π2m}
(4)
(cos2n+1x)(m)=14nk=0n(2k+1)m+12nCnkn+k+1cos{(2k+1)x+π2m}

 an(m)=(sin2nx)(m)などと置いて漸化式を作るとmに関する行列を用いた漸化式を作れる。この際現れる行列は正方行列であるから正方行列の累乗を求め、an(m)=(sin2nx)(m)を求められる。この行列の累乗について、おそらく普通に固有値を求めて対角化が手計算で可能だと思う。ただ少しネックなのが各固有値に対応する固有ベクトルを並べた行列の逆行列である。おそらくこの行列は上三角行列のようになるはずなのでたぶん計算できるはず...ここで命題6(1)と合わせてxに何か値を代入すれば面白い関係式が得られそう。このあたりも別に記事にまとめたい。

最後に

 今回特に先行研究を探したりしていないので、もし既出であったり、何か間違いなどあれば是非教えていただきたい。かなり非自明な式が得られたのでもっと面白いことができそうな予感がする。途中フーリエ係数を考えたりしたがそちらでも似たような関係式が成り立っていたので今回と同じような議論をすればもしかしたらそちらも求まるかもしれない。
 かなり時間がかかってしまったので今回の問題のような構造は今後見逃さずに行きたい。あと、今回のことで線形代数の重要さを改めて認識した。もっと勉強しなければ。

追記

 やりたい操作を追記する。

足し引き

命題4、命題4系の式を足し引きしたらうまいこと項が消えて面白い関係式が得られそう。命題5も同様。また、sinの方に虚数単位iをかけて足し引きしてもオイラーの公式とかも使っていい感じに計算できそう。sin^2x+cos^2x=1,やオイラーの公式の指数についての一般化と見れるだろう。

解析的操作

sinやcosのテイラー展開などを考えて係数比較と化しても面白そう。また、sin,cosの微分は考えたが積分も考えたい。その結果が何らかの非自明な無限級数の値に結びついたら行幸。

指数の一般化

一般化二項級数に倣いsinの累乗の指数の実数や複素数への拡張も考えられないか。これは厳しそうな予感がするができたらとても面白い。

投稿日:20241029
更新日:20241030
OptHub AI Competition

この記事を高評価した人

高評価したユーザはいません

この記事に送られたバッジ

バッジはありません。
バッチを贈って投稿者を応援しよう

バッチを贈ると投稿者に現金やAmazonのギフトカードが還元されます。

投稿者

色んな分野の数学をやりたいです。

コメント

他の人のコメント

コメントはありません。
読み込み中...
読み込み中