$0\leqq t\leqq 1$ を満たす実数 $t$ に対して、$xy$ 平面上の点 $\mathrm{A},\ \mathrm{B}$ を
$$
\mathrm{A}\left(\frac{2(t^2+t+1)}{3(t+1)},\,-2\right),\quad
\mathrm{B}\left(\frac{2}{3}t,\,-2t\right)
$$
と定める。$t$ が $0\leqq t\leqq 1$ を動くとき、直線 $\mathrm{AB}$ の通りうる範囲を図示せよ。
すべての $t\in[0,1]$ で $\mathrm{A}_t\neq\mathrm{B}_t$ であり,直線 $\mathrm{A}_t\mathrm{B}_t$ は
$$
L_t:\ y=\ell_t(x)=-3x+3xt^2-2t^3
$$
である。
$$
a_t-b_t=\frac{2(t^2+t+1)-2t(t+1)}{3(t+1)}=\frac{2}{3(t+1)} > 0
$$
より $\mathrm{A}_t\neq\mathrm{B}_t$ であり,直線 $\mathrm{A}_t\mathrm{B}_t$ は $y$ 軸に平行でない。傾きは
$$
\frac{-2-(-2t)}{a_t-b_t}=-3(1-t)(1+t)=3t^2-3
$$
であり,$\mathrm{B}_t$ を通るから $y=(3t^2-3)\left(x-\dfrac{2t}{3}\right)-2t=-3x+3xt^2-2t^3$ を得る。
有理式で与えられた2点の座標は,直線の方程式に直すと $t$ の多項式($x$ については一次式)に簡約される。$a_t-b_t$ の分子で $2(t^2+t+1)-2t(t+1)=2$ という大きな約分が起こることは,座標の背後に構造があることを示唆する( 1.3 節 , 1.4 節 )。
補題3 から次が読み取れる。
$0\leqq t\leqq 1$ とする。
(1) $\mathrm{B}_t=(1-t)\mathrm{O}+t\mathrm{P}$,$\mathrm{A}_t=(1-\rho_t)\mathrm{P}+\rho_t\mathrm{Q}$ である。ただし $\rho_t=\dfrac{2t^2}{1+t}$ は $[0,1]$ 上で $0$ から $1$ へ狭義単調に増加する。
(2) すべての実数 $x$ について
$$
\ell_t(x)=(1-t^2)\,\ell_0(x)+t^2\,\ell_1(x)+2t^2(1-t).
$$
(3) すべての実数 $x$ について
$$
\ell_t(x)-\ell_0(x)=3t^2(x-b_t),\qquad \ell_t(x)-\ell_1(x)=3(1-t^2)(a_t-x).
$$
(4) $b_t\leqq t\leqq a_t$ である。
補題4
の各項は次の意味をもつ。
(1) $t=0$ で線分 $\mathrm{A}_t\mathrm{B}_t$ は辺 $\mathrm{OP}$ に,$t=1$ で辺 $\mathrm{PQ}$ に一致し,その間,両端は三角形 $\mathrm{OPQ}$ の隣り合う2辺上を単調に動く。$\mathrm{B}_t$ は等速であり,$\mathrm{A}_t$ は等速でない。
(2) $\ell_t(x)$ は端点値 $\ell_0(x)$,$\ell_1(x)$ の凸結合(重み $1-t^2$,$t^2$)に非負の補正 $2t^2(1-t)$ を加えたものである。補正は $t=0,1$ でのみ $0$ になる。これが,下側境界が端点直線だけから生じる理由である。
(3) $0 < t < 1$ のとき $\mathrm{B}_t=L_t\cap L_0$,$\mathrm{A}_t=L_t\cap L_1$ である。すなわち問題の2点は,動く接線と二本の端点接線との交点である。さらに $b_t < a_t$ と符号から次の表を得る。
| $x$ の範囲 | $\ell_t(x)$ の位置 | 点 $(x,\ell_t(x))$ の属する集合 |
|---|---|---|
| $x < b_t$ | $\ell_1(x) < \ell_t(x) < \ell_0(x)$ | $\mathcal{W}$ の内部 |
| $b_t\leqq x\leqq a_t$ | $\ell_t(x)\geqq\max(\ell_0(x),\ell_1(x))$ | $\lbrace u\geqq 0,\ v\geqq 0\rbrace$ |
| $x > a_t$ | $\ell_0(x) < \ell_t(x) < \ell_1(x)$ | $\mathcal{W}$ の内部 |
すなわち,直線 $L_t$ のうち線分 $\mathrm{A}_t\mathrm{B}_t$ の外側の部分は $\mathcal{W}$ に含まれ,線分自身は二直線の上側の閉領域 $\lbrace u\geqq 0,\ v\geqq 0\rbrace$ に含まれる。
(4) 接点 $\mathrm{T}_t$ は直線 $\mathrm{A}_t\mathrm{B}_t$ 上にあるだけでなく,線分 $\mathrm{A}_t\mathrm{B}_t$ 上にある。
求める範囲は量化子を用いて
$$
(x,y)\in\mathcal{R}\iff\exists\,t\in[0,1]:\ y=\ell_t(x)\iff\exists\,t\in[0,1]:\ G_{x,y}(t)=0
$$
と書ける。中央の式を「$x$ を固定したときの $t\mapsto\ell_t(x)$ の値域」と読むのが順像法,右の式を「点を固定したときの $t$ の三次方程式の可解性」と読むのが逆像法である。
$$ \mathcal{R}=\lbrace (x,y)\mid m(x)\leqq y\leqq M(x)\rbrace . $$
$x$ を固定すると,$t\mapsto\ell_t(x)$ は閉区間 $[0,1]$ 上の連続関数であるから最大値 $M(x)$ と最小値 $m(x)$ をもち,中間値の定理によりその値域は閉区間 $[m(x),M(x)]$ に一致する。$(x,y)\in\mathcal{R}$ は $y$ がこの値域に属することと同値である。
補題5
は,上下界の決定(必要条件)と,その間の点がすべて実現されること(十分条件)を一度に保証する。包絡線や判別式のように境界の候補だけを与える方法は,この十分性を別に補う必要がある。
逆像法で用いる $G_{x,y}$ の基本量は次のとおりである。最後の式は
補題4
(2) を $G_{x,y}=y-\ell_t(x)$ で書き直したものである。
$$
G_{x,y}(0)=u,\qquad G_{x,y}(1)=v,\qquad G_{x,y}'(t)=6t(t-x),\qquad G_{x,y}(x)=y-f(x),
$$
$$
G_{x,y}(t)=(1-t^2)\,u+t^2\,v-2t^2(1-t).
$$
補題3 (3) より,$x$ を固定したとき $t\mapsto\ell_t(x)$ の最大・最小を与えうるのは区間の端点 $t=0,1$ と,内部の停留点 $t=x$($0 < x < 1$ のとき)に限られる。
| 機構 | パラメータ | 生成される曲線 |
|---|---|---|
| 区間の端点 | $t=0$ | $L_0:\ y=-3x$ |
| 区間の端点 | $t=1$ | $L_1:\ y=-2$ |
| 内部の停留点 | $t=x\ (0 < x < 1)$ | $C:\ y=x^3-3x$ |
逆像法の言葉では,$[0,1]$ 内の相異なる実根の個数が変化しうるのは,根が端点を通過するとき($G_{x,y}(0)=0$ または $G_{x,y}(1)=0$)と,内部で二根が合流するとき($G_{x,y}=G_{x,y}'=0$)であり,同じ三種の曲線が現れる。包絡線の言葉では,$F(x,y,t)=G_{x,y}(t)$ とおいた連立方程式 $F=F_t=0$ の $0 < t < 1$ の解が $t=x$,$y=f(x)$ である。
注意すべき点が二つある。
以上の構造から,作問の設計は次のように読める(数値設定からの分析であり,出題者の意図についての推定を含む)。
| 着目する構造 | 導かれる解法 |
|---|---|
| 鉛直断面と $\partial_t\ell_t(x)=6t(x-t)$ | 本解 |
| せん断座標と標準形 $Y=x^3$ | 3.1 節,3.2 節 |
| 端点分解と基本恒等式 $(x-t)^2(x+2t)$ | 3.3 節,別解1 |
| 接線族・凸性・端点接線との交点 | 別解2,参考解2 |
| 逆像($t$ の三次方程式の可解性) | 参考解1,参考解5,参考解7 |
| 直線と係数の双対性 | 参考解3,参考解4 |
| 端点接線の交点 $\mathrm{P}$ を原点とするアフィン座標 | 参考解5,参考解6 |
直線 $\mathrm{AB}$ を $y=\ell_t(x)$ の形に表し( 補題2 ),$x$ を固定して $t\mapsto\ell_t(x)$ の最大値・最小値を求める。増減は $\partial_t\ell_t(x)=6t(x-t)$ の符号だけで決まり,候補は $t=0,1,x$ に限られる。最大値と最小値の間の値がすべて実現されることは,閉区間上の連続関数に対する中間値の定理で保証する( 補題5 )。
$\mathrm{A},\mathrm{B}$ の $x$ 座標を $a_t,b_t$ とおくと
$$
a_t-b_t=\frac{2(t^2+t+1)-2t(t+1)}{3(t+1)}=\frac{2}{3(t+1)} > 0
$$
であるから,すべての $t\in[0,1]$ で $\mathrm{A}\neq\mathrm{B}$ であり,直線 $\mathrm{AB}$ は $y$ 軸に平行でない。傾きは $\dfrac{-2+2t}{a_t-b_t}=3t^2-3$ であり,$\mathrm{B}$ を通るから
$$
y=(3t^2-3)\left(x-\frac{2t}{3}\right)-2t=-3x+3xt^2-2t^3 .
$$
実数 $x$ を固定し,
$$
g(t)=-3x+3xt^2-2t^3\qquad(0\leqq t\leqq 1)
$$
とおく。$g'(t)=6t(x-t)$,$g(0)=-3x$,$g(1)=-2$ である。
(i) $x\leqq 0$ のとき。$0 < t\leqq 1$ で $x-t < 0$ より $g'(t) < 0$ であり,$g$ は $[0,1]$ で減少する。よって最大値は $g(0)=-3x$,最小値は $g(1)=-2$ である。
(ii) $0 < x < 1$ のとき。$g'(t) > 0\ (0 < t < x)$,$g'(t) < 0\ (x < t < 1)$ より,$g$ は $[0,x]$ で増加し $[x,1]$ で減少する。よって最大値は
$$
g(x)=-3x+3x^3-2x^3=x^3-3x
$$
であり,最小値は両端の値の小さい方 $\min(-3x,-2)$ である。
(iii) $x\geqq 1$ のとき。$0 < t < 1$ で $x-t > 0$ より $g'(t) > 0$ であり,$g$ は $[0,1]$ で増加する。よって最小値は $g(0)=-3x$,最大値は $g(1)=-2$ である。
$x\leqq 0$ では $-3x\geqq 0 > -2$,$x\geqq 1$ では $-3x\leqq -3 < -2$ であるから,(i)~(iii) はまとめて
$$
m(x)=\min(-3x,\,-2),\qquad
M(x)=\begin{cases}
-3x & (x\leqq 0)\\
x^3-3x & (0\leqq x\leqq 1)\\
-2 & (x\geqq 1)
\end{cases}
$$
と書ける($x=0,1$ では両側の式が一致する)。$g$ は閉区間 $[0,1]$ 上で連続であるから,中間値の定理により $m(x)$ 以上 $M(x)$ 以下のすべての値をとる。したがって,点 $(x,y)$ を直線 $\mathrm{AB}$ が通りうるための必要十分条件は $m(x)\leqq y\leqq M(x)$ である。
$-3x=-2\iff x=\frac23$ に注意して整理すると,求める範囲は
$$
\begin{cases}
-2\leqq y\leqq -3x & (x\leqq 0)\\[2pt]
-2\leqq y\leqq x^3-3x & \left(0\leqq x\leqq \frac23\right)\\[2pt]
-3x\leqq y\leqq x^3-3x & \left(\frac23\leqq x\leqq 1\right)\\[2pt]
-3x\leqq y\leqq -2 & (x\geqq 1)
\end{cases}
$$
であり,境界をすべて含む。
画像の名前
$\mathrm{O}(0,0)$,$\mathrm{P}\left(\frac23,-2\right)$,$\mathrm{Q}(1,-2)$ とする。範囲の境界は次の3種の部分からなる。
| 境界の部分 | $x$ の範囲 |
|---|---|
| 直線 $y=-3x$ | $x\leqq 0$ および $x\geqq \frac23$ |
| 直線 $y=-2$ | $x\leqq\frac23$ および $x\geqq 1$ |
| 曲線 $y=x^3-3x$ | $0\leqq x\leqq 1$ |
求める範囲は,次の二つの和集合である。
以下では 1.1 節の記号と 補題2 ~ 補題5 を断りなく用いる。
$\mathrm{B}$ は直線 $y=-3x$ 上にあるから,$Y=y+3x$ とおくと $\mathrm{B}$ の $Y$ 座標は $0$ になる。変換 $(x,y)\mapsto(x,Y)$ は行列式 $1$ のせん断であり,直線を直線に,鉛直線を鉛直線に移し,接触と面積を保つ。
$Y_{\mathrm{B}}=-2t+3\cdot\frac{2t}{3}=0$,$Y_{\mathrm{A}}=-2+3a_t=\dfrac{2t^2}{t+1}$ である。$(x,Y)$ 平面での傾きは
$$
\frac{Y_{\mathrm{A}}-Y_{\mathrm{B}}}{a_t-b_t}=\frac{2t^2}{t+1}\cdot\frac{3(t+1)}{2}=3t^2
$$
であるから,直線は $Y=3t^2\left(x-\dfrac{2t}{3}\right)=3t^2x-2t^3$,すなわち $y=-3x+3xt^2-2t^3$ である。
$Y-t^3=3t^2(x-t)$ と書けるから,これは曲線 $Y=x^3$ の点 $(t,t^3)$ における接線である。せん断で戻せば,$L_t$ は $y=x^3-3x$ の $\mathrm{T}_t$ における接線である(
補題3
(1) の別証)。
$t=0$ で $Y=0$,すなわち $y=-3x$。$t=1$ で $Y=3x-2$,すなわち $y=-2$。いずれも $L_0,L_1$ に一致する。せん断座標では答も簡潔になり,$\min(0,\,3x-2)\leqq Y\leqq M(x)+3x$ である。
せん断座標で $Y_t(x)=3xt^2-2t^3=t\cdot t\cdot(3x-2t)$ であり,3因子の和 $t+t+(3x-2t)=3x$ は $t$ によらない。
$0\leqq x\leqq 1$,$0\leqq t\leqq 1$ とする。$3x-2t\geqq 0$ ならば,3つの非負数に相加相乗平均の不等式を用いて
$$
t\cdot t\cdot(3x-2t)\leqq\left(\frac{t+t+(3x-2t)}{3}\right)^3=x^3 .
$$
$3x-2t < 0$ ならば $t\cdot t\cdot(3x-2t)\leqq 0\leqq x^3$ である。よって常に $3xt^2-2t^3\leqq x^3$,すなわち $\ell_t(x)\leqq x^3-3x$ である。等号は $t=3x-2t$,すなわち $t=x$ のときに成り立ち,$t=x\in[0,1]$ は許される。ゆえに $0\leqq x\leqq 1$ で $M(x)=x^3-3x$ である。
不等式 $x^3-3xt^2+2t^3\geqq 0$ は 補題3 (2) の $(x-t)^2(x+2t)\geqq 0$ と同じものであり,相加相乗平均の等号条件 $t=x$ は二重根 $(x-t)^2$ に対応する。
本解では $x$ の範囲で3通りに場合分けした。最大値を与えるパラメータが $\tau(x)$($x$ を $[0,1]$ に射影した点)であることを,一つの恒等式で示す。
すべての実数 $s,t,x$ について
$$
\ell_s(x)-\ell_t(x)=(s-t)^2(s+2t)+3(x-s)(s^2-t^2)
$$
が成り立つ。実際,左辺は $3(s^2-t^2)x-2(s^3-t^3)$ であり,右辺は $(s^3-3st^2+2t^3)+3x(s^2-t^2)-3s^3+3st^2$ に等しい。
$s=\tau(x)$ とおく。$s,t\in[0,1]$ より第1項は非負である。第2項について,$x < 0$ なら $s=0$ で $3(x-s)(s^2-t^2)=-3xt^2\geqq 0$,$0\leqq x\leqq 1$ なら $x-s=0$,$x > 1$ なら $s=1$ で $3(x-1)(1-t^2)\geqq 0$ である。よってすべての $t\in[0,1]$ で $\ell_t(x)\leqq\ell_{\tau(x)}(x)$ であり,
$$
M(x)=\ell_{\tau(x)}(x)=\begin{cases}\ell_0(x)=-3x & (x\leqq 0)\\ \ell_x(x)=x^3-3x & (0\leqq x\leqq 1)\\ \ell_1(x)=-2 & (x\geqq 1)\end{cases}
$$
を得る。
$s=x$ とおくと恒等式は $f(x)-\ell_t(x)=(x-t)^2(x+2t)$ に帰着し,$s=0,1$ とおくと別解1の (i),(iii) の式に一致する。「最大点は $x$ に最も近い許容パラメータ」という構造は,凸弧の接線族に共通である( 定理6 )。
微分を用いず,下界は端点分解( 補題4 (2))から,上界は因数分解から,それぞれ等号の成立まで込めて決定する。十分性は 補題5 と同じく連続性による。
$0\leqq t\leqq 1$ のとき
$$
\ell_t(x)=(1-t^2)(-3x)+t^2(-2)+2t^2(1-t)
$$
において $1-t^2\geqq 0$,$t^2\geqq 0$,$(1-t^2)+t^2=1$,$2t^2(1-t)\geqq 0$ であるから $\ell_t(x)\geqq\min(-3x,-2)$。右辺の値は $t=0$ または $t=1$ で実現されるので $m(x)=\min(-3x,-2)$ である。
(i) $x\leqq 0$ のとき,$\ell_0(x)-\ell_t(x)=t^2(2t-3x)\geqq 0$ であり,等号は $t=0$ で成り立つ。よって $M(x)=-3x$。
(ii) $0\leqq x\leqq 1$ のとき,$f(x)-\ell_t(x)=(x-t)^2(x+2t)\geqq 0$ であり,等号は $t=x$ で成り立つ。よって $M(x)=x^3-3x$。
(iii) $x\geqq 1$ のとき,$1-t\geqq 0$ と $3x(1+t)\geqq 3(1+t)$ より
$$
\ell_1(x)-\ell_t(x)=(1-t)\lbrace 3x(1+t)-2(1+t+t^2)\rbrace\geqq(1-t)\lbrace 3(1+t)-2(1+t+t^2)\rbrace=(1-t)^2(1+2t)\geqq 0
$$
であり,等号は $t=1$ で成り立つ。よって $M(x)=-2$。
$t\mapsto\ell_t(x)$ は $[0,1]$ で連続であるから,$m(x)$ と $M(x)$ の間の値をすべてとる。よって求める範囲は 2.2 節の結論に一致する。
(i)~(iii) の恒等式は, 3.3 節 の恒等式で $s=0,x,1$ とおいたものである。下界の補正項 $2t^2(1-t)$ が $t=0,1$ でのみ $0$ になることは,下側境界が端点直線だけから生じることと整合する。(ii) で $x+2t\geqq 0$ を用いるため,この評価を $x < 0$ に延長してはならない。
$L_t$ は弧 $C$ の接線であり,接点 $\mathrm{T}_t$ は線分 $\mathrm{A}_t\mathrm{B}_t$ 上にある( 補題3 , 補題4 )。直線を線分とその延長に分け,線分の掃く範囲がちょうど $\mathcal{K}$,延長部分が $\mathcal{W}$ に含まれ,$\mathcal{W}$ 全体が実現されることを示す。
線分 $\mathrm{A}_t\mathrm{B}_t$ は $\lbrace (x,\ell_t(x))\mid b_t\leqq x\leqq a_t\rbrace$ である。
任意の $x$ で $\ell_0(x)=-3x$,$\ell_1(x)=-2$ であり,$t\mapsto\ell_t(x)$ は連続であるから,その間の値はすべて実現される。
$b_t\leqq x\leqq a_t$ とする。$0\leqq b_t$,$a_t=\frac23+\frac{\rho_t}{3}\leqq 1$ より $0\leqq x\leqq 1$ である。 補題4 (3) より $\ell_t(x)\geqq\max(-3x,-2)$ であり, 補題3 (2) より $\ell_t(x)\leqq f(x)$ である。よって $(x,\ell_t(x))\in\mathcal{K}$。
$0\leqq x\leqq\frac23$ のとき,$t\in[0,x]$ に対して $b_t\leqq t\leqq x\leqq\frac23\leqq a_t$ であるから,点 $(x,\ell_t(x))$ は線分 $\mathrm{A}_t\mathrm{B}_t$ 上にある。$\ell_0(x)=-3x$,$\ell_x(x)=f(x)$ と連続性より,$-3x\leqq y\leqq f(x)$ のすべての点が線分上に現れる。$\frac23\leqq x\leqq 1$ のとき,$t\in[x,1]$ に対して $b_t\leqq\frac23\leqq x\leqq t\leqq a_t$ であり,$\ell_x(x)=f(x)$,$\ell_1(x)=-2$ より,$-2\leqq y\leqq f(x)$ のすべての点が線分上に現れる。いずれの場合も下端は $\max(-3x,-2)$ である。
$0 < t < 1$ のとき,
補題4
の表より,$x < b_t$ または $x > a_t$ の点 $(x,\ell_t(x))$ は $\mathcal{W}$ の内部にある。また $L_0=\lbrace u=0\rbrace\subset\mathcal{W}$,$L_1=\lbrace v=0\rbrace\subset\mathcal{W}$ である。
(b)(d) より $\mathcal{R}\subset\mathcal{W}\cup\mathcal{K}$,(a)(c) より $\mathcal{W}\cup\mathcal{K}\subset\mathcal{R}$。ゆえに $\mathcal{R}=\mathcal{W}\cup\mathcal{K}$ であり,さらに線分 $\mathrm{AB}$ の掃く範囲はちょうど $\mathcal{K}$ である。
逆像法により,$(x,y)\in\mathcal{R}$ を「$G_{x,y}(t)=0$ が $[0,1]$ に解をもつ」ことと読む。端点値 $G_{x,y}(0)=u$,$G_{x,y}(1)=v$ の符号で場合を分け,両端が正の場合だけ内部の極小値を調べる。点を通る直線の本数も同時に得られる。
以下 $G=G_{x,y}$ と略し,1.5 節の基本量を用いる。
(i) $uv\leqq 0$ のとき。$G(0)G(1)\leqq 0$ であるから,中間値の定理により $[0,1]$ に解が存在する。この条件は $(x,y)\in\mathcal{W}$ と同値である。
(ii) $u < 0$ かつ $v < 0$ のとき。$G(t)=(1-t^2)u+t^2v-2t^2(1-t)$ において,第1項と第2項の和は負の数 $u,v$ の凸結合で負,第3項は $0$ 以下であるから,$[0,1]$ 上で $G(t) < 0$ となり解はない。
(iii) $u > 0$ かつ $v > 0$ のとき。$G'(t)=6t(t-x)$ である。$x\leqq 0$ なら $[0,1]$ で $G'\geqq 0$ より $G(t)\geqq G(0)=u > 0$,$x\geqq 1$ なら $G'\leqq 0$ より $G(t)\geqq G(1)=v > 0$ で,いずれも解はない。$0 < x < 1$ なら $G$ は $t=x$ で最小値 $G(x)=y-f(x)$ をとる。$G(x)\leqq 0$ ならば $[0,x]$ で中間値の定理により解が存在し,$G(x) > 0$ ならば解はない。よってこの場合の条件は
$$
0 < x < 1,\qquad \max(-3x,-2) < y\leqq x^3-3x .
$$
(i)~(iii) を合わせると,$\mathcal{K}$ のうち $y=\max(-3x,-2)$ を満たす点(折れ線 $\mathrm{OPQ}$)は $\mathcal{W}$ に含まれるから,$\mathcal{R}=\mathcal{W}\cup\mathcal{K}$ である。
$G$ は $t$ の一次の項をもたないので,根を $r_1,r_2,r_3$ とすると $r_1r_2+r_2r_3+r_3r_1=0$ である。したがって $G$ の正の根は重複度を込めて高々2個であり(3個あれば左辺が正になる),相異なる正の2根 $s,t$ があれば第3根は $-\dfrac{st}{s+t} < 0$ である。$t=0$ が根のときは $G(t)=t^2(2t-3x)$ であるから,相異なる非負の根も高々2個である。これより,点を通る直線 $L_t$ の本数は次のとおりになる。
| 点の位置 | $[0,1]$ 内の相異なる根の個数 | 理由 |
|---|---|---|
| $\mathcal{W}$ の内部 | $1$ | $(0,1)$ 内の根は重複度込みで奇数個かつ高々2個 |
| $\mathcal{K}$ の内部 | $2$ | $G(0) > 0$,$G(x) < 0$,$G(1) > 0$ |
| 弧 $C$($0 < x < 1$) | $1$ | $G(t)=2(t-x)^2\left(t+\frac x2\right)$ の重根 |
| $\mathcal{R}$ の外部 | $0$ | (ii) または (iii) |
なお $G$ の判別式は $108(3x+y)(x^3-3x-y)$ であり,その零点集合は直線 $y=-3x$ と曲線 $y=x^3-3x$ の全体である。区間 $[0,1]$ の制約は判別式に反映されず,端点 $t=1$ に由来する $y=-2$ は現れない。判別式だけで領域を決定することはできない。
参考解1を逆向きにたどり,$G_{x,y}$ の二根 $s,t$ を先に選ぶ。$s,t$ がともに根であることは $(x,y)\in L_s\cap L_t$ を意味するから,二接線の交点全体を調べればよい。三角形 $D=\lbrace (s,t)\mid 0\leqq s\leqq t\leqq 1\rbrace$ から $\mathcal{K}$ への写像を構成する。
$0\leqq s < t\leqq 1$ のとき,$\ell_t(x)-\ell_s(x)=3(t^2-s^2)x-2(t^3-s^3)$ より,$L_s$ と $L_t$ はただ1点で交わり,その座標は
$$
\xi(s,t)=\frac{2(s^2+st+t^2)}{3(s+t)},\qquad
\eta(s,t)=\ell_s(\xi)=-3\xi+\frac{2s^2t^2}{s+t}
$$
である($3s^2\xi-2s^3=\frac{2s^2t^2}{s+t}$ による)。この式は $s+t > 0$ で連続であり,$s=t$ を代入すると $(t,t^3-3t)=\mathrm{T}_t$ になる。そこで $D\setminus\lbrace (0,0)\rbrace$ 上では同じ式で $\Phi(s,t)=(\xi,\eta)$ と定め,$\Phi(0,0)=\mathrm{O}$ とする。$0\leqq\xi\leqq t$ と $0\leqq\frac{2s^2t^2}{s+t}\leqq 2st^2$ より $(s,t)\to(0,0)$ で $(\xi,\eta)\to\mathrm{O}$ であるから,$\Phi$ は $D$ 上で連続である。
$s < t$ のとき,
$$
\xi-s=\frac{(t-s)(s+2t)}{3(s+t)} > 0,\qquad t-\xi=\frac{(t-s)(2s+t)}{3(s+t)} > 0,
$$
$$
\eta+3\xi=\frac{2s^2t^2}{s+t}\geqq 0,\qquad \eta+2=\frac{2(1-s)(1-t)(s+t+st)}{s+t}\geqq 0
$$
であり,
補題3
(2) より $f(\xi)-\eta=f(\xi)-\ell_s(\xi)=(\xi-s)^2(\xi+2s)\geqq 0$ である。よって $0 < \xi < 1$,$\max(-3\xi,-2)\leqq\eta\leqq f(\xi)$ となり $\Phi(s,t)\in\mathcal{K}$。$s=t$ のときは $\mathrm{T}_t\in C\subset\mathcal{K}$ である。
$(x,y)\in\mathcal{K}$ とする。$y=f(x)$ ならば $(x,y)=\Phi(x,x)$。$y < f(x)$ ならば,$x=0,1$ では $\mathcal{K}$ の断面がそれぞれ1点 $\mathrm{O}$,$\mathrm{Q}$ であることから $0 < x < 1$ であり,$G(0)=u\geqq 0$,$G(x)=y-f(x) < 0$,$G(1)=v\geqq 0$ である。中間値の定理により $s\in[0,x)$,$t\in(x,1]$ で $G(s)=G(t)=0$ となるものがあり,$(x,y)=\Phi(s,t)$ である。
3.6 節
の検証で見たとおり,$G_{x,y}$ の相異なる非負の根は高々2個である。$(x,y)=\Phi(s,t)$($s < t$)ならば $s,t$ は $G_{x,y}$ の相異なる根であるから,$\lbrace s,t\rbrace$ は $[0,1]$ 内の根全体であり,$(x,y)$ から一意に定まる。$(x,y)=\Phi(t,t)=\mathrm{T}_t$ ならば $G_{x,y}(z)=2(z-t)^2\left(z+\frac t2\right)$ の $[0,1]$ 内の根は $t$ のみである。
(a)~(c) より $\Phi$ は $D$ から $\mathcal{K}$ への連続な全単射であり,$D$ はコンパクトであるから同相写像である。辺の対応は次のとおりである。
| $D$ の辺 | 像 | 理由 |
|---|---|---|
| $s=0$ | 線分 $\mathrm{OP}$ | $\Phi(0,t)=\mathrm{B}_t$ |
| $t=1$ | 線分 $\mathrm{PQ}$ | $\Phi(s,1)=\mathrm{A}_s$ |
| $s=t$ | 弧 $C$ | $\Phi(t,t)=\mathrm{T}_t$ |
$\mathcal{W}\subset\mathcal{R}$ は端点値の連続補間による。$\mathcal{K}=\Phi(D)\subset\mathcal{R}$ である。逆に,直線 $L_t$ のうち線分 $\mathrm{A}_t\mathrm{B}_t$ の外側は $\mathcal{W}$ に含まれる(
補題4
)。線分上の点については,$t > 0$ を固定すると
$$
\frac{\partial\xi}{\partial s}(s,t)=\frac{2s(s+2t)}{3(s+t)^2}\geqq 0,\qquad \xi(0,t)=b_t,\qquad \xi(1,t)=a_t
$$
であるから($\xi$ は $s,t$ について対称であり,$s > t$ でも同じ式で交点を与える),任意の $x\in[b_t,a_t]$ に対して $\xi(s,t)=x$ となる $s\in[0,1]$ があり,$(x,\ell_t(x))$ は $L_s\cap L_t$($s=t$ なら $\mathrm{T}_t$)として $\Phi(D)$ に属する。$t=0$ の線分は $\mathrm{OP}\subset\mathcal{K}$ である。よって $\mathcal{R}=\mathcal{W}\cup\mathcal{K}$。
直線 $y=px+k$ を点 $(p,k)$ と同一視すると,直線族は $(p,k)$ 平面の曲線(双対曲線)になる。点 $(x,y)$ を通るという条件は $k=-xp+y$ という $(p,k)$ 平面の直線になり,各 $x$ での高さは $H_x(p)=xp+k(p)$ の値域として求まる。
$L_t$ の傾きと切片は $p=3t^2-3$,$k=-2t^3$ である。$t\mapsto p$ は $[0,1]$ から $[-3,0]$ への全単射で $t=\sqrt{1+\frac p3}$ であるから,
$$
k(p)=-2\left(1+\frac p3\right)^{3/2}\qquad(-3\leqq p\leqq 0).
$$
$x$ を固定し $H_x(p)=xp+k(p)$ とおくと,求める $y$ の範囲は $H_x$ の $[-3,0]$ 上の値域である。
$$
H_x'(p)=x-\sqrt{1+\frac p3},\qquad H_x''(p)=-\frac{1}{6\sqrt{1+p/3}} < 0\quad(-3 < p < 0)
$$
より $H_x$ は狭義凹である。凹関数の最小値は端点でとられ,$H_x(-3)=-3x$,$H_x(0)=-2$ より $m(x)=\min(-3x,-2)$。$H_x'$ は $x$($p=-3$)から $x-1$($p=0$)まで減少する。$x\leqq 0$ なら $H_x'\leqq 0$ で最大値は $H_x(-3)=-3x$,$x\geqq 1$ なら $H_x'\geqq 0$ で最大値は $H_x(0)=-2$,$0 < x < 1$ なら $H_x'(p)=0$ の唯一の解 $p=3x^2-3$ で最大となり,
$$
H_x(3x^2-3)=3x(x^2-1)-2x^3=x^3-3x .
$$
$H_x$ は閉区間上で連続であるから,最小値と最大値の間をすべてとる。よって求める範囲は 2.2 節の結論に一致する。
$\sigma=t^2$,$\tau=t^3$ とおくと $\ell_t(x)=-3x+3x\sigma-2\tau$ は係数 $(\sigma,\tau)$ について一次式である。係数の動く曲線 $\Gamma=\lbrace (\sigma,\sigma^{3/2})\mid 0\leqq\sigma\leqq 1\rbrace$ をその凸包に置き換えても,各 $x$ での値域は変わらない。凸包上では下界が弦の上の一次関数の最小値として直ちに決まる。
$x$ を固定し $\Lambda_x(\sigma,\tau)=-3x+3x\sigma-2\tau$ とおく。$\Lambda_x$ はアフィン写像であるから $\Lambda_x(\operatorname{conv}\Gamma)=\operatorname{conv}\Lambda_x(\Gamma)$ である。$\Gamma$ は連結なコンパクト集合であるから $\Lambda_x(\Gamma)$ は閉区間であり,すでに凸である。よって
$$
\Lambda_x(\operatorname{conv}\Gamma)=\Lambda_x(\Gamma).
$$
$\sigma\mapsto\sigma^{3/2}$ は $[0,1]$ で凸であり,両端 $(0,0),(1,1)$ を結ぶ弦は $\tau=\sigma$ であるから,
$$
\operatorname{conv}\Gamma=\lbrace (\sigma,\tau)\mid 0\leqq\sigma\leqq 1,\ \sigma^{3/2}\leqq\tau\leqq\sigma\rbrace .
$$
実際,右辺は凸集合(凸関数の上側と半平面と帯の共通部分)で $\Gamma$ を含み,右辺の各点は $\Gamma$ の点 $(\sigma,\sigma^{3/2})$ と,$(0,0),(1,1)$ の凸結合 $(\sigma,\sigma)$ とを結ぶ鉛直線分上にあるから $\operatorname{conv}\Gamma$ に属する。
$\Lambda_x$ は $\tau$ について減少するから,$\operatorname{conv}\Gamma$ 上の最小値は弦 $\tau=\sigma$ 上でとられる。そこで
$$
\Lambda_x(\sigma,\sigma)=(1-\sigma)(-3x)+\sigma(-2)
$$
は $\sigma$ の一次式であり,最小値は $\min(-3x,-2)$ である。最大値は曲線辺 $\tau=\sigma^{3/2}$ 上でとられ,$h(\sigma)=-3x+3x\sigma-2\sigma^{3/2}$ は $h'(\sigma)=3(x-\sqrt\sigma)$ をもつ。$x\leqq 0$ では $\sigma=0$ で $-3x$,$0 < x < 1$ では $\sigma=x^2$ で $x^3-3x$,$x\geqq 1$ では $\sigma=1$ で $-2$ が最大値である。値域 $\Lambda_x(\Gamma)$ はこの最小値と最大値を端点とする閉区間であり,2.2 節の結論に一致する。
端点直線に対する位置 $u,v$ を座標とし,$\sigma=t^2$ と置換すると,通過条件は「$(0,u)$ と $(1,v)$ を結ぶ弦が,固定された凹曲線と交わるか」という図形的条件になる。
1.5 節より,点 $(x,y)$ が $L_t$ 上にある条件は $(1-t^2)u+t^2v=2t^2(1-t)$ である。$\sigma=t^2\in[0,1]$($t=\sqrt\sigma$)とおくと
$$
(1-\sigma)u+\sigma v=\varphi(\sigma),\qquad \varphi(\sigma)=2\sigma(1-\sqrt\sigma).
$$
左辺は $(\sigma,w)$ 平面で $(0,u)$ と $(1,v)$ を結ぶ弦,右辺は $\varphi(0)=\varphi(1)=0$,$\varphi\geqq 0$,$\varphi''(\sigma)=-\dfrac{3}{2\sqrt\sigma} < 0$ を満たす凹曲線である。差を
$$
D(\sigma)=(1-\sigma)u+\sigma v-\varphi(\sigma)=u-3x\sigma+2\sigma^{3/2}
$$
とおくと,$D(0)=u$,$D(1)=v$,$D'(\sigma)=3(\sqrt\sigma-x)$ である。
(i) $uv\leqq 0$ なら中間値の定理により解が存在する。これは $\mathcal{W}$ である。
(ii) $u < 0$,$v < 0$ なら弦は全体が負,$\varphi\geqq 0$ であるから解はない。
(iii) $u > 0$,$v > 0$ のとき。$x\leqq 0$ なら $D$ は増加して $D\geqq u > 0$,$x\geqq 1$ なら $D$ は減少して $D\geqq v > 0$ である。$0 < x < 1$ なら $D$ は $\sigma=x^2$ で最小値 $D(x^2)=u-x^3=y-f(x)$ をとるから,解が存在する条件は $y\leqq f(x)$ である。
以上より $\mathcal{R}=\mathcal{W}\cup\mathcal{K}$。
端点接線の交点 $\mathrm{P}$ を原点とし,$L_0$,$L_1$ を座標軸とするアフィン座標をとる。鉛直方向ではなく $\mathrm{P}$ からの方向を固定し,各方向で直線族がどこまで到達するかを調べる。
$\alpha=\dfrac{v}{2}=\dfrac{y+2}{2}$,$\gamma=u=y+3x$ とおく。逆変換は $x=\dfrac{2-2\alpha+\gamma}{3}$,$y=2\alpha-2$ であり,$\mathrm{P}=(0,0)$,$L_0=\lbrace\gamma=0\rbrace$,$L_1=\lbrace\alpha=0\rbrace$ である。また
$$
\mathrm{B}_t=(1-t,\,0),\qquad \mathrm{A}_t=\left(0,\,\frac{2t^2}{1+t}\right)
$$
であるから,$0 < t < 1$ のとき $L_t$ は切片形
$$
\frac{\alpha}{1-t}+\frac{(1+t)\gamma}{2t^2}=1
$$
で表される。
これは $uv\leqq 0$,すなわち $\mathcal{W}$ であり,端点値の連続補間によりすべて通過される。
$0 < t < 1$ では切片形の左辺が負になり,$L_0,L_1$ もこの部分を通らないから,通過されない。
方向を固定して $(\alpha,\gamma)=r(1-\theta,\theta)$($0 < \theta < 1$,$r > 0$)とおく。この半直線は $L_0,L_1$ と交わらないから,その上の点が通過される条件は,ある $t\in(0,1)$ で $rF_\theta(t)=1$ となることである。ただし
$$
F_\theta(t)=\frac{1-\theta}{1-t}+\frac{\theta(1+t)}{2t^2}.
$$
$F_\theta > 0$,$F_\theta''(t)=\dfrac{2(1-\theta)}{(1-t)^3}+\dfrac{\theta(t+3)}{t^4} > 0$,$t\to+0$ および $t\to 1-0$ で $F_\theta\to+\infty$ であるから,$F_\theta$ は唯一の最小点 $t_\theta$ をもつ。よって $t\mapsto 1/F_\theta(t)$ は $(0,1)$ 上で連続,両端で $0$ に近づき,最大値 $r_{\max}(\theta)=1/F_\theta(t_\theta)$ をとるから,その値域は $(0,r_{\max}(\theta)]$ である。すなわち各方向で,$\mathrm{P}$ から到達点までの全点が通過され,それより先は通過されない。
到達点では,切片形と,その $t$ についての停留条件
$$
\frac{\alpha}{(1-t)^2}-\frac{(t+2)\gamma}{2t^3}=0
$$
が同時に成り立つ。これを解くと $\gamma=t^3$,$\alpha=\dfrac{(1-t)^2(t+2)}{2}$ であり,元の座標で $x=t$,$y=t^3-3t$,すなわち到達点は $\mathrm{T}_t$($t=t_\theta$)である。点 $\mathrm{T}_t$ の方向は
$$
\theta(t)=\frac{\gamma}{\alpha+\gamma}=\frac{2t^3}{3t^3-3t+2},\qquad \theta'(t)=\frac{12t^2(1-t)}{(3t^3-3t+2)^2} > 0
$$
より $(0,1)$ から $(0,1)$ への狭義単調増加な全単射であるから,各方向の半直線は $C$ の内点とただ1点で交わる。したがって,この部分で通過される点の集合は,$\mathrm{P}$ と $C$ の内点を結ぶ線分($\mathrm{P}$ を除く)の和である。この集合は $\mathcal{K}\cap\lbrace u > 0,\ v > 0\rbrace$ に一致する。実際,$f\left(\frac23\right) > -2$ より $\mathrm{P}$ の近くでは $\mathcal{K}$ は閉象限 $\lbrace\alpha\geqq 0,\ \gamma\geqq 0\rbrace$ と一致し,開象限内での $\mathcal{K}$ の境界は $C$ の内点だけである。半直線は $C$ とただ1点 $\mathrm{T}$ で交わるから,$\mathrm{P}$ を出た半直線は $\mathrm{T}$ の手前まで $\mathcal{K}$ の内部にあり,$\mathrm{T}$ の先では $\mathcal{K}$ に戻らない。
座標軸 $\alpha=0$,$\gamma=0$ は $L_1,L_0$ であり,すべて通過される。以上より $\mathcal{R}=\mathcal{W}\cup\mathcal{K}$。
点 $(x,y)$ を通る直線の本数 $N(x,y)$($G_{x,y}$ の $[0,1]$ 内の相異なる根の個数)が変化しうる集合を先に求め,それ以外の各連結成分では $N$ が一定であることを用いて,代表点の検査だけで平面全体を判定する。
$\Sigma=L_0\cup L_1\cup C^\circ$($C^\circ=\lbrace \mathrm{T}_t\mid 0 < t < 1\rbrace$)とおく。
$(x_0,y_0)\notin\Sigma$ とする。$G(0)=u\neq 0$,$G(1)=v\neq 0$ であるから,$[0,1]$ 内の根はすべて $(0,1)$ にある。$(0,1)$ 内の重根 $t_0$ があれば $G'(t_0)=6t_0(t_0-x_0)=0$ より $t_0=x_0$,$G(x_0)=y_0-f(x_0)=0$ となり $(x_0,y_0)\in C^\circ$ に反するから,根はすべて単根である。陰関数定理により,各単根 $t_0$ は $(x,y)$ の近傍で連続に動く単根として延長され,$(0,1)$ に留まり,$t_0$ の近くの根はこれ1個に限られる。また,$(x_0,y_0)$ に収束する点列について,対応する $[0,1]$ 内の根の集積点は $G_{x_0,y_0}$ の根であるから,既存の根から離れた位置に新たな根は生じない。よって $N$ は $(x_0,y_0)$ の近傍で一定である。
$L_0,L_1$ は平面を $(u,v)$ の符号で定まる4つの開領域に分ける。$C^\circ$ は $0 < x < 1$ で $f(x)+3x=x^3 > 0$,$f(x)+2=(x-1)^2(x+2) > 0$ を満たすから開領域 $\lbrace u > 0,\ v > 0\rbrace$ 内にあり,その境界上の2点 $\mathrm{O}$,$\mathrm{Q}$ を結ぶ。よってこの開領域は有界な $\mathcal{K}$ の内部と非有界な部分に分かれ,$\mathbb{R}^2\setminus\Sigma$ の連結成分は5個である。
| 成分 | 代表点 | $G_{x,y}(t)$ | $N$ |
|---|---|---|---|
| $u < 0,\ v > 0$(左の角領域) | $(0,-1)$ | $2t^3-1$ | $1$ |
| $u > 0,\ v < 0$(右の角領域) | $(2,-5)$ | $2t^3-6t^2+1$ | $1$ |
| $\mathcal{K}$ の内部 | $\left(\frac12,-\frac75\right)$ | $2t^3-\frac32t^2+\frac1{10}$ | $2$ |
| $u < 0,\ v < 0$ | $(0,-3)$ | $2t^3-3$ | $0$ |
| $u > 0,\ v > 0$ の非有界部分 | $(0,1)$ | $2t^3+1$ | $0$ |
たとえば $\left(\frac12,-\frac75\right)$ では $G(0)=\frac1{10} > 0$,$G\left(\frac12\right)=-\frac1{40} < 0$,$G(1)=\frac35 > 0$ である。$(2,-5)$ では $G(0)=1$,$G(1)=-3$ で $G'=6t(t-2) < 0$($0 < t < 1$)より根はちょうど1個である。
$L_0,L_1$ 上の点は $t=0,1$ で,$C^\circ$ 上の点は $t=x$ で実現される。
以上より $\mathcal{R}=\mathcal{W}\cup\mathcal{K}$。
独立した解法として扱うには及ばないが,上の解法の別実装や補助的視点となるものを系列ごとに整理する。
| 解法 | 固定するもの | 主対象 | 境界の発見 | 充填の根拠 | 計算 | 論証 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 本解 | $x$ | $t\mapsto\ell_t(x)$ | 増減 $6t(x-t)$ | 中間値の定理 | 少 | 少 |
| 3.2 節 | $x$ | $t^2(3x-2t)$ | 相加相乗平均の等号 | 中間値の定理 | 少 | 少 |
| 3.3 節 | $x$ | 差 $\ell_s-\ell_t$ | 射影 $\tau(x)$ | 中間値の定理 | 少 | 中 |
| 別解1 | $x$ | 端点分解と因数分解 | 等号成立条件 | 中間値の定理 | 中 | 中 |
| 別解2 | 線分 | 接線と凸性 | 接点と端点接線 | 線分上の連続移動 | 中 | 多 |
| 参考解1 | 点 $(x,y)$ | $G_{x,y}$ の根 | 端点符号と極小値 | 中間値の定理 | 中 | 中 |
| 参考解2 | 根の対 $(s,t)$ | 交点写像 $\Phi$ | 対角線 $s=t$ | 全単射 $D\to\mathcal{K}$ | 多 | 多 |
| 参考解3 | $x$ | 双対曲線 $k(p)$ | 凹関数の停留点 | 中間値の定理 | 中 | 中 |
| 参考解4 | $x$ | $\operatorname{conv}\Gamma$ | 弦と曲線辺 | 像の区間性 | 中 | 多 |
| 参考解5 | 点 $(x,y)$ | 弦と凹曲線 | 接する弦 | 中間値の定理 | 中 | 中 |
| 参考解6 | 方向 $\theta$ | 放射尺度 $r$ | $r$ の最大点 | 両端で $r\to 0$ | 多 | 多 |
| 参考解7 | 連結成分 | 根の個数 $N$ | 分岐集合 $\Sigma$ | 陰関数定理 | 中 | 多 |
すべての解法で,境界を生む機構は $t=0$,$t=1$,$t=x$ の三つに帰着する。解法の違いは,それを発見する方法と,境界の間の点がすべて実現されること(充填)を示す方法にある。
本解は,通過範囲の定義 $\bigcup_tL_t$ から $x$ を固定するという最も直接的な操作で出発し,$\partial_t\ell_t(x)=6t(x-t)$ という単純な導関数の符号だけで最大・最小を確定し,中間値の定理の一文で十分性を保証する。見通し・計算量・必要十分性の明瞭さのいずれにおいても最も安定しており,本解として採用する。別解1は同じ断面を微分なしで処理し,等号成立条件まで込めた鋭い不等式の作り方を示す。別解2は問題文の有理式に幾何学的な意味を与え,線分の掃く部分 $\mathcal{K}$ と延長による部分 $\mathcal{W}$ を分離する。参考解はいずれも答案としては遠回りになりうるが,点を通る直線の本数(参考解1,7),領域のパラメータ表示(参考解2),双対性(参考解3,4),星形性(参考解6)など,本解では見えない構造を明らかにする。
本問から抽出される手順を,パラメータを含む直線族・曲線族の通過範囲を求める問題一般に適用できる形で述べる。
| 固定するもの | 得られる問題 | 適する状況 |
|---|---|---|
| 座標 $x$(順像) | 一変数関数の値域 | $\partial_tF$ が簡単に因数分解できるとき |
| 点 $(x,y)$(逆像) | 区間内実根の存在 | 点を通る直線の本数も必要なとき |
| 根の対 $(s,t)$ | 二直線の交点の集合 | 領域のパラメータ表示がほしいとき |
| 方向(放射) | 各方向の到達距離 | 端点直線の交点が領域の要になるとき |
| 係数 $(a,b)$ | 双対曲線・凸包 | 係数が少数の関数で書けるとき |
| 症状 | 有効な手 |
|---|---|
| 2点の座標が複雑な有理式 | 直線の方程式に直して約分を確認する |
| $\partial_t(\text{高さ})$ が因子 $(x-t)$ をもつ | 接線族とみる。最大点は $x$ の区間への射影 |
| 端点直線が1点で交わる | 交点を原点とし端点直線を軸とする斜交座標 |
| 微分を避けたい | 端点分解と $(x-t)^2(\cdots)$ 型の因数分解,相加相乗平均 |
| 係数が $(t^2,t^3)$ のように少数の関数で書ける | 係数空間の凸包 |
| 判別式を使いたくなる | 区間の端点条件を別に検査する |
| 線分と直線が混在する | 線分の掃く部分と延長部分を分けて扱う |
各節で,高校数学の範囲で完結する内容と,それを超える一般論とを区別して記す。
本解の増減表で十分である。
発展 本解の計算は次の一般定理の特殊例である。
$a < b$ とし,$f$ を区間 $[a,b]$ で $C^2$ 級かつ $f''\geqq 0$ とし,$T_t(x)=f(t)+f'(t)(x-t)$($a\leqq t\leqq b$)とおく。$\tau(x)=\min(b,\max(a,x))$ とすると,直線族 $y=T_t(x)$ の通過範囲は
$$
\lbrace (x,y)\mid \min(T_a(x),T_b(x))\leqq y\leqq T_{\tau(x)}(x)\rbrace
$$
である。上側境界は $x\leqq a$ で $T_a$,$a\leqq x\leqq b$ で $f$,$x\geqq b$ で $T_b$ であり,$C^1$ 級につながる。
$\partial_tT_t(x)=f'(t)+f''(t)(x-t)-f'(t)=f''(t)(x-t)$ であり,$f''\geqq 0$ より $t\mapsto T_t(x)$ は $[a,\tau(x)]$ で単調非減少,$[\tau(x),b]$ で単調非増加である。よって最大値は $T_{\tau(x)}(x)$,最小値は両端の値の小さい方である。連続性から値域はその間の閉区間全体である。$a\leqq x\leqq b$ では $T_x(x)=f(x)$ である。上側境界の各部分の接続点 $x=a,b$ では,値と傾き($f'(a)$,$f'(b)$)がそれぞれ一致する。
下側境界は二本の端点接線の交点で折れ,上側境界は滑らかである。本問は $f(x)=x^3-3x$,$[a,b]=[0,1]$ の場合であり, 3.3 節 の射影 $\tau$ はこの定理の $\tau$ そのものである。
$Y=y+3x$ を式の整理として用いれば十分である(
3.1 節
)。
発展 $(x,Y)$ 座標で弧は $Y=x^3$,接線は $Y=3t^2x-2t^3$ となる。変換 $D_\lambda(x,Y)=(\lambda x,\lambda^3Y)$($\lambda > 0$)は曲線 $Y=x^3$ を保ち,パラメータ $t$ の接線をパラメータ $\lambda t$ の接線に移す。すなわち,$t > 0$ の接線はすべて $t=1$ の接線の $D_\lambda$($0 < \lambda\leqq 1$)による像であり,接線族は一本の接線から重み $(1,3)$ の同次な拡大で生成される。
この同次性から,弧 $Y=x^3$($0\leqq x\leqq a$)と二本の端点接線で囲まれた部分の面積と,二本の端点接線と弦で作られる三角形の面積の比は $a$ によらない($D_\lambda$ は両者をともに $\lambda^4$ 倍する)。より一般に $Y=x^n$($n\geqq 2$)の $[0,1]$ の弧では,端点接線 $Y=0$ と $Y=nx-(n-1)$ は $\left(\frac{n-1}{n},0\right)$ で交わり,
$$
\frac{\displaystyle\int_0^1x^n\,dx-\frac{1}{2n}}{\dfrac{n-1}{2n}}=\frac{1}{n+1}
$$
である。$n=2$ の比 $\frac13$ は Archimedes の放物線の求積と同値な事実であり,$n=3$ が本問の比 $\frac14$ である。せん断は面積を保つから,元の座標でも $\frac{1/12}{1/3}=\frac14$ となる。
傾き $p$ を変数とする一変数関数の最大・最小として扱えば十分である(参考解3)。
発展 参考解3の $k(p)=-2\left(1+\frac p3\right)^{3/2}$($-3\leqq p\leqq 0$)を用いると,接線族は $y=px+k(p)$ と書ける。$0\leqq x\leqq 1$,$-3\leqq p\leqq 0$ について
$$
\max_{-3\leqq p\leqq 0}\lbrace px+k(p)\rbrace=x^3-3x,\qquad \max_{0\leqq x\leqq 1}\lbrace px-f(x)\rbrace=-k(p)
$$
が成り立ち(最大点はそれぞれ $p=3x^2-3$,$x=\sqrt{1+p/3}$),$[0,1]$ に制限した $f$ と $-k$ は互いの Legendre 変換である。接線の切片が $-(\text{Legendre 変換})$ で与えられ,凸な $f$ に凹な $k$ が対応する。上側境界 $M(x)=\max_{p}\lbrace px+k(p)\rbrace$ は,$-k$ を $[-3,0]$ に制限した関数の Legendre–Fenchel 変換に一致し,$x < 0$ と $x > 1$ では傾きの範囲の端 $-3$,$0$ をもつ一次関数になる。
微分方程式としては,$p=y'$ とおいた Clairaut 方程式
$$
y=xy'-2\left(1+\frac{y'}{3}\right)^{3/2}
$$
を $x$ で微分すると $\left(x-\sqrt{1+\frac{y'}{3}}\right)y''=0$ となり,$y''=0$ から一般解(直線族),$x=\sqrt{1+\frac{y'}{3}}$ から特異解 $y=x^3-3x$($x\geqq 0$)を得る。包絡線は特異解である。
区間内実根は,端点の符号と内部の極値で判定すれば十分である(参考解1)。
発展 $G_{x,y}$ の判別式は $108(3x+y)(x^3-3x-y)$ であり,全実数での重根の有無しか判定しない。区間 $[0,1]$ に適した表現は Bernstein 基底で,係数は $(3x+y,\,3x+y,\,2x+y,\,y+2)$ である($c_0=c_1$ は $G'(0)=0$ の反映)。Bernstein 係数の符号変化の回数 $V$ と $(0,1)$ 内の根の個数 $Z$(重複度込み)の間には,$Z\leqq V$ かつ $V-Z$ は偶数という関係(区間版の Descartes の符号法則)が成り立つが,$V=2$ であっても $Z=0$ はありうる。たとえば $\left(\frac12,-\frac{13}{10}\right)$ では係数が $\left(\frac15,\frac15,-\frac3{10},\frac7{10}\right)$ で $V=2$ だが,$-\frac{13}{10} > f\left(\frac12\right)=-\frac{11}{8}$ より $\mathcal{R}$ の外にあり $Z=0$ である。de Casteljau 分割で区間を十分細かく分割すると,単根だけをもつ場合には各小区間の符号変化数がその小区間内の根の個数に一致するようになる。これが Bernstein 基底による実根分離算法の原理である。
包絡線は「$x$ を固定したときの最大点の軌跡」として本解の中で自然に現れる。
発展 写像 $\Pi(x,t)=(x,\ell_t(x))$($0\leqq t\leqq 1$)の像が $\mathcal{R}$ であり,これは線織面 $\lbrace (x,y,t)\mid y=\ell_t(x)\rbrace$ の $xy$ 平面への射影と同じである。$\Pi$ のヤコビ行列式は $\partial_t\ell_t(x)=6t(x-t)$ であるから,像の境界は,定義域の境界 $t=0,1$ の像と臨界集合 $t=x$ の像に含まれる。$0 < x < 1$ の臨界点では $\partial_t^2\ell_t(x)=6x-12t=-6x\neq 0$ であり,Whitney の意味の折り目(fold)である。折り目の像が弧 $C$ であり,折り目の近くで像は $C$ の片側(下側)だけを2重に覆う。これは $\mathcal{K}$ の内部を2本の直線が通ること(
3.6 節
)と,$C$ が境界になることの局所的な説明である。一方 $t=0$ では $\partial_t\ell_t(x)$ が $x$ によらず $0$ になり,定義域の境界と臨界集合が重なる退化が起こる(
1.6 節
)。実代数幾何の円筒代数分解は,参考解7の「分岐集合で分割し各成分を代表点で判定する」手続きを一般化したものである。
参考解4の結論は,各 $x$ での値域が閉区間であることだけを用いている。
発展 $[0,1]$ に値をとる確率変数 $T$ に対し,$(E[T^2],E[T^3])$ の全体は $\operatorname{conv}\Gamma$ に一致する(モーメント空間)。直線族の平均 $y=E[\ell_T(x)]=-3x+3xE[T^2]-2E[T^3]$ の各 $x$ での値は $\ell_t(x)$ の値の平均であるから $[m(x),M(x)]$ に属する。したがって $\mathcal{R}$ は,係数が $\operatorname{conv}\Gamma$ に属する直線全体の和集合でもある。凸包の直線辺 $\tau=\sigma$ は $t\in\lbrace 0,1\rbrace$ に集中した分布に対応し,$\mathrm{P}$ を通る直線束($\mathcal{W}$)を与える。
内分点の計算で確かめられる。
発展 弧 $C$ は,制御点 $\mathrm{O}$,$\mathrm{E}\left(\frac13,-1\right)$,$\mathrm{P}$,$\mathrm{Q}$ の三次 Bézier 曲線
$$
\mathrm{T}_t=(1-t)^3\mathrm{O}+3(1-t)^2t\,\mathrm{E}+3(1-t)t^2\,\mathrm{P}+t^3\mathrm{Q}
$$
である。$\mathrm{E}$ は線分 $\mathrm{OP}$ の中点であり,制御多角形は三角形 $\mathrm{OPQ}$ に退化している(凸包性により $C\subset\triangle\mathrm{OPQ}$)。de Casteljau の構成で第2段の点を計算すると
$$
(1-t)\lbrace(1-t)\mathrm{O}+t\mathrm{E}\rbrace+t\lbrace(1-t)\mathrm{E}+t\mathrm{P}\rbrace=t\mathrm{P}=\mathrm{B}_t
$$
となり,問題の点 $\mathrm{B}$ は de Casteljau の中間点そのものである。$t$ における接線はこの点を通る。
一方,二次 Bézier 曲線(制御点 $\mathrm{O},\mathrm{P},\mathrm{Q}$)の $t$ における接線は,$\mathrm{B}_t=(1-t)\mathrm{O}+t\mathrm{P}$ と $(1-t)\mathrm{P}+t\mathrm{Q}$ を結ぶ直線であり,両端が三角形の2辺上を等速で動く「糸掛け」が放物線を包絡する。本問の $\mathrm{B}$ はこれと同じ動きをし,$\mathrm{A}$ だけが $\mathrm{P}+\rho_t(\mathrm{Q}-\mathrm{P})$,$\rho_t=\frac{2t^2}{1+t}$ と非等速に動く。端点の速さの配分を変えることで,包絡線が放物線から三次曲線に変わる。これが本問の作問の原型と考えられる。
参考解6の放射方向の議論で,各方向の通過部分が $\mathrm{P}$ から始まる線分であることが分かる。
発展
$\mathcal{R}$ は $\mathrm{P}$ に関して星形である。すなわち任意の $\mathrm{X}\in\mathcal{R}$ に対して線分 $\mathrm{PX}\subset\mathcal{R}$ である。さらに,この性質をもつ点は $\mathrm{P}$ に限る。
参考解6(
3.11 節
)の座標 $(\alpha,\gamma)$ で考える(アフィン変換は線分を線分に移す)。$\mathcal{R}$ は二つの閉象限 $\lbrace\alpha\leqq 0\leqq\gamma\rbrace$,$\lbrace\gamma\leqq 0\leqq\alpha\rbrace$ と $\mathcal{K}$ の和であり,開象限 $\lbrace\alpha < 0,\ \gamma < 0\rbrace$ と交わらない。また $\mathcal{K}$ 上では $\alpha=\frac{y+2}{2}\leqq\frac{f(x)+2}{2}\leqq 1$,$\gamma=y+3x\leqq x^3\leqq 1$ より $\mathcal{K}\subset[0,1]^2$ である。
星形性:二つの閉象限は原点を頂点とする凸錐であり,第1象限の部分は参考解6により各方向で $\mathrm{P}$ からの線分である。
一意性:$\mathrm{c}=(\alpha_0,\gamma_0)\in\mathcal{R}$,$\mathrm{c}\neq\mathrm{P}$ とし,$M > 0$ を十分大きくとる。
星形性は接線という特殊な構造よりも,「三角形の隣り合う2辺上を単調に動く端点を結ぶ線分族」という配置に由来する。
本解で求めた $M$,$m$ のグラフを描けば確認できる。
発展 一般に連続な直線族 $y=a(t)x+b(t)$($t\in I$,$I$ はコンパクト)について,$M(x)=\max_t\lbrace a(t)x+b(t)\rbrace$ は一次関数の最大値であるから凸,$m(x)$ は凹である。したがって通過範囲の補集合は,凸な開集合 $\lbrace y > M(x)\rbrace$ と $\lbrace y < m(x)\rbrace$ の互いに素な和である。また $M(x)$ は双対曲線 $\lbrace (a(t),b(t))\rbrace$ の,方向 $(x,1)$ に対する支持関数の値である。本問では $M$ は $C^1$ 級の凸関数,$m=\min(-3x,-2)$ は凹関数であり,検算に用いられる。
$$ \begin{array}{c} \mathrm{A}_t,\ \mathrm{B}_t\ \text{(有理式)}\\ \Downarrow\ \text{約分}\\ L_t:\ y=-3x+3xt^2-2t^3\quad(0\leqq t\leqq 1)\\ \Downarrow\ \ell_t(x)=f(t)+f'(t)(x-t),\ \ f(x)=x^3-3x\\ \text{凸な弧 }C\text{(変曲点 }\mathrm{O}\text{ から極小点 }\mathrm{Q}\text{)の接線族}\\ \Downarrow\ \partial_t\ell_t(x)=6t(x-t)\\ \begin{array}{c|c|c} t=0 & t=x\ (0 < x < 1) & t=1\\ \hline y=-3x & y=x^3-3x & y=-2 \end{array}\\ \Downarrow\ \text{候補の比較(切替点 }x=0,\ \tfrac23,\ 1\text{)}\\ \begin{array}{c|c|c|c|c} x\text{ を固定} & \text{点を固定} & (s,t)\text{ を固定} & \text{方向を固定} & \text{係数空間}\\ \hline \text{本解・別解1} & \text{参考解1・5・7} & \text{参考解2} & \text{参考解6} & \text{参考解3・4} \end{array}\\ \Downarrow\ \text{充填の証明(連続性・根の存在・全単射)}\\ \mathcal{R}=\mathcal{W}\cup\mathcal{K}=\lbrace (x,y)\mid m(x)\leqq y\leqq M(x)\rbrace \end{array} $$
| $x$ の範囲 | $y$ の範囲 | 由来 |
|---|---|---|
| $x\leqq 0$ | $-2\leqq y\leqq -3x$ | 下:$t=1$,上:$t=0$ |
| $0\leqq x\leqq\frac23$ | $-2\leqq y\leqq x^3-3x$ | 下:$t=1$,上:$t=x$ |
| $\frac23\leqq x\leqq 1$ | $-3x\leqq y\leqq x^3-3x$ | 下:$t=0$,上:$t=x$ |
| $x\geqq 1$ | $-3x\leqq y\leqq -2$ | 下:$t=0$,上:$t=1$ |
境界をすべて含む。これは,二本の端点接線 $y=-3x$,$y=-2$ にはさまれた非有界な角領域 $\mathcal{W}$ と,折れ線 $\mathrm{OPQ}$ と弧 $y=x^3-3x$($0\leqq x\leqq 1$)で囲まれた曲線三角形 $\mathcal{K}$(線分 $\mathrm{AB}$ の掃く範囲)の和集合である。